銃は”所持し続けること”の方が難しい『銃所持許可の更新・失効・取消し』

 長きに渡る銃所持許可の試練を超え、「ねんがんの”銃”をてにいれたぞ!」と、喜びに湧きたつ気もわかります。しかし銃は”所持すること”以上に、”所持し続けること”の方が大変だったりします。そこで銃所持編最終話となる今回は、銃を所持している人は必ず理解しておかなければならない、銃の管理について解説をします。

目次

所持許可の失効

  1. 自己の意思に基づいて、所持しないことにした場合
  2. 許可を受けた日から3か月以内に銃を所持しなかった場合
  3. 所持者が死亡した場合
  4. 銃を不正に、または同一性を失わせる程度に改造した場合
  5. 違法な所持又は不正な携帯や運搬を理由に提出を命ぜられた場合、又はこれらが裁判の結果没収された場合
  6. 日本体育協会などの推薦を受けて許可を受けた者が、推薦を取り消された場合
  7. 更新を受けなかった場合

 銃所持者が、まず覚えておかないといけないのが、許可の失効(効果がなくなること)です。所持許可が失効する条件は上記7項目。それぞれ詳しく見ていきましょう

「銃はもういらない」となったとき

 「銃はもういらない」と思ったときは、銃砲店に銃を売却または廃棄として譲り渡しましょう。このとき銃の許可は『抹消』という形で失効します。

抹消手続きは銃砲店が代理でやってくれる

 抹消の手続きは本来、生活安全課で許可事項抹消申請書を提出しなければならないのですが、銃砲店経由で失効させた場合は銃砲店が代理で手続きをしてくれます。

すべての銃が失効した場合、所持許可証は返納する

 所持していたすべての銃がすべて失効した場合、所持許可証は公安委員会に返納します。銃砲店で手続きをする場合は、最後の1挺を銃砲店に渡すさいに、併せて所持許可証も一緒に渡すことで、銃砲店が代わりに所持許可証を返納してくれます。
 最後の1挺を個人で譲り渡した場合は、生活安全課に銃砲刀剣類所持許可証等返納届出書を提出して返納します。

許可が下りて3か月以内に銃を所持しなかった場合

 所持許可証が交付されて3か月を過ぎても仮押さえをしていた銃を所持しなかった場合、その許可は失効します。取り直す場合は再び所持許可申請をしないといけないので、忘れないように注意しましょう。

銃所持者が死亡した場合

 銃所持者が死亡した場合、その人が所持している銃はすべて失効します。そのため 死亡届出義務者(家族や親族、保佐人、家主など)は、本人が死んでから10日以内に、生活安全課へ所持許可証を返納しに行かなければなりません。

死亡後の銃は50日以内に銃砲店へ

 死亡者の銃は50日以内に銃砲店へ譲り渡してください。手続きがわからない場合は、公安委員会がその銃を引き取る場合があります。
 死亡後の銃の手続きは、残された家族が困らないようにあらかじめ処理方法を伝えておきましょう。何も知らない家族が“遺品”だと思って銃を持ち続けたり、ゴミだと思って勝手に捨てたりすると違法になるので注意しましょう。

銃を大きく改造した場合

 所持している銃の全長や銃身長、機能などを改造した場合、その銃の所持許可は失効します。引き続きその銃を持ちたいのであれば、50日以内に『新しい銃』として所持許可を申請しなければなりません。

改造は許可を受けた銃砲店で

 ちなみに銃の改造は自分の手で行ってはいけません。これは武器等製造法という法律で制限されているためで、改造をする場合は武器等製造の届け出をした銃砲店で行うようにしてください。
 改造した銃を新銃として所持許可申請する場合は、銃砲店から発行された『改造証明書』が必要になります。

銃の違法な管理で、提出が命じられた場合

 銃の所持や携帯、運搬で違法が指摘された場合、公安委員会は所持者に対して銃の提出を命じることがあります。このとき、違法性の是非に関わらず所持許可は失効します。
 また、裁判所の判決で銃が没収された場合も所持許可は失効します。

