『スラッグ弾』ってどんな弾?代表的な5種のタイプを解説!

スラッグ弾の種類修正

 散弾銃は、粒状の弾(散弾)の発射が一般的と思われがちですが、実際にはスラッグショット(一発弾)と呼ばれる弾頭も多用されています。特に、ライフル銃の所持が難しい日本において、イノシシやシカなどの大型獣の狩猟でスラッグ弾頭は頻繁に用いられますが、その種類や特徴については意外と知られていません。そこで、代表的な5種類のスラッグ弾頭について解説します。

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  1. スラッグ弾は、マスケット銃で使われていたボールブリッド(B.B.)に改良を加えて、19世紀ごろに誕生した
  2. 現在、日本でよく使われているスラッグ弾は、ブリネッキ型、フォスター型、フラッグ型、ワッズ型、サボット型の5種類
  3. その中でも代表的なのが、ブリネッキ型とフォスター型
  4. ワッズ型はハンドロードをする狩猟者の間で人気
  5. ライフルドショットガン用のサボット弾は、値段が高くハンドロードが必要

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目次

スラッグとは何か?

 スラッグ弾は、英語で”Slug shot”と表記されます。”Slug”は「ナメクジ」と訳されることがありますが、元々は鉱石を精製する際に生じる「鉱石のくず」を指す言葉であり、後に「金属製の武骨な塊」を指すようになりました。

スラッグ弾の元祖・ボールブリッド

スラッグ弾の起源は、16世紀頃に誕生したマスケット銃(滑腔式歩兵銃)で使用されていたボールブリッド(B.B.弾)にあります。鉛製の球形弾であるB.B.弾は、製造が容易で大量生産が可能でしたが、球形であるが故に回転が加わると弾道が変化しやすいという欠点がありました。そのため、19世紀頃になると、より正確な射撃を可能にする弾頭を目指して、B.B.弾を改良した様々なスラッグ弾頭が開発されました。

ライフル弾との違い

スラッグ弾頭はライフル弾頭と混同されることがありますが、最も大きな違いはその大きさにあります。一般的な散弾銃の口径は12番(約1.85cm)や20番(約1.57cm)ですが、一般的なライフル銃の口径は0.3インチ(約0.76cm)です。つまり、12番の散弾銃で使用されるスラッグ弾頭は、30口径のライフル銃で使用されるライフル弾頭に比べて約2.4倍大きく、重量もはるかに重くなります。

ライフル弾よりも威力は高いが、精密性は劣る

 スラッグ弾頭はライフル弾頭よりも重量があるため、標的に与えるダメージは大きくなります。しかし、表面積が大きいため空気抵抗による速度の減衰が大きく、有効射程は短くなります。

50m範囲であれば十分な性能を持つ


 スラッグ弾は、100m以上の遠距離射撃が必要な狩猟には不向きです。しかし、北海道を除く日本国内の大物猟は、木々が生い茂った森の中で行うことが多いため、獲物と対峙する距離が『約50m以内』と比較的近くなります。そのため、射程距離の短いスラッグ弾であっても十分な性能を発揮することができます。
 なお、スラッグ弾はライフル弾に比べて最大到達距離も短いため、海外では人口密集地近くで狩猟を行う際に使用されています。

代表的な5種類のスラッグ弾頭

スラッグ弾の種類修正

 ボールブリッドから改良されてきたスラッグ弾は、19世紀から現在に至るまで様々な種類が開発されてきました。これら、スラッグ弾の種類は、現在でも使用されているものから、廃れてしまったものまで様々ですが、今回は日本で一般的に使用されている5種類のスラッグ弾について解説します。

ブリネッキ型

 1898年にドイツの銃器技師、ウィルヘルム・ブリネッキによって開発されたブリネッキ型は、黎明期に商業的に成功を収めた代表的なスラッグ弾の一種です。

バトミントンのシャトルコックのような構造をしている

 ブリネッキ型スラッグ弾は、フェルトやセルロースを固めたベースがネジ止めされており、重心が先端に集まるように設計されています。発射されたブリネッキ型弾頭は、あたかもバドミントンのシャトルコックのように重い方を向いて滑空するため、B.B.弾で問題となっていた回転による軌道の変化を抑制できます。

フェルトが発射ガスの漏れを防止する

 ブリネッキ型スラッグ弾の後部は、発射時に銃身内に密着し、ガスシールのような役割を果たします。このため、火薬の燃焼による発射圧を効率良く受け止め、高い推進力を得ることができます。

銃との相性がある点に注意

 直進性に優れるブリネッキ型は、現在でも日本で広く使用されていますが、重量があるため射出時の反動が強くなります。軽量化された散弾銃で使用する際は、肩が腫れ上がるほどの反動を感じることがあるため、銃との相性に注意が必要です。

フォスター型

1931年にアメリカのカール・M・フォスターによって開発されたフォスター型は、より軽量な弾で、命中時の威力を向上させる効果を持つスラッグ弾です。

中空にして潰れやすくなっている

 フォスター型の特徴は、弾頭を中空にすることで、衝突時に潰れるようになっている点です。弾は命中時に〝貫通〟してしまうと、貫通後に持つ弾の運動エネルギー分だけ、標的に与えるダメージを損することになります。そのためフォスター型では、命中時に柔らかい外周が潰れて表面積が増して摩擦を増やすことにより、弾が貫通しにくくなっています。

ブリネッキ型とフォスター型のどっちを使う?

