日本の国鳥は美しく・美味い。『キジ肉を食べよう!』

 日本人に太古から親しまれてきた国鳥のキジは、狩猟の世界においても人気の高いターゲットです。 しばしば、「国鳥を狩猟するなんて酷い!」といった意見が聞かれますが、そもそもキジが国鳥に選ばれた理由は、その姿が美しいことに加え、「狩猟のターゲットとして面白く、またその肉を食べて美味しいから」だとされています。

目次

キジってどんな鳥?

 キジは、北海道と対馬を除く日本全国に分布している鳥です。ユーラシア大陸には『コウライキジ』と呼ばれるキジによく似た種が生息していますが、近年の研究によると、日本に生息している、いわゆる”桃太郎に出てくるキジ”は、中国などに生息しているキジとは別種であり、日本の固有種だとされています。

草むらに住む大型の鳥

捕獲したキジ

 キジは、オスの全長が約80㎝、メスは約60㎝ほどで、国内に生息する鳥類の中では比較的大型です。羽の色は「キジ柄」と呼ばれる焦げ茶色と銅色が波状に表れるグラデーションが特徴で、羽毛は光の加減でエメラルド色~深緑に見える、美しい色をしています。また目の周りには、真っ赤な肉垂(にくすい)が付いており、真っ白なクチバシと合間って、遠くからでも頭部がよく目立ちます。

飛ぶより走ることの方が得意

 キジの生息場所は、草地や河川敷などの平坦な土地で、特に大豆やトウモロコシといった穀物畑が側にあるヤブを好みます。その他にも、河川敷や工場と工場の間にある緑地帯、また道路脇の草むらなど、身近な場所にも潜んでいます。
 キジは体が大きいため飛ぶのがあまり得意ではありません。よって、一般的な鳥のように木の上に登ることはほとんどなく、危険を感じると走ってヤブの中に潜り込むように逃げます。その走るスピードは驚くほど速く、時速30㎞以上にもなると言われています。

キジの狩猟方法

 キジ猟は、日本はもとより、特に欧州の貴族たちの間で盛んに行われていました。そのスタイルには大きく、①猟犬を使役した猟法②踏み出し猟③エアライフル猟の3つがあります。

猟犬を使役した伝統猟法

 古来より欧州では、ポインターやセターと呼ばれる犬種を使ったキジ猟が盛んにおこなわれていました。これらの犬種は、鋭い嗅覚を使ってヤブの中に潜むキジを見つけ出し、キジの目の前で「お手(ポイント)」や「伏せ(セット)」と呼ばれる行動をとります。

 目の前に猟犬が立たれたキジは、ヤブの中で体を縮めてやり過ごそうとします。この間、散弾銃を持ったハンターは、猟犬がキジを釘付けにしている場所まで移動し、射撃の準備が整え、犬笛を吹いて合図をします。合図を受けた猟犬はヤブの中に飛び込み、キジは驚いて飛び立とうとするので、飛び出した瞬間を散弾銃で撃ち落とします。

猟犬を使役しない『踏み出し猟』

 ポインターやセターを使役したキジ猟は、人間と猟犬のコンビネーションが光る、まさに”王道”とも呼べる狩猟スタイルです。しかし、ポインターやセターが行う猟芸は、優秀な血統と、子犬のころからの訓練が必要となり、ものすごくお金と時間がかかります。そこで、猟犬を持っていない”庶民的” な 狩猟者は、『踏み出し猟』と呼ばれるスタイルでキジ猟に臨みます。
 踏み出し猟とは、散弾銃を持った状態でヤブの中を歩き回り、キジが驚いて飛び出したところを射撃する猟法です。やることは単純ですが、キジが潜んで良そうな場所に目星をつける勘や、急にキジが飛び出しても、落ち着いて装填・発砲をするテクニックが必要とされる、とても難易度が高い狩猟スタイルです。

PCPエアライフルを使った猟法

 近年「トレンド」ともいえるキジ猟が、エアライフルを使用した猟法です。数十年前までは、エアライフルといえば「スズメやハトを撃つ銃」とされていました。しかし近年、キジやカモなどの大型鳥を狙撃できる威力と射程距離を持った 、PCP(プレチャージ式)と呼ばれるタイプが登場してきたことにより、エアライフルでキジ猟が盛んになってきました。
 エアライフルは、発射音が散弾銃に比べて遥かに小さいことから、田んぼや畑といった民家が近い猟場でも、気兼ねなく発砲できます。またキジは、銃を向けられてもその場にジッとしていることが多いのため、スコープ越しにじっくりと狙えるという面白さがあります。

キジを食べよう!

 私たちがよく口にする「ニワトリ」は、実はキジ科の鳥です。よってキジの肉質は、ニワトリの肉質とよく似ています。しかしその味わいは、市販の鶏肉とは大きく違います。

味わいは”超地鶏”

 キジ肉の食味を一言で表すとしたら「スゴい地鶏」です。その肉質はギュッと引き締まっており、噛めば噛むほど豊かな旨味が染み出します。
 ただし、キジ肉には脂身がほとんど付いていないため、ジューシーさはありません。皮下脂肪もほとんど付いていないので、羽を剥くときは皮も一緒に処理してしまってもよいでしょう。

キジの真髄は“出汁”にあり

 キジ肉の味は素晴らしいのですが、実を言うとキジは肉よりも、その骨や筋から染み出す出汁に真価があります。よって、解体した後の”ガラ”は捨てずに、水からゆっくりと煮出して、スープを取りましょう。なお、出汁の旨味は、骨や肉に残った血液からも染み出るので、ガラはなるべく水洗いしないようにしましょう。

キジの水炊き

 スープを濾して灰汁を取り除いたら、適当な大きさに切ったキジ肉と野菜、豆腐、キノコ類などを加えて、水炊き(醤油や味噌などで味付けをしない鍋)にしてみましょう。旨味の質はニワトリの鳥ガラスープに似ていますが、香りに独特な芳醇さがあり、キジの真価を味わうことができます。
 余談ですが、宮中の祝い料理には、薄く削ぎぎったキジ肉に薄く塩をまぶし、炙ってから熱燗に入れて味わう『キジ酒』というものがあります。これもひとつ、キジの出汁から出る香りを楽しむ逸品だと言えます。

キジの炊き込みご飯

水炊きのスープが余ったら、ニンジンや厚揚げなどと一緒にご飯を炊き、『キジ出汁の炊き込みご飯』を作ってみましょう。米一粒一粒にコーティングされたキジの豊潤な香りがたまりませんっ!

まとめ

  1. 日本の国鳥キジは、『見てよし、狩ってよし、食べてよし』
  2. キジ猟は、猟犬を使役した猟、踏み出し猟、エアライフル猟などがある
  3. キジ肉は『スゴい地鶏』。しかしその真価は出汁にある
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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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