【女性必見】無理な体勢・力の入れ方は体を壊す!仕留めた獲物の楽な体位変換・垂直移動をマスターしよう!


 前回は、重たい獲物を女性の力でも引っ張ることができる方法についてお話をしました。しかし狩猟では、水平方向に引っ張るだけではなく、例えば、屠体の体の向きを変えたり、軽トラックの荷台に持ち上げたりといった動きをする必要も出てきます。そこで今回は前回の補足として、効率的な屠体の動かし方についてお話をしたいと思います。

目次

獲物をひっくり返す方法

しとめたイノシシ

「獲物をひっくり返す方法」と聞いたとき、「そんなの難しくないでしょ」と思った方も多いのではないでしょうか?しかし実際にやってみると、重量物の向きを変えるという作業はとっても大変です!
 介護の世界には寝たきりの方の体の向きを変える『体位変換』という作業が行われていますが、その作業を行う介護者の負担は非常に大きなものです。体位変換における動作は腰への負担が大きいため、介護の仕事を辞める人の多くは『腰痛』が理由だとも言われています。

関節が曲がるので簡単に体位を変えられない

 体位を変えるのが難しい理由の一つに体中の関節が動くことが上げられます。もし、屠体の関節がカチカチになっているのであれば、丸太を転がすように動かして簡単に向きを変えることができます。しかし、実際の屠体は体中の関節がグニグニと曲がります。そのため、例え頭を掴んで回しても首の関節が曲がって体は動きませんし、前脚を持ったとしても腰の部分で曲がってしまうので下半身は動きません。

 100キロ近くの獲物の体位を変える方法・・・

では、もちろんありません。
力を使わなくても獲物の体位を変えることはできます。しかも、ほんの少しのテクニックを使うだけです!このテクニックは色んなことに応用できるので、是非覚えておいてほしい技です。

イノシシの場合

 まずはイノシシの場合。方法は、寝ている側の下になっている前脚・後脚を掴みます。そして、足を反対側に倒すように押すと、背中が軸となり体が反対方向に回転します。このとき両足を上に引っ張り上げるように持つと、腰への負担が大きくなるので注意してください。レバーを切り替えるように、足を反対側に押し倒すようなイメージです。
 イノシシの体は寸胴なので関節もそれほど柔らかくありません。よって100キロ近くの大物であっても、背中を軸にして回転させることで、比較的簡単にひっくり返すことができます。

シカの場合

 次にシカの場合ですが、シカはイノシシに比べて首が長く、さらにオスジカの場合は角が邪魔になります。そこで、体と頭を分けて回転させるようにします。

 手順は、まずイノシシと同様に寝ている下の方の後脚(図①)と前脚(図②)を握ります。そして、背中を軸にして反対方向に回転させます(図③~④)。このときシカの首は体と一緒に回転しません。そこで、シカの頭(オスの場合は角)を握って回転させた方向に向かって捩じり、体全体を体位を変えます。(図⑤~⑥)。

獲物の位置を細かく変えるテクニック

 特に、有害鳥獣駆除で獲物の写真を撮るときなどでは「獲物の位置をちょこっとズラしたい」と思うシーンがよくあります。そういうときは、頭を支点にして後両足を持ち、時計の針のように回転させながら動かします。逆方向に動かしたい場合は、お尻を支点にして前両足を持ち、反時計回りに動かします。
 頭を支点にした回転と、お尻を支点にした回転を交互に行うことで、少しずつ前進させることも可能です。 「引っ張り道具を再設置するのはちょっと面倒!」というときは、この方法で移動させるとよいでしょう。

獲物を袋に入れる方法

 獲物を引っ張るときは、体表についた血痕や泥、ダニなどが地面や道路に付かないように、袋に入れておくと安心です。また、袋に入れておくと地面との摩擦を減らすことができるので、引っ張りやすくもなります。
 こういった獲物を丸ごと袋に入れる作業も、獲物をひっくり返す方法を応用すれば一人でできちゃいます!是非やり方を覚えておきましょう。

①    お尻を少し浮かせて、袋に身体の一部をいれる。

②    表側の袋をできる限り引っ張って、獲物にかぶせる。

③    背中を軸にして獲物をひっくり返す。

④ 表側の袋をできる限り引っ張って獲物にかぶせる。

⑤ ③~④を繰り返えして、獲物を袋に入れる。   

屠体を引っ張り上げる方法

 さて、これまでは獲物を水平方向に移動させる技術についてお伝えしてきましたが、もうひとつ、引っ張り上げる方向(垂直方向)に移動させる技術も必要になります。

トロ舟に獲物を載せる方法

 トロ舟とは、主にプラスチックで作られた底の浅い容器の名称です。もともとはセメントや水、砂を混ぜてコンクリートなどを作るための道具なのですが、狩猟の現場では獲物を車に乗せるときの台としてよく使われます。獲物をそのまま車の荷台に乗せたら、泥や血、ダニなんかで汚れてしまいますからね。
 このトロ舟に獲物を入れるときは獲物を持ち上げる必要があります。この距離はわずかではありますが、垂直に持ち上げるとなると、とっても大変!そこで、獲物を持ち上げることなくトロ舟に入れるテクニックを利用しましょう。

