あなたの知らなかった『狩猟の魅力』。すべてのアウトドアに足りなかった“目的”が見つかります

 みなさんはどういった経緯で“狩猟”に興味を持たれましたか?「趣味を探して?」、「獲った肉を食べたかったから?」、「漫画やゲームを見たから?」、おそらくひとそれぞれかと思います。それでは、実際のところ『狩猟の魅力』とはいったい何なのでしょうか?すべてのアウトドアの“源流”ともいえる狩猟の魅力に迫ってみましょう!

目次

狩猟はアウトドアの“目的”になる

みなさんは「ゲーム(”game”)」という言葉を日常でもよく耳にすると思います。この「ゲーム」という言葉は「遊び」という意味で用いられますが、実は古くから「狩猟で手に入れた肉(猟果)」という意味もあります。つまり「狩猟」とは「遊び(アウトドア)」そのものともいえるのです。

普通のアウトドアが「ゲーム」になる

 狩猟の持つ魅力には様々ありますが、1つ大きな魅力に『獲物を得るという“目的”がある』ことが上げられます。
 例えば、獲物を追って山の中を歩き回ったり、獲物の痕跡を探して回ったり、獲物の出没を「今か今か」と待ち伏せをする行為は、『獲物』という目的があるからこそ面白さにつながります。

既存のアウトドアに狩猟という目的を足す

 もちろん、何の目的もなく山を歩いたりすることに「楽しみはない」と言っているわけではありません。目的もなく山を登ったりキャンプするのも、気分がリフレッシュして良いことです。
 しかし逆に考えてみてください。もしあなたの山登りやキャンプの趣味に「狩猟」を加えたとしたら、まったく違う世界が広がると思いませんか?山登りは獲物を追って山を散策するゲームになり、キャンプは獲物を追い求めて野営をする理由を生みます。
 このように狩猟の魅力には、獲物を得る「目的」があることであり、しかも様々なアウトドアにつけ足すことができる点にあります。

狩猟はあらゆるアウトドアにつけ足すことができる

冬キャンプを楽しむ

 狩猟と組み合わせることのできるアウトドアは山登りやキャンプだけではありません。例えば、普通の自然観察も狩猟と組み合わせることで「獲物の痕跡を追う」というフィールドワークに発展します。何の気なしにする犬との散歩も『猟場』に出れば、猟犬と獲物を追う“共闘”になります。
 また、カヌーやカヤックといったアウトドアも、元はというと狩猟用に使われていた道具です。散弾銃を持ってカヤックに乗り、野池や湖で“カモ猟”をするというのは、とても楽しいアウトドアです。スキーなども、もとは狩猟が目的に使われていた道具なので、『冬山ハンティング』というのもスリリングなアウトドアです。

狩猟が加わり「トータルアウトドア」(完全体)となる

 「狩猟は、あらゆるアウトドアと組み合わせることができる」と述べましたが、よく考えてみると、狩猟はもともとすべてのアウトドアの源流だといえます。
 太古の時代、私たち人類は狩猟採取で生きる糧を手に入れていましたが、農業が発展して余暇が生まれると、狩猟の『獲物を得ること(“game”)』という目的が外れ、その過程が『あそび(“game”)』として発展したというわけです。
 すなわち、現在のありとあらゆるアウトドアは、本来の目的であった『獲物を得ること(狩猟)』を加えることで「トータルアウトドア」という完全体に戻ることができるというわけです。
 もちろん先にも述べましたが、アウトドアの楽しみかたは人それぞれです。しかし、もし、あなたのアウトドアの趣味で「ちょっと足りないものがあるな」と思ったら、そこに『狩猟』を足すことをオススメします。これまでのアウトドアとはまったく異なる世界が見えてくるはずです!

