弾が当たらないなら、今すぐ“新銃”を買いなさい。~銃が原因の『当たらない病』を徹底解説!~

 「道具より腕」という言葉があります。「当たらない理由を道具のせいにするのではなく、腕を磨け」という意味ですね。確かに、射撃の上達は腕を磨くことが何よりも重要です。しかし・・・当たらない原因が銃にあることも、やっぱりあります。そこで今回は、銃が原因で当たらない理由について見ていきましょう。

目次

照準器のズレや故障

 当たらない主な原因として考えられるのが、照準器のズレです。スコープやリフレクタサイト(ドットサイト)、アイアンサイトなどの照準器は、射撃場でゼロイン調整を行います。しかし、何らかの理由でゼロインが崩れる(銃と照準器の位置関係がズレる)と、当然ながら狙った位置に弾は当たりません。

よく見たら照星が曲がってた!

 私が所持している上下二連20番の散弾銃の例ですが、あるときから着弾がやたら左上にズレるようになりました。当たらない原因は『自分の腕』だと思い、しばらく悩んでいたのですが、銃をよく見てみると違和感が。なんと、中間照星が少し曲がり、リブもへこんでいるじゃないですか!
 転んだときか、はたまた落石が当たったときかはわかりませんが、当たらなくなった原因は照準器のズレに合ったのでした。ちなみに、銃にアイアンサイトを取り付けたことで、着弾がズレることも無くなりました。

散弾撃ちの人も、たまには単発でズレをチェック

 照準器のズレは、ライフルやスラッグ射撃であれば気付きやすいのですが、散弾だとなかなか気が付きません。いちおう散弾にもパターンテストと呼ばれる的紙を使って弾痕を確認する方法があるのですが、日本国内の射撃場でパターンテストができる場所は、ほとんどなかったはずです。
 もし、これまで散弾しか撃ったことが無い方は、その銃でスラッグが撃てるのでしたら、一度静的射撃をしてみるのをオススメします。

銃の寿命

 意外と知られていませんが、銃には寿命があります。銃の構造やカートリッジの造りによっても変わってきますが、散弾銃の場合は10万発。ライフル銃の場合は2,000~5,000発ぐらいだと言われています。

ライフリングが削られていく

 銃で一番痛みやすい部分は銃身です。ライフル銃の場合、弾がライフリングにめり込みながら進むので、ライフリングは徐々に削られていきます
 ライフリングの溝が浅くなった銃は、弾の回転が甘くなるため、命中精度に差が出てくると言われています。

散弾銃の銃身も劣化する

 散弾銃の場合はライフリングが無いため、銃身の劣化は大問題ではありません。しかし、銃身内部のちょっとした傷から徐々に劣化が大きくなり、銃身の割れや膨らみといった故障を起こすようになります。特にチョーク部分は負荷が大きいため、影響が大きいといわれています。

機関部の目に見えない損傷

 私が所持している20番の散弾銃は父の形見です。まだまだ射撃はできるのですが、撃針の動きが少し渋いです。このように古い銃は、外見は綺麗であっても、各パーツが劣化していることがよくあります。
 銃の経年劣化には、例えば、弾を抑えるボルトにガタ付きが出たり、銃床などの木製パーツにゆがみが出たりします。このような劣化は発射時に微妙な振動を起こしたりするので、命中精度に影響を与えることもあります。

メンテナンス不良

 銃のメンテナンス不良も、当たらない原因になります。錆びや汚れが機関部に付着していると、スムーズな装填ができなかったり、微妙な振動を起こしたりして、命中に大きな影響を与えます。

外観の確認

 私の先輩が当たらない原因を探りに射撃場に行ったときのこと。初撃は的紙に入らず、狙いをズラして2発目を撃つと命中。しかし同じ照準で3発目を撃つと外れる、という“謎”な挙動が出ていました。
「銃がブッ壊れてるのか?」と悩んだ先輩ですが、銃をよ~く見てみると・・・照星が緩んで少しずつ動いていたそうです。 
 このように、当たらない原因は意外と単純なメンテナンス不足だったりする場合もあります。機関部の細かいメンテナンスも必要ではありますが、まずは単純に『緩み』などがないかチェックしておきましょう。

銃のメンテンナンスについて

 さて、銃身や機関部のメンテナンスですが、これは銃の種類や人によって、それぞれ色んな考えとやり方があります。そこで今回ご紹介するメンテナンス方法は、あくまでも“私のやり方”としてご理解ください。

ライフルの場合

 ライフルの場合は、銅を溶かす薬剤をパッチにつけて銃身内部に塗り15分ほど放置し、真鍮ブラシ何度か通しパッチを通しています。
 汚れが強いときはパーツクリーナーや556を併用することもあります。外側は布とWD40で拭いてます。トリガーボックスやボルトも稀にメンテナンスをするのですが、同じようにメンテナンスをされた方の銃に何か問題があったら困るので、今回は伏せておきます。

散弾銃の場合

 散弾銃の場合は、スプレーの溶剤(ソルベント)を銃身内に噴きつけたり、表面洗浄剤(フォーレスト)を充填させて待ち、ブラシやボアスネークを通して、最後にオイルを塗っています。
 オイルの種類は保管するときによって使い分けています。外側は同じように防錆潤滑油(WD40)をちょっと付けて、布で拭いてます。内部は特に触っていません、形見だと思うとなかなか手が出せず・・・いつかガンスミスに頼むつもりです。

逆に、“過剰なメンテナンス”は注意しよう

 「メンテナンスの仕方は人それぞれ」と述べましたが、1つだけ、過剰なメンテナンスは避けた方が良いと思います。
 例えば、機関部やトリガー周辺にオイルを塗りたくること。オイルにゴミなどが付着したり、トリガーのキレが悪くなったり、固着したりすることもあるようです。