① トロ船を獲物の背中にくっつけて立てかける。獲物の背中を少しトロ船にひっかけておくとやりやすい。

② 獲物の両足を持ち、背中を軸にして反対側に押す。

③ トロ船ごと押し倒すように押し倒す。

④ 鹿の場合は、頭を身体の方に曲げるとコンパクトに収まる。

 トロ舟への入れ方については、動画でもご確認いただけます。よろしければご覧ください。

トロ舟に入った獲物を荷台に乗せる方法

 トロ舟に乗せた獲物を軽トラの荷台に乗せるときは、アルミ製のラダーレールが便利です。ラダーレールとは、農業用の耕運機やバイクなどを荷台に乗せるための道具で、ホームセンターなどで購入できます。田舎では結構どこの家にもあるので、お借りできるのであればご厚意に甘えましょう。

ラダーやポリカーボネート板を使う

ラダーレール以外にも、アルミ製のローラーコンベアや、ラダーレールにポリカーボネート製の波板をくっつけたもの、またはコンパネを利用される人もいます。

トロ舟をレールの上で滑らせる

 乗せ方は単純に、ラダーレールを荷台にかけて、その上をトロ舟ごと獲物を滑らせるだけです。これらは摩擦が少ないので楽に引き上げることができます。
 荷台に一気に引き上げられなかった場合は、トロ舟が滑り落ちてくるので注意が必要です。私は力がなく背丈もないので、一気に荷台に引き上げることができません。なので、途中で獲物が止まってくれるように、あえて摩擦のあるラダーレールを利用しています。

設置に手間とコストがかかるが便利なクレーン

軽トラに乗せるクレーン

 ベテラン猟師さんの中には、軽トラックにクレーンを付けている人が多くいます。クレーンには、手動巻き上げ型や電動巻き上げ型など色々なタイプがありますが、安いのであれば1~3万円程度で購入できます。
 しかしながら、クレーンの取り付けは設置が大変!荷台に穴をあけたりして固定する必要があります。さらに固定式のクレーンは、取り付けたままの状態では車検が通らない可能性もあるので、取り付け方を工夫しなければなりません。私は・・・クレーンが欲しいのですが敷居が高く、未だ手を出せていません。

低コストだけどコツがいるロープワーク

 私は滑車付きのロープを常に携帯しています。このロープには定滑車と動滑車という二つの滑車(プーリー)がついており、『滑車の原理』で引っ張った力の”4倍”の力を出すことができる道具です。
 この道具は軽トラの荷台に乗せるときではなく、どちらかというと獲物が深い谷底に落ちてしまい、自力では「にっちもさっちもいかない!」という状況で使うための物です。実際に使ったのは2回ぐらいですね。

滑車の使い勝手は、正直微妙

 使い勝手が良さそうな道具ですが・・・・コレ、意外と扱うのが難しい!テンションがかからず滑車からロープが外れてしまったり、よじれて滑車部分に摩擦が加わったりetc…。最初やったときは「ええい、めんどくさい!自力でひっぱりあげてやるわっ!」とヤケになったくらいです。
 しかし、慣れてくると役に立つ道具であることは間違いありません。上手にセッティングできるように、普段から練習しておくのも必要ですね。

お金に余裕があれば持っておきたい小型電動ウィンチ

 獲物を動かせなくなったときに役に立つアイテム。それは電動ウィンチです。コレ、ホントスゴイ!電源を入れると「ウィーーーン」と自動的にワイヤーを巻いてくれるので、自分の力は一切必要ありません。貧乏性の私は未だ購入できていませんが、猟師仲間のものを使わせてもらうことがあります。
 ただ、電動ウィンチは危険な面もあります。例えば、服が巻き上げ部分に絡まって巻き込まれたり、重量オーバーでワイヤーが切れて引っ張っていた獲物が転げ落ちてくる危険性もあります。よって電動ウィンチを扱うときは、まずは慣れた人から使いかたを十分に学んでおくようにしましょう。

まとめ

  1. 獲物をひっくり返すときは、背中を軸にして回転させよう
  2. 軸回転をマスターすれば、獲物を袋に入れたり、トロ舟に乗せたりする作業が楽になる
  3. 荷台に乗せるときは、ラダーレールやポリカーボネート板、クレーン、ウィンチなどのアイテムを活用しよう

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この記事を書いた人

Uri@山本 暁子のアバター Uri@山本 暁子 女性・副業猟師

鳥取県国府町在住の女猟師。昼は猟師の仕事、夜はITを駆使してリモートで仕事をしています。Twitter、Youtubeもやってます。

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