狩猟や標的射撃(クレー射撃等)を始めたい場合、まず必要になるのが”銃”という道具です。しかし銃は、人を殺傷したり凶悪な犯罪に使用されたりする危険性があるため、誰でも彼でも自由に持てるわけではありません。そこで今回は、『日本で銃を持つ方法』について、詳しく見ていきましょう。
日本で民間人が所持できる銃
日本では銃砲刀剣類所持等取締法により、民間人が銃を持つことが厳しく制限されています。しかし、すべての銃が所持禁止になっているわけではありません。例えば、建設作業用の『鋲打ち銃』や、家畜を安全に屠畜するための『屠殺銃』、救命救急用に使用される『信号銃』などの銃は、民間人が所持するのに“正当な理由”があるため、公安委員会の許可を受けることで所持が許されています。
民間人が所持できる”猟銃”
数ある銃の中で、散弾銃、サボット銃、ライフル銃の3種類の銃については、狩猟・有害鳥獣駆除・標的射撃のいずれかの用途に限り、民間人でも合法的に所持できます。これらの銃は総称して猟銃と呼ばれています。
余談ですが、「護身」や「ホームディフェンス」、「コレクション」といった理由は、アメリカでは銃を持つ”正当な理由”とされていますが、日本では認められていません。
民間人が所持できる空気銃(ハンドライフル・エアライフル)
民間人が所持できる銃には空気銃と呼ばれるタイプもあります。空気銃は大きく6種類に分けられ、この中でエアソフトガンは誰でも自由に所持でき、準空気銃、空気散弾銃は民間人は所持できません。
エアピストル、ハンドライフル、エアライフルの3種類は、公安委員会の許可があれば民間人でも所持できます。ただし、エアピストルは標的射撃の用途のみ、ハンドライフルとエアライフルは 狩猟・有害鳥獣駆除・標的射撃のいずれかの用途に限ります。
猟銃・空気銃所持許可制度
民間人が所持できる銃の中で、猟銃(散弾銃・サボット銃・ライフル銃)と空気銃(ハンドライフル・エアライフル)は同じ猟銃・空気銃所持許可制度と呼ばれる制度内で所持できます。対して、エアピストルをはじめとする、スポーツ用の拳銃や屠畜銃、鋲打ち銃といった銃は銃所持許可制度と呼ばれる制度内で所持できます。
本サイトは、狩猟やクレー射撃、また有害鳥獣駆除をメインコンテンツとしているため、猟銃・空気銃所持許可制度についてのみ詳しく解説をしていきます。
猟銃・空気銃でも所持が許可されない例
「猟銃・空気銃は、公安委員会の許可があれば所持できる」と述べましたが、銃の機能によっては所持できない場合があります。例えば、引き金を引いただけで弾が自動発射される連続自動撃発式銃(アサルトライフルなど)は所持できません。また、銃身が極端に短いタイプや、杖や傘に偽装された銃、銃の全長を大きく変えることができる銃、また、戦闘用に特化した銃(例えばタクティカルショットガンなど)は、『狩猟やスポーツ用にふさわしくない』という理由で、許可が下りません。
これら猟銃・空気銃の基準については、『3:所持する銃を選ぼう』で詳しく解説をします。
猟銃・空気銃所持許可制度とは?
猟銃・空気銃は公安委員会の許可を受ければ民間人でも所持できます。しかし、「所持させてください」「はいはい良いですよ」みたいな簡単な話ではありません。
銃は使い方を一歩間違えれば恐ろしい凶器になるため、所持するためには厳しい審査をこえなければなりません。
日本における銃の所持許可制度には、一銃一許可と事前許可という2つの原則があります。これをわかりやすく理解するために、銃所持許可と自動車免許の違いで解説しましょう。
一銃一許可の原則
車の免許の場合は、普通自動車免許を取れば、どんな普通自動車でも自由に運転できます。その車が自分の買ったスポーツカーであっても、友達に借りたコンパクトカーであっても、運転することは問題ありません。
しかし銃の所持許可の場合は、銃1丁に付き1人のみしか所持許可を受けられないという、一銃一許可の原則があります。そのため車のように共有して使うことはできません。
事前許可の原則
また自動車の場合は、運転免許を取得する前でも車を購入しておくことはできます。しかし銃の場合は、所持許可が下りるまで銃を手元に置いておくことができないという事前許可という原則があります 。つまり「とりあえず銃だけ先に買っておいて、所持許可はいつか取ろう」といったことはできません。
銃を所持できない人の決まり
銃の所持許可制度には、“銃を所持できない人”の基準があります。この基準は欠格事項と呼ばれており、次のような項目があります。
人に関係する事項 | 猟銃は20歳未満、空気銃は18歳未満の人 (※狩猟免許が取得できるのは20歳以上) |
破産者で復権していない人 | |
住所不定の人 | |
精神障害や認知症などの特定の病気の人 | |
アルコール、あへん、大麻等、薬物中毒の人 | |