“ガタ”も設計上必要だったりする

 うちの親方の話ですが、使っているライフルの銃身と機関部に「ガタ付きがある」として、銃砲店でガチガチに絞めてもらいました。
 その足で猟に出て、いざ獲物を撃とうしたのですが、トリガーがあまりにも重くて引けず、獲物を逃がしてしまったのだそうです。
 後から調べてみると、このライフル銃はもともと、少しガタ(遊び)があるように造られていたそうです。このように、自分では「故障だ」と思っていた不具合が、実は「仕様です」という話しはよくあります。

身体に合ってない

 銃には、銃床長、グリップ長、グリップ円柱長、ピッチ角などのサイズがあります。このサイズが体に合っていないと、姿勢がおかしくなり当たらない原因になったりします。

サイズの調整

 銃のほとんどは欧米からの輸入品なので、銃の仕様も「欧米サイズ」だったりします。そのため一般的な日本人の体格だと、肩付けの位置や、グリップからトリガーまでの距離などが合っていないケースがよくあります。
 完璧に銃を体に合わせるためには、フルオーダーで作ってもらうしかありません。しかし細かな調整であれば、銃砲店でストックを切り詰めてもらったり、グリップを削ったり、またはパテで埋めたりして調整することが可能です。

2丁以上銃を持つと、違和感を感じることもある

 銃を複数本所持していると、銃ごとの差に体が違和感を感じてしまうこともあります。例えば私が所持している12番と20番の散弾銃は、ストックの形状がかなり違います。12番は「トラップ銃」なので、ベンドが高くリブと平行。20番は「フィールド銃」なので、ベンド低めで斜めに下がる形状しています。

反動の強い12番と弱い20番

 私は初め12番しか持ってなかったので、違和感はありませんでした。しかし20番を使初めてからは、この2本の使い勝手の違いに驚かされました。
 なにせ『頬付けがぜんぜん違う』。12番ではグッと頬を押し付けないと狙えなかったのが、20番だと添えるぐらいでOK。そして反動も少ないので頬付けが甘くても使える。そのため、狩猟では20番ばかり使っていました。
 しかしクレー射撃などで12番を使ってみると、明らかに狙いがズレてしまいます。体が20番の感覚を覚えてしまっているので、12番が使いこなせなくなっていたのでした。
 対策として、現在では20番のストックにパットや布で高さを稼ぎ、ベンドの高さを調整しています。このように、体が別の銃に慣れてしまって当たらなくなるということもあるのです。

中古よりも新銃の方が良い?

 私が使っている12番と20番の散弾銃は親父の形見ですが、243winのライフル銃の方は新銃で購入しました。その経験を踏まえて、新銃の『良い点』について、お話をします。

歴代オーナーによる間違ったメンテナンスの心配がない

 日本の銃市場には多数の中古があり、一見すると新品と同様な物も出回っています。しかし、そのような中古銃も、前オーナーが変な調整をしていたり、間違ったメンテナンスをしているケースがあります。
 よくあるのが、オイルを塗ったくって放置しているケースです。556などの機械油は劣化するので、そのまま放置していると逆に錆びます。
 また、サラダ油などの食用油を塗っているケースもあるそうです。食用油は酸化が早いので、金属部品がボロボロになってしまうこともあります。
 さらに、「ピカピカするから」という理由で木製のストックに油を吹き、腐ってグズグズになるといった話しもよく耳にします。

わかりにくい劣化が無い

 先にお話したように、銃は発射回数に比例して部品が劣化していきます。大きな劣化であれば中古で引き取られた際に部品交換がされますが、金属内部の傷やマイクロクラック(目に見えない微小な傷)は見過ごされてしまいます。新銃の場合はこのような心配がありません。
 ただし新品は動きが硬いです。もちろん使っているうちに馴染んでは来るのですが、初めのうちは各部がキッチリしているので、変な突っかかりがあったりします。気になる方は腕の良いガンスミスに擦り合わせをしてもらうと良いでしょう。

補給品の心配が少ない

 銃には寿命がありますが、よほど変な壊れ方をしない限り、パーツの交換で復活します。しかし、中古銃の場合、メーカーが倒産していたり、モデルがカタログ落ちしていたりしていて、補給部品が市場に出回っていない場合があります。
 いちおう、板金工場などにお願いしてパーツを削り出して作ってもらうこともできます。しかしこの場合、当然値段が高くなるので、「新銃を買ってた方が安かったなぁ」ということもあります。

メーカー保証がある

 中古には目に見えない劣化がありますが、新銃にも当然、初期不良があったりします。しかし新銃の場合は、メーカーや銃砲店の補償が付いているのが普通です。
 初心者さんの中には、「中古銃を買って猟場に出たけど、初日に不良を起こして、即・銃砲店行きに」という悲しいことになった人もいます。
 銃砲店の中には、機関部を開けてもらうだけで1万円以上取るところもあったりするので、中古銃には「安物買いの銭失い」で泣きを見るリスクがあることを理解しておきましょう。

まとめ

  1. 当たらない主な原因は、照準器のズレ、銃の寿命、メンテナンス不良、体に合っていないこと
  2. 銃を2本以上所持していると、ベントの高さが違ったりして体が戸惑うことがあるので注意
  3. 新銃は中古銃より、故障のリスクなどが少ない
  4. 「新銃を買おう!」(お金があれば)

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この記事を書いた人

りょう@東 良成のアバター りょう@東 良成 専業猟師・ライフルマン

三重県紀和町に住む専業猟師。年間200頭以上の獲物を捕獲しています。主に銃に関する知識や野生鳥獣被害について、Twitterで発信中 。

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