「か弱い女性に狩猟は無理?」そんなことは無い!女猟師が”100kg”の獲物を引っ張る、驚きのテクニックを公開!

 狩猟を始める当初、一番気がかりだったのは『獲物を一人で運ぶこと』でした。「女1人で何十キロもの獲物を山から引き出すなんて、絶対に無理ッ!」・・・しかし色々な猟師さんに出会って気付いたことがあります。「80歳以上の高齢者でもソロで狩猟をしているのよ?私ができないわけないじゃない!」と。
 そこで今回は、女性がガチソロハンティングを行う上で最も困るポイントと思われる、獲物を山から引き出す方法についてお話をしたいと思います。

目次

まずは地勢を考える

 力の弱い女性が山から獲物を一人で引き出すためには、どうすればよいのでしょうか?滑車を使う?電動ウィンチを使う?ロープを使う?・・・色々と案があるかと思いますが、まずは何よりも引き出しやすい場所で獲物をしとめる、これが第一に考えることです。

罠は道より高い場所に設置

 当然のことながら、物を運ぶときは高いところから低いところへ移動させるのは簡単です。よって獲物を捕獲するさいは、できる限り車を停める場所よりも高い場所でしとめるようにしましょう。
 特に、くくりわなや箱わなは自分で仕掛ける場所を決めることができるので、設置場所を決めるさいの重要なポイントになります。また銃猟においても、獲物を待ち伏せする射角を考慮するうえで重要になります。
 例え獲物をしとめる場所が回収地点から遠くなったとしても、高い位置でしとめた方が結果的に引き出しにかかる負担が小さくなることはよくあるので、距離ではなく”地勢”で考えるようにしましょう。

死後硬直した獲物でも運びやすい

 特にくくりわなの場合、ワイヤーが獲物に絡んでしまい、発見したときにはすでに死んでいることもあります。このような獲物は、変な体勢で死後硬直をしていることが多く、簡単に動かすことができません。しかし、くくりわなを道路よりも高い位置にしかけておけば、下へ転がり落とすだけで運ぶことができます。

 環境を整備する下準備も大切

  山の中はあちこちに倒木があり、屠体を引っ張る障壁になります。そこで、あらかじめ屠体を引き出すルートの目星をつけておき、その道をある程度整備しておくことも重要です。
 例えば、灌木(低い木)はナタで払っておいたり、倒木は除去して道を開けたり、窪みには板を張ってルートを作っておく、などです。狩猟をする人は、できればチェーンソーを安全に扱える技術を身につけおくとよいでしょう。

エグジットポイントを複数確保しておく

 猟場を探すときは、出口となる搬出路(エグジットポイントを複数調べておきましょう。特に銃猟では獲物をしとめる場所が毎回変わるため、どこからでも”最短”を取れる搬出路を知っておくことはとても重要です。ベテランハンターさんになればなるほど山の道をよく知っているので、パワーのある若いハンターさんよりも引き出しにかかる時間が短かったりします。

獲物が荷台より高い位置にある場合

 獲物を引き出すときは、『車の荷台に直接のせることができる搬出路』を見つけておくのもポイントです。私は写真のようにアルミラダーレールを利用して、高い場所から直接獲物をトラックに載せることが多いです。とっても楽な方法なので、みなさま是非お試しあれ!

獲物の引っ張り方

 例えどんなに高い位置で獲物をしとめたとしても、『高いところから落とすだけで荷台にホールインワン』なんて状況にはなりません。そこで狩猟では、必ず獲物を引っ張る方法を考えなければなりません。

摩擦を極限まで減らす

 重たい物を引っ張るために重要になるのが、いかに摩擦を減らすかです。例えば、古代エジプトではピラミッドの重たい石を運ぶときに『コロ』と呼ばれる丸太を石の下に噛ませたり、石をソリに載せて油を撒きながら引っ張ったりしたそうです。
 この『コロ』を使った運搬は、箱わななどを移動させるときにはしばしば利用されますが、ソロで狩猟をするときにはなかなか使いにくい道具です。そこで、摩擦を少なくする”持ち方”を工夫しましょう。

 摩擦を抑える方法にはいくつか考えられますが、私が行っているのは写真のように獲物の上半身を浮かすように持つことです。このように地面に接した部分を少なくすることで、私のような力の弱い女性でも100㎏近い獲物を引っ張ることができるようになります。

