これから狩猟を始めたいと思っている人が真っ先に気になるのが、やはり”お金”の話ではないでしょうか?そこで今回は『狩猟を始めるために必要なお金』について、その内訳を詳しく解説していきましょう。
結論、狩猟を始めるために必要な費用
初 年 度 に か か る 費 用 総 額 | 狩猟免許取得費用 | |||
銃所持許可費用 | ||||
猟具の購入費 | ||||
狩猟者登録に必要な費用(1都道府県ごと) | ||||
損害賠償証明にかかる費用(猟友会共済を利用した場合) | ||||
先に結論から述べると、第一種銃猟(散弾銃などの装薬銃) は20万円、第二種銃猟(空気銃) は17万円 、わな・網猟は9万円が、狩猟を始めるために”最低限”必要な費用となります。これらの詳細については順を追って説明します。
狩猟にの費用は『初期費用』と『毎年かかる費用』で分ける
詳細を述べる前に、狩猟には、狩猟を始めるための初期費用と、狩猟者登録に関わる毎年かかる費用の2種類あることを覚えておきましょう。
また、今回は内訳から外していますが、狩猟免許と銃所持許可は3年ごとに更新を行う必要があり、その際に2万円ほど費用がかかります。
狩猟免許取得に必要な費用
狩 猟 免 許 取 得 | 狩猟免許予備講習 | 講習受講料 | |||
テキスト代 | |||||
狩猟免許試験 | 受験料 | ||||
証明写真 | |||||
初期費用の中で、狩猟免許の取得にかかる費用は、狩猟免許試験受験に5,200円+証明写真代、予備講習の費用に1万円+テキスト代が必要になります。狩猟免許予備講習は狩猟免許の取得に必須なので、必要経費に盛り込んでおきましょう。
2種目からの受験料は少し安くなる
すでに狩猟免許を受けており、他の種目を受ける場合(例えば、第一種銃猟免許を所持した状態で、わな猟の免許を受ける場合)は、受験料が3,900円に減額されます。
市町村によっては補助金を受けられる可能性がある
野生鳥獣による農林業被害が酷い市町村によっては、狩猟免許に関わる費用を補助してくれる場合があります。中には、予備講習の費用に加え、猟銃購入の費用も補助してくれたりするので、現在住んでいる市町村の情報は、必ず掴んでおきましょう!
大田原市狩猟免許取得費等補助金交付要綱
(平成31年1月31日告示第15号)(前略)
第4条 補助金の交付の対象となる経費(以下「補助対象経費」という。)、補助率及び補助限度額は、別表に掲げるとおりとする。
(以下、別表の内容)■ 満額補助される項目
狩猟免許試験事前講習会の受講料
狩猟免許試験の受験料
医師の診断書の作成料
その他(写真等)■ 費用の半分以内が補助される項目
神奈川県県庁HP
猟銃等購入 (ただし上限額 50,000円、1人につき1回限りとする)
https://lg.joureikun.jp/ohtawara_city/reiki/act/frame/frame110002306.htm
猟銃・空気銃所持許可に必要な費用
猟 銃 空 気 銃 所 持 許 可 | 猟銃等講習会初心者講習 | 申請手数料 | |||
射撃教習資格認定 | 申請手数料 | ||||
証明写真 | |||||
医師の診断書 | |||||
身分証明書 | |||||
戸籍抄本 | |||||
火薬譲受許可申請 | |||||
射撃教習受講 | 受講料 | ||||
弾代(75発) | |||||
所持許可申請 | 申請手数料 | ||||
証明写真 | |||||
医師の診断書 | |||||
戸籍抄本 | |||||
住民票 | |||||
身分証明書 | |||||
ガンロッカー | |||||
装弾ロッカー | |||||
第一種銃猟では約12万円、第二種銃猟では約5万円が、銃を所持するための初期費用として必要になります。所持許可に関する申請手数料は全国一律で同じです。なお、第一種銃猟の場合、教習射撃資格申請と所持許可申請の間が3か月以内であれば、同一の医師の診断書と証明写真を使用できます。
医師の診断書は病院によって3,000円~1万円の開きがある
