危険すぎる『罠の止め刺し』私の”恐ろしい”体験談、お話します【狩猟であった”痛い”話】

 前回、罠(主にバネ)の危険性についてお話をしましたが、罠猟で最も危険なのは『止め刺し』です。実をいうと私はこれまで、罠の止め刺しで、何度も”危ない目”に会っていたりします。
 そこで今回は私の経験談や聞いた話しの中から、「止め刺しで起こった恐ろしいお話」をしたいと思います。 

目次

シカにフッ飛ばされた!


狩猟2年目のある日、大きな角をもったシカがくくり罠にかかっていました。


いつもだったら銃で止め刺しをするのですが、その日は現場に銃を持ってきておらず。


「銃を取りに帰るのは面倒くさいから、槍状のナイフを使うか」と獲物に近づきました。

私はこのとき、大イノシシを含めて100頭以上の止め刺しを経験してきていたので、

「シカなら楽勝ぉ~」

と思っていました。

しかし・・・。

その油断がまずかった。

ナイフを持って近づいたところ、オスジカが角を下げてこちらに突進ッ!

ワイヤーがつっぱって、動きが止まるかと思いきや、

思っていたよりもリーチが長いッ!!

不用意に近づきすぎたせいでシカの射程距離に入ってしまった私。


オスジカの突進で体勢を崩され、
さらに前足で蹴り上げられて、

2m近くフッ飛ばされたのでした。

幸いなことに落ちた先は柔らかい草の上。
また、突進は槍状ナイフの柄でガードできていたため、角が突き刺さることもありませんでした。
しかし、

(もしフッ飛ばされた先が崖だったら・・・)


(フッ飛ばされた先に、竹の切り株があったら・・・)


(角先が反れて顔面に刺さっていたら・・・)


わずかな差で死亡事故になっていてもおかしくなかった、
今思い出しても「ゾッ」っとする経験です。

噛みつかれて流血!

 あるとき、イノシシ用の箱罠にアナグマがかかっていました。

ずんぐりむっくりの体に短い脚。地面に鼻を擦りつけて「フゴフゴ」言っています。

「・・・・」

「かわいい (*´∀`*)」

いつもは、箱わなの中で大暴れするイノシシばかりを見ていたので、
このドングリ眼で見つめてくる獣に、おもわずこちらもほっこり。

しかし、何の気なく
箱罠に手を触れた瞬間!

手から流血ッ!!



幸い厚手の手袋をしていていたので、出血は軽くて済みました。
(どんなにかわいく見えても、相手は野生動物。気を抜いてはいけない・・・)
と猛省したのでした。

目の前でワイヤーが千切れる!

前回、「くくり罠のワイヤーが切れそうでヒヤヒヤした」というお話をしましたが、実を言うと、

実際にワイヤーや獲物の足が切れて脱走されたことがあります。

しかも5回程ほど。

幸いにも、今まで反撃を受けた経験は無く、怪我をしたことは一度もありません。
しかし、ワイヤーが切れた勢いで突っ込まれていたら、間違いなく大ケガを負っていたことでしょう。
そんなワイヤー切れエピソードの中で、特に「ヒヤリ」としたお話をご紹介します。

ある日、くくり罠に大きなシカが掛かっていました。

スネアを確認すると、足が千切れるような様子はなく、しっかり高い位置で括れています。

「これならひとまず安心だ」と判断し、係員(※)に連絡。
さらに、前々から「止め刺しが見たい」という初心者がいたので、その方に連絡をして待機していました。
(※ 当地の有害鳥獣駆除では、原則として自治体の係員に現場確認をしてもらう必要がある)

1時間後。


係員も見学希望者もやってきません。


待合場所は、現場から300mほど離れたところ。
道に迷うような場所ではありません。


(おかしいなぁ)


とりあえずシカがかかっている現場に行ってみると・・・


「な、なにやっとんじゃ~ぁ!!」

なんと係員と初心者さんはすでに現場に来ているではないですか!
しかも、シカの目の前に近づき、のん気に写真を「パシャパシャ」と撮りながらおしゃべりをしています。


当然ですが、

人間の話し声に興奮したシカは大暴れ!

足が変な方向に曲がって、今にも切れそうになっています。

危険な状態にあることを二人ともまったく気づく様子も無い!

(これはマズイ!!)


大慌てで二人に近づき、「今すぐ後退するように!」と伝えようとしたその時、

「ブチッ!!」

シカが足をひきちぎって逃げて行きました。


(・・・もしこれがイノシシだったら)
おそらく、係員も、初心者さんも、無事では済まなかったことでしょう。
それ以来、私は自分で捕獲現場をコントロールしないといけないということを学びました。

箱罠だって安全じゃない!

