実は古くから食べられてきた『ニホンザル』。〝秋猿の羹〟はスッポンを超える滋養強壮料理だった

ニホンザルの肉を食べよう

サル肉を食べる」と聞いた人の中には、「気持ち悪い」「呪われそう」と批判的な意見を持つ人もいるかもしれません。しかし、食材としてのサル肉は、世界的に見ても珍しいものではありませんし、日本でも近世までサル食の文化は各地に存在しました。そこで今回は、サル(ニホンザル)の肉と、その料理方法についてお話しします。

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  1. ニホンザルは狩猟で捕獲できないが、近年、有害鳥獣駆除が増えてきている
  2. サル肉の食味は大したことはないが、脂が溶けだしたスープが絶品
  3. サル肉おすすめの料理は羹(あつもの)。旬は秋猿。

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目次

ニホンザルってどんな動物?

檻に入った猿

 日本にはタイワンザルやアカゲザルなど様々なサルが生息していますが、日本に古来から生息するのはニホンザル1種のみで、他はすべて外来種です。本題に入る前に、ニホンザルの生態について簡単に理解しておきましょう。

ニホンザルの身体的特徴

 霊長目、オナガザル科のニホンザルは、体長約48~60cm、体重は8~18kgです。毛並みは若いイノシシにそっくりで、シルエットも似ているので、山の中ではよく見間違えられます。
 しかし、ニホンザルはイノシシに比べて上半身が発達しているので、走る時に肩が盛り上がる姿で見分けることができます。

手足が器用な蹠行性の動物

ニホンザルとは

 歩行の仕方は、人間やクマ、アライグマなどと同じく、かかとを地面につけて歩く蹠行性です。このタイプの動物は、手足が器用といった特徴があるため、物を掴んだり、木に登ったり、二足歩行したりすることができます。

ニホンザルの分布

 ニホンザルは北海道を除く日本列島に広く生息しており、特に青森県下北半島の群れは「人間を除く最も北に生息する霊長類」(北限のサル)としても有名です。
 英語で”Snow monkey”と呼ばれることもあるように、「雪の降りしきる中、身を寄せ合うサル」の姿はニホンザルでのみ見られる光景であり、海外から多くの動物愛好家が訪れます。

ニホンザルによる被害

有害鳥獣被害防止用の柵

 愛らしいニホンザルですが、近年、問題行動が目立つようになってきました。特に野菜や果物を食害する農業被害が深刻化しており、サル特有の賢さや群れで畑を荒らす特徴から、被害防除も難しいのが現状です。
 本サイトでは、プロ猟師による『ニホンザル捕獲』に関する記事がアップされているので、ご興味のある方は併せてご覧ください。

ニホンザル捕獲に関するガイダンス

ニホンザル捕獲の準備編

ニホンザルの“銃猟”編

ニホンザルの“罠猟”編

有害鳥獣駆除で捕獲された肉が、ごくまれに出回っている

 ニホンザルは狩猟鳥獣ではないため、狩猟による捕獲は禁止されています。そのため、本来はサル肉をジビエとして食べることはできません。
 しかし、上述したように、近年ではニホンザルによる被害が増えており、全国的にニホンザルの捕獲(有害鳥獣駆除)が増えています。そして、この有害鳥獣駆除で捕獲されたニホンザルの一部は、許可を受けた食肉処理場で解体され、ごく一部がジビエとして流通しています。

サル肉ってどんな味?

 ゲテモノと思われがちなサル肉ですが、日本では縄文時代の遺跡からサル肉を食べた痕跡のある骨が見つかったり、江戸時代の獣肉店「ももんじ屋」でも扱われていたりと、全く食べられていなかったわけではありません。
 むしろサル肉は、滋養強壮に良い食材として重宝されていたという文献も残っており、特に豪雪地帯である東北や中国地方の山間部では、冬場の貴重なタンパク源として猟獲され、食べられていたと言われています。

肉質は固く旨味も微妙

 サル肉はクマ肉に似ており、強い赤身をしています。食味としては、非常に固い肉質で、旨味はそれほど強くありません。
 もちろん、旨味が全くないわけではありませんが、イノシシやシカの旨味、クマ肉の「クマクマした旨味」に比べると、やや個性に欠けると思います。

真の味は脂にアリ

 正直、サル肉自体はそれほど美味しいわけではありませんが、サル肉の魅力は脂、正確には「脂が溶けた出汁」にあります。
 サルの脂は繊細で汁によく溶けます。脂が溶けた出汁は金色に輝き、ほんのりと柔らかな甘さがあります。しかも、体の奥から熱が上がってくるような不思議な感覚があり、滋養強壮の噂通り、強いエネルギーを持っています。
 同じく脂が美味しいジビエにアナグマがありますが、ニホンザルの脂はアナグマよりも繊細で甘味があります。肉や脂身自体は大したことはありませんが、この脂のスープだけでも十分な価値があると思います。

サル肉はスッポンと似ている

「肉はイマイチだけど、スープに溶けた脂が美味しい」という食味は、スッポンに似ています。スッポンも肉自体はそれほど美味しいわけではありませんが、スッポンのコラーゲンが溶けだしたとろとろのスープは、強い旨味と滋養強壮に優れています。

寒い時期のサルは絶品!?

 サル肉料理もスッポンと同じように、(あつもの:肉と野菜を入れて煮込んだ汁物)が最も適していると思います。
 長野県には「秋猿は嫁に食わすな」ということわざがあるそうですが、おそらく「夏場の脂の無いサルよりも、秋の脂の乗ったサルの方が美味しい」という意味なのでしょう‥‥たぶん。

まとめ

  1. ニホンザルは狩猟で捕獲できないが、近年、有害鳥獣駆除が増えてきている
  2. サル肉の食味は大したことはないが、脂が溶けだしたスープが絶品
  3. サル肉おすすめの料理は羹(あつもの)。旬は秋猿。

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