最も古くて新しい狩猟のかたち『罠シェアリング』のすすめ

 近年狩猟業界では、わな猟免許を取得者数が増えています。しかし実際のわな猟には様々な困難があることをご存知でしょうか?実際に「免許は取ったはいいものの、結局1回も出猟しないまま有効期限が過ぎてしまった」なんて人がものすごく多いのが、わな猟のリアルです。そこで今回は、”新しいわな猟”の仕組みとして注目されている、『罠シェアリング』についてお話しします。

この記事の3つのポイント

  1.  わな猟は、猟具の準備から、段取り、罠の設置、見回り、回収まで、やることがとても多い。

  2.  わな猟の負担と獲物をシェアするのが罠シェアリングという活動

  3.  罠シェアに参加できる頻度の格差によって、供出金から報酬を得られる制度がある。


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わな猟は”困難”だらけ!

 皆さんは、『わな猟』に対してどんなイメージを持っていますか?もし、「銃猟よりも簡単に始められる」、「銃猟よりもお金がかからない」、「罠をしかけたら後は、獲物がかかるまで待つだけ」・・・などと思っているのであれば、それは大間違いです!
 確かにわな猟を始めるのは、銃猟(第一種銃猟免許・第二種銃猟免許)を始めるよりも、手間や費用はかかりません。しかしわな猟は、実際に狩猟を始めてからに、様々な”困難”が待ち受けているのです。

わな猟は意外とやる事が多い

 もちろん銃猟にも様々な困難がありますが、『獲物を見つけて・引き金を引く』までが狩猟の範囲なので、”初獲物”は1年目からでも手に入れることができます。しかしわな猟の場合は、『猟具の購入・猟場の確保・わなの設置・見回り・止め刺し』など銃猟に比べてやらなければならないことが多く、一般的に「初獲物を手に入れるまで3年は苦労する」といわれています。

 また銃猟は基本的に猟隊を組んで集団で行う狩猟です。なので、何かわからないことや困ったことがあれば、先輩ハンターが手伝ってくれます(もちろんクセの強い先輩もいますが)。しかしわな猟の場合は基本的には単独で行う狩猟です。なので、止め刺し後の回収や解体、またそれらに必要な装備品や車両の手配は一人で行わなければなりません。

わな猟は意外とお金がかかる
概要
品目
くくりわな
小型箱わな
大型箱わな
猟具わな猟具一式
約¥30,000
(1基¥5,000×6基)
約¥30,000
(1基¥10,000×3基)
約¥150,000
補修部品替えワイヤー(100m)
¥8,420
替えバネ
1本約¥1,000
くくり金具
1つ¥220
替えスリーブ
1つ約20円×3
ワイヤストッパー類
1つ約75円×2
針金
約1,000円
錆止め塗料
約1,000円
工具類スエージャベンチタイプ
¥19,440
ワイヤーカッター
¥3,240
マルチツールボックス
約¥3,000
わな設置道具ハンマー
約¥1,000
剣先スコップ
約¥1,000
ペンチ
約¥600
モンキーレンチ
約1,000円
フレームバッグ
約¥7,000
刃物類止刺しナイフ(剣鉈)
¥10,000
ユーティリティナイフ
¥3,000
引き出し用具電動ウィンチ
約¥10,000
約¥10,000
ソリ
約¥3,000
約¥3,000
小計
¥101,130
¥47,600
¥181,600

 『銃猟よりもお金がかからない』と思われがちのわな猟ですが、実際は猟具や工具類の購入に、最低でも5万円から10万円は必要です。これに狩猟免許取得費用と毎年の狩猟者登録費用を合わせると、実際にわな猟を始めるためには、最低でも9万円はかかる計算になります(※詳細はこちら)。

 工具類の購入を安いメーカーで揃えれば初期費用は抑えられますが、わな猟においては安い猟具を購入するのは絶対にいけません!なぜならわな猟では生きた獲物がかかるからです。
 もしわなが破壊されると、狂暴化した獲物に逆襲される危険性が高く、実際に死亡事件が起こっています。わなに安さを求めるのはバンジージャンプのヒモに安さを求めるようなものです。よってわな猟具は必ず信頼のあるメーカーから購入しましょう。

罠をしかける場所探しが大変!