所持許可申請で必要となる医師の診断書(精神保健指定医、または歯科医師以外のかかりつけの医師が作成したもの)は、受診する病院によって3,000円~1万円と開きがあります。よって診断を受ける際は、事前に見積もり額を聞いておき、なるべく安い病院で受けるようにしましょう。
委託保管をする場合は、費用がランニングコストに含まれる
『自宅保管 VS 委託保管。銃はどっちで管理する?』でお話した通り、銃の保管にはガンロッカーなどの保管設備を用意するか、銃砲店などに委託保管をする方法の二択があります。
ガンロッカー・装弾ロッカーは、新品で購入すれば合計4,5万円、中古を探せば合計3万円程度で手に入ります。委託保管の場合は、委託先によって変わりますが、相場としては一カ月2,000円が維持費としてかかります。
猟具の購入
狩猟を始めるためには、散弾銃や空気銃、くくりわなや箱わななどの猟具を購入しておかなければなりません。なお、第一種銃猟と第二種銃猟は、所持許可申請時に購入しておく必要があります。
どんな銃を買うかで費用は大きく変わる
どんな銃を購入するかは趣味的な要素も強いため、費用の上を見ればキリがありません。しかし一般的に、散弾銃の場合は、新銃で20~40万円、中古銃で10~15万円が一般的です。レミントンM800やM1100など市場に多く出回っている中古は、3万円程度で手に入ります。
もし、あなたが先輩ハンターから銃を譲ってもらえるアテがあるのであれば、猟具の購入費用はお礼の菓子折り代程度で済むでしょう。
空気銃は”安物買いの銭失い”に要注意!
ぶっちゃけた話、散弾銃やライフル銃は、100万円でも1万円でも”狩猟”という目的においての性能差はほとんどありません。しかし空気銃の場合は、『空気銃ってどんな銃?エアライフルの種類・仕組みを解説!』のエントリーで詳しく解説したとおり、銃本体の性能で射撃特性がまったく変わってしまいます。
もちろん狩猟の目的がヒヨドリやキジバトのような小鳥であれば、3万円程度の古いエアライフルでも十分です。しかし、キジやカモなどを狙うのであれば、最低でも8万円以上、できれば20万円代のエアライフルを用意しておかなければ、猟果は期待できません。
また中古のエアライフルは装薬銃に比べて故障のリスクが大きいことを覚えておきましょう。特に廃業しているメーカーのエアライフルは、「国内に補修部品が出回ってないから修理ができない!」といったトラブルも多いため、新品エアライフルの価格には”保険”の意味合いがあると、とらえておきましょう。
わな猟の猟具・工具類購入費用
わな猟と網猟の場合は、くくりわなは5,000円、小型箱わなは1万円、大型箱わなは15万円、無双網は3万円ぐらいの費用が必要です。ただし一般的なわな猟では猟具を、5個から最大30個まで用意します。よって、くくりわなであれば最低でも5基(3万円)、小型箱わななら3基(3万円)は見積もっておかなければなりません。
さらに、ビニールバンドや針金などの材料費、穴を掘るスコップ、針金を曲げるペンチ、それら工具類を入れておく作業箱などの出費を考えると、わな猟、網猟を始めるには、トータルで5万円以上の出費は考えておきましょう。
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毎年の狩猟者登録に必要な費用
狩 猟 者 登 録 | 狩猟税 | 通常(道府県民税の所得割の納付を要する人) | |||
※道府県民税の所得割の納付を要しない人 | |||||
※放鳥獣猟区のみの登録 | |||||
※対象鳥獣捕獲員、または認定鳥獣捕獲等事業者(令和6年3月31日まで) | |||||
登録手数料 | |||||
証明写真 | |||||
損害賠償証明 | 猟友会共済(猟友会入会費+共済費) | ||||
※ハンター保険(団体保険に加入) | |||||
※資産証明書、または残高証明書(3000万円以上の資産を保有している場合) | |||||
猟銃用火薬類等譲受許可申請書 | 申請手数料(猟友会に入っている場合は無許可譲受票が交付されるので必要ない) | ||||
狩猟を始めるには、初期費用だけでなく、毎年の狩猟者登録にかかる費用が必要になります。この費用には、狩猟者登録を行うための損害賠償責任証明にかかる費用(毎猟期1回の支払い)と、狩猟税と手数料(毎猟期1回、登録する各都道府県に支払い)に分類されます。