 
一般的に、箱罠はくくり罠よりも安全性が高いと言われています。
しかし、油断をしていると、恐ろしいことが起こります。

あるとき、100kg以上あるイノシシが箱罠にかかりました。
箱罠の止め刺しは、まず、鼻くくりでイノシシの鼻っ面を引き縛り、その隙にナイフで急所を刺します。
そこで鼻くくりをしようとしていたところ、

「カキーンッ!」



(・・・ん!?なんだ今の金属音は?)

何かの聞き間違いだろうと思い、鼻くくりの準備を進めようとしたそのとき、

トンデモナイ状況が目の端に映るッ!!

「うぉッ!イノシシが扉を開けてるッ!!」

(※ 上の写真は実際の映像。イノシシが扉を半分開けています)

先程の金属音は、

扉のストッパーが破壊された音だった!


実はこの時、ベテラン猟師が二人同行してくれていました。

そのため、ベテラン猟師さんはすぐに扉に竹を差し込んで、扉をガッチリガード。

なんとか逃げられることなく、止め刺しをすることができたのでした。


この経験から私は、「箱罠は絶対に安全というわけではないんだな」ということを学びました。


そして、仲間と一緒に止め刺しをすることの重要だと感じた瞬間でもありました。

というか、どんなこんなハプニングでも冷静に対処できる、

経験豊富なベテラン猟師って凄いッ!

箱罠の見回りで起こった恐怖体験

箱罠であった「ヒヤリ」としたエピソードには、こんなのもあります。

その日、私は箱罠の見廻りに、チャッピーを連れて行っていました。
チャッピーと一緒に、ヤブの中に置いてある箱罠へと近づいていくと・・・

箱罠から何者かが暴れる音が。


「やったー!何かかかってるぞ♪」

ウキウキしながらヤブをかき分ける私。
しかし、チャッピーは途中で、ピタリと足を止めます。


「チャッピー、どうしたの?」


じっと私を見つめるチャッピー。


リードを引っ張って後ずさりします。

「獲物は箱罠の中にいるから大丈夫だって。こわくないよ。」


チャッピーを抱き上げたそのとき、



「キャンッ!!」

ヤブのなかから「何か」が来るッ!

「キャンキャンキャンッ!」

鳴きまくるチャッピー。
私の腕から飛び出して追いかけようとします。

「ガササササ」っとヤブをかき分けて山の方へ逃げていく”影”。
その正体は、大きなイノシシでした。



箱罠に入っていたのは、2頭の小さなイノシシでした。

(ということは、今逃げて行ったのは母親だったのか!?)

(もし、チャッピーを連れていなかったら、待ち伏せを喰らっていたかも・・・)

見回り中はこのような危険があるということを、初めて体験したエピソードでした。

クマの恐ろしい話

さて、最後は、私の近所のおじいさんが実際にあった恐ろしいお話。

いつものように罠の見回りをしていたおじいさん。

「あれ、このシカ、内臓が無い!?」

そう思った瞬間、

目の前のヤブからクマが飛びかかってきました。

ちょうど腰を怪我していたおじいさんは後ろに倒れてしまい、

クマが馬乗りに!

片手であたまを抑えられ、噛みつかれそうになったとき、おじいさんはとっさに

右手ストレートで反撃ッ!

がッ・・・不発ッ!

それどころか、

拳がクマの口に
スッポリはまってしまう
という大誤算!!

 おじいさんは

「あ~このまま右手を食いちぎられ、顔をズタズタにされるんだろうなぁ」


と観念したそうです・・・。

しかしラッキーなことに。
クマは「ウガー」と唸って逃走。
急に口へパンチが飛んできたことに驚いたのかもしれません。
とりあえず、おじいさんは顔を何針か縫うだけで済みました。

このように、クマが出没する地域では、
獲物を横取りするクマへの警戒も必要になる、というお話でした。

まとめ

  1. オスジカに近づきすぎてブッ飛ばされる
  2. アナグマに噛みつかれて流血
  3. ワイヤーが切れて「ヒヤリ」とした経験は数知れず

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この記事を書いた人

Uri@山本 暁子のアバター Uri@山本 暁子 女性・副業猟師

鳥取県国府町在住の女猟師。昼は猟師の仕事、夜はITを駆使してリモートで仕事をしています。Twitter、Youtubeもやってます。

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