私は日々、狩猟に関する色々なご質問をいただいて回答しているのですが、中でも多い質問のが私が使用している6mmライフル弾についてです。「そんな豆鉄砲で大物をしとめられるの?」と思う人も多いようですが、私はこの6mmが日本の鬱蒼とした山の中では“最適解”に近いのではないかな?と思っています。今回はかな~りマニアックな話になりますが、この6mmライフル弾についてわかりやすく説明をしていこうと思います。
(初心者向けの話)ライフル弾の仕組み
本題に入る前に、まずはライフル弾の仕組みについてお話をしたいと思います。すでにライフルを所持されている方には当たり前の話なので読み飛ばしてください。
弾頭(バレット)
よくアニメや漫画では、発射された弾がケースごと飛んで行くシーンがあったりしますが、あれは間違いです(笑)。実際は、上の写真のような三角錐状の金属片が銃口から発射されています。この金属片を弾頭と言い、英語では”Bullet”(バレットやブレット)と呼ばれています。
ライフルの口径は弾頭サイズで決まる
ライフルの弾頭は、銃身に刻まれたライフルリングという『らせん状』の溝を通りながら発射されていきます。このライフリングの『山から山』にかけての長さを、その銃の口径(カリバー)と言います。
この口径はライフル銃の種類を決める重要な値になっており、例えば『0.22インチ(5.5mm)』だと「22口径ライフル」、『0.3インチ(7.62mm)』だと「30口径ライフル」といった具合に呼ばれます。
火薬(ガンパウダー)
火薬は弾頭を発射するためのエネルギー源です。この火薬が燃えて瞬間的に高圧ガスになることで、弾頭を押し出して発射します。火薬にも色々な種類がありますが、銃の弾に使う火薬は花火に使われるような黒色火薬ではなく、写真のような無煙火薬と呼ばれるタイプになります。
銃の弾はレシピ通りに火薬を詰める
銃の火薬には様々なメーカーと種類があり、火薬によって燃焼する時間や発揮するパワーなどが異なります。そこで火薬を選ぶさいは、使用している弾頭との相性をメーカーから出されるデータシートを見ながら考えていく必要があります。
ちなみに私は『IMR4350』という名前のライフル用火薬を主に使っていました。しかし最近、使用している軽量弾頭との相性が微妙な気がしてきたので、今は色々と模索しています。こういった火薬選びもライフル射撃の楽しみの一つだったりします。ニッチな世界ですよね~(笑)
雷管(プライマー)
雷管(らいかん)は火薬に着火するための部品です。『火縄銃』の時代は、燃えている縄で火薬に直接火を付けて発射していましたが、現在ではこの雷管を撃針で叩いて出る火花によって火薬に着火しています。
雷管のパワーだけでは弾は飛ばない
余談ですが、よく「弾を落とすと爆発して危険なのでは?」と尋ねられることがあるのですが、弾は銃に装填されていなければ、そんなに危険な物ではありません。例え、もし落とした先に尖った石があって偶然雷管が叩かれたとしても、「パンッ!」というカンシャクダマみたいな破裂音と共に弾頭が「ポロ」っと落ちるか、薬莢が裂けるぐらいにしかなりません。もちろん、だからといって弾を雑に扱ってはいけませんが、過度に危険視する必要もありません。
薬莢(ケース)
薬莢(やっきょう)は、弾頭、火薬、雷管をセットにするための入れ物です。この薬莢に火薬と雷管を詰めて最後に弾頭をギュッと圧着し、ライフル実包(ライフルカートリッジ)にします。
この作業はリローディングと呼ばれ、多くのライフルマン(ライフル銃で獲物を追うハンター)は自宅にリローディングキットと呼ばれる専用の器具を置いて手作り(ハンドローディング)しています。
ライフル薬莢の部位の説明
ライフル弾の薬莢には、上のイラストのように各部に名称が付いています。すべて覚える必要はありませんが、弾頭を圧着するマウス(口)、その下のネック(首)、盛り上がったショルダー(肩)、そしてボディ(体)の名称だけは、これからのお話の中で出てくる言葉なので覚えておいてください。
ライフル弾が発射される原理
ライフルの薬莢がなぜこのような形をしているかと言うと、銃身が上のような構造をしているからです。薬莢が銃身の薬室(チャンバー)に固定され、撃針(げきしん)が薬莢のお尻にある雷管を叩くことで弾頭が飛び出していきます。
精度を追求するための薬莢改造
ライフルマン達が射撃をしていると「もう少し精度を上げたい」や「風の影響を受けにくくしたい」、「燃焼効率を上げたい」、「威力を増やしたい」といった、様々な欲求が生まれてきます。そこで、世の飽くなき探究心を持った方々は、薬莢のネックを伸ばしたり、縮めたり、マウスを広げたり、縮めたり、ショルダーの傾きを広げたり、すぼめたり・・・・と、色々な工夫をしながら、隙間の調整と弾頭の飛び方(弾道特性)の関係を繰り返しテストして来ました。