 日本の野山には、必ず所有者がいます。よって罠をしかける場所は原則として土地の所有者に許可をうけなければなりません。しかし土地の所有者が国(国有林)や市町村(公有林)であれば連絡先がわかりやすいのですが、地元の人が数人で管理していたり、個人で所有している私有林であった場合は、誰に許可を受ければよいかわかりません。よってわな猟は、土地の有権者とコネクションが無ければ猟場探しがとても大変なのです。

わな猟は毎日見回りが大変!

 銃猟の場合は、目の前に獲物が出たら、鉄砲でバーン!と撃っておしまいです。しかしわな猟ではしかけたわなを、原則として毎日見て回らなければなりません
 もちろんあなたが有閑な日々を送っており、毎日山にわなの様子を見に行くことが苦でないのであれば良いのですが、学生やサラリーマン、また都心暮らしの方にとっては、実質不可能ともいえる高い壁です。

獲物の止め刺しが大変!

 銃猟の場合は、引き金を引いた瞬間に決着がつきます。しかしわな猟では、まず、わなにかかった獲物を動けないように保定して、ナイフや電気ショッカーなどで息の根を止める必要があります。しかし怒り狂う野生動物にとどめを刺すのは想像以上に危険であり、止め刺しした獲物を引き出すのも一人では到底できない作業です。

獲物がとれても、その処分が大変!

 イノシシやシカを捕獲すると、1回あたり20㎏から50㎏近くのジビエが手に入ります。これはハッピーな話に聞こえますが、こんな大量の肉を家庭の冷蔵庫に保管しておくことは到底できません!当然、肉は冷やしておかないと腐ってしまうので、獲物が獲れたら早急に貰い先を探さなければなりません。

わな猟をシェアしよう

 これまで述べたように、わな猟は一人で行うのは到底無理ともいえます。しかし近年、わな猟の負担を何人かで分担する『罠シェアリング』という取り組みが注目されています。

猟具をシェアする
くくり罠が沢山

 一人ですべての猟具をそろえると、5万円から10万円以上の出費がかかりますが、他の罠ハンターとシェアすれば、猟具にかかるお金をグッと減らすことができます。 
 第一種銃猟・第二種銃猟の猟具の装薬銃や空気銃は、銃刀法による規制があるため、狩猟免許所持者同士であってもシェアして使うことはできません。しかしわな猟の猟具(罠)は所持に許可は必要無く、また仕掛ける時にネームプレート(鑑札)を付け替えれば、他人の罠を使うことができます
 そのためわな猟では、例えば『ハンターAさんが狩猟をしない時期は、ハンターBさんが代わりに罠を使用する』や、『AさんとBさんがお金を出し合って罠を購入する』といった、猟具のシェアができるのです。

情報をシェアする

 わな猟では、同じ場所にずっと罠をかけ続けていると、獲物が警戒する(スレる)という問題が起こります。そのため罠ハンターは、罠をしかけられる場所の候補をいくつか持っておかなければなりません。
 罠シェアリングでは、猟具のシェアと併せて、『猟場情報のシェア』も行います。これまでの罠猟業界は『おらが山』と言って猟場情報は誰にも教えないのが普通でしたが、野生鳥獣による農林被害が問題になってきている昨今において、猟場情報を共有して効率的に捕獲できる仕組みを作ることは、とても大事な取り組みだと思います。

人手をシェアする
罠シェアリング止め刺し

 罠シェアリングではメンバー同士で、見回りや止め刺し、引き出し、解体などの作業をシェアします。メンバーにはベテランハンターも参加しているため、初心者ハンターは罠の設置方法や止め刺し方法などを実地で学ぶことができます。
 『ベテランハンターが初心者ハンターに狩猟を教える』は、一般的な猟隊と同じです。しかし既存の猟隊は銃猟を行うグループなので、これまで単独猟が普通だったわな猟には猟隊というのはありませんでした。罠シェアリングは、この『わな猟の猟隊』を作ることが、一つの大きな目的だともいえます。

