マガモやカルガモなどの水鳥を銃で捕獲するカモ撃ちは、銃猟における人気の高い分野です。しかし、カモ撃ちは大物猟のように教えてくれる人が少なく、初心者にとっては敷居が高い狩猟でもあります。今回は、カモ撃ちの基本から具体的な猟法、作戦の立て方まで詳しく解説します。
『カモ撃ち』とは?

日本には毎年10月上旬ごろから、北国から多くの水鳥が越冬のために飛来します。これらの水鳥は古くから冬場の貴重な食料として重宝されており、太古の時代からカモ猟が盛んにおこなわれていました。
大昔は「もち」を使って捕獲していた

近代以前のカモ猟は、主に粘着性の樹脂、いわゆる「とりもち」が使われていました。このとりもちは、網や棒(はご)に塗ってカモが集まる水場に浮かべておき、水鳥を絡め取って捕獲をしていました。
とりもちを使った猟法は、現在では乱獲につながる恐れがあるため違法となっています。現代におけるカモ猟法は、散弾銃かエアライフル、または無双網や投げ網などに限られています。この中で銃を使用して水鳥を捕獲する方法が「カモ撃ち」と呼ばれています。
広告
『飛ぶカモ』に効果的な散弾銃

「カモ撃ち」と聞いてまず思い浮かぶのが、散弾銃を使った方法です。飛び立つカモに向かって散弾を撃つスタイルは、狩猟ならではのスリルと迫力があります。
飛んでいるカモを狙って撃つのはかなり難しいですが、うまく命中してカモが「ボチャン!」と水面に落ちたときの達成感は格別です。
散弾は〝浮いているカモ〟には効果が薄い

ただし、散弾銃は水面に浮いているカモには効果が薄いことがあります。羽を閉じているカモは羽が三層に重なっており、散弾の威力が急所まで届きにくいためです。至近距離から撃てば効果がある場合もありますが、確実に仕留めるのは難しいのが現実です。
『浮いているカモ』に効果的なエアライフル

エアライフルを使ったカモ撃ちは、スコープを使って遠距離から狙い撃つスタイルです。特に近年主流になっているプレチャージ式エアライフル(PCP)は弾速が速く、威力も高いため、羽に当たっても貫通して内臓にダメージを与えることが可能です。
エアライフルで〝飛んでいるカモ〟を狙うのはほぼ不可能
エアライフルは水面に浮いているカモを正確に狙える一方で、飛んでいるカモを撃ち落とすのは難しいとされています。飛んでいるカモを撃つには「偏差射撃」と呼ばれるテクニックが必要ですが、エアライフルは単発であるため、高速で飛ぶカモへの対応はほぼ不可能です。
ショットガンナーとエアライフルマン
カモ撃ちには、ショットガンナー(散弾銃射手)が用いる『飛んでいるカモを撃つ猟法』と、エアライフルマン(エアライフル射手)が用いる『水面に浮いているカモを狙う猟法』という性質の異なる猟法があります。
カモ撃ちでは、ショットガンナーとエアライフルマンのそれぞれの特性に応じた作戦を立てることが重要になります。
広告
〝豪快さ〟がたまらない散弾銃によるカモ猟

散弾銃でのカモ撃ちは、〝豪快さ〟が最大の魅力です。一斉に飛び立つカモに向かって連射する瞬間は、大物猟では味わえない爽快感があります。
油断しているカモに〝奇襲〟をしかける

散弾銃によるカモ猟では、奇襲作戦が有効です。ため池や防波堤などの死角を利用してカモに近づき、飛び立った瞬間に撃つ方法です。
この作戦は単独でも実践できるため、他の狩猟者とスケジュールが合わない場合でも挑戦しやすいのが特徴です。
集団で行う「カモの巻き狩り」

集団で行う場合は、カモの巻き狩りも効果的です。「勢子」と呼ばれる追い出し役がカモを驚かせて飛び立たせ、飛行ルートに隠れている「タツマ」が迎撃するスタイルです。
これはイノシシやシカの巻き狩りに似ているため、「カモの巻き狩り」と呼ばれています。
広告
ガン&ラン

カモ撃ちではガン&ランも重要なポイントです。カモ撃ちでは、その日、どこの水場にカモがいるかは現地に行くまでわかりません。そのため、猟場に到着したらすぐに行動し、獲物がいなければ素早く撤退して次の猟場に移動します。
この〝展開の速さ〟がカモ撃ちの醍醐味です。イノシシやシカの巻き狩りでは、丸一日山の中で〝待ちぼうけ〟を喰らうことがよくありますが、カモ撃ちでは何度も射撃の機会が訪れます。このスピーディーな展開が、カモ撃ちの魅力の一つです。
効率よく猟場を回るためにルート設計をしておく
散弾銃でのカモ猟は、1日のうちになるべく多くの猟場を回れるように、猟場の場所と巡るルートをあらかじめ決めておきましょう。ルート設計にはGoogleマップを使うと便利です。猟期前に猟場の場所を下見しておき、Googleマップに登録して効率的なルートを設計しましょう。