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狩猟はすべてのアウトドアの源流。これまでのアウトドアに『獲物を得る』という“目的”をつけられることが、最大の魅力

狩猟は一生遊べるアウトドア

 私たちが普段手にする「ゲーム」には、開発者が考えた解法が存在し、それを見つけ出すことでゲームクリアとなります。しかし狩猟で相手にするのは野生動物です。そのため『獲物を得る解法』というのは一概に存在せず、狩猟ではこの解法を“探し続けること”で一生楽しみ続けることができます。

いろんな解法を考えてみる楽しさ

くくり罠にかかったシカ

 例えば、狩猟には『くくりわな猟』と呼ばれる猟法があります。これは獲物が通る道に「くくりわな」という罠をしかけておき、獲物がその罠を踏むことで捕獲することができます。

くくり罠一つにしても様々な解法がある

 このくくり罠猟は仕掛け自体は単純ですが、これで獲物を捕獲するのはかなりの経験と技術が必要です。何せ相手は警戒心の強い野生動物なので、罠の隠し方がヘタクソだと簡単に見破られてしまいます。
 また、使用する「バネの強さ」や「トリガーの種類」、「ワイヤーの固さ」。罠をしかける土質が「雪が厚く積もる場所」か「氷が張る場所」か。「泥状の場所」か「小石が多い場所」など、あらゆる要素で最適解が変わります。
 もちろん獲物の中には「のん気」な奴もおり、大して考えなくても簡単に捕まることもあります。とはいえ、老獪なイノシシや、過去に罠にかかったことのある経験豊富なシカ(スマートディア)などは簡単に捕獲することはできず、知恵を絞って臨まなければななりません。

解法を考えていく楽しさ

 獲物を捕獲する方法は「くくり罠猟」だけではありません。同じシカを捕獲する方法でも、『銃を使用する方法』や『猟犬を使役する方法』や『長距離から狙撃する方法』、『獲物に気付かれないように近づいてしとめる方法』など様々です。
 これに、先ほど述べた「アウトドア」の要素を付け加えると、狩猟には“無限通り”ともいえる解法が存在しており、これを探し出すのは一生をかけても有り余るぐらい奥深い世界です。
 事実、現在の狩猟業界には70代、80代という高齢者が多くおり、しかも“現役バリバリ”で狩猟を楽しんでおられます。「狩猟は死んだら辞める」と言わしめるほどの趣味。それが狩猟の世界なのです。

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同じ『獲物』に対して、捕獲する狩猟スタイルは様々。そこに趣味のアウトドアを組み合わせると、無限通りの解法が存在する

人間界のガーディアン

 すでにニュースなどでもご存知の通り、近年野生鳥獣による農林業被害や人的被害が増えてきています。もちろんこういった野生鳥獣とのトラブルは“今にはじまったこと”ではないのですが、地方の人口減少や高齢化などが原因で被害が『加速度的に増している』というのは事実です。

人間のテリトリーを守るには“戦う”しかない

農作物被害にあった果物

 このような野生鳥獣被害を軽減させるには人間の力で押し返すしかありません。残念ながら野生鳥獣とは“言葉が通じない”ため、武力でもって人間のテリトリーを守るしかありません。“言葉が通じる”人間同士でも戦争はなくならないわけですから、争い奪い合うのは動物として生まれた「性(サガ)」と言えるでしょう。

野生鳥獣を押し返す力となるのが『猟圧』

 狩猟には野生鳥獣からの侵攻を押し返す力があります。鉄砲の爆音と猟犬の鳴き声が聞こえ、いきなり罠が飛び出してくるような所は“恐ろしい”場所なので、当然ですが野生鳥獣は近寄って来なくなります。このような、人間が狩猟によって野生鳥獣を押し返す力を『猟圧』といいます。
 野生鳥獣の侵攻圧と人間の猟圧で「押したり・引いたり」した均衡状態にあることが、人間にとっても野生鳥獣にとっても“丁度良い関係”といえるのです。

人から感謝され、仕事にもなる趣味

 狩猟者は野生鳥獣から人間のテリトリーを守るガーディアンであり、狩猟で獲物を捕獲するとしばしば農家さんや近隣の人たちから「ありがとう」という声をかけてもらえます。この『人から感謝される趣味』というのは、考えてみればかなり特殊です。

プロとしての『猟師』になる

 人からの感謝は、ときとして「報酬」という形で帰ってきます。実際に、近年では各市町村で鳥獣被害対策実施隊の設立や、都道府県で指定管理鳥獣捕獲等事業といった“仕事としての狩猟”も増えてきており、腕の立つハンターは常に求められています。
 日本にはかつて狩猟を生業にした「猟師」や「またぎ」と呼ばれる人たちがいましたが、現代にも「人間界を守るガーディアン」としての『猟師』が必要とされているのです。

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狩猟は“遊び”の中で人から感謝される珍しい趣味。
腕の立つ狩猟者は『プロ(猟師)』として仕事もできる

狩猟の報酬“ジビエ”を楽しもう!