薬莢は細かなカスタマイズで名前が変わる
上の図は、その薬莢改造の代表例です。一番左の『30-06スプリングフィールド』という薬莢は1906年にアメリカ陸軍で作られた薬莢ですが、これの口径とネック、ショルダーを少し絞って改造したのが『270ウィンチェスター』という薬莢です。それとは逆に、口径とショルダーを少し広げて作られたのが、右端の『338-06Aスクエア』という薬莢になります。
ライフルの精度を極める話は・・・またいずれ
これらの薬莢はリローディングをするさいも、薬莢全体をリサイジングするフルレングスダイではなく、ネック部分だけリサイジングするネックサイザーダイを使用し、ライフリングに弾頭が当たるランドタッチからほんの少しクリアランスをとってジャンプさせて・・・
え?ルー語みたいな言葉が多すぎてわけが分からなくなった? ・・・ま、まぁ今回は、『ライフル銃は、精度を追求しだすとキリが無い』とだけ覚えておいてください(笑)。
(初心者向けの話)日本の狩猟で使えるライフルの口径
今回の主題は『24口径ライフル弾』なのですが、もうちょっとだけ!『日本の狩猟において使用できるライフルの口径』について説明をさせてください!
”有害鳥獣駆除”の話はひとまずおいておいて、日本の狩猟制度では『5.9mm(23口径)以下、または10.5mm(41口径)以上のライフル銃は狩猟に使えない』という決まりになっています。
大口径(LB)ライフル
これはなぜか?まず、10.5mm以上の口径のライフル弾は威力が強すぎるからです。例えば、12.7mm(50口径)のライフル弾に『12.7x99mm NATO弾』というのがありますが、これは戦車の装甲をブチ抜く対物ライフルと呼ばれる銃に使われます。こんな弾をシカやイノシシに向かって撃ったらどうなるでしょうか?間違いなくバラバラの血煙に・・・こんな威力の弾は狩猟に使っても意味がないうえに危なっかしいので規制されています。
一般的に、口径が10.5mm未満の30口径あたりのライフル銃は「ラージボア(LB)」、または「大口径ライフル」と呼ばれています。
小口径(SB)ライフル
逆に、5.9mm以下の口径のライフル弾は威力が低すぎます。例えば、5.59mm(0.22インチ)の口径を持つライフル弾に『22ロングライフル弾』というのがありますが、これは的撃ち競技に使われる弾です。的に「パスッ」と穴が開いたら良いような弾を、狂暴なイノシシやクマに向かって撃ったらどうなるでしょうか?・・・よほど当たり所が良くなければ、逆上した獣に襲われかねません。そこで、狩猟者の危険防止や、野生動物をむやみに傷つけることを防ぐ目的で規制されています。
5.9mm以下のライフル弾は「スモールボア(SB)」、または「小口径ライフル」と呼ばれています。上の写真のちっこいのが『22ロングライフル弾』の薬莢、左が狩猟に使う大口径ライフルの薬莢ですね。その大きさの違いがよくわかるかと思います。
本土のライフルマンに人気の弾
狩猟では、猟場や獲物で使うライフルをセレクトするのが一般的ですが、一般的には7.62mm(30口径)が人気です。本州では『308ウィンチェスター』という弾を使う人が最も多く、次に『30-06スプリングフィールド』が多いと思います。
3006、308は流通量が多くて安い
なぜにこの弾が日本でよく使われているのか?それは安いからです。まず、308ウィンチェスターという弾は別名『7.62x51mm NATO弾』と呼ばれており、ベトナム戦争時代に世界中で生産されたという歴史があります。
そのためこの薬莢は世界中に在庫があり、値段も安い。弾が安く手に入れば、その規格に合うライフル銃が沢山作られるため、現在のライフルマンの多くは、この308ウィンチェスターを使っているというわけです。
30-06スプリングフィールドも理由は同じで、第一次世界大戦時にアメリカが弾と銃を作りまくったためです。
北海道のライフルマンに人気の弾
北海道の場合でも30-06スプリングフィールドを使う人が多いですが、8.58mm(0.338インチ)の弾を使う人も多くいます。代表的な物で言うと『338ラプアマグナム』ですね。なぜこの弾を使っているかというと、威力が強いからです。
北海道には日本に生息する最大で最強の哺乳類・ヒグマが生息しています。このヒグマに弱い弾を撃ちつけると、逆上したヒグマが時速60㎞近いスピードで猛突進してきます!ひぇ~っ!怖すぎるッ!!だから強力なライフル弾が必要になるというわけです。
また北海道のエゾジカは、本州のホンシュウジカに比べて体が大きいため、威力の弱い弾ではなかなかしとめ切ることができません。
なお、以上にあげたのはあくまでも一般的な話です。実際のライフルマンさんたちは、色んな考えで色んな口径を使われています。話しを聞いてみると非常に面白いですよ。
6mm(24口径)の魅力とは?
