陸鳥の王が「キジ」だとしたら、水鳥の王は『マガモ』で間違いないでしょう。水面から飛び立つマガモを豪快に撃ち落とす猟趣に加え、光り輝くエメラルド色の頭が見目麗しく。さらに、肉質も良く味も美味いのですから非の打ち所がないターゲットです。しかしながら、マガモ肉のおいしさは「マガモだから」ではないことをご存じですか?その事実は、マガモと遺伝的にはほとんど同じであるアイガモの肉と食べ比べることでよくわかります。
マガモってどんな鳥?
マガモは北半球に広く生息するカモ科の鳥類で、日本国内では越冬のために飛来する渡り鳥(冬鳥)です。日本にわたってくるカモは約30種類ほどいますが、マガモはこの中で最も数が多く、北海道から沖縄の南西諸島まで広く分布します。
カモ類の中では最大種
マガモは全長約60 ㎝ で、一般的なカラス(ハシブトガラス)より一回りほど大きな体躯をしています。日本に渡ってくるカモの中では最大種になりますが、非狩猟鳥である「マガン」などのガンの仲間(“Goose”)の中にはマガモよりも大きい種がいるので、体の大きさだけで判別するのは避けましょう。
オスの判別は難しくないが、メスには要注意
日本に渡ってきた冬場のオスのマガモは、頭が特徴的なエメラルドグリーン色をしており、口ばしが黄色く目立つため、遠目&逆光からでも判別することは難しくはありません。
ただし、マガモのメスはオスとはまったく異なる見た目をしているので注意が必要です。マガモのメスは頭が褐色で、口ばしもくすんだオレンジ色と地味な見た目をしています。非狩猟鳥であるオカヨシガモのメスなどはマガモのメスと似た姿をしているので、慎重に判別をする必要があります。なお、大抵の場合マガモのメスはオスとつがい、または数羽の群れになっているので、状況的に推測をすることも可能です。
翼鏡は光沢のある青
頭部の色彩に加えて判別の材料としたいのが、翼鏡(よくきょう)です。翼鏡とは鳥の羽の中に混じる色彩が目立つ部分のことで、マガモの場合は「青・黒・白」が帯状になっている点が特徴です。逆境で姿がよく見えない状態でも翼鏡は光を反射してよく目立つので、判別手段として覚えておきましょう。
マガモはどうやって捕獲する?
狩猟の決まりである鳥獣保護管理法では、カモを含む“鳥類”を罠で捕獲することはできません。よってマガモを捕獲するのであれば、散弾銃か空気銃、または網を使用することになりますが、やはり銃を使った狩猟が初心者にもオススメです。
単独だけでなくグループ猟も面白い
銃を使ったカモ猟では近年『ハイパワーエアライフル』を使った猟法も増えていますが、散弾銃を使ったグループハンティングは今も昔も変わらず人気があります。詳しくは下記ページにまとめていますので、興味がある方は合わせてチェックしてください。
レトリバーと一緒なら楽しさ300%増し
グループでカモ猟を始めたいと考えている方は、是非『回収犬(レトリバー)』と一緒に猟ができるグループを探してみてください。特にマガモは他のカモに比べて体力があるため、散弾銃で撃ち落としても半矢になる(仕留めきれずに逃げられる)ことも多いです。そこで、水面に落ちたカモも泳いで追いかけてくれる回収犬の存在はとても重要!健気に追いかけて獲物を回収してくれる姿を見るだけでも、狩猟の楽しさは何倍にも高まります。
マガモ肉とは?
仕留めたカモはその場で下処理を行い、自宅で解体をしましょう。下処理の方法や解体方法については下記のページをご参考ください。
マガモ肉とアイガモ肉の違いとは?
マガモを食べたことがない人は、その味わいがどのようなものなのか気になると思います。しかし多くの方はマガモの肉を一度は口にしたことがあるはずです。なぜなら、一般的に「カモ肉」として市販されている『アイガモ』は、遺伝的に見てマガモとほとんど変わらないからです。
それでは、マガモとアイガモの肉質は全く同じかというと、そういうわけではありません。上の写真で左がアイガモ、右がマガモなのですが、運動量の多い野生鳥のマガモは家禽のアイガモに比べて肉が引き締まっており、無駄な脂肪分がほとんどありません。この違いによりマガモの肉はアイガモに比べてはるかに肉の“旨味”が凝縮されており、逆に言うと、アイガモよりも肉に“クセ”と“臭み”が強いといえます。
強い赤身肉は火入れが最大のポイント
マガモに限らずジビエのほとんどは、余分な脂肪分がないため火を入れすぎると肉質がパサパサになります。さらに、筋肉中に含まれるアラキドン酸という成分が熱により鉄分と反応し、いわゆる「レバー臭」と呼ばれる臭みを発生させます。
そこでマガモを調理するときは熱を加えすぎず、かつ、食中毒のリスクを最小限に抑えるように火入れをするテクニックが重要になります。具体的な調理方法については、下記の『シカ肉の焼き方』で詳しく解説をしているので、ご参考ください。
マガモ料理
マガモ料理といえば「鴨葱」と呼ばれるように、長ネギとの相性が抜群です。しかしネギ以外にも相性の良い野菜は多くあり、例えば「せり」や「パクチー」などのセリ科の野菜や、ゴボウや冬瓜、またソースとして酸味のあるオレンジなどの果物とも相性抜群です。マガモの肉質にはクセがあるので、そのクセを上手く操作するような組み合わせを研究してみましょう。
オススメは『骨と血』から出汁を取る
さて、鴨料理のレシピはちまたにいくらでも転がっていますが、ここでオススメしたいのが「血と骨」から取る出汁の存在です。はっきり言ってマガモの神髄は血と骨から出る出汁が本丸といっても過言ではありません。温室で育ったアイガモの出汁とは秘められた“エネルギー”がまるで違うマガモの出汁は、一度食べたら忘れることはできません!血と骨から出汁を取る方法についてはYoutubeでも解説動画を挙げているので、是非ご参考ください。
まとめ
- カモの中のカモ『マガモ』は獲って楽しく食べておいしい最高のターゲット
- アイガモと遺伝的には同じだが、マガモ肉の持つ旨味と力強さはまるで別次元
- 「血と骨」まで全部使って料理をすることが、マガモ料理の神髄