 「ヨーロピアンスラッグ」と呼ばれるブリネッキ型に対して、フォスター型は「アメリカンスラッグ」と呼ばれることがあります。日本では、このブリネッキ型とフォスター型が人気を二分しており、どちらを利用するかは、所持している銃との相性によります。
 一般的には、フォスター型は反動が少ないため『連射』をする機会が多い巻き狩りなどに使用されることが多く、ブリネッキ型は重くてパワーがあるため、〝一発必中〟を必要とする単独猟に使用されることが多いようです。

ライフルドスラッグ

現在一般的に流通しているフォスター型やブリネッキ型は、胴体に斜めの溝が掘られたライフルドスラッグと呼ばれる形状になっています。

空気抵抗を抑える構造をしている

 ライフルドスラッグの斜めの溝は、弾頭が滑空する際に空気抵抗を受け流し、直進性を向上させる効果があるとされています。また、溝があることで銃身内を移動する際に接触面を最小限に抑え、銃身やチョークへのダメージを軽減する役割も果たしています。

ライフリングで回っているわけではないので注意

 「ライフルド」という名称から、ライフルドスラッグはライフリングによって回転していると思われがちですが、それは違います。実際には、空気抵抗を受けて〝風車〟のように風を受けて回転するだけであり、ライフル弾のようなジャイロ効果によって弾道を安定化させる効果はありません。

フラッグ型

フラッグ型スラッグ弾

「デストロイヤー(破壊者)」や「R.I.P.(安らかに眠れ)」などの異名を持つフラッグ型スラッグ弾は、その物騒な名前の通り、命中した標的に致命的なダメージを与えるスラッグ弾です。

破片(フラグメント)をまき散らす

 フラッグ型の特徴は、弾頭に複数の切り込みが入っている点です。このスラッグ弾が標的に命中すると、先端が破片(フラグメント)となって散らばり、標的の体内を引き裂きます。このためフラッグ型は他のスラッグ弾よりも標的に与えるダメージが大きくなります。

食肉利用には向かない

 フラッグ型スラッグ弾は、もともと、アフリカのサファリガイドがサイやバッファローなどの猛獣から観光客を守るための最終手段として使用されていました。そのため「獲物の肉を得る」ことは考慮されておらず、破片が体内で散らばって肉質を大きく損なうといった問題があります。
 日本国内では、北海道のヒグマ猟に使われることがある他、食肉利用を考慮しない有害鳥獣捕獲で使用されるケースが大半だと言えます。

ワッズ型

 ワッズ型は、弾頭にワッズと呼ばれるプラスチック製のアタッチメントを付けたスラッグ弾です。このワッズは、ブリネッキ型と同様にガスの漏れを防ぐ効果に加えて、柔らかい足が衝撃を吸収して、弾頭が変形するのを防ぐ効果を持ちます。

様々な形状のスラッグ弾を射出できる

 ワッズ型の長所には『様々な弾頭が使える』点が挙げられます。ワッズ型は、弾頭にワッズを差し込む穴が付いていれば、どのような形状・重さでも射出することができます。そのため、使用する散弾銃の口径よりも小さな弾頭でも使用することができます。
 このようにカスタマイズ性が高いことから、ワッズ型はスラッグ弾を自分でハンドロード(手詰め)する狩猟者の間で、特に人気があります。

サボット型

 サボット型は、銃口よりも小さな弾頭を、「サボット」と呼ばれるプラスチック容器で包んだタイプのスラッグ弾です。散弾銃身にライフリングが施されたライフルドショットガン専用のスラッグ弾頭となります。

硬質のサボットを回転させて撃ち出す

 サボット型スラッグ弾は、銃身のライフリングに、硬いサボットを喰い込ませることで、回転が加えられます。サボットが回転すると、その中に詰められた弾頭も一緒に回転するため、射出された弾頭はライフル弾のように回転しながら滑空します。

値段が高いため、ハンドロードはほぼ必須?

 サボット弾は、他のスラッグ弾に比べて、かなり高価になっています。令和6年時点で、ブリネッキ型やフォスター型が1発450円程度に対して、サボット弾は800円から1,000円程度にもなります。そのため、ハーフライフル銃などのサボット銃を使う狩猟者は、コストを抑えるためにハンドロードを行うのがほぼ〝必須〟と言える状態になっています。

まとめ

  1. スラッグ弾は、マスケット銃で使われていたボールブリッド(B.B.)に改良を加えて、19世紀ごろに誕生した
  2. 現在、日本でよく使われているスラッグ弾は、ブリネッキ型、フォスター型、フラッグ型、ワッズ型、サボット型の5種類
  3. その中でも代表的なのが、ブリネッキ型とフォスター型
  4. ワッズ型はハンドロードをする狩猟者の間で人気
  5. ライフルドショットガン用のサボット弾は、値段が高くハンドロードが必要

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