早くて・美味くて・酒が進む『イノシシのモツ煮込み』は、猟師のまかない飯

猟師のまかないモツ煮

厳しい寒さの中、山を駆け巡り、冷たい水の中で獲物を解体する猟師たち。彼らの仕事終わりに、冷えた体を温める定番の‶まかない料理〟、それがモツ煮込みです。この記事では、猟師たちの間で受け継がれてきた、シンプルながらも奥深いモツ煮込みのレシピをご紹介します。

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  1. 昔の猟師は‶ジビエ〟が商品だったので、まかない飯に使うのは内臓だった
  2. 使う内臓は主に、心臓や肝臓、舌などの赤モツと、アミアブラやケンネ脂などの脂肪層
  3. 先に内臓脂肪を炒めて油を出し、野菜やこんにゃく、心臓、舌を炒める。水や油は加えない
  4. 酒を加えて一気に揮発させて臭みを抜く
  5. 肝臓や腎臓、脾臓を加えてじっくりと煮込む
  6. 味付けは醤油とみりん、砂糖を適当な分量で。とりあえず濃い目に作る

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目次

食べれば体の芯まで温まる内臓料理

「猟師のまかない飯」と聞くと、『豪快にジビエを使った肉料理』を想像されると思います。しかし、かつての猟師にとって、獲物の肉は大切な‶商品〟であり、売ってお金に換えるものでした。そのため、彼らのまかない飯は、商品価値の付かない臓物、いわゆる「ホルモン」が使われていたというわけです。

まかない飯は時間との勝負

 その昔。まかない飯作りは、若手猟師の重要な仕事でした。先輩猟師が猟を終えて帰ってくるまでに、食事の準備を済ませておかなければなりません。今回のレシピを教えてくれた大ベテランの猟師(70代)のお話によると、少しでもまかない飯の提供が遅れると、「きさん、なんチンタラしとるんかっちゃ!(九州弁)」と、先輩猟師から厳しく叱られたそうです。

使う食材は、すぐに食べれて旨い部位

 まかない飯に使用する内臓の部位は、「下処理の手間」に対して「味が良い」部位を使用します。どこの部位を利用するかは猟隊にもよりますが、主に心臓(ハツ)と肝臓(レバー)、脾臓(チレ)、舌(タン)、ほほ肉などの‶赤モツ〟と、網脂(アミアブラ)、ケンネ脂(腎臓まわりに付く内臓脂肪)などの脂肪が多い部位を使います。
 内臓の種類と下処理の方法については、下記記事で詳しく解説をしています。

『猟師風モツ煮込み』の作り方

 ひと昔の先輩猟師は皆気が短いので、猟師のまかない飯は手早く作れるものでなければなりません。さらに、寒い体がすぐに温まる効果と、何はともあれ‶酒が進む〟料理でなければなりません。そのため猟師のまかない飯で定番だったのが、もつ煮込みです。

野菜は大根や白菜、そしてコンニャク

 モツ以外の食材は、大根や白菜、ニンジン、ゴボウなどの冬野菜、そしてコンニャクが定番です。野菜類は丁寧に短冊切りにしてもよいですが、適当な大きさにザックザックと切り分けるのが猟師風。猟師の世界には「飯が遅い!」と怒る人はいますが、「野菜の切り方が雑!」と怒る人はいません。

内臓の油で食材を炒める

 調理のポイントは、まず内臓脂肪が付いた部位(アミアブラ、ケンネ脂、マルチョウなど)を鍋で熱して油を出し、その油で心臓、タン、ホホ肉、そして野菜を炒めることです。
 追加で油を入れたり、水を加えると、料理が油っぽくなったり、水っぽくなります。内臓に含まれる油と水で
調理する
のが、最大のコツになります。

酒を加えて臭いを飛ばす

 大根やゴボウにある程度火が通ったら、酒を鍋の側面に振りかけて「バッ!」っとアルコールを揮発させます。アルコールは蒸発するときに、臭い成分を吸着して揮発する「共沸」という現象が起こります。そのため酒を加えるときは蓋をせずに、一気にアルコールを飛ばすようにしましょう。

醤油・みりん・砂糖で味付けをする

 アルコールが飛んだら、醤油、みりん、砂糖で味付けをします。分量は・・・・適当です。上品な料理であれば分量の説明も必要ですが、今回は『猟師のまかない飯』。とりあえずは、少し濃いめに味付けをしておきましょう。

肝臓、腎臓、脾臓を加えて煮込む

 調味料を加えたら火を弱め、肝臓、腎臓、脾臓を加えます。これらの部位は火を通しすぎると風味が損なわれるため、最後に加えるのが美味しく仕上げるコツです。

酒の肴にも!ご飯のおかずにも!

 気の短い先輩猟師から怒られない程度に煮込んだら、モツ煮込みを大皿に盛り、粉山椒を添えて出来上がりです。
 寒さと空腹でイライラしていた猟師たちも、モツ煮込みを前にすれば、お酒が進み、楽しい会話が始まるはずです。小言の多い先輩猟師には、とりあえず酒を飲ませておいて、とっとと寝てもらいましょう。

まとめ

  1. 昔の猟師は‶ジビエ〟が商品だったので、まかない飯に使うのは内臓だった
  2. 使う内臓は主に、心臓や肝臓、舌などの赤モツと、アミアブラやケンネ脂などの脂肪層
  3. 先に内臓脂肪を炒めて油を出し、野菜やこんにゃく、心臓、舌を炒める。水や油は加えない
  4. 酒を加えて一気に揮発させて臭みを抜く
  5. 肝臓や腎臓、脾臓を加えてじっくりと煮込む
  6. 味付けは醤油とみりん、砂糖を適当な分量で。とりあえず濃い目に作る

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