むしろ初心者ほどライフル銃を持つべき。なぜ『ハーフライフル銃』は生まれたのか?


 日本には『散弾銃を10年以上所持しないと、ライフル銃を持てない』という決まりがあります。そこで、イノシシやシカを専門に狩猟をする初心者ハンターの中には、1年目からでも所持できる『ハーフライフル銃』を選ぶ人が多くいます。
 しかしはっきり言って、このハーフライフル銃は世界的に見て『ヘンテコな銃』です。そもそも安全面から考えると、初心者ほどライフル銃を持つべきだと思います。そこで今回は、ハーフライフル銃が誕生する経緯をお話ししつつ、日本の不思議なライフル規制問題について見ていきましょう。

3つのポイント
  1. ハーフライフル銃は、ライフルドスラッグガン(RSG)のライフリング銃身を、半分以下に削った銃
  2. 精密性の高いライフル銃は、精密性の低い散弾銃よりも”流れ弾”を作るリスクが低い
  3. ライフル銃規制の根本は、戦前から続く官民分離の形式主義から来ている


ライフルドスラッグガン(RSG)とは?

 海外のハンターにハーフライフル銃の話をするときは、「ハーフライフル」という言葉は使わない方がいいです。おそらくすべての外国人ハンターに「なにそれ?」と聞き返されることでしょう。
 そこでハーフライフル銃の話をするときは、「ライフルドサボット銃身を日本の法律に合わせて半分以下にライフリングを削った銃」と言いましょう。もちろんそれでも外国人ハンターは「なにそれ?」と聞き返してくるとは思いますが・・・。

これから始める人のための銃猟の教科書
ハーフライフル銃は元々『ライフルドスラッグガン』

 日本で「ハーフライフル銃」または「サボット銃」と呼ばれる銃は、元々海外では「ライフルド・スラッグガン(R.S.G.)」と呼ばれる銃です。

 このRSGは、銃身にライフル銃のような施条が掘られており、サボット弾と呼ばれる特殊な弾を発射します。弾頭はライフリングによって回転が加えられるため、RSGは散弾実包を使う銃でありながらも、ライフル銃と同等の精密性を発揮します。

サボットスラッグの仕組み

 サボット弾は、硬質なプラスチック製カップワッズ(サボット)の中に、弾頭を詰めた散弾実包(ショットガンシェル)の一種です。

このサボットをライフリング銃身に通すと、ライフリングに沿ってサボットに回転が加えられるため、中の発射物も一緒に回転します(①)。銃口から飛び出したサボットは、しばらくすると空気抵抗の差により弾頭だけが先行し(②)、回転が加えられた状態で弾が滑空します(③)。

なお、サボット弾に使われる弾頭は、ライフル弾頭のような円錐形がほとんどですが、サボット弾はライフル弾のように薬莢を圧着する必要が無いため、どのような形状でも撃ち出せます。

 たとえば「プラムバタ」と呼ばれるタイプでは、弾頭が槍状になっており、これに回転を加えることで円錐タイプよりも高い精密性と貫通力をもたせることができます。

この仕組みは、戦車の『装弾筒付翼安定徹甲弾:APFSDS(Armor-Piercing Fin-Stabilized Discarding Sabot)』といった兵器にも応用されています。

RSGを改造して作ったハーフライフル銃

 海外で製造されているライフルドスラッグガン(RSG)は、銃腔のすべてにライフリングが施されています。しかし日本で流通しているハーフライフル銃は、ライフリングが半分以下に削られています
 実を言うと、このライフリングを削る理由は、”性能を向上させる”といった目的ではなく、日本のおかしな法律に合わせるためのものです。

なぜ、RSGのライフリングを削ったのか?

