散弾実包の中ってどうなっているの?構成要素の『薬莢・ワッズ・弾薬・雷管・装弾』について詳しく解説!

 狩猟やクレー射撃でおなじみの散弾実包(ショットガンシェル)。ゲームや映画でも頻繁に登場しますが、その内部構造を知っている人は意外と少ないのではないでしょうか?今回は、散弾実包の仕組みを徹底解剖し、その構造と発射原理に迫ります。

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  1. 散弾実包は、薬莢、ワッズ、弾薬、雷管、装弾の5つで構成されている
  2. 散弾薬莢は、12番径のケース長2¾インチが主流
  3. ワッズは弾薬の燃焼熱から、装弾を守るための物
  4. 雷管は弾薬と薬莢の三位一体で、装弾を高速で飛ばすことができる
  5. 散弾銃の装弾には、散弾とスラッグ弾の大きく2種類がある

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目次

薬莢(ケース)

 薬莢(ケース)は、実包の本体とも言える部分です。本体となるシェルと、真鍮製の金属冠(ロンデル)で構成されており、ロンデルには雷管を取り付けるためのプライマーポケットがあります。

ケースの番径

 弾薬莢の口径は、番径(ゲージ)という単位で数値表記されます。この数値は「1ポンド(453グラム)の鉛球を発射できる口の大きさを〝1番〟とし、その分割数」で示されます。例えば、「8番口径」の散弾銃は、「1/8ポンド(57グラム)の鉛弾を発射できる口径」を意味します。
 番径の種類は多種多様ですが、現在の日本では12番、20番、410番の3種類が主に流通しています。

最も一般的な12番

左:410番 中:20番 右:12番


 散弾銃の口径の中で最も一般的なのが12番径です。発射時の反動や銃の重さなどが、人間が手に持って扱う銃としてちょうど良いサイズであるため、世界的に見ても散弾銃のスタンダードとされています。日本国内では、猟銃として所持できる散弾銃の上限が12番なので、狩猟用・標的射撃用に広く用いられています。

スラッグ用途で多い20番

 日本国内で12番口径の次に良く用いられるのが、20番口径です。主に「スラッグ弾」と呼ばれる一発弾を発射する用途で用いられます。20番口径のスラッグ弾は、12番口径よりも表面積が小さいため、優れた直進性を持ちます。

シカ狩り用途で用いられる410番

 410番は、「0.41インチ散弾薬莢」を意味する口径です。この口径はもともと「41口径ライフル銃」を改造して散弾実包を発射できるようにした散弾銃で、アメリカでヤマシギやライチョウなどの鳥類を捕獲する目的で使用されていました。
 日本ではあまり所持者は多くありませんが、20番口径よりも発射時の反動が小さく、直進性が高いことから、現在でもシカ猟(射程50m以内)をする狩猟者の間で用いられています。

ケースの長さ

 薬莢のケース長は口径と同じく様々なサイズがありますが、日本国内では、2½インチ、2¾インチ、3インチの3種類が流通しています。
 12番、20番口径の薬莢は2¾インチ(70mm)が主流であり、より大量の散弾を発射するさいには3インチ(76mm)の「マグナム」と呼ばれる薬莢が使用されます。410番口径は2½インチ(64mm)が用いられます。

散弾銃のサイズに合った薬莢を使用する

20番ショットガン

 使用できるケースの種類は、散弾銃の薬室の大きさによって決まります。例えば、「12番径散弾銃」には20番や410番の薬莢は使用できません。サイズが異なる実包を使用すると、銃の破損につながる可能性があるため、注意が必要です。

「薬室長70mm」に「3インチ薬莢」は使用できないので注意

 薬室長とケース長の組み合わせは、例えば「薬室長2¾インチ」の散弾銃には、ケース長2¾インチ以下(2½インチを含む)の薬莢が使用できます。よって、この散弾銃では〝3インチのマグナム薬莢は使用できない〟ので注意しましょう。
 「薬室長3インチ」の散弾銃であれば、「ケース長3インチと2¾インチ以下」の薬莢が使用できます。ただし、薬室長とケース長が異なると射撃精度が低下すると言われているため、原則として銃身の薬室の長さに合ったものを使用しましょう。

ケースの末端処理はロールクリンプかスタークリンプ

左:ロールクリンプ、右:スタークリンプ

 ケースを閉じる方法は、紙巻ケースの時代は厚紙の丸いフタをかぶせて周囲を蝋で固めるパイクリンプと呼ばれる方法が一般的でした。
 現在のプラスチックケースでは、散弾の場合は、末端をじゃばらに折り込んで閉じたスタークリンプか、スラッグ弾の場合は末端を巻き込んだロールクリンプが主流です。

ワッズ

最左「ワッズ」、左「足つきワッズ」、真中「ワッズカップ」、右「スラッグ用ワッズカップ」、最左「差し込み型ワッズ」

 散弾実包の中で、弾薬と装弾の間に挟まっている物がワッズです。ワッズの主な役割は、弾薬の燃焼熱から装弾を守ることです。弾薬の燃焼熱が直接装弾にかかると、溶けて粒同士がくっ付いたり、銃身内部に張り付いたりする危険性が高くなるため、ワッズが熱や衝撃を吸収するようになっています。

フェルトを固めたワッズ

 ワッズはもともと、その名の通り、羊毛や布を固めた“wad‟で作られた物を指します。このワッズは、発射時に銃身内壁と隙間なく密着することで燃焼ガスの熱を防ぎ、また、圧力を無駄なく装弾に伝える役割を持ちます。
 このタイプのワッズは、金属薬莢時代は散弾にも使用されていましたが、近年では散弾用にプラスチック製のワッズが開発されたため、スラッグ弾と呼ばれる単発弾でのみ使用されています。