日本体育協会等の推薦が取り消された場合

 10歳から18歳未満の年少者が標的射撃用に銃(ハンドライフル・エアライフル、エアピストル)を所持する場合、エアピストルは日本体育協会の、ハンドライフルとエアライフルは都道府県体育協会の推薦状が必要になります。これらからの推薦が取り消された場合、年少者が持つ銃の所持許可は失効します。

所持許可の更新

 銃の所持許可は取得すれば永久に有効というわけではなく、更新をする必要があります。更新には所持許可申請時と同じく、猟銃等講習会とクレー射撃による講習の修了証明書が必要になるので、その準備も済ませておかなければなりません。

所持許可の有効期限は『3回目の誕生日』まで

銃の所持許可の更新フロー

 銃所持許可の有効期限は、『3回目の誕生日』までとされており、これを過ぎると所持許可は失効します。よく『所持許可の有効期間は3年間』と勘違いしている人がいますが、それは違います。例えば所持許可を受けた日が誕生日の前日だった場合は、1回目の誕生日が翌日に来るので、所持許可の有効期間は『2年と1日間』になります。

更新期間は『3回目の誕生日の3か月前から2カ月前』

 有効期限を過ぎても同じ銃を所持したい場合は、所持許可を更新します。更新申請の受付期間は『3回目の誕生日の3か月前から2カ月前』とされており、この期間中に所持許可申請と同じ書類を提出して更新申請をします。
 更新申請期間を過ぎた場合、その銃はもう更新はできず、3回目の誕生日の日に失効します。もし再び同じ銃を所持したいのであれば、失効後に新しく所持許可を申請します。この場合、『ライフル銃10年縛り』のカウントダウンはリセットされるので注意しましょう。
 なお、所持許可の失効後50日以内であれば合法的に所持できるので、銃をわざわざ銃砲店に譲り渡す必要はありません。しかし新しく所持許可が下りる間は、その銃で射撃や狩猟はできません。

更新期間の特例

罹災時の銃所持更新

 所持許可の更新申請期間は上述の通りですが、病気や災害、海外出張などのやむおえない理由がある場合は、期間を過ぎても更新ができる場合があります。詳しくは下記ページをご参考ください。

経験者講習と技能講習

 更新申請には、猟銃等講習会と教習射撃の修了証明書が必要になります。しかしこれらの有効期限は3年間と1年間なので、新しく受けなおす必要があります。
 すでに銃を所持している人が受けるのは、猟銃等講習会(経験者講習)になります。この経験者講習には、初心者講習のような講義や考査は無く、簡単な講習が3時間程度あるだけです。
 教習射撃の方は技能講習となり、使用する銃は自分が所持している銃で講習を受けることになります。なお技能講習は、有害鳥獣駆除や管理捕獲に携わっている人は免除される特例があります。

講習は早めに受けておくこと!

 猟銃等講習会(経験者講習)と技能講習は、都道府県ごとに毎月1、2回のペースで開催されます。すなわち、これらへの受講は少なくとも更新申請期間中よりも前に済ませておかなければなりません。
 「更新期間に入ってから、更新の準備を始めればいいや~」なんて思っていると、講習修了証明書が手に入らずに、そのまま失効してしまう可能性があるので注意しましょう。

所持許可の追加

 銃を追加で所持したい場合、現在持っている所持許可証に追加する形で、所持許可を受けることができます。申請に必要な書類は、初めての1丁を申請したときと同じですが、許可証が発行されないため手数料は6,800円と少し安くなります。

