ブログやYouTubeなどで近年、女性狩猟者(ハントレス)の情報発信が年々増えています。これらの情報を見て狩猟に興味を持った女性の方は多いと思いますが・・・狩猟ってメチャクチャハードルが高くないですか?
そこで今回は女性でも狩猟を楽しむ方法を、しかも“男性に頼りっきりにならないスタイル”で楽しむためにはどうすればよいのか、私の経験を踏まえてお話をしたいと思います。
女性でもガチソロハンティング。できますッ!
本題に入る前に、まずは自己紹介をさせいただきたいと思います。私は人生の半分を東京と大阪で過ごし、3年前に故郷である鳥取県某町に「Jターン」した移住者です。狩猟については移住するまでほとんど何も知りませんでしたが、ノリと食欲で銃猟と罠猟の免許を取得しました。現在の狩猟歴は3年ほど。実績としては昨年度で、イノシシとシカを合計で約90頭捕獲しています。私の身長は155cm、体重は43kgと、けして体格に恵まれているわけではありません。しかし、それでも基本的に狩猟をすべて自分一人で行っています。
「狩猟にあまり詳しくない」という方もいらっしゃると思うので、狩猟の流れについて簡単にご説明します。
銃での捕獲。ひとりでできます!
狩猟にはいろんな方法があり、狙う獲物も様々です。私はこだわりなく何でもやっていますが、一番多いのは罠と銃によるイノシシとシカの捕獲です。
私が使っている銃は2種類あり、『フランキM521(自動銃12番)』 と『ミロク2700S(上下二連20番)』という散弾銃です。
罠の捕獲。罠も作っています!
罠は、くくりわなと箱わなという2種類の罠を使っています。上の写真で使用している箱わなは、自治体から貸与されているものですが、自分一人で組み立てたこともあります。
罠猟では罠の設置以外にも、『止め刺し』という罠にかかった獲物にとどめを刺す工程があります。罠にかかって興奮する野生動物に対峙するのはとても大きな危険性をともないますが、よほど危険な状態ではない限り一人で行っています。
くくりわなは基本的には自作しています。使用するバネなどは非常に強力なので、女性の力では取扱が難しい場合もありますが、自作する上で困ったことは特にありません。くくりわなは別に自作せずとも市販のメーカー品を買えばよいのですが、ワイヤーは消耗品になるため、自分でメンテナンスができるようにしています。
荷台に乗せる作業。ひとりでできます!
狩猟での移動手段は車になります。私は軽トラックを使って狩猟をしていますが、もちろん運転は自分で行っています。獲物がとれたら、次に山から引き出します。
イノシシやシカの体重は、50kg程度から大きければ100㎏を超えるので、これを何とかして車まで引っ張っていかなければなりません。この引き出し作業も一人で行っています。また、引きずり出した獲物は車の荷台に乗せなければなりません。この荷台に上げる作業も一人で行います。
ジビエの解体処理。ひとりでできます!
獲物は、解体場所に移動して肉(ジビエ)に解体処理したり、場合によっては買い取ってもらったり、廃棄する場所に持って行ったりします。いずれにせよ、荷台から獲物を下ろしたり、解体場所まで引っ張ったりしなければなりませんが、この作業も一人で行っています。
“女の細腕”で巨大な獲物をどう動かすのか?
以上のように、狩猟には獲物の捕獲だけでなく、引き出しや搬送、荷下ろし、解体など、やらなければならない作業は沢山あります。ガタイの良い男性でも「キツイ!」となげくこれらの作業を、はたして体力で劣る”女性一人”で行うためにはどうしたらよいのでしょうか?・・・もちろん、
というわけではありません。
筋肉を鍛えてマッチョになれないのであれば、『知恵と道具』を使う知識マッチョになればよいのです。
道具を使いこなそう
何十キロもの野生動物を山から引き出す作業は、普通に引っ張るととんでもなく大変です。それはもう、男性でもヘトヘトになるほど。女性の力ではピクリとも動かせないほどのオオモノが獲れることだってあります。そこで私は、シチュエーションに合わせて様々な道具を利用しています。
重たい獲物も工夫次第でひとりで搬出できる!
例えば、上の写真は引っ張り用の道具を使っているところです。これを使えば体全体の”バネ”を利用して獲物を引っ張ることができるため、私のような力の無い女性でも獲物を引きずりながら移動することができます。
また、獲物を荷台に乗せるときも、普通に荷台に引っ張り上げる力は私にはありません。そこで土地の高低差を利用して乗せるなどの工夫をしています。こういった知恵と道具を使うことで、体力が低い女性でもガチソロハンティングは可能になるのです。
狩猟は“2人以上”が原則です
さて、今回から数話にかけて『女性でもガチソロハンティングを行うための、知恵と道具』をテーマにお話をしていくことになるのですが、その前にご留意いただきたいことがあります。それは
「狩猟は1人ではなく、2人以上で行うこと!」
これが大前提です。
「初めに言いよったこととちゃうやん!」とツッコミを受けそうですが・・・いえいえ、これには「性別」とかは関係の無い、深い理由があるのです。
狩猟中のトラブルは男女関係なく起こります
狩猟は女性一人でもできます。しかし、狩猟には危険が沢山あります。例えば、崖から滑落してしまったり、獲物に突っ込まれて大ケガを負ってしまうような事故は、女性・男性関係なく発生します。
このようなトラブルが起きてしまったときの対策として、二人以上の人員が必要にあります。スキューバーダイビングでは、どんなに経験を積んだ人たちであってもバディ(二人一組)で行動します。これは海での事故は上級者でも起こりうるからです。よって、同じく事故の危険性が高い狩猟でも、性別とかは関係なく、常にお互いの安全を支えあう『相棒』が必要になるのです。
相棒に迷惑をかけないためにもスキルを磨こう!
そして、相棒がいるからこそ、狩猟にはガチソロハンティングを行えるスキルが必要になります。例えば、相棒が崖から滑落したのに「女だから助けることができない!」なんてことを言ってはいけません!このようなときは、ロープやウィンチを使って引っ張り上げるなり、応急処置だけして助けを求めて走るなりしなければなりません。
相棒は支えてもらう存在ではなく、支え合う存在です。こちらがトラブルを起こしたときは支えてもらうのはしかたがありませんが、相手がトラブルのときは支えてあげる知恵と技術が重要になります。
自由になれば、狩猟はもっと面白くなる
ハントレスの中には数年で辞めてしまう人も多くいます。この中には、男性狩猟者(ハンター)からいつまでも”女の子扱い”をされてしまい、ツマラナクなってしまう人も多いように思われます。
狩猟には「猟隊」というグループがあり、ここで学べることは多いのですが、やはりどうしても自由がありません。「女性だから」といった理由で気を使わないといけないことや、逆に気を使われることが色々とあります。このような性別間から来る摩擦は次第に大きくなっていき、「なんだか狩猟って他人に気を使うことが多いし、面白くないな・・・」と、狩猟に対するモチベーションが下がってしまうのです。
しかし、これはすべてが男性側に問題があるわけではありません。やはり、狩猟を一人で行えない自分自身が、気付かないうちに”男性に依存”してしまっていることにも、大きな問題があるのだと思います。
まとめ
- 獲物の捕獲、引き出し、荷台上げ、解体・・・など、女性でも全部“ひとり”でできます。
- 筋肉が無いなら知恵と道具を使う。知識マッチョを目指そう!
- 狩猟は二人以上で行動するのが原則
- しかし、ガチソロの知恵と道具は必ず役に立つ