【初心者でもわかる】ライフル実包の『ハンドロード』を解説【動画あり】

 火薬や弾頭などの部品を購入し自宅で弾を製造するハンドロード(手詰め装弾)は、特にライフルを扱う狩猟者の間でよく行われています。自分で自分の弾を作れるようになると、射撃はより一層楽しくなります!
 そこで今回は、ライフル弾のハンドロードについて、そのメリット・デメリット、使用する道具、具体的な工程などについてお話をしていきたいと思います。

目次

ライフル実包の構造

 本題に入る前に、まずは基礎知識として、ライフル実包の仕組みについて簡単にお話をします。ライフル実包は、発射物となる弾頭、弾頭を加速させるための火薬、火薬に火を付けるための雷管、そしてこれらをひとまとめにする薬莢の4要素で構成されています。
 なお、私が使っている『6mm弾』などについては下記の回でもお話しています。ご興味のある方はそちらもご覧ください。

弾頭

 弾頭には、形状と重さで複数の種類があります。私が使っているのは、6mm(.243口径)80グレインのスピッツァーボートテール。
 ところで、ライフルの用語では重さの単位にグラム(g)ではなくグレイン(gr)を使います。馴染みの無い人も多いかと思いますが、これはイギリスの重量単位系で、銃の技術発祥はイギリスが多いため、現在でもイギリス式の単位系が使われています。1グレインは「大麦1粒」の重さらしく、1グレイン0.065gで変換できます。

火薬

 火薬は燃焼速度や形状が違い、様々な種類があります。例えば、散弾銃はワッズカップごと弾を「スポン!」と飛ばすため、火薬は「パッ!」っと燃える速燃タイプが使われます。
 対して、ライフルの場合は弾頭をライフリングにかみ合わせるために、力強く「グググッ・・・」と押さないといけないため、火薬はジックリと燃える遅燃タイプが使われます。
 同じライフル用の火薬でも燃え方には違いがあります。私はIMR4350という火薬を使っていましたが、使用している軽量弾頭との相性が気になってきたので、最近では別の火薬を色々と試すようになりました。

雷管

 雷管には”炸薬”という、叩くと火花が出る化学物質が込められており、写真の赤く見える部分がそれです。銀色の面を撃針が叩くと発火して、薬莢内部の火薬を燃焼させ弾頭が飛んでいくという仕組みです。
 雷管にも種類がありますが、私はフェデラルのラージ雷管というタイプを使っています。
 

薬莢

 私が使用しているのは243ウィンチェスター薬莢は、基本的にリサイクルして使っています。使いまわしの薬莢は、不自然な膨らみ(ヘソ)や、マウスの部分の亀裂、錆びや大きなへこみができた場合は廃棄しています。

使いまわせる回数は薬莢の種類による

 使いまわせる回数は、243ウィンチェスター薬莢の場合は10回ぐらいでしょうか。火薬を多く使うマグナム装弾の薬莢は、2,3回ぐらいしか持たないと聞いたことがあります。 
 本当であれば、「その薬莢を何回使ったか」はわかるようにしておくべきなんですが、私の場合はいつも混じってしまい、わからなくなってしまいます。

より厳密に洗うならケースタンブラーなどを使う


 使用済みの薬莢はススが付いたりするので、リサイクルするさいには綺麗に洗浄します。クルミ殻を入れたケースタンブラーという専用洗浄機があります。眼鏡洗浄用に使う高周波洗浄機を使う人もいますね。
 私の場合は・・・洗うのが面倒くさいので汚い薬莢を使ってます。ただ、今回は写真の左5本は撮影用に磨きました。右の5本は磨いていない薬莢ですが・・・違いってわかりますかね?

ハンドロードとは?

「自分で装弾を作る」と聞くと、なんだか難しそうに思えますが、ハンドロードは購入してきた部品を自分で組み合わせるだけなので、それほど難しい作業ではありません。
 細かい器具の説明などは後ほどするとして、ひとまずハンドロードの仕方について動画を撮りましたのでご覧ください。

どこで買うの?

 薬莢や弾頭、火薬、雷管は、銃砲火薬店で購入します。薬莢・弾頭は誰でも購入することができますが、火薬と雷管は火薬類取締法という法律で所持が厳しく規制されています。そのため、住んでいる所の警察署で猟銃用火薬類譲受許可証という許可証を発行してもらい、そこに記載されている分量だけを購入します。
 狩猟や有害鳥獣駆除で使用する場合は、猟友会から無許可譲受票という紙がもらえ、雷管300個(ライフル用は内50個まで)、火薬600g以下までなら、警察署から許可証を貰わなくても購入できます。

 

どうやって作るの?

