カモ猟における最も重要なこととは何でしょうか?「飛んでいるカモを撃ち落とす射撃のテクニック!」・・・確かにそれも大事なことですが、やはり”最も”大事なのは作戦を立てることです。
そこで今回はカモ猟における戦略立案の基本、そして作戦を立てるうえで役に立つGoogleマップの活用法についてお話をしたいと思います。
カモ猟における作戦行動が重要な理由
カモ猟では、いくらベテラン射手が参加していても、射撃体勢に入る前に飛び立たれてしまっては、捕獲は叶いません。
そこでカモ猟では、あらかじめ『地理』や『カモが居そうな場所』を頭に入れておき、カモがどの方向に飛んで行くか、また、それに対して人員をどのように配置するか、といった作戦立案が大事になるのです。
近隣から“通報”されないようにするため
カモ猟の作戦において絶対に把握しておかなければならないのが猟場の地理です。狭い国土の日本では『狩猟ができ、かつ、人の生活エリアでない自然の水辺』というのはほとんどありません。カモを捕獲してホクホクして車に戻ると、そこには赤色灯を焚いたパトカーが…
「近隣住民から通報があったんですが~」
なんてことをお巡りさんにいわれた日には、いくらその後無罪放免になったとしてもブルーな気分になってしまいます。
これはとても大事なことなので初心者の方はよく覚えておいていただきたいのですが、狩猟は“遊び”です。遊びでイライラしたり嫌な気分になることは絶対に避けなければなりません。
カモに発見されないようにするため
カモ猟では射撃の安全面だけでなく、獲物であるカモたちに早期警戒されないようにするためにも、作戦行動が必要になります。
カモの警戒レベル
カモのような大型鳥は、小鳥のように警戒心を覚えてもすぐに飛び立つことは無く、段階的に警戒心を強める行動をとります。そこでカモ猟では、散弾銃の短い射程(約50m程度)に入るために、警戒されないように近づく必要があります。
奇襲が成功すると混乱状態におちいる
また、早期警戒の時間が短ければ短いほど(警戒レベル0から、急に3に移行する場合)、群れの中には状況を把握しきれずに混乱するカモが多くなります。このような混乱ガモたちは、
- 飛び立つタイミングが遅れる
- 先に飛び立った群れから外れて飛行する
- 再び同じ池に舞い戻って来る
といった行動を起こすことが多く、ハンターにとってみれば絶好のターゲットになります。
こういった混乱ガモを多く作り出すためにも、ハンターが早期発見されないようにする作戦行動が重要になるのです。
飛ぶ方向が予想しやすくなる
浮いているカモを散弾銃で撃っても、しとめることはできません。なぜなら、水面に浮いているカモは風切羽、雨覆羽、羽毛という3層の羽で体を守っているため、よほど近距離or頭部へのラッキーショットが出なければバイタルを撃ちぬくことはできないためです。そこで散弾銃によるカモ猟では『飛ばせて撃つ』が基本戦術となります。
頭上を飛ぶカモを撃つと回収も楽
ハンターにとって最も理想的なカモの飛び方は、射手の頭の上を通過することです。このような飛び方は、相手が向かってくるので狙いやすく、また、弱点である腹を見せているので撃ち落としやすく、さらに、撃ち落とすと目の前に落ちてくるので回収がとても楽になります。
カモの進路を予想する方法
このようにカモは、正面から飛んでくるのが最も理想的で、次に横っ腹を見せる飛び方が理想的です。そこで、作戦行動によってカモが飛んで行く方向をある程度コントロールすることが重要になります。
カモの飛び方は、種類によっても異なりますが、ある程度の習性があります。例えば、
- 風上に向かって飛び立つ
- 高度が足りない場合は、周囲の障害物(木など)を避けるように飛ぶ
- 始めに飛び立ったカモに誘導されて、他のカモも飛行経路を決める
- 旋回しながら高度を上げる
などで、作戦立案ではこの習性を逆手にとって、ハンターに有利な方向に飛ばすようにします。
役割分担
グループで行う大物猟(巻き狩り)では、獲物を追う『勢子(せこ)』と、山の中で待ち伏せをする『タツマ』といった役割が存在します。そこでグループで行うカモ猟においても同様に、あらかじめ役割を決めておくことでスムーズな作戦行動が行えるようになります。
ポイントマン(偵察手)
カモ猟の作戦の肝となるのが、偵察を担当するポイントマンです。ポイントマンは、他のメンバーに先駆けて猟場に近づき、高倍率のスコープを使って水面の様子を探ります。このとき「獲物は居るのか?」だけでなく、「どこに、どんな種類のカモが浮いているか」を把握する必要があります。