さて、ようやく本題に入ります!今までにお話してきた通り、私が使用している6mm(24口径)のライフル弾は、日本の狩猟で使われる最小口径で威力も低いです。実際にこの口径は、海外ではカラスやオポッサム、リスなどを捕獲するバーミントライフルと呼ばれるライフル銃に多く採用されており、「子ども用ライフル」と言われることもあります。
Youtubeを見てみると7歳ぐらいの女の子が撃ってたりします。そりゃ他のライフルマンに「豆鉄砲」と言われるわけですよ・・・。しかし、私の狩猟スタイルでは、この6mmという口径の銃はとても扱いやすかったりするんです。
近射では正確に・即座に撃てる6mmが使いやすい
私がこの弾を愛用している理由は、発射した弾頭があまりドロップしないためです。ドロップとは距離による弾の落下量のことですが、現在使用している弾は150m以内の範囲ではほぼ直線に飛んで行くため、落下量を計算しなくて済みます。
日本全国にある『荒れた山』では接敵距離が近くなる
私が入る山は人の手が入らなくなった荒れた植林地が多いのですが、間伐されていない山は木々が生え乱れてとても狙いにくいです。そのかわり、獲物もこちらに気づきにくく、例え気付かれたとしても『木化け』(木に体を密着させて静止し、やり過ごそうとする行為)をすることが多いので、獲物との距離は必然的に近くなります。
そのため射撃距離は、だいたい50m、場所によっては150mほどの距離になり、『木々の間から獲物の急所を狙う』といったシーンが多くなります。このような場面で素早く正確に狙うためには、真っ直ぐ飛んで行ってくれる24口径が適していると感じているからです。
パワーが無くてもバイタルを狙えばしとめることができる
軽い弾は初速が速いので精密性は高いのですが、弾が軽いので威力がありません。よって、何百メートルも離れた距離から狙撃しても獲物を倒すことはできません。しかし前述のとおり、私の歩く荒れた猟場では獲物との距離が比較的近くなるので、パワーが無くてもバイタルポイント(致命傷となる脳や心臓など)を狙うことで、獲物をしとめることができます。
低反動は怖くない
ライフル射撃の用語にフリンチングという言葉があります。このフリンチングとは、射撃の爆音や衝撃で体の筋肉が「グッ!」とりきんでしまい、そのぶん体が動いて狙点がズレてしまう現象です。この硬直は、みなさんが大きな音を聞いたときに体が「ビクッ!」となるのと同じ”生理現象”なので、どうしても無意識的に起こってしまいます。
しかし、私が使用している弾は反動がとても少ないため、このフリンチングが起きにくいといったメリットがあります。低反動だから体が無駄な力を出すことがないため、より正確に射撃ができるというわけですね。
クマを撃たないという理由もあります
私が住んでいるところはツキノワグマを捕獲することができません。そのため、ライフル銃ではシカとイノシシの捕獲がすべてなので、現在の口径でも問題が無いと思っています。もしツキノワグマを捕獲する必要が出てきたときは考えなければなりませんが・・・。
私が使用している243ウィンチェスター
私は現在『243ウィンチェスター』という24口径の薬莢を使っています。243ウィンチェスターは「豆鉄砲」と揶揄されることもありますが・・・しかしッ!私は自分の狩猟スタイルから、この弾を選んでいるというわけです。
ちなみに私は、軽い24口径の弾の中でも、さらに軽量な種類の弾を使用しています。軽い弾頭を使うと通常の火薬の量では弾が暴れる感じがするので、火薬の量も少なくなっています。ここまで威力を抑えた組み合わせにするぐらいなら、一層のこと『6mmPPC』や『6mmBR』と呼ばれる弾を撃てるライフルに買い換えようかなぁと思ったりしています。・・・お金無いですけど。
24口径はオススメなのか?