 『ハーフライフル銃』が生まれた経緯について説明する前に、まずは日本のライフル銃に関する規制について、お話ししましょう。

ライフル銃の10年縛り

 日本の銃刀法では、「狩猟を目的とする場合、ライフル銃は散弾銃を10年以上所持していないと、持つことができない」という、通称『ライフル10年縛り』の決まりがあります。

 この決まりについて公安委員会は、「ライフル銃は散弾銃に比べて射程距離が長く、外れたら流れ弾を作る危険性が高いため、まずは散弾銃で銃の取り扱いを学ぶべき」という見解を出しています。

銃の扱いが下手な初心者ほど、ライフル銃を持つべき

 日本の公安委員会は安全性のため初心者がライフル銃をもつことを規制していますが、よく考えると、これはかなりおかしな話です。

 そもそも、発射した弾が流れ弾になってしまうのは、獲物に命中しなかったからです。だとすれば、ライフル銃よりも精密性が低い散弾銃で射撃をした方が、流れ弾を作る危険性はもっと高くなります。
 つまり安全面から考えれば、銃の扱いに慣れていない初心者ほど、精密性の高いライフル銃を使うべきだと言えるのです。

 そもそもな話、散弾銃の射撃(クレー射撃などの動的射撃)を練習したからといって、ライフル銃の静的射撃が上手くなるわけではありません。
包丁と斧が、同じ”刃物”でもその用途がまったく違うように、ライフル銃は散弾銃の上位互換ではないのです。

狩猟者と公安委員会の折衷案で生まれたのがハーフライフル

 このような経緯があり、かつて日本では狩猟者から「安全面から考えて、初心者にもライフル銃を持たせてほしい!」という意見が出されました。

 これに対して「狩猟者にライフル銃を持たせたくない」という姿勢を崩さない公安委員会との間で、長いことスッタモンダの押し合いがあったのですが、最終的に「RSGのライフリングを半分未満に削った銃であればOK」という折衷案で決着が付いたのでした。

なぜ公安はここまでしてライフルを持たせたくないのか?

 さて、ここで一つ疑問に思うのは、「なぜ公安委員会は、かたくなに狩猟者にライフル銃を持たせたくないのか?」ということです。
これについては、はっきりとした理由はわかりませんが、おそらく戦前から続く”しきたり”にあると思います。

 明治時代以降の日本軍では、使い古した歩兵銃(ライフル銃)を民間人に”狩猟用”として払い下げていました。しかしこのとき日本軍では、「民間人が兵隊さんと同じ銃を持つのはけしからん!」として、軍用銃のライフリングを削って渡していました。

 つまり日本における「ライフリングを削る」という行為は、戦前からの”官民分離”の思想から来ており、民用銃(猟銃)と軍用銃を区別するための儀式的な行為だといえるのです。。

世界的に見て異質な、日本のハーフライフル銃

 さて、ここまでのお話で、なぜ『ハーフライフル』という存在が生まれたのか、簡単にまとめておきましょう。

  1. 日本には『ライフル銃は、散弾銃を10年所持しないと持てない』という特殊な規制がある。
  2. 大物猟専門であれば、精密性の低い散弾銃よりもライフル銃の方が流れ弾を作るリスクが低い。
  3. 日本の公安委員会は、理由はともかくライフル銃を民間人に持たせるのは嫌。おそらくその理由は形式的な話。
  4. 狩猟者が規制緩和について公安委員会と対立した。
  5. 折衷案として決まったのが、RSGのライフリングを半分削った銃だった。
射撃で精密性を落とす理由は無い

 ハーフライフル銃の元であるRSGは、銃メーカーが最も性能が良くなるように研究を重ねて出来上がったものです。すなわち、その設計にわざと手を加えるのは明らかに”改悪”であり、当然ながら精密性も低下します。

 銃は『弾を遠くに・正確に命中させる』ことに、しのぎを削る歴史を持っています。そのなかで、当たりにくくする改造が施された日本のハーフライフル銃は、歴史の中でも異端者であり、海外から見れば「ナンセンス」な存在です。

 先にも述べましたが、弾は狙った先に命中しないと危険です。なので銃は現在でも、精密性を上げるために日々進化を重ねています。そのような中で射撃の精密性を下げる規制に固執する日本は、やはりおかしな状況だといえるのです。