ポイントマンは瞬時のカモ判別能力が必須
そのためポイントマンは、カモの種類を正確に見分ける知識・技術も重要になります。トモエガモやカイツムリ、シマアジ、オシドリといった非狩猟鳥は、慣れていないと見分けがつきません。よってポイントマンは、鳥獣判別長けた人が行うのが鉄則です。
猟場のことをよく知っており、動き回れる人が適任
ポイントマンは猟場の偵察だけでなく、威力偵察も行います。カモは水際に垂れ下がった木の影や、葦の中に隠れていることも多く、偵察では見つけきれないときもあります。
そこでポイントマンは、草木を踏んで音を鳴らしながら池の周りを歩き、カモを飛び立たせる役割を担います。このとき、ただ単純に歩き回るだけでなく、「獲物がどこに潜んでいるか?」、「どの方向から近づけば、仲間が待機している場所に飛ばすことができるか?」を、よく意識して行動しましょう。
なお、大抵の水場は周囲がドロドロになっています。ポイントマンは替えの靴と靴下を持っておきましょう。
ショットガンナー(射手)
ショットガンナーは、散弾銃を構えておき、飛んできたカモを撃ち落とす役割です。基本的には、ポイントマンが獲物のカモを発見した連絡を受けたら、リーダーが指示した持ち場で待機します。
複数のショットガンナーで包囲網を作る
複数人のショットガンナーがいる場合、それぞれの射程範囲を決めておきましょう。このように射手が戦列を組んでいる範囲を「弓」と呼び、人員を展開することを「弓を張る」と呼びます。
先にも少し触れましたが、混乱しているカモは旋回をしながら元の池に戻ってくることもあります。そこでショットガンナーは、実包を素早く再装填できるバンダリアやガンベルトを装備しておくとよいでしょう。
エアライフルマン(遠距離射手)
基本的なカモ猟は、ポイントマンとショットガンナーの二役が居ればOKですが、チームに混ぜておくと作戦に広がりが出るのがエアライフルマンです。
エアライフルは強力な単発弾を遠距離から発射することができます。そのため、浮いているカモの群れに対して初撃を加える役として最適です。ポイントマンがエアライフル持ちというチーム構成も面白いでしょう。
エアライフルマンがいると猟場の幅が広がる
またチームにエアライフルマンを混ぜておくと、猟場選定の幅が広がるというメリットがあります。カモ猟は一般的に1日に猟場を何十カ所と巡る「ラン&ガン」を行うわけですが、中には散弾銃が撃てないような猟場にカモが群れていることもよくあります。
そこでこのような猟場でエアライフルマンが狙撃を行い群れを追い散らすことで、散弾銃が撃てる猟場に群れを移動させることができます。
作戦立案
カモ猟の作戦は、単純に「こうしましょう」というのはありません。猟場が開けているか・森に囲まれているか、土手になっているか・視線を遮るものが無いか、カモの居る位置が近いか・遠いか・・・など、様々な要因で作戦は変わってきます。
しかしカモ猟の作戦は、ざっくりと3つに分類が可能です。ここではその分類について見ていきましょう。
奇襲作戦
農業用水を貯めるために作られてた人工的な池(溜池)には、水をせき止めておくために土手が作られています。土手の下はカモが浮いている水面から死角になるため、チームはリーダーの合図で一斉に土手を飛び出して射撃をします。
溜池など土手がある水場で有効
このような奇襲作戦は、池幅が50m以内の比較的小さな猟場が最適です。獲物までの距離が近くなるため、初心者でも当てやすく落としやすい作戦だと言えます。
奇襲作戦を行うときは、移動と装填のタイミングに注意しましょう。カモの聴力は人間並みと言われていますが、さすがに「ドヤドヤ」と音を立てていては気付かれてしまいます。
よって、作戦展開をするさいは私語厳禁!準備完了や索敵情報はハンドジェスチャーによって行いましょう。猟場が狭いので、安いトランシーバーを使っても良いでしょう。
飛び立ち切るまで時間があるので、焦らずに狙撃する
弾の装填は、土手から飛び出した後に行いましょう。土手は足場がぬかるんでいたり、朝露に濡れた草で足を滑らせたりすることもあるので、装填したまま土手を移動してはいけません。
先にも述べた通り、奇襲が成功するとカモたちは何が迫っているのかわからず混乱し、飛び立つまでに数秒の間が発生します。さらに、飛びあがった後も軌道に乗るまでに時間がかかるため、その間に薬莢の装填を行い、飛んできたカモに散弾を浴びせかけましょう。
待ち伏せ作戦