一部地域では「沖撃ち」や「鳥屋撃ち」もある
散弾銃によるカモ撃ちは、主に「奇襲作戦」と「巻き狩り」になりますが、地域によってはまったく別の方法で行われることもあります。
例えば、沿岸部では小舟を出して、海の上に浮かんでいるカモを撃つ「沖撃ち」が行われます。この作戦では、エンジンを切った状態で潮の流れだけでカモの群れに近づく必要があるため、船頭さんの操船技術が重要になります。
また、大型河川の近くでは、「デコイ」と呼ばれるカモの置物と「コール」と呼ばれる笛を使って、カモをおびき寄せる「鳥屋撃ち」という猟法も行われます。

広告
エアライフルによるカモ猟は、忍び寄って狙撃!

エアライフルによるカモ猟は、散弾銃を使ったダイナミックな猟とは異なり、繊細で慎重な駆け引きが求められます。カモが警戒して飛び立ってしまう「フライトディスタンス」を超えないように接近しつつ、自分の射撃技術を駆使して狙撃を成功させる必要があります。
基本スタイルは『流し猟』

エアライフルでのカモ猟の主なスタイルは流し猟です。車やバイク、自転車などを使って猟場を巡り、カモを発見したら狙撃します。
散弾銃を使用する場合は、ため池や野池など山間部に入ることが多いですが、エアライフルの場合は河川敷や用水路、田んぼや畑など、道路からアクセスしやすい場所がメインの猟場になります。そのため、ちょっとした空き時間でもカモ撃ちが楽しめるのが、大きな魅力です。
精密射撃のウデが必要

カモは一定の距離まで近づくと警戒して飛び立ってしまいます。この飛び立つ距離をフライトディスタンスと呼びます。
エアライフルの場合、狙撃距離が遠くなるほど、体の震えや風の影響(ドリフト)が弾道に誤差を生じさせるため、射撃が難しくなります。そのため、フライトディスタンスと射撃の腕前(射程距離)とのすり合わせが肝になります。
射撃のウデか、近寄る技術か
マガモやカルガモといった大型カモのフライトディスタンスは70~120mほどです。よって、エアライフルでは、この距離で精密な射撃を行える〝射手のウデ〟が必要になります。
ただし、射程距離が短くても、カモを捕獲できないわけではありません。例えばスプリング式エアライフルの場合は、最大射程距離は50m程度です。そのため、カモに飛ばれないように〝ジリジリと距離を詰めていく技術〟があれば、射程が短くてもカモを捕獲することができます。
このジリジリと距離を詰めるためには「猫が獲物を狙うような、じっくりと時間をかけた動き」が必要になります。また、「カモ達を直視しない」や「変装する」といった〝小技〟も必要になります。
広告
混合チームでも楽しめる

カモ撃ちには、ショットガンナーとエアライフルマンで狩猟のスタイルが変わります。しかし、この両者でグループを組んで、行うこともできます。
エアで飛ばして散弾で撃ち落とす

「混合チーム猟」は、最初に遠くに浮かんでいるカモにエアライフルマンが発砲します。すると、その音に驚いた他のカモが一斉に飛び立つので、ショットガンナーが飛び立ったカモを撃ち落とします。
この作戦では、エアライフルマンがどの方向から発砲するかが成功のカギとなります。カモがどの方向に飛び立つかを予測し、風向きや猟場の地形を踏まえた戦略的な配置が求められます。
止め刺し役としてもエアライフルマンは活躍

エアライフルマンには「止め刺し」の役割もあります。散弾で撃ち落としたカモは〝半矢〟になって、泳いで逃げることがあります。このとき、回収用の猟犬(レトリバー)がいれば泳いで回収してくれますが、散弾銃しかない場合は葦の中に逃げられてしまい、見失ってしまいます。
このような場面では、精密かつ、泳いでいるカモにも弾が貫通するエアライフルが効果的です。半矢のカモを追い回す必要が無くなるため、時間の短縮にもなります。
広告
まとめ
- カモ撃ちはショットガンナー(散弾銃)とエアライフルマン(エアライフル)で戦略が異なる
- ショットガンナーは、奇襲か巻き狩りでカモを狙う。豪快な狩猟が魅力
- エアライフルマンは、飛ばれないように近づき狙撃する。慎重な駆け引きが魅力
- カモ撃ちは、ショットガンナー・エアライフルマンの〝混合チーム〟でも楽しめる
次の記事を見る

まとめ記事にもどる
関連記事