自分の行為の是非を判別できないと認められる相当の理由がある人 | |
他人の生命や公共の安全を害する、もしくは自殺のおそれがあると認められる相当の理由がある人 | |
集団的、または常習的に暴力的不法行為、その他の罪に当たる違法な行為を行う可能性があると認められる相当の理由がある人。(※暴力団関係者や、反社会勢力に属する人) | |
犯罪歴に関係する事項 | 禁錮刑以上の刑に処せられて、執行が終わってから5年を経過していない人 |
人の生命や身体を脅かす凶悪な罪(殺人や強盗など)、または銃砲刀剣類を使用した凶悪な罪で、禁錮刑以上の刑に処せられて、違法な行為をした日から10年を経過していない人 | |
禁錮以上の刑に処せられた人で、その刑の執行が終わった日から5年を経過していない人 | |
銃砲刀剣類を使用して罰金刑以上の刑に処せられて、執行が終わってから5年を経過していない人 | |
DV(ドメスティックバイオレンス)防止法による命令を受けた日から3年を経過していない人 | |
ストーカー防止法による警告・命令を受けた日から3年を経過していない人 | |
過去に銃砲の所持許可の取消処分を受けたことに関係する事項 | 年少射撃資格の認定を取り消された日から5年を経過しない人 |
過去に銃砲の所持許可を受けていた人で、取消処分を受けて処分が下った日から5年を経過していない人 | |
所持許可の取り消しの聴聞会の期日、場所が公示された日から、その処分をする日、または処分をしないことを決定する日までの間に、その処分にかかる銃砲を他人に譲渡し、その他自己の意思に基づいて所持しないこととなった日から5年を経過しない人(※要約すると、行政処分が下りる前に銃を手放して処分逃れをしようとしても、欠格事項になる) | |
虚偽の申請 | 所持許可の申請書や添付書類に虚偽の記載、または事実を記載しなかった人 |
欠格事項には「欠格事由に当たっても場合によっては資格が認められることのある」という、相対的欠格事項もあります。
同居者に関係する事項 | 自殺志望者、薬物中毒者、行動の是非を判断できない者など、絶対的欠格事項に該当する人と同居中の人 |
猟銃空気銃所持許可の流れ
日本で猟銃・空気銃を所持するためには、
- 所持する目的が、狩猟・有害鳥獣駆除・標的射撃のいずれかであること
- 所持する銃が用途に適したタイプであること
- 欠格事項に当てはまっていないこと
が条件になります。
この3点がクリアできているのであれば、以下のフローで所持許可を申請します。
➀ 猟銃等講習会(初心者講習)を受講する
銃所持許可の初めの一歩は、所轄の警察署で猟銃等講習会(初心者講習)を受講することです。この講習では、銃を所持するための法律や、銃の扱いに関する講義があります。さらに講義最期には考査(筆記試験)があり、これにパスをしなければなりません。
➁ 教習射撃を受講する
猟銃等講習会(初心者講習)をパスしたら、次に教習射撃を受けます。この教習射撃は、射撃場に備え付けられている散弾銃を使って、実際にクレー射撃競技を行います。教習の最後には実技試験がありますが、重視されるのは銃を持ったときのマナーや扱い方です。初めての銃で緊張するかもしれませんが、リラックスをしてのぞみましょう。
なお、所持したい銃が空気銃の場合、教習射撃はありません。
➂ 銃を仮押さえする
教習射撃をパスしたら、次に自分が持ちたい銃を選びます。銃の購入は、人から譲ってもらったり、インターネット上で購入したりできますが、初めての人は銃砲店に赴いて探すのが良いでしょう。どのようなタイプの銃を選ぶかは、銃を持つ人の目的(狩猟か?標的射撃か?)や好みによります。あなたのパートナーとなる銃を見つけましょう!
➃ 所持許可を申請する
所持したい銃を選んだら、いよいよ公安委員会へ銃の所持許可を申請しましょう。所持許可の申請には色々な書類が必要になります。初めは混乱するかもしれませんが、漏れの無いように準備しましょう。
➄銃を管理する
所持許可の申請が通ったら、猟銃・空気銃所持許可証が交付されます。「ついに念願の銃を手に入れたぞ!」・・・と嬉しくなるかもしれませんが、ちょっと待ってください!銃は所持するのも大変ですが、”所持し続けること”もとても大変です。よって、銃の更新や管理方法、また銃を手放すときの処理方法などを、しっかりと理解しておきましょう。
まとめ
- 日本で銃を所持するためには『明確な目的』と『欠格事項に該当していないこと』が必要
- 猟銃・空気銃を所持したい人は、『猟銃・空気銃所持許可制度』に沿って公安委員会から許可を受ける
- 猟銃・空気銃所持許可制度の大雑把な流れは、
➀猟銃等講習会(初心者講習)をパス
➁教習射撃をパス
➂所持したい銃を仮押さえ
➃所持許可申請