撃っても撃っても『当たらない症候群』射撃のスランプにプロ猟師がお答えします

当たらない症候群

 銃を持って山を静かに歩いていると、突如目の前に獲物の姿が!(相手はこちらに気が付いていない、チャンスだ!)と銃を上げ、じっくり狙いを定めて引き金を引くッ!!爆音と共に獲物がパタリと倒れた・・・と思いきや、獲物はピョンピョンと元気よく走り去っていきましたとさ。
 このような「絶対に当たったと思ったのに、なんで外れたの!?」は、銃猟ハンター”あるある”ですよね。そこで今回は私なりに、この『当たらない症候群』についてお話をしたいと思います。


この記事の3つのポイント

  1.  当たらない症候群の主な要素は、フリンチング、ガク引き、障害物、据銃の不良

  2.  他人からはなかなか気づかれにくい『クセ』が原因の場合もある

  3.  スランプは、思考がグチャグチャになる。勇気をもって『何もしないこと』も重要



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「当たらない」はなぜ起こる?

当たらない症候群の正体、

それはズバリ、銃です!

ダメな銃では、いくら腕が良くても当たるはずがありません。

よって、「当たらない」と悩んでいる人は、

今すぐに新銃へ買い換えるのですッ!

・・・と、まぁ、それは”少し”冗談として。当たらない原因を考えるさいは、銃と腕の問題を別々に考えた方がよいでしょう。
 銃に関するお話をすると長くなるので、今回は『腕』についてお話をしていきたいと思います。

要素1 フリンチング

 フリンチングとは、引き金を引く瞬間に筋肉が硬直し、無意識に照準がブレてしまう現象です。一度でも銃を撃ったことがある人であればお分かりかと思いますが、銃の発射音と衝撃は、かなりのショックです。
 よって身体はショックに対抗するため、無意識的に前傾姿勢を取ります。すると照準は体が縮こまった分だけズレてしまうので、着弾点もズレてしまうのです。

 フリンチングは無意識の反応なので、自分では気が付きにくいのですが、『トリガーを引く時にセーフティーを掛けたままだった』という経験は無いでしょうか?
 もしその時に”前のめり”になったり、”ビクッ”と体に力が入ってしまった経験がある人は、フリンチングをしている可能性が高いです。

 ちなみに、「教習射撃では良く当たっていたのに、実際に銃を持つと当たらない!」という人も多いと思います。これも実は、銃を始めて撃つ人にはフリンチングが起こりにくいため、といった理由がある用です。他のスポーツにおけるビギナーズラックも、似たような理由が多いそうです。

要素2 ガク引き

 標的を狙っていると、照準がユラユラと動きます。そして「ココだ!」と思った瞬間に引き金を引くと、引き金ごと銃全体を強く引っ張ってしまい、着弾点がズレます。
 この現象は、力みすぎてトリガーを”ガクッ”と引いてしまうのでガク引きと呼ばれています。英語では”Snatching“(ひったくる)と表現されたりしますね。

 引き金を強く引くと、引き金にかけた手の方向に照準がズレます。そのため、右利きで「照準よりも右下に着弾することが多い」と悩んでいる人は、このガク引きが原因であることが多いようです。

 なお、飛んでいる鳥やクレーを撃つ動的射撃では、「ガク引きの方がよい」とされています。なぜなら、動的射撃では引き金を迷いなく引けた方が命中率が良いためです。
 そのため、動的射撃と静的射撃では、引き金の引き方が異なります。私は普段から静的射撃が多いため、ガク引きをしないように引き金を”絞る”クセをつけています。そのため、クレー射撃や鳥撃ちでは発砲のタイミングが遅れて外してしまうことがよくあります(笑)

要素3 障害物

 スコープを高倍率で使っていると、近い距離にある草や枝がピンぼけして見えにくくなります。この障害物に気が付かずに射撃をすると、弾丸が障害物にカスってしまい、弾道が微妙に反れてしまいます。

 この障害物による影響は、軽量高速弾ほど影響が大きく、重量低速弾のほうが反れにくい傾向があります。よって、普段ライフルを使っている猟師さんも、草が被い茂る夏の有害駆除では弾頭の重いスラッグ弾(散弾銃)に持ち替える方もおられます。

要素4 獲物を見ている

 アイアンサイトで狙うとき、獲物・照星・照門を見ることになるわけですが、人間の目ではそのすべてにピントを合わせることができません。
 そのため、照準を付けるときに獲物の姿ばかりに目のピントを合わせてしまい、照星と照門がズレていることに気づかないことがあります。
 この状態で射撃をすると、自分では「確かに獲物に向けたのに!」と思いながらも、実際の着弾点は大きく外れてしまうのです。

 より具体的な例でいうと、獲物にぼんやりとした照星を重ねて照準を定めていると、アゴが上がってほほ付けが甘くなります。この状態では、正確な照準よりも照門が下がっているため、射撃をすると標的の上に命中します。
 もしあなたが「射撃を繰り返すとほほが痛くなる」というのであれば、この現象が起きている可能性が大です。なお、肩付け・ほほ付けの位置が変で、顔が傾いたまま照準を付けている場合にも、同様のズレが生じます。