おわりに

 今回は『ライフル銃規制』についてお話をしました。おそらくこの先も『ライフル10年縛り』や『ハーフライフル銃』の存在が緩和されることは無いと思います。しかし、少しでも多くの人が、日本の銃規制は形式主義すぎて安全性を損ねている、という事実を知っていただければ幸いです。

それでは今回はこのへんで。



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4 Comments

  1. >世界的に見て異質な、日本のハーフライフル銃
    和智 香氏の拳銃放浪記によると、70年代後半当時の中南米諸国では、民間人でも、口径32若しくは38までの短銃(ブラジルやアルゼンチンでは16番や20番の散弾短銃すら…)所持は可能でした。しかし、ライフルは、多くの場合、口径22リムファイア(ブラジルの様に口径38スペシャルの短銃弾を使用するライフルの所持が可能な国もありましたが)までしか、所持出来ませんでした。当時の日系人の方からすれば、祖国よりも、母国の方が寛容と言う訳でした。

    また、高名なハンターだった柳田啓介氏は、80年代後半、旧ソ連のシベリアへ狩猟に出かけています。この時、旧ソ連の高名なハンターのバイコフが、アムール虎を仕留めた際、頭部に10発も撃ち込んで、漸く仕留めた事を訝し気に思っていました。何故なら、アフリカでの経験から、象や犀でも、口径375H&Hクラスのライフルなら、そんなに弾はいらないからです。しかし、現地のハンターが手にしていたのは、皆、小口径でした。

    ですから、国が違えば、法も異なります。欧米先進国=世界ではない。それが現実で、一概に日本だけが、異質とは言えません。法令なり、なんなりの枠内で活動するしかないのでは?

    また、日本に於けるハーフライフルの由来は、戦前、少数が入っていたホーランド・アンド・ホーランドのパラドックス水平二連散弾銃では?銃身の半分に浅いライフリングが彫られており、鹿狩りに有効だったと言いますから。

    • 素晴らしい知見をありがとうございます。
      国や時代が違えば、銃規制の法律は違うという点、まことにその通りです。
      日本であっても戦前は拳銃の所持が認められていたりしますしね。

      ただ、法律が現状に合っているかという問題は、また別だと思います。
      「悪法も法」とは言いますが、「ライフルは射程距離が長いから、散弾銃よりも扱いは上」
      といった道具に優劣を与えるのは、やはりおかしなことだと思います。
      道具は目的に応じて使い分けるべきであり、長距離狙撃を目的とする狩猟を行う前提であれば、
      わざわざ「ハーフライフル」というバッファを強制するのではなく、初めからライフルの勉強をさせるべきだと思います。

      ハーフライフルの由来については、あくまでも仮説になりますが、日本軍が民間に銃を払い下げる時に
      ライフリングを削っていた”儀式的”な理由が、現在まで引き継がれているんじゃないかなと思います。

      ご意見をありがとうございました。

  2. [射程距離が長いから危険]というのはテロに使われた場合の対処の難しさから来るのではないですか?アメリカでライフルのフルオート機能が違法なのは法執行機関が犯人を制圧することの障害になるからだといわれています。軍用小銃のライフリングを削って渡していたのも、軍用銃としての機能喪失=軍用銃での対抗が容易であるので安全ということです。

    • コメントをありがとうございます。
      確かに、テロ対策という考え方もありますね。
      しかし日本は明確に武器の所持を禁止しているので、所持許可が下りた銃はあくまでも”道具”という扱いです。
      なのでテロ対策という考えがあるのなら、そもそもライフル銃は所持できない仕組みになってないとおかしいと思います。

      また「散弾銃所持10年縛り」がテロを抑止する基準というのはおかしいと思います。
      「散弾銃を10年持った人はテロを起こさない」とする根拠がありません。
      なので、もしライフル銃を持たせたくない理由がテロ防止なのであれば、法律にそう明記すべきです。
      そのうえで『身辺調査をより厳重に行う』だったり『ライフル銃は完全委託にする』なり、よりテロ防止に効果がありそうな付帯条件を付けるべきだと思います。

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