エアレギュレータ (Air regulator)

エアレギュレータは、プレチャージ式(PCP)空気銃において、供給する気圧を一定化させる装置です。シリンダー内の空気圧は射出ごとに低下していきますが、エアレギュレータを介すことで一定に保たれます。これにより、ペレットの初速が安定し、ショットカウントが向上します。

目次

エアレギュレータの役割

エアレギュレーター説明

 PCP空気銃は、射撃回数が増えることにより、シリンダー内の空気圧が低下していきます。そのため、射撃回数が増えるほど、射出するペレットの初速が低下してしまい、ゼロイン調整時の着弾点よりも下に着弾するようになります。
 PCP空気銃が〝十分な性能を発揮できる発射回数〟のことをショットカウント(ショットパーフィル)と言います。エアレギュレータは、このショットカウントを一定に保つという役割を持ちます。

PCP機構の仕組み

 エアレギュレータの仕組みを理解するには、まずPCPの基本構造を押さえておく必要があります。PCP機構は、大きく分けて以下の3つのパーツで構成されています。

  1. トリガーユニット: 引き金を引くと、内部のストライカー(ハンマー)がバネの力で解放され、バルブを叩くための駆動力を生み出します。
  2. バルブチャンバー: ペレットが装填された銃身へ高圧空気を送り込むためのバルブとポートを備えています。バルブは通常、ステム(弁棒)によって閉じられています。
  3. エアシリンダー: 200気圧以上の高圧空気を貯蔵するタンクです。PCPエアライフルの動力源となります。

これらのパーツが連携して、下図のようなプロセスでペレットを発射します。

PCPエアライフルの仕組み2D

 イメージとしては、お風呂の栓を例に挙げると分かりやすいでしょう。ストライカーが栓を叩いて開け、エアシリンダー内の高圧空気が水圧のようにペレットを押し出すわけです。

安定性の高い圧力帯

PCP気圧と発射圧の関係

 PCP空気銃の性能を左右する重要な要素として、エアシリンダー内の空気圧、そしてその圧力変化があります。先ほどのお風呂の栓の例えで考えてみましょう。

  • シリンダー内の圧力が高い場合: 桶の水が多すぎる状態です。水圧が高すぎて栓を叩いてもなかなか開かず、うまく排水できません。PCPエアライフルでは、バルブの開きが不安定になり、ペレットの初速にバラつきが生じます。
  • シリンダー内の圧力が低い場合: 桶の水が少ない状態です。水圧が低いため、勢いよく排水することができません。PCPエアライフルでは、ペレットを射出する力が弱くなり、初速が低下します。

 このように、PCP空気銃はエアシリンダー内の圧力が高すぎても低すぎても、ペレットの初速が安定せず、命中精度に悪影響を及ぼします。そこでPCP空気銃では、その銃における最も最適な空気圧帯、俗にいう「おいしい空気圧帯」で使用する必要があります。

エアレギュレータの仕組み

エアレギュレータの仕組み2D

 エアレギュレータは、先ほど述べた「おいしい空気圧帯」に射出圧を一定化させる機能を持っています。その仕組みはメーカーによって様々ですが、一般的にはスキューバダイビングのレギュレータにも使用されているバランスフロースルーピストンバルブが応用されています。
 このレギュレータは、気圧を受けて縮むピストンと、中空になっているパイプ、樹脂製の柔らかい素材で作られたバルブシートで構成されており、エアシリンダー(高圧側)とバルブチャンバー(低圧側)の間に装着します。

エアライフルのレギュレータの仕組み2D2

 レギュレータのピストンは、あらかじめ設定された圧力(図例では150気圧)でバネが縮みきり、パイプの口がバルブシートに押し付けられて閉じる仕組みになっています。
 ③でストライカーがステムを叩くと、バルブチャンバーの圧力(=レギュレータ内の圧力)が低下して、バネの反発力でパイプがバルブシートから持ち上がります。すると再びエアシリンダー内からの圧力がレギュレータ内に流入し、⑤のようにレギュレータ内の気圧を一定に保ち続けることができます。

エアレギュレータの短所

 エアレギュレータは以上で解説した通り、PCP空気銃の精度向上に大きく貢献します。しかし一方で、いくつかのデメリットも存在します。

  1. 最高速度(最大パワー)の低下
     エアレギュレータは、シリンダー内の高圧空気を意図的に減圧して一定の圧力に保つ仕組みです。そのため、レギュレータ非搭載の場合に比べて、ペレットの最高速度は低下します。
     特に、「エアスラッグ」などの重量級ペレットの使用を前提とした機種は、高圧帯の空気圧を最大限に活用することで高い威力を実現しています。そのためエアレギュレータを装着すると、圧力が制限され、本来の性能を発揮できなくなる可能性があります。
  2. 故障のリスク増加
     エアレギュレータ内部には、気密性を保つためにOリングなどのゴム部品が使用されています。このOリングは経年劣化や使用状況によって摩耗・破損しやすく、定期的なメンテナンスや交換が必要になります。PCP空気銃本体にもOリングは使用されていますが、エアレギュレータを追加することで、Oリングの使用箇所が増え、それだけ故障のリスクも高まります。

付ける?付けない?迷ったときは

 空気銃にエアレギュレータを搭載するかどうかは、あなたの狩猟スタイルによって大きく左右されます。以下に「搭載しない方が良いケース」と「搭載した方が良いケース」を挙げているので、ご参考ください。

不要な例

  • 1回出猟で数発しか撃たない場合
    シリンダー内の空気圧低下による影響は小さいためで、レギュレータの恩恵はあまり受けられません。カモ猟やキジ猟、また罠の止め刺し用など、発射する機会が少ないようであれば、エアレギュレータの搭載は見送ったほうが良いかもしれません。
  • エアタンクを猟場に持ち込む場合:
    車にエアタンクを積んで猟場を回る場合、車に戻るごとにエアチャージをすれば、エアレギュレータを搭載する必要はありません。
  • 〝ノックアウト〟を重視する場合:
    重量弾を高威力で発射する場合、獲物を即死(ノックアウト)させる可能性が高くなります。自身の狩猟スタイルでノックアウトを優先させるのであれば、エアレギュレータを搭載せずに、高圧帯を使えるようにしたほうが良いでしょう。

有効な例

  • カワウやカラス駆除など、長時間同じ場所で射撃を行う場合
     多くの弾数を消費するため、空気圧低下による精度への影響が大きくなります。エアレギュレータによって安定した初速を維持することで、命中率向上に繋がります。
  • 精密射撃でバイタルポイントを狙うスタイルの場合:
    射撃1発目と2発目の気圧差による着弾誤差は極微妙だとはいえ精密性に影響を与えます。あなたが精密射撃を重視するハンターなのであれば、エアレギュレータを搭載した方が安心だと言えます。

エアレギュレータの取り付け方

 一般的にエアレギュレータは、そのエアライフルのメーカーが推奨するメーカーの製品を購入して取り付けます。取り付け作業はDIYで行うことも可能ですが、高圧機器であるエアライフルを自身で分解するのは非常に危険です。必ず銃砲店で取り付けてもらいましょう。

まとめ記事にもどる

  • URLをコピーしました!
目次