銃を追加する目的は何か、考えておく

 これは法律で決められているわけではないのですが、銃を追加で所持する場合、「なんで銃を増やす必要があるのか?」を必ず聞かれます。このとき、ちゃんとした理由や目的を言えないと、所持許可が下りない場合があるので注意しましょう。
 「ちゃんとした理由や目的」とは、例えば「1丁目は狩猟用(半自動式)で、2丁目はクレー射撃用(上下二連式)」といった感じです。所持する銃が2丁目の場合は「1丁目のメインの銃が故障したときの予備」と言えば、大抵は認めてくれるはずです。

追加した更新年度を合わせる

 銃を隔年で追加した場合、更新期間は銃によってバラバラになるので、申請の手間がかかります。そこで2丁目からの銃の更新は、有効期限を1年分短縮する形で、1丁目の銃の更新年度に合わせることができます。更新年度を合わせると、医師の診断書の提出や、面談の回数が1回で済むようになるので、更新の手間が大きく削減されます。
 ただし更新年度を全ての銃で合わせておくと、万が一更新期間を過ぎてしまった場合、全ての銃が失効します。こうなると技能講習を受けられなくなるので注意しましょう。

所持許可の取消し

 銃の所持許可を受けた人が、銃刀法や火薬類取締法などに違反した場合や、欠格事項に該当するようになった場合は、所持許可が取消しされます。所持許可が取り消された場合、銃は公安委員会から提出が命じられて仮領置されます。
 なお、違法行為により取消を受けた場合、絶対的欠格事項の基準により、一定期間所持許可を受けられなくなります

『ねむり銃』による取消し

ねむり銃による所持許可の取り消し

 許可を受けた目的に3年以上使用された実績が無い場合、その銃は「ねむり銃」と判断されて、所持許可が取り消される可能性があります。
 銃の使用実績は、更新申請時にクレー射撃のスコアカードや、射撃場のレシートなどがエビデンス(証明書類)になります。捨てずにとっておきましょう。

火薬類の管理

 猟銃の所持者は、銃の管理だけでなく、火薬類の管理も行わなければなりません。そこで、火薬類の購入や消費、管理、運搬などについても、理解しておきましょう。

火薬類の購入

 猟銃用火薬類(実包など)を購入する場合は、事前に所轄の生活安全課で猟銃用火薬類等譲受許可証の交付を受けます。この許可証には、購入できる数量と『狩猟・標的射撃・有害鳥獣駆除』のいずれかが記載されており、その名目に沿った火薬(実包)と数量までしか購入できません。

どのくらいの数量が購入できるかは実績による

 購入できる火薬類の数量は、銃の使用実績によって増減します。例えば初心者の場合800発ぐらいが一般的で、クレー射撃をよく行っている人は3,000発ぐらい出ます。
 なお、この許可証の有効期限は1年間です。期限が切れた場合は購入できる残弾数が残っていても、許可証は失効します。

目的以外の実包は購入できない

 例えば『標的射撃』の名目で散弾実包の譲受許可を受けた場合、トラップ用の7.5号弾、スキート用の9号弾、スラグ射撃用のスラグ弾しか購入できません。カモ用の3号弾や5号弾、空包などは購入できません。

火薬類の消費

 実包(空包を含む)は、狩猟の場合は 1日に 100発まで標的射撃の場合は400発までしか発射できません。この数を超えて実包を消費する場合は、公安委員会から猟銃用火薬類等消費許可を受けなければなりません。
 厳しい決まりのように思えますが、狩猟で1日に100発発射する機会なんてまずありません。またクレー射撃においても、400発撃つには1日に16ラウンド・・・かなりのヘビープレイヤーでなければ消費しきれない数です。一応知識として覚えておきましょう。

火薬類の保管

火薬の種類
保管の上限
実包と空包の合計
800発
無煙火薬と黒色火薬の合計
5kg
猟銃用雷管
2000個

 自宅の装弾ロッカーで保管できる猟銃用火薬類の量は、上表のように上限が決められています。もしこれを超えて保管する場合、敷地内に火薬庫を作らないといけません。

狩猟用途は最大1年

 狩猟の用途で許可を受けて購入した火薬類は、その猟期が終わって1年後まで(つまり次の猟期の終わりまで)、装弾ロッカー内で保管できます。1年を過ぎた火薬は、銃砲火薬店に廃棄をお願いする必要があります。