後ろ向きに引っ張るのが最もパワーが出る

 この方法だと、必然的に後ろ向きになって進んでいくことになります。「後ろ向きに運ぶって、なんだか体への負担が大きそう」と思ったそこのあなた!・・・実はそうでもないんです。
 綱引きの風景を思い出してみてください。お互いのチームが1本のロープを引っ張り合う、筋肉vs筋肉の真剣勝負です。この綱引きでは、引き手は全員『進行方向とは逆』を向いていますよね?なぜならこれが『二足歩行の人間にとって最もパワーの出る引き方』だからです。


 余談ですが、ピラミッドの石を運ぶときも、運び手は全員『進行方向とは逆向き』になるように引っ張っていたといわれています。特にコロが使えない坂道を上るときには必須のテクニックだったとか。すごいですね~。

体重を使って引っ張る


 また、引っ張り方にもコツがあります。まず、ヒモを巻き付けた部分(主に頭)を上げて地面との摩擦を減らします。次に、腰を落として体重を後ろにかけていきます。そして大きく「背伸び」をするようにして屠体を引きます。こうすることで伸びあがった分だけ屠体が動くので、このサイクルを繰り返して進んでいきます。
 この引っ張り方では、自分の体重を使うことができるので、力をほとんど使う必要がありません。さらに、腕の筋肉ではなく『足の筋肉』を使うため、想像以上に簡単に動かすことができるのです。

女性でも100㎏持ち上げられる大腿四頭筋

 「なんだよ。結局、足の筋肉がいるんじゃないかよ~」と思った方、ご安心ください。この引っ張るとき使うのは大腿四頭筋と呼ばれる太モモの筋肉なんですが、この部位は『人体の中で最強』と呼ばれるほど強力な筋肉なんです。
 実際に、この筋肉を鍛える器具にレッグプレスという機械があるんですが、日本人男性(平均体重約70㎏)なら100㎏は余裕で持ち上げることができ、女性の(平均体重約50㎏)であっても平均70㎏、コツを掴めば100㎏を持ち上げることができます。
 屠体を引くときは、この大腿四頭筋と併せて自分の体重を加えることになります。よって、女性であっても100㎏近いイノシシを引っ張るのは意外と余裕!坂道であっても引き上げることができます!

引っ張る道具を作ろう!

  それでは、このように獲物を引っ張るためには、どのような道具を使えばいいのでしょうか?残念ながら専用のアイテムは市販されていないので、自作をするしかありません。
 しかしご安心ください。この道具を作るのは決して難しくはありません。くくりわなをしたいと思っている人の場合は、くくりわなの工具と材料で簡単に作ることができます

工具

必要な工具はスエジャー1つ!ワイヤーの切断もこの工具で可能です。スエジャーは写真のようなアームタイプでも、ベンチタイプでもどちらでもOK。もし工具を持っていない人は、くくりわなをしている先輩ハンターに貸してもらうとよいでしょう。

材料

  • 丈夫な棒(30cm程度):1本
  • スリーブW 4mm用:3個
  • スリーブS 4mm用:1個
  • くくり金具:1個
  • より戻し:1個
  • 4mmワイヤー:長さ約45cmと約25cm程度を各1本

 ワイヤーは新品でもOKですが、私は一度くくりわなに使って廃棄したワイヤーを利用しています。ワイヤーの両サイドはマスキングテープでまとめておくと、後の作業が簡単になります。ワイヤーの長さは持ち手となる棒の太さによって多少前後します。材料に合わせて調整してください。
 取っ手となる「丈夫な棒」ですが、長さ30cm程度が目安です。素材は何でも良いですが、私は100円ショップ(ダイソー)の調理器具めん棒を利用しました。

作りかた

①25㎝のワイヤーを利用し、持ち手〜より戻しの部分を作成する。棒に巻きつけた部分はきつく締め付けてかしめる。この部分はなるべく短く作るのがポイント!

②45㎝のワイヤーと①のより戻しの部分を作成する。

③全長が45㎝くらいになるようにワイヤーの先を切断して長さを再度調整する。

④くくり金具を取り付けて完成。くくり金具の先を4mmSスリーブをかしめて抜けないようにしています。

まとめ

  1. 獲物をしとめる(わなを仕掛ける)場所は、車よりも高い位置にする
  2. 屠体を引っ張るときは、体重+大腿四頭筋のパワーを利用しよう
  3. 引っ張り道具を作るのは意外と簡単!くくりわなをする人は自作してみよう

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この記事を書いた人

Uri@山本 暁子のアバター Uri@山本 暁子 女性・副業猟師

鳥取県国府町在住の女猟師。昼は猟師の仕事、夜はITを駆使してリモートで仕事をしています。Twitter、Youtubeもやってます。

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