狩猟者登録は都道府県ごとに必要
狩猟者登録に関わる手続き(狩猟税+手数料1,800円)は、狩猟者登録を行う都道府県ごとに行います。例えば、あなたがA県で第一種銃猟を、B県で第二種銃猟とわな猟を行いたいと思った場合、A県には狩猟税 16,500円+1,800円=18,300円、B県には 5,500円+8,200円+2×1,800円=17,300円、合計35,600円が必要になります。
狩猟税には減税措置がある
狩猟税は全国共通ですが、あなたが道府県民税の所得割の納付、すなわち住民税を払っていない場合は、狩猟税が一部減税されます。 この『住民税を払っていない』というのは、例えばあなたが個人事業主で、所得から経費と各種控除額を引いて算出された住民税の所得割額が”0円”になった場合に適応されます。この話がよく分からなかった人は、とりあえずサラリーマンには関係ないとだけ覚えておきましょう。また、狩猟を行う場所が放鳥獣猟区に限る場合、狩猟税が1/4に減額されます。ただし現在、放鳥獣猟区は国内に数えるほどしかないため、基本的には関係ありません。
有害鳥獣駆除の従事者は、令和6年3月末まで狩猟税が1/2に減額
令和元年から令和6年まで、有害鳥獣駆除の従事者や認定鳥獣捕獲事業者従事者は狩猟税が半額になります。これは、平成24年から平成31年(令和元年)までに適用されていた『 対象鳥獣捕獲員等が受ける狩猟者の登録に係る課税免除又は税率の特例措置』の延長で、狩猟税が『全額免税』だった特例措置を『半額免除』となって、令和6年3月末まで継続されるようになりました。
狩猟者登録に必要な賠償責任証明書にかかる費用
狩猟者登録には、狩猟中に他損事故を起こした場合、最低でも3,000万円以上の賠償能力があることを証明する資料を添付しなければなりません。この証明は、猟友会が行っている猟友会共済、保険会社が販売しているハンター保険、または自分の資産を証明する書類の、3パターンがあります。
猟友会共済を利用する場合は、猟友会に入会する
大日本猟友会費 | |||
都道府県猟友会費(東京都猟友会の例。金額は都道府県により異なる。) | |||
支部猟友会費(金額は支部猟友会によって異なる) | |||
※任意のハンター保険(取り扱う都道府県猟友会によって異なる) |
猟友会共済を利用するためには、大日本猟友会、都道府県猟友会、支部猟友会の3つに入会して、それぞれに会費を支払わなくてはなりません。猟友会の会費は、都道府県猟友会、支部猟友会によって、若干値段が変わります。
ハンター保険を利用する場合は、団体で加入するしかない
3,000万円以上の賠償を証明する書類には、猟友会共済証明書以外にハンター保険証券があります。この保険証券は、国内では東京海上日動、三井住友海上火災、損保ジャパン日本興亜などが取り扱っており、保険の賠償内容によって費用は約3,000円~1万円です。
ただしハンター保険は、どこの保険会社も平成22年で個人向けへの販売は終了しています。そのためハンター保険に加入したいのであれば、団体ハンター保険を持っている猟隊などに加えてもらうか、10名程度のメンバーを集めて保険会社に直接交渉するしかありません。
資産の証明は、銀行や証券会社に書類を請求する
自分に3,000万円以上の預貯金や不動産、有価証券などの資産を持っている場合、その資産を担保に狩猟者登録を受けることができます。これらの資産証明書は、預金であれば銀行へ、有価証券などは証券会社へ連絡して、作成してもらいましょう。
自分の資産を担保にする場合は、多額の賠償金を覚悟しなければなりません。もし万が一、誤射で相手を死亡させた場合は、1億円以上の賠償命令が下ることもあるので、できるだけ猟友会共済かハンター保険を利用することをお勧めします。
まとめ
- 狩猟者になるためには、初期費用+毎猟期ごとの費用のが必要になる
- 最低限必要な初期費用は、第一種銃猟で16万、第二種銃猟で13万、わな・網猟で7万。ただし、市町村によっては補助金制度がある
- 毎年かかる費用は、第一種銃猟で3万4,000円、第二種銃猟で2万円弱、わな・網猟で2万3,000円ぐらい必要。ただし、減税措置などで安くする方法がある