標的射撃用は出来る限り早く消費

 標的射撃(クレー射撃等)の許可を受けて購入した場合は、保管期限はありません。しかし、何発撃つかわからない狩猟であれば仕方がありませんが、標的射撃ではどのくらい消費するかあらかじめわかっています。なので、あまり長く火薬を保管していると、銃砲検査のときに「残火薬は処分してください」と指示される可能性があります。

有害鳥獣駆除の場合は、有効期限満了から3カ月以内

 有害鳥獣駆除の名目で購入した弾は、標的射撃と同じように保管期間に決まりはありません。しかし、経済産業省が平成18年に「従事者証の有効期限から3か月以内に消費してください」と内規を出しています。

火薬類も自分で管理

 装弾ロッカーの鍵は、ガンロッカーと同様に自身の手で管理しなければならず、他人に鍵をあずけたりすると違反になります。また火薬類は18歳未満の人に取り扱いをさせてはいけません

火薬類の廃棄と譲渡

 有効期限の過ぎた猟銃用火薬類や、“不発”を起こした実包を廃棄する場合は、銃砲火薬店に持ちこんで処分を依頼します。処分料は銃砲火薬店により異なりますが、1発十数円かかります。

火薬類をゴミに捨てると大問題になる!!

 火薬類を一般ごみなどに紛れ込ませて捨てては絶対にいけません。ゴミ集積場から銃の弾が発見されるケースは過去に何度もあり、火薬類等取締法違反の事件となったこともあります。

実包の製造

 実包や空包を製造する行為は、製造許可を受けた業者でなければ行えません。しかし、1日に100個以下であれば、許可を受けずに個人で製造することが認められています。これはハンドロード(手詰め)と呼ばれており、個別に購入したケースとワッズ、火薬、雷管を組み合わせて、専用の器具(ハンドローダー等)を使って製造します。

管理帳簿の作成

 自宅で保管している猟銃用火薬類は、銃用雷管・猟用火薬管理帳簿(実包等管理帳簿)を作成して管理します。この帳簿は銃砲の検査時に提出しなければならないため、正確に作成しましょう。
 帳簿は、特に決められた書式はありませんが、保管している弾や火薬の種類、個数(重量)を明記します。消費した場合は、いつ、どこで、どのくらい消費したかを明記します。帳簿は手書きでなくてもよいので、Excelなどのフォーマットをダウンロードして使い、印刷して提出するのがお手軽です。

火薬類の輸送

 猟銃用火薬類を持ち運ぶときは、専用のジェラルミンケースや、鍵付きのアンモボックスに収めて、他の荷物と混包しないようにしましょう。銃と一緒のケースに入れておくと、万が一盗難が起こったとき、すぐに犯罪に使用される危険性があるので厳禁です。
 また、各公共交通機関の運行規定(鉄道運輸規定、旅客自動車運送事業運輸規則など)により、運搬できる猟銃用火薬類の量が下記のように決まっています。ただし、会社の規定によっても異なるため、事前に確認しておきましょう。

交通機関の種類
運搬の上限
列車空包の合計200個以内
無煙火薬類等の合計1kg以内(容器等を含める)
銃用雷管400個以内
バス実包と空包の合計50個以内
船舶実包と空包の合計200個以内
猟用装弾400個以内
無煙火薬類等の合計1kg
飛行機猟銃用火薬類5㎏以内(手荷物不可)

まとめ

  1. 所持許可が失効すると、50日以内に銃を手放さないといけない
  2. 所持許可の有効期限は『3回目の誕生日』まで。引き続き所持したい場合は『3回目の誕生日の3か月前から2カ月前』の間に、更新申請を行う。
  3. 猟銃所持者は、併せて火薬類の管理についても理解しておく

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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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