滋養満点!『イノシシ肉』は豚肉とはまったく異なる力強い旨味が最大の特徴

猪肉

 ジビエの代表格「ジビエ・オブ・ジビエ」ともいえるのがイノシシ肉です。イノシシはブタの原種なので味わいの方向性としては豚肉と同じですが、厳しい野生の中で揉まれて過ごした力強い肉の旨味と、「サクサク」とした脂身の食感が家畜のブタとは大きく違います。

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肉質と脂身の食感が、“肉”の常識を凌駕する!

イノシシのカツレツ

 わたしたちがよく知るブタは、もともとは野生のイノシシを飼いならした家畜なので、イノシシとブタは生物学的にいうと、実はまったく同じ動物です。しかし“肉の味わい”という点においては、狭い厩舎の中で一生を過ごすブタと、大自然の中を動き回るイノシシとでは、雲泥の違いがあります

1つ目の違いは、味の濃さ

 豚肉はみなさんも良く知る美味しい食材ですが、あなたは今まで豚肉に強い主張を感じたことがありますか?たとえ野菜炒めに美味しい豚肉が入っていたとしても、あなたの感想は「美味しい“野菜炒め”を食べた」になるはずです。
しかし、もしその野菜炒めにイノシシ肉が入っていたとすると、一噛みごとに歯を押し戻す力強さと、あふれ出す旨味に、あなたは間違いなく「この”イノシシ肉”は美味しかった」と感想を述べることでしょう。

2つ目の違いは、脂身の質。

イノシシ醤肉

 イノシシ肉と豚肉のもう一つの違いが脂の食感です。豚肉の脂身は、濃い甘みと、ねっとりとした食感があります。しかし言い方を変えれば、味がくどく、喉にベタ付き、苦手な人も多い食感です。
 これに対してイノシシ肉の脂身は、自然な甘味と、サクサクとした歯触りが特徴で、豚肉のような“むつっこさ”(油っぽい感じ)がありません。
 また自然の中に生きるイノシシは、ホルモン剤等の化学薬品はもちろん、飼料に含まれる農薬、防カビ剤、遺伝子組み換え植物などを一切食べていないため、その脂身は ナチュラル・ファット(&グラスフェッド・ミート)です。このように、イノシシ肉は
 ① 濃い旨味と、力強い噛みごたえがある肉質。
 ② 自然な甘みと舌ざわり、さらに安全性を兼ね備えた脂身。

という、魅力を持っているのです。

肉はもちろん内臓も。イノシシに捨てるとこなし。

イノシシの部位


 イノシシの部位は、解体方法によって若干違いがありますが、大きく肩ロース、ウデ肉、背ロース、バラ肉、ヒレ肉、モモ肉、スネ肉の7種類に分類できます。さらにモモ肉は”ハム”と呼ばれる筋肉の塊が集まってできているので、食感の違いにより、内モモ肉(トップラウンド)、外モモ肉(ボトムラウンド)、尻肉(ランプ)、シンタマ(ナックル)などの部位に分けることができます。

「ぼたん」と呼ばれる肩ロース・背ロース

イノシシの枝肉

 食味としては、やはり”最上級”を意味する「ロース」の名を持つ、肩から背中にかけた肉が、最も味わい深い部位です。特に、脂の乗った肩ロース・背ロースは、薄切りにすると脂身の白と筋肉の赤が牡丹の花びらのように見えるため、よく「ぼたん肉」という名で呼ばれています。

1頭につき2本しか取れない希少部位のヒレ肉

 腰の内側に付いている筋肉は「ヒレ肉」と呼ばれ、運動量がほとんどないため、柔らかな食感の部位です。牛肉や豚肉でも希少な部位としても知られています。ロースのように焼いて食べても良いですが、油分がほとんどないため、”ヒレカツ”のように揚げ物にすると絶品です!

脂身と肉のコントラストが美しいバラ肉

 腹周りのバラ肉は、筋肉と脂肪の層が折り重なっているため、「三枚肉」とも呼ばれます。料理には普通の 豚のバラ肉のように薄切りにして使っても良いですが、タコ糸で結んでタレに漬け込み、チャーシューや醤肉(ジャンロー)にするのがオススメです。

しっかりとした肉質で食べ応えがあるモモ肉

 イノシシのモモ肉とウデ肉は、野山を駆け巡るために鍛えられているので、肉質は固く、脂身もほとんど付いていません。しかしその分、肉厚で旨味があるので、カレーやシチューなどの煮込み料理や、薄くスライスして炒め物に向いています。

スネ肉は知らなきゃ損する一番の美味

 スネ肉は筋が多くて食べづらく、扱いとしても「ジャンクミート」とされています。しかし、実は最も旨味が強い部位なので、丁寧に筋を引いて肉を叩き、餃子やハンバーグにすると最高です!骨付きのまま圧力鍋で茹で、ドイツ料理の”アイスバイン”のように料理するのもオススメです。

ハンターならば、内臓料理も楽しめる!

 また、あなたがハンターであれば、是非食べていただきたいのが”内臓”です。 沖縄には「豚は鳴き声とヒヅメ以外、全部食べる」という言葉があるように、イノシシは肉だけでなく、心臓や肝臓、肺、腎臓、胃腸など、すべての部位が食べられます。これらイノシシのモツは、一般的に流通しない食材なので、イノシシの内臓料理を楽しめるのは、ハンターの特権といえるのです。

1月以降のオスは発情臭がでることがあるので注意

イノシシ

 イノシシ肉を選ぶさいは、1月以降に獲れたオスに注意しましょう。これは1月ごろから3月頭にかけてのオスイノシシは、脂身に樟脳(しょうのう)のような蝋臭い発情臭が出るためです。
 もちろん、獲れた場所や個体によって、味わいに差があることもジビエの魅力の内なのですが、ジビエ初心者の方は、できれば避けた方が良いでしょう。
 ジビエを販売している獣肉処理場では、獲物がとれた季節や場所、性別、個体の大きさなどが細かく記録されているため、購入するときには「いつ獲れたか?」や「性別は?」といった確認をしてみるとよいでしょう。

まとめ

  1. イノシシ肉の魅力は豚肉以上の味の濃さと、ナチュラルファットな脂の旨味
  2. 肉もうまいが内臓もうまい。内臓が食べられるのはハンターの特権
  3. 1月以降に捕獲されたオスは発情臭が出ることがあるので注意

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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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