散弾用のワッズカップ

 
 散弾用のワッズは、容器状の形をしワッズカップが用いられます。このワッズカップには足が付いており、発射時に衝撃を吸収することで、散弾の変形を防ぐ効果を持っています。

複雑で色々あるワッズの種類

サボット

 ワッズの中には、硬質なプラスチックで弾頭をつつむタイプも存在します。このタイプはサボットと呼ばれており、ライフル銃身付きの散弾銃(ライフルドショットガン)で、中に入った弾頭を回転させながら撃ち出す目的で使用されています。
 このサボットに関しては、下記記事で詳しく解説しています。

弾薬(ガンパウダー)

 現在使用される銃用の火薬は、無煙火薬(スモークレスパウダー)と呼ばれるもので、ニトロセルロースを主原料に様々な添加剤を加えて安定化させたシングルベースと呼ばれる火薬が用いられます。

散弾銃用とライフル用で異なる

 弾薬は、組成はもちろん、サイズや形状によっても〝燃焼するスピード〟が変わってきます。例えば散弾銃の場合、ワッズごと装弾を高速で射出させるために、素早く燃焼する弾薬を用います。
 対して、ライフル銃の場合、弾はライフリングにめり込みながら進むため、燃焼が早すぎると銃身内が異常高圧になる危険性があります。そのためライフル実包の弾薬は、散弾実包よりも燃焼スピードが遅くなるように調整されています。

散弾実包の火薬は、薄いフィルム状になっている

 現在主流の散弾実包で使用する弾薬は、薄いフィルムを細かい円形状に裁断した形状をしています。この形状により、弾薬は瞬時に燃焼し、ワッズと弾薬に素早く燃焼圧力を加えることができます。

ライフル実包の弾薬

 ちなみに、ライフル実包の弾薬は俵型をしています。フィルム状よりも表面積が小さいため、燃焼スピードが緩やかになります。

雷管(プライマー)

散弾銃の雷管

 雷管の中には、ジアゾジニトロフェノールなどの化学物質が詰められています。この化学物質は、強い衝撃を加えることで爆発するという性質を持ちます。いうなれば、超強力な〝カンシャクダマ〟です。

弾薬と雷管の〝反応〟の違い

火薬の燃焼・爆轟

 弾薬と雷管は、法律上は『猟銃用火薬類』とまとめられていますが、化学反応的には大きな違いがあります。まず、弾薬の反応は燃焼(デフラグネーション)と呼ばれ、光と熱を出しながら緩やかに反応します。
 一方、雷管の反応は爆轟(デトネーション)と呼ばれ、熱と共に衝撃波を発生させ、瞬間的に反応が終わります。

雷管・弾薬・薬室の三位一体で弾は発射される

雷管の役割は火薬を瞬時に燃焼させること

 銃が弾を高速で発射されるためには、雷管の爆轟と、火薬の燃焼、そして銃の〝薬室〟という閉鎖的な空間の3つが必要となります。弾薬は、薬室の閉鎖空間内で高温の衝撃波を受けることにより、瞬間的に高圧力を生み出すことができるのです。

雷管だけでは弾は発射されない

雷管を直接叩いても弾はポロっと飛び出るだけ

 余談ですが、雷管の爆轟で装弾を発射することは可能ですが、発射された弾にはまったく威力がありません。実際に、散弾のハンドロード(実包の手詰め)を行う狩猟者が〝弾薬を入れ忘れた実包〟を撃ったところを見たことがありますが、「ぽん!」という音と共に散弾が10m程度しか飛んでいませんでした。
 ライフル銃でも、火薬を入れ忘れた実包を撃つと弾頭が銃身の途中で止まる停弾というトラブルを引き起こします。

装弾(ペレット)

 散弾実包に充填される装弾は、小粒の散弾(ショット)単発弾(スラッグ)など、様々な種類があります。

散弾銃は「なんでも撃ち出せる銃」


ドラゴンブレス弾(4:40)

 散弾実包は、薬莢に収まる物であれば、基本的に何でも撃ち出すことができます。例えば、海外には、花の種(フラワーシードショット)や、爆竹(バードボム)、鳥を追い払うための笛(ホイッスルショット)、弾頭や矢状のダーツショット、マグネシウムの塊を発射して火炎放射器のように使うドラゴンブレスといったものまで、実に様々です。
 もちろん、日本では散弾銃を狩猟か標的射撃でしか使用することができないため、ドラゴンブレスやフラワーシードなどは国内に売っていません。あしからず。

国内で流通しているショット

 日本国内で使用されている粒弾(ショット)は約13種類ほどあります。散弾は、その大きさによって、バックショットバードショットに分かれています。
 散弾の使い分けは、一応、上図のように言われていますが、厳密な決まりはありません。一般的に、カモ猟には「1~4号弾」と言われていますが、実際はトラップ競技に用いられる7½号でも落とせたりします。

スラッグ弾にも色んな種類がある

スラッグ弾の種類修正

 薬莢に一発だけ弾を充填するスラッグ弾は、粒弾やライフル弾よりも古い歴史を持っています。そのため、世界には何十種類以上ものスラッグ弾が存在し、その性能はまったく異なります。
 スラッグ弾について詳しくは、下記記事で紹介しています。ご興味があれば、併せてご参考ください。

おわりに

  1. 散弾実包は、薬莢、ワッズ、弾薬、雷管、装弾の5つで構成されている
  2. 散弾薬莢は、12番径のケース長2¾インチが主流
  3. ワッズは弾薬の燃焼熱から、装弾を守るための物
  4. 雷管は弾薬と薬莢の三位一体で、装弾を高速で飛ばすことができる
  5. 散弾銃の装弾には、散弾とスラッグ弾の大きく2種類がある

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