機材名用途
ケースタンブラー使用済みケースの表面を洗浄する
リサイジングオイル整形時に弾頭とケースの焼き付きを防止する
プライミングツール使用済みのプライマーを取り出し、新しいのを装着する
面取りカッター薬莢口のバリを取り除く
プレス圧力をかけて薬莢を整形したり、クリンプを作ったりする
リサイズダイスプレスの圧着部に装着して、薬莢を整形する。
シーティングダイスプレスの圧着部に装着して、弾頭を圧着する
パウダーメジャー火薬量を規定量取り出す
重量計薬莢に込める火薬を正確に測る
ノギスリロードした弾の全長を測る

 ハンドロードでは、上表に示すような様々な工具類を揃える必要があります。ただ、もちろんこれらが”全部必須”というわけではありません。後ほどお話しますが、私のような貧乏猟師は全てをそろえることなどできないので、必要最低限の工具だけでハンドロードを行っています。

ハンドロードのデメリット

 自分で実包を製造するハンドロードに対して、すでに組まれた状態になっている実包をファクトリーロード(既成装弾)と呼びます。
 ぶっちゃけた話をすると、ライフル実包は以下にお話する理由から、ファクトリ―ロードの弾を購入した方が楽だったりします。

初期投資が必要

 ハンドロードには専用の工具類が必要ですが、これらの工具は決して安くはありません。値段は品質や使用する薬莢の口径などによっても変わってきますが、一般的なRCBSというメーカーのセット商品と、その他必要な道具を揃えて、総額10万円ぐらいかかります
 私の場合は貰い物が多いのですが、それでも5万円ぐらいかかっています。

結構面倒くさい

 ハンドロードの手順はそれほど難しくはありませんが、結構面倒くさいです。特に火薬の量は間違えると銃が故障する危険性もあるので、しっかりと計らなければなりません。
 もちろん、気力が充実した状態で作業をすればよいのですが、だいたいハンドロードをするときは、その日の猟で弾を使いすぎたときです。猟から帰ってきてクタクタの状態で、「明日使う弾が心もとないから補充しなくちゃ・・・」と渋々行うことが多いので、ハンドロードを楽しむ余裕はあまりなかったりします。

帳簿が大変

 ライフルにせよ散弾銃にせよ、銃の弾を買ったり使ったりした場合は、実包管理帳簿という帳簿に記録していかなければなりません。
 さらにハンドロードを行う場合は、使用した火薬のグラム数と、雷管の数を猟用火薬管理帳簿という帳簿にも記録しなければならず、実包管理帳簿と併せて管理しなければなりません。
 エクセルなどで電子帳簿化していれば手間が省けるんですが、手書きの帳簿だと非常に面倒くさいです。

何があっても自己責任

 ハンドロードで最も恐ろしいのがヒューマンエラーです。例えば、火薬を入れ忘れた状態の弾を使うと、弾頭は雷管の力だけで銃身内を進み、途中で止まります。この停弾の状態になってしまうと、非常に厄介なことになります。


 ライフルの弾は、ライフリングの溝に噛ませて回転力を加えるために、銃身の口径よりも少し大きめに弾頭が作られています。なので、停弾の状態とは、銃身のライフリングに「ガッチリ」と噛み合った状態であり、ちょっとやそっとでは取り出せないのです。
 まぁ、この場合でも、銃身を取り外して金属ロッドで詰まった弾を「ガツガツ」叩きまくれば取り出すことはできます。ただ、停弾状態に気が付かず次弾を発射した場合はものすごく危険で、銃身が破裂して大ケガをすることもあります。
 

ハンドロードのメリット

 ハンドロードにはデメリットがありますが、当然、それ以上にメリットもあります。

自分好みに造れる

 ハンドロードの一番のメリットは、ある程度好みの弾を造れることでしょう。例えば私の場合、猟場に倒木などの障害物が多く、獲物を狙いにくいことが多いので、なるべく直進性が高く反動の弱い弾で射撃がしたいと思っています。そこで私はファクトリーロードの弾よりも”軽い弾頭”にするために、ハンドロードをしています。
 他のライフルマンの中には、逆に「重たい弾頭を使いたい」という人もいますし、「火薬の量を増やしたい」という人もいます。こういった射手の好みに応じて弾をカスタマイズできるのが、ハンドロードの最大のメリットだと言えます。

精度が出せる

 ライフル射撃では、激発の瞬間に発火で銃身が振動するバイブレーションという現象を起こし、精度に大きな影響を与えます。
 このバイブレーションは、使用する火薬の量と銃自体の相性によって変わるので、火薬の量を最適に調整できれば、バイブレーションによる誤差を最小に抑えることができます。
 具体的には、銃身の振幅(揺れの波)が水平(0)になった時点で弾が抜けるように火薬を調整できれば、バイブレーションの影響を無視することができるのです。

安く造れることもある

 ライフル実包の弾頭、火薬、雷管は消耗品ですが、薬莢は真鍮製の金属で作られているので何度かリサイクルできます。よってハンドロードは薬莢の値段分だけファクトリーロードよりも値段を安く抑えることができます
 ただし、流通の多い装弾だと在庫コストなどが転嫁されるので、ハンドロードとファクトリーロードの値段に差がほとんど生まれなかったりします。

 ちなみに、私が使用している243ウィンチェスター弾の場合、ファクトリーロードでは1発290円~500円(税別)ぐらいします。これをハンドロードで作ると、140~150円ぐらいで作れてしまいます。

ハンドロードの工具類

 私はとても貧乏なので、最初は道具を借りてリローディングをやっていました。現在では少しずつ買ったり貰ったりして揃えてはいますが、未だに持っていない道具もあります。
 ただ、逆に言えば、今回ご紹介する道具をそろえておけば、必要最低限ではありますがハンドロードを行うことができます

リローディングプレス

 ハンドロードで必要になるのが、