番外要素 癖

 以上でお話した要素以外にも、人それぞれの『癖』というものがあります。私の例で言うと、ライフルを所持したてのころ、150mほどで狙いを定めると、着弾がいつも左に反れる現象が起こっていました。
 しばらく原因がわからずに悩んでいたのですが、射撃に慣れ始めたころ、撃発の瞬間に体が左に『ピクッ!』となるクセがあることに気が付きました。

 それから、この癖に注意して射撃をするようになり、体が『ピクッ!』となるクセは改善しました。しかし、いまだにこのクセが出そうになることもあります。
 こういった癖は”自分だけのもの”だったりします。そのため、他人の目から見ても、その原因がわからなかったりします。

「当たらない」体験談

 以上でお話したように「当たらない症候群」には色々な要素があります。「このまま射撃が一生当たらないかも・・・」と心配になるかもしれませんが、ご安心ください。その理由については、まず、私の体験談からお話をしましょう。

 

私の「当たらない症候群」

 「当たらない症候群」は、私も何度か経験したことがあります。例えば、散弾で鳥撃ちをしていたころの話。それまでは軽快に飛んでいるカモに当てられていたのですが、ある時期からパッタリと当たらなくなりました。
 2回、3回と立て続けに外していると、(なんでだろう?)と心の中がモヤモヤしてしまう。その悩みが深くなっていくと、

(照星がズレちゃったかな・・・?)

(獲物の動きが目で追えないようになったのかな・・・?)

(足場が悪かったかな・・・?)

と、思いつく限りアレコレと理由を探してしまうようになりました。
 このように、思考が”ドツボ”にハマってしまう状態が、私のかかえた「当たらない症候群」、いわゆるスランプでした。

『当たらない症候群』の対処法

 私がこれまで経験した中で、スランプを抜け出すコツには『足掻きまくる』『何もしない』の2つだと思っています。
 具体的に言うと、まず、外れた理由の仮説を立て、原因と探り、問題点を細分化して一つずつ修正していく、というパターン。そしてひとつは、一度撃つことや銃から離れてみて一切考えない、というパターンです。

 おそらく多くの方が前者の『足掻きまくる』パターンかなと思いますが、先にお話したように、スランプというのは「思考がグルグル巡ってドツボにはまってしまうこと」が本質にあると思います。よって、スランプのときはメンタルを整えるために、あえて何もしないという選択が重要なのです。

 もちろん、離れる期間が長すぎてもダメなので、『何もしない』という行動は、なかなか難しいところがあります。しかし、もし現在

「何をやっても当たらない!もうダメだッ!!」

と悩まれている方がいらっしゃいましたら、”勇気を出して何もしない”を実施してみてください。上手くいくかもしれませんよ。

『ゾーン』で起こったスランプ

 「当たらない症候群」にかかってしまう原因には色々あります。その一例として、私が『ゾーンに入りすぎてスランプにおちいった』というお話をしたいと思います。

ゾーンとは

皆さんは「ゾーン」という言葉はご存知ですか?色々な言い方をされますが、一般的には集中力の極限に達したさいに、

視界がスローモーションになったり

動きが読めるようになったり、

音がまったく聞こえなくなったり

と、人によって様々です。私も狩猟を始めたてのころは、射撃時にこのゾーン状態になっていました。

危険なゾーン体験

 私のゾーンで現れる現象は、『視界の一点集中』です。視界から周囲の景色が消え、色も消え、音すらも消る、スローモーションになり身体は自然と動く、そういった特徴を持っています。

 しかし、狩猟を続けていく中で、私のゾーンは非常に危険だと思えるようになりました。なぜなら、ゾーンに入った私は狙っている獲物しか見えないからです。

もし、すぐ近くに人がいたらどうなるでしょうか?
私はその人に気付かずに引き金を引いてしまうでしょう。

そんな考えがふとよぎったときから、私は長いスランプおちいったのでした。

 撃っても撃っても当たらない。例え人が全く入らないような山奥に行ったときでさえ、『ゾーンに入ること』が怖くて嫌がってしまい、当たらないのです。
 そんななか、ある日1羽のヒヨドリが飛んできました。私は何気なく狙って引き金を引くと、

なぜか当たった!

 その後、色々と自己分析をした結果わかってきたのが、適度なリラックスでした。その適度なリラックスを理解してからは、獲物がバンバン獲れるようになった・・・わけでもないのですが、スランプを無事に克服することができました。

 ゾーン自体は悪いというわけではありません。例えば射撃場で射撃時には大きなアドバンテージになりますし、アスリートがよくゾーンに入って良い結果が出せたなんて話も聞きます。私が猟場で勝手にゾーンに入るのが怖くなったという話です、悪しからず。

おわりに

 今回は「当たらない症候群」についてお話をしました。スランプへおちいる原因、スランプの脱出のきっかけは人によって様々です。しかし、昔の人は「ハシカのようなものだ」といっていたように、スランプは誰もが突然かかり、また、時間が経てば治る現象でもあります。
 もし、現在「当たらない症候群」に悩まされている方は、まずはリラックスしてみるのはいかがでしょうか?


Author情報

「自称職業猟師」 この胡散臭いのが警察で問い合わせてもらった自分の肩書きです。 専業猟師、プロハンター、プロ猟師。 色々な呼び方されますが、猟を生業としてメシ食ってます。 ライフル243win、上下二連12番、上下二連20番。 現在三丁でやっております。 罠もあるけどあまり好みじゃない。
Twitter:りょう@ハンター



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