当然ですが、カモ撃ちは獲物を撃つだけでなく、回収ができて初めて“成功”です。そこで今回は、撃ち落としたカモの回収方法と、回収した獲物の下処理について、お話しをしたいと思います。
カモの回収
散弾銃では、飛んでいたカモが水面に「バシャーン!」と落下する瞬間。エアライフルであれば、乾いた銃声の後にカモが腹を見せて静かになる瞬間・・・やはり狩猟は、この「獲物を捕らえたとき」が、何よりも楽しい瞬間です。しかし、狩猟は獲物をこの手に収めるまで終わりではありません。
回収しやすい“撃ち方”も大事
装備編でも少し触れましたが、水面に落ちたカモの回収は、カモキャッチャーなどの回収道具を使うのが一般的です。しかし、飛んで来るカモを撃った場合は陸に近いところに落ちてくるため、水辺に入って回収できることもあります。
逆に言うと、作戦の段階から回収のしやすさを考慮しておくことは、とても大切です。奇襲をする場合は、あらかじめ土地の状態を把握して回収ポイントをチェックしておき、狙撃する場合は、回収しやすい方向に向けて獲物との距離を詰めていくようにします。待ち伏せをする場合は、飛んで来るカモを良く引き付けてから撃つように心がけるようにしましょう。
どうしようもない場合は、待つ。
特にエアライフルで狙撃した場合、仕留めたカモが岸から遠すぎて、カモキャッチャーが届かないことがよくあります。そんなときは仕方がないので、しばらく待ちましょう。野池のような流れが少ない水面でも、風があればカモは流れていきます。待っている時間が長くなりそうなのであれば、いったんこの場を離れて、他の猟場を回った後に再び回収に来るとよいでしょう。
一応、泳いで回収しに行くという、通称『人間レトリバー』という方法もありますが・・・・まぁ、命あっての物種ですので、危ないことは慎みましょう。また、マレに仕留めたカモをトンビにさらわれることがありますが、そのときは素直にあきらめましょう。
カモキャッチャーでの回収
カモキャッチャーは、リールのベールを起こして上段に構え、真っすぐ振り下ろして投げ飛ばします。このとき、竿先からオモリを20㎝ほど垂らしておくと、オモリが振り子になって仕掛けを遠くまで飛ばすことができます。
仕掛けは、浮いているカモをまたぐように投入します。そのままリールを巻いて糸を引いていくと、掛け針がカモの羽にひっかかるので引き寄せていきます。
魚釣りが好きな人にとっては難しくありませんが、竿の操作に慣れないうちは仕掛けが真っすぐに飛んで行かないので大変かもしれません。何度か練習して、投げるコツを掴んでおきましょう。
ギャフで回収する
木が邪魔でカモキャッチャーが振り出せないような場所では、ギャフを使って回収します。このような場所は、岸に木が茂って回収できるスペースが少ないため、木の上に乗り出して回収することもあります。足を滑らせたり、木が折れたりして転落しないように注意してください。
釣りに使う玉網でも回収できますが、枝が邪魔で網を広げられないことも多いので、ギャフの方がオススメです。
カヤックやSUPで回収する
操船技術が必要になりますが、水面に落ちたカモをカヤックに乗って回収するという手もあります。カヤックの値段は安くても10万円ほどしますが、回収だけでなく奇襲や待ち構えるのにも使えるため、カモ撃ちに自由度が増します。
水面を移動する手段にSUP(スタンドアップパドルボート)という方法もあります。これは、大きなサーフボードのような板の上に立って、パドルでこぎながら水上を進んでいくアイテムです。
SUPボードの値段は、安いもので3万円程度とお手軽ですが・・・う~ん。一応、SUPは転落しにくい構造にはなっているんですが、銃を担いだ状態で水の上に立つのは恐いですよね~。銃を池に落として失効させちゃった人もいますし。
猟犬に回収させる
伝統的なカモ回収方法は“レトリバー”を使役する方法です。ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーなどの「レトリバー」の名が付く犬種は、もともと水面に落ちた水鳥を回収(レトリーブ) するために生み出されました。
これらの犬種はアンダーコート(下毛)とトップコート(上毛)の二重構造の毛を持っており、冷たい水の中でも体温を低下させずに泳ぐことができます。カモを回収する能力を持つ犬種はレトリバーに限らず、ブリタニースパニエルやポインターといった犬種も持っているそうです。
腸抜き
回収したカモの腸は、できれば猟場で抜いてしまいましょう。腸抜きに使う道具は専用のガットフックというものがありますが、100円均一で売られている編み物用のカギ針で代用できます。
腸の抜き方
腸抜きは、まずカモの足の付け根付近の毛を毟りましょう。肛門が見えたら、ガットフックの先端を入れて、腸の内壁に引っかけるようにして1.5回ほど回し、そのままゆっくりと引っ張り出します。
腸は完全に取り除く必要はありません。ひっかけた腸をしばらく引っ張っていると黒くなってきますが、そのあたりで切れてしまっても問題ありません。
腸抜きをする意味とは?