 狩猟の魅力を語るうえで外せないのがジビエ(野生肉)です。食料を得るアウトドアには魚釣りやスピア―フィッシング、キノコ狩り、山菜取りなど色々ありますが、“肉”はあらゆる食材の中でも扱いが難しく、そして食べたときの満足度が違います。

食肉解体のおもしろさ

しとめた獲物の解体

 動物を食肉にするというのは想像以上に難しいことです。なぜなら、しとめた獲物は血を抜くなどの適切な処置が必要ですし、動物の体の構造をよく理解しておかなければなりません。
 しかも、狩猟で得た獲物を捌くのは基本的には“野外”なので、土などのゴミが肉に付かないようにするためには、獲物を吊り下げる道具や手法など様々な工夫が必要になります。

食肉解体は狩猟とは別の趣味になる

 このように、獲物を食肉に加工するのは非常に難しい行為です。逆にいうと、食肉解体は『狩猟』とはまた別の次元で面白い趣味だと言えます。
 実際に「狩猟には興味ないけど解体だけしたい!」という人は多く、特に『獣』を捌くことは狩猟で得た獲物でしかできません。魚は魚屋にいけば丸ごと1匹買え、鳥も丸鳥を肉屋で買うことができますが、イノシシやシカのような獣はどこにも売っていません。「すべての動物を捌いて肉に出来る」という解体マスターを目指すなら、狩猟の世界に飛び込むしかありません!

ジビエ料理は一期一会の出会い

ジビエ

 野生鳥獣の肉(ジビエ)と家畜の肉との大きな違いは、食味にムラやクセ(野性味)が強いことです。「それって“魅力”なの?」と思われるかもしれませんが、これは確かな魅力です。

ジビエの「楽しい・面白い」が魅力につながる

 なぜなら、スーパーで売っている豚肉や牛肉には季節や個体によって食味の違いはまったくありません。もちろん味は美味しいですが、それを『魅力』と感じる人はあまりいないと思います。
 対してジビエは、獲物の性別や年齢、食べていた餌、生活環境などで肉質が大きく変化します。よって、肉によっては臭いがキツかったり、肉質が固かったりすることがあります。
 しかし、だからこそ、私たちはその“肉”に魅力を感じることができます。例えば「今日の獲物はちょっと肉質が硬いから、煮込み料理に使ってみよう」や「臭みがあるから味付けを濃くしてみよう」といった“考え”が生まれ、その料理を口にして「成功だ!」や「失敗だ~・・・」といった感想が生まれます。

自分の手で「獲って食べたジビエ」は一生の記憶に残る


 魅力とは必ずしも「うまい」ことではありません。ジビエと出会い、考えて料理し、それを味わって生まれた記憶の中に、魅力というのは生まれてくるのです。
 おそらくあなたは昨日食べた牛・豚・鶏肉の味なんて覚えていないと思います。しかしジビエは違います。特にあなたが自分の手で「命を奪って食べる肉の味」は一生思い出として残り続けます。

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獲物からジビエを“作り”出して、それを料理するまでが狩猟の魅力

まとめ

  1. 「ゲーム」の語源が「得た肉(目的)」を指すように、狩猟はあらゆるアウトドアに“目的”を与える
  2. 猟法やその人のスタイルで、獲物を得る(ゲームクリア)の解法は無限大。一生楽しめる趣味になる
  3. 遊びの狩猟で人から感謝を貰える唯一無二の趣味
  4. 獲物を食肉(ジビエ)に解体することは、非常に難しいがやりがいのある趣味になる
  5. 自分の手で命を奪った肉の味は、一生の思い出として残る

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