猟果をシェアする

 銃猟の猟隊と同じように、罠シェアリングでも獲物は均等に分配します。罠シェアリングではさらに、普通は捨てられてしまう毛皮や骨、角などの部位も、欲しい人に分配します。

わな猟免許を持っていない人でも参加できる

罠シェア見回り

 罠シェアリングは、わな猟免許を持っていない人でも参加できます。もちろんこれは”名義貸し”という意味ではなく、罠設置の補助や、獲物の運び出し、解体など、わな免許が必要ない作業を分担してくれる人を募集しています。

免許の要らない作業をシェアする

 わな猟の免許は、罠で狩猟鳥獣を捕獲するために必要な国家資格です。そのため、猟場の下見や、罠の製造・修理、獲物の止め刺し、運び出し、解体、”まかない飯”作りなどの作業には、わな猟免許は必要ありません。よって、これら作業を手伝ってくれるメンバーは、わな猟免許が無くても参加できます。

罠シェアリングの運営

罠シェアリングの仕組み

 罠シェアリングは、罠シェアメンバーからの拠出金で費用が賄われます。歳出は、罠シェアグループによって詳細は変わりますが、その内訳と配分は罠シェアリング協会のガイドラインによって決められます。拠出金額も罠シェアリンググループによって変わりますが、1猟期あたり約5万円~8万円です。
 なお、罠シェアリング活動は非営利なので、拠出金の一部を利益にすることはできません。ただし、トレイルカメラや罠通報システムの購入、解体所設置などのために、内部留保として残しておくことは可能です。

罠シェアのスタッフ手当

 罠シェアリングではメンバー内で活動時間に差がある場合、活動時間の差分を人件費として受け取ることができます。例えばメンバー内で20時間罠シェア活動に参加できた人がいた場合、他のメンバーの活動時間の平均が10時間だったとすると、10時間分の活動を拠出金から”スタッフ手当”として受け取ることができます。ただし猟果については、実働時間や拠出金額の大小に関係なく、メンバー全員へ均等に配分されます。

実働0時間の罠シェアメンバーに対する配当

 罠シェアリングでは、『罠シェアメンバーに参加したはいいものの活動に参加できなかった』というメンバーでも猟果の配当を受けられます

拠出金は肉の配当を補償するものではないことに注意

 罠シェアリングでは、拠出金額が肉の配当を補償するものではないことに注意してください。例えばあなたが罠シェアに対して5万円を拠出した場合であっても、5万円相当のジビエが保証されるわけではありません。よって、もし罠シェアリングの活動で獲物を1匹も獲れなかった場合は、猟果の配当は無いことにご注意ください。

罠シェアリングは最も”古い”狩猟システム

 さて、ここまで、罠シェアリングという新しい狩猟のシステムについてお話をしてきました。しかし実を言うと、この罠シェアリングという活動は、まったくもって古い狩猟のシステムだと言えます。
 なぜなら太古の昔の人類は、もともと大勢で協力しあって狩猟を行い、そして猟果を全員で分かち合っていたからです。現在のように、狩猟を単独で行えるようになったのは、銃が発達したここ100年前ほどからであり、新人類誕生から数えておよそ20万年の歴史では、人類は狩猟を分業するのが普通だったのです。
 この罠シェアリングというシステムは、一見、ものすごく先進的な取り組みのように思えますが、実は最も原始的で人間の本質に会った狩猟のシステムなのだと言えます。

おわりに

 今回は、『罠シェアリング』についてお話をしました。罠シェアリングは2014年から始まった活動ですが、現在では東京を始め、神奈川や福岡などでもその取り組みが広がっています。
 チカト商会では、罠シェアリングの窓口を行っています。もし「自分の住んでいるところでも罠シェア活動を始めてみたい!」や、「罠シェアリングに参加してみたい」という方がいましたら、下記お問い合わせからご一報ください。

罠シェアリングについてのご質問はこちら


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