よくカモの腸抜きは「肉に臭いを付けないようにするため」と思われていますが、実際は数時間程度で腸が腐ることはありません。しかし動物の腸(特に大腸)には、人間も感染する食中毒菌や鳥インフルエンザなど危険な病原体が潜んでいる危険性があるため、家庭に持ち込まないようにしましょう。
血抜きは必要か?
イノシシやシカのような大型獣の場合は必要となる血抜きですが、カモの場合はあまり気にする必要はないと思います。そもそも血抜きは、残体温で血液が 腐敗することを防ぐことが目的なのですが、カモの場合は体が小さいため、すぐに体の芯まで冷めてしまいます。よって無理に血を抜く必要はありません。
ちなみに、ブタ(イノシシ)の血も同じですが、本来のカモの血には生臭かったり、レバーぽいような臭いはありません。 中国や台湾などでは、カモ(アヒル)の血を鴨血(ヤーチュェ)と呼んで食用にしています。その味は・・・臭いも無ければ味も無い、寒天のような食感をしています。
羽毟り
回収したカモは腸抜きと併せて、羽も剥いてしまいましょう。体温が残っている状態だと毛穴が柔らかいため、冷えた状態よりも羽は抜けやすくなります。
足を木にぶら下げて羽をむしると楽
羽剥きはぶら下げた状態で行うと作業がしやすいです。また、薄手のゴム手袋をしていると、羽毛を綺麗に取り除くことができます。翼の羽は、いったん折って引っ張ると抜けやすいです。翼の先端は肉がついていないので、ハサミで切り落としてしまっても良いでしょう。
ダックワックスを使う方法
羽剥きには、ダックワックスと呼ばれる蝋を羽に染み込ませて、冷やして固まったところを剥ぎ取る蝋剥きという方法もあります。ダックワックスを使う場合は、まず表面の羽を1/3ほどむしり取り、羽の中までワックスが行き届くように荒剥きします。
ダックワックスは板で売られているので、まずは大鍋に入れて溶かして使いましょう。あまり火力が強すぎると焦げてしまうので注意してください。
ダックワックスが溶けきったら、カモの頭を持った状態で漬けて、 2,3回鍋の中でくゆらせて羽に蝋を染み込ませます。カモを鍋から上げて余分なワックスを切ったら、15分ほど放置して固まるのを待ちましょう。
表面を叩いて「コンコン」と音を立てるぐらいに硬くなったら、まずは翼を引っ張って付け根から固まった羽を剥ぎ取ります。羽が一か所割れたら、羽と皮の隙間で指を入れて“殻”を剥いていくイメージでパリパリと剥がしていきます。
ダックワックスは、通称「ブラジリアンワックス」と呼ばれる脱毛用ワックスが使用されています。よって、少量が口に入っても有害性は無いと言われています。
ダックワックスで固まった羽は、再び火にかけると溶けだして再利用できますが、臭いが移っているのでオススメはできません。
バードプラッカー
ニワトリを処理する養鶏場では、羽をプラッカーと呼ばれる機械で処理します。このプラッカーは、ゴム製の凸凹が沢山ついた槽を洗濯機のように回転させて、羽を毟る構造になっています。海外では電動ドリルを改造して自作のプラッカーでカモの羽を剥く人もいるようです。
羽根つきのまま吊るして保存することもできる
日中でも気温が5℃を上回らない環境 であれば、羽根つきのまま持ち帰って、納屋や軒先に吊るして保存することもできます。吊るす理由は、地面に置いておくと接地面に水分が溜まって腐敗が起こりやすくなるためです。
吊るす方向は、カモならクビ、キジなら足をくくるのが一般的なようです。理由については確かではありませんが、カモの場合は胸肉、キジの場合はもも肉が重視されるので、そっち方向に水分を溜めない(腐敗しにくくする)目的があるのだとか。
もし、吊るしておく場所が無いのであれば、羽根つきのまま冷凍することもできます。ただし冷凍すると皮がボロボロになるため、羽を毟るのが難しくなります。
まとめ
- 落ちた場所が遠くて回収できないときは、しばらく待って岸に流れてくるのを待つ
- 回収の基本はカモキャッチャー。竿が出せない場合はギャフでひっかける。
- カヤックがあると便利
- 下処理の基本は、羽毟りと腸抜き
- 羽はダックワックスで処理する方法もある