以上が、私が24口径のライフルを愛用している理由ですが、決して24口径のライフル銃をオススメしているわけではありません。荒れた山で活躍するライフルマンの中には、「弾が当たって険しい山の中を走られるよりは、一発でしとめたい」という理由で、威力の強い弾を使う人も多くいます。私の場合はあくまでも
- 木の隙間からバイタルポイント(主に首から上)のみを狙撃したい
- 遠射はしない
- 反動が少ない方が好み
- クマ(ツキノワグマ)を撃たない
- 捕獲した獲物は肉にするので、なるべく肉の痛みを小さくしたい
といった理由があるためです。
逆に言えば、私と同じような理由で狩猟をする人にとっては、24口径という選択肢はアリかなと思います。私が狩猟をしているような荒れ果てた山は、今後日本中に増えてくると思われます。そういったなか、今回の話が参考になる人が少しでもいましたら、とてもうれしく感じます。
6mm弾について
今回ご紹介した24口径ライフル弾は、日本では”不人気”です。なので情報もあまりありません。そこで、現在日本で入手可能な24口径弾を4種類ピックアップしてご紹介したいと思います。皆様のご参考になれば幸いです。ではでは。
243ウィンチェスター
.243 Winchester。最も多い6mm口径だと思われる。世界スタンダードとも言える308winのネックダウンカートリッジで、6mm界のスタンダード。使用者が多いということは既成弾(※)や銃の種類も多く、6mmカートリッジ入門にも最適である。軽量、低反動、弾道特性などに優れており、筆者のようにマウンテンライフルとしてセレクトする人もいる。
リローディングにおいても、幅広い重量の弾頭を使用でき、レシピも多い。他の6mmカートリッジでは銃を選ぶとしても選択肢が少なかったり、カスタムライフルを作成しなくてはいけない場合も多々ある。
弾においても種類が少なかったり、既成弾が無くリローディングしなくてはいけないなど敷居が高いが、243winは銃にしろ弾にしろ選択肢が一番多い。
もちろんカスタムライフルでも良し、リローディングしても良い。選択肢が多いということは、それだけ使用者も多く、様々な利点があるのが良いところではないだろうか。
※ファクトリーロード:工場で作られたライフル実包
243ウィンチェスタースーパーショートマグナム
.243 Winchester Super Short Magnum。形状が丸に近いほどライフル弾の効率は良くなるといわれている。300WSMの薬莢をさらに短くしネックダウンした高初速弾。弾頭にもよるが銃口の初速が4,000 ft/sを超えることも。初速と軽量な弾頭でかなりの”暴れん坊”のようだが、バッチリ決まるセッティングが見つかるとズバ抜けた軽量高速弾として運用できる。
ロングレンジにおいて、他の6mmカートリッジに比べ残存エネルギーが高いため、北海道のエゾジカに使用されることもある。また、薬莢が短いためショートアクションよりも短いスーパーショートアクションのライフルで使用でき、頑丈かつ素早い操作が可能となっている。
6mm PPC
6PPCとも呼ばれるカートリッジ。設計者2人Lou Palmisano/Ferris Pindellの頭文字+カートリッジで「PPC」と呼ばれている。一般的に工場で製造された”吊るし”の状態の物は「6PPC USA」と呼ばれる。精度が高く、主にベンチレスト競技に使われる。
現在では既成弾は製造されておらず、ハンドリローディングが前提となり、タイトネックやクリアランスの関係で薬莢も製作する人が多い。220ロシアンをネックアップし、銃にフィットするようにネックの厚みを削ったりする。しっかりとセッティングされた6PPCはベンチレスト300mでワンホールが可能であり、弾痕の真ん中同士で一番離れている距離(CtoC)で競われる。
6mm BR
6BRと表記することもある。BRとはベンチレストの略。ベンチレスト射撃のために作られた弾で、精度も6PPCとあまり変わらないという。6PPCより少しだけ重い弾頭が使える&薬莢の入手が少し楽なため狩猟でも使われはじめた。肉を取ることを目的としたミートハンターや、精肉販売をしている業者などに人気が出てきている。
もちろんLBの競技射撃にも使える。派生は様々だが、.308ウィンチェスターを短く、ネックを細くしたカートリッジである。
まとめ
- ライフル弾は、弾頭・火薬・雷管・薬莢の4つで構成されており、様々なバリエーションが存在する
- 6mm(24口径)は日本の狩猟で使えるライフル弾の最小口径で精密性と低反動性が魅力
- 万人にオススメできる弾ではないが、荒れた植林地で狩猟をする私と同じスタイルの人ならばメリットはある