ゼロイン(Zeroing)

ゼロイン(または「サイティングイン」)とは、照準器を覗いたときの中心(照準線)と、実際に弾丸が飛んでいく軌道(弾道)が交わるまでの距離のことです。このゼロインを、想定する標的(獲物)との距離に合わせることで、実際の射撃時に弾道の落下(ドロップ)を考慮せずに射撃をすることできます。

目次

「ゼロイン」の基本的な考え方

ゼロインの必要性1

 地球上の物体はすべて、重力によって『毎秒9.8m』の加速度で落下します。これは超高速に飛んでいく弾頭も例外ではなく、弾頭は銃口から射出された瞬間から、重力の影響を受けて落下していきます。そのため、遠方の標的を正確に狙うためには、弾丸が放物線を描くように、銃口をわずかに〝上に向けて〟発射する必要があります。

照準線と弾道に角度を付ける

ゼロインの必要性2

「弾丸を斜め上に発射する」という考え方は、実際には非現実的です。なぜかというと、弾丸の落下量は『発射速度と標的までの距離』によって変化するため、毎回「どの程度斜め上を狙うか」を考慮して射撃をすることは、現実的には難しいからです。

あらかじめ照準器を傾けておくことが「ゼロイン調整」

 先述の問題を解決する方法が、『照門と照星にあらかじめ角度をつけておくこと』です。まず、使用する弾頭の銃口での速度がわかれば、弾頭が飛んでいく弾道を正確に求めることができます。さらに、照星と照門が作る照準線に角度を付けることで、弾道が交差する距離を求めることができます。
 この、傾けた照準線と弾道が交差する距離を「ゼロイン」と呼び、照準線に角度を付けるように照門の高さを調整することをゼロイン調整と呼びます。

ゼロイン調整の実例

ゼロイン調整
 ゼロイン調整は、標的までの距離が30mまたは50mある大口径ライフル射撃場で行います。なお、小口径(競技用)射撃場は標的までの距離が10mしかないため、狩猟用途でのゼロイン調整には適していません。

①銃と標的紙をセットする

 射撃場に到着したら、銃をガンバイス(ガンレスト)に固定し、標的の中心に照準を合わせます。標的台には的紙をセットしますが、これは正式な競技用の標的紙ではなく、弾痕がわかればどのような紙でも構いません。

②スポッティングスコープを準備する

スポッティングスコープ

 グルーピングを確認するには、標的まで近寄って確認する必要がありますが、毎回的紙まで移動するのは手間がかかります。そこで、スコープよりも高倍率のスポッティングスコープを使用します。なお、空気銃の射撃場には弾痕確認用モニターが設置されているところもあります。

②5発ほど試射をする

 準備が整ったら、的紙の中心にレティクルの中心を合わせて5発ほど射撃します。5発撃っても的紙に弾痕が見当たらない場合は、照準器の取り付け位置が大きくずれている可能性があります。その場合は、的紙をより近い位置に設置し直して、再度試射を行いましょう。

③ダイヤルを回して着弾点を調整する

ゼロイン調整

 標的の弾痕を確認したら、中心からどのくらいズレているか測量しましょう。ズレた距離をもとに、照準器についている各種ダイヤルを回して調整します。
 スコープの場合は、エレベーションダイヤル(上下方向)とウィンデージダイヤル(左右方向)を回して弾痕が中心に集まるように調整します。アイアンサイトの場合は、照門の高さを調整しましょう。

④再度試射を行う

ゼロイン調整
 調整ができたら、再度5発発射して弾痕を確認します。この調整を何度か繰り返して弾痕が中心に集まるようになったら、照準器(照準線)と銃身の向き(弾道)の間に、標的までの距離(50m射撃場なら50m)のゼロイン調整が完了したことになります。

ゼロイン調整後の注意点

ゼロイン調整後の注意点

 

 ゼロイン調整が完了したら、エレベーションダイヤルとウィンデージダイヤルは触らないようにしましょう。また、ゼロイン調整後は、使用する弾薬の種類(弾頭の重量、火薬量など)や、空気銃の場合はパワーレベルを変更すると弾道が変化し、ゼロインがずれてしまうため注意が必要です。
 射撃を繰り返すと、振動などによってゼロインが徐々にずれてしまうことがあります。そのため、1年に1回、できれば猟期前にゼロイン調整を行うようにしましょう。

ゼロイン前後の射撃方法

ゼロインの照準補正

 ゼロイン調整を50mに設定した場合、50m先の標的であれば、照準の中心を合わせれば命中します。しかし、標的が50mよりも遠い場合は、弾道が落下するため、照準点よりも少し上を狙って発射する必要があります。逆に、標的が50mよりも近い場合は、弾道が上昇しているため、少し下を狙って発射する必要があります。

距離測定の重要性

 精密な射撃を行うためには、標的までの正確な距離を把握することが重要です。距離を測定する方法としては、以下の2通りがあります。
①ミルドットやMOAといった距離測定機能を持つスコープを使用する。
②レンジファインダーを使用する。
 ミルドットやMOAは、スコープのレティクルに組み込まれた目盛りを利用して、目標物までの距離を簡易的に測定する機能です。レンジファインダーは、レーザー光線などを用いて、目標物までの距離を正確に測定することができます。

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