待ち伏せ作戦(アンブッシュ)は、ポイントマンが威力偵察を行ってカモを飛び立たせ、ガンナーが飛んできたところを撃ち落とす作戦です。ガンナーは土手の裏や茂みの中に身を伏せておき、ポイントマンの合図があるまで待機しましょう。
ポイントマンが飛ばせ、ショットガンナーがしとめる
ポイントマンは獲物が飛び立ったときに、大声でその旨を連絡しましょう。茂みの濃い猟場では、カモがどこから飛び立ったか見えない場合が多いので、無理に発砲してはいけません。むしろ、旋回して戻ってくる可能性もあるので身を潜めて迎撃の準備を整えましょう。
ガンナーはポイントマンから「カモが飛んだぞ!」と声が聞こえたら、据銃して飛んでくるカモを待ち受けます。
単独作戦
自然にできた野池などには土手が無く、進入ルートが狭くて弓を張れないような猟場も多々あります。こういった場合は、射撃の腕に自信がある人が単独で侵入し、驚いて飛び立ったカモを撃ち落とす作戦が有効です。
または、エアライフルマン単体や、エアライフルマンとのツーマン体勢で挑むと良いでしょう。
カモ猟場地図を作ろう
カモ猟の作戦を立てるためには、猟場の情報収集が何よりも重要です。この情報を一人で調べて回っても良いのですが、折角なのでGoogleマップを利用してチームでカモ猟マップを作るというのはいかがでしょうか?
Googleマップを活用しよう
世の中には様々な地図アプリが存在し、機能も様々です。その中で『猟場情報を仲間と共有する』という目的に一番扱いやすいと思われるのが、Googleマップです。そこで今回はGoogleマップを利用した猟場情報の共有についてお話をします。
なお、Googleマップで情報共有をするためには、まず、Googleのアカウントを作る必要があります。アカウントの作り方については、検索をして調べてみてください。
またGoogleマップのユーザインターフェイス(操作方法など)はしばしば変更されるので、その点ご了承ください。
ステップ① 猟場を登録する
まず、Googleマップを開いて、カモ猟の場所をタップ(PC版ではクリック)しましょう。
次に「ラベル」(PC版では「ラベルの追加」)をタップし、ラベルの追加画面を開きます。ここに入力した文字は、地図アプリ上でピンの横に表示されます。「池1」、「池2」とか、池の正式名称とかだと後々わかりにくいので、メンバー内で通し名を決めておくと良いでしょう。
余談ですが、猟師が猟場に通し名を付けるときは、たいてい「○○さんが撃ち損じた山」や「××さんが滑落した谷」といった、ロクデモナイ思い出のもとで名前が付けられます。
ステップ② カモ猟場のリストを作成する
場所の登録が終わったら、次に「保存」をタップしましょう。
「リストに保存」が表示されているページで、「新しいリスト」をタップ。
「新しいリスト」の最上にリストの名前を入力します。ここもわかりやすいように「カモ猟場」としておくと良いでしょう。
一度リストを登録しておけば、次からは「お気に入り」、「行ってみたい」、「スター付き」といった既存のリストに加えて、新しく入力したリストが出てきます。これをタップすれば場所がリストに登録されます。
任意でリストの説明を入れてから、「共有済み」に設定します。こうすることで、Googleアカウントを持った人たちと、登録した猟場の場所を共有することができます。
共有する場所はリストごとに共有・非共有を分けることができます。なので、プライベートな猟場や秘密の猟場は別のリストを作って「非公開」に設定しておきましょう。
なお、共有・非共有は、後で設定をしなおすことが可能です。
ステップ③ 猟場のメモを登録
猟場をいくつも登録していると、「あれ?この猟場って何だったかな?」といったことが良く起こります。そこで、登録した場所のメモ機能を使って、猟場の詳細を記録しておきましょう。
まず、メモを入れたいピンをタップして「保存済み」をタップします。
すでにリストに登録した状態だと、チェックボックスの下に自由記述欄が出てきます。そこでここに猟場情報をメモしましょう。
メモには、射撃する上での注意点(射撃方向など)、カモがいつも群れている位置、回収の方法などを書いておくと良いでしょう。
登録したメモを見るときは、登録したときと同じ要領でピンをタップして「保存済み」をタップすることで表示されます。
まとめ
- カモ撃ちで重要なのは作戦を立てること。地理、人員を工夫して、作戦を練ろう
- カモ猟では、ポイントマン(偵察手)、ショットガンナー、エアライフルマンで動き方が異なる
- 猟場情報の共有や蓄積は、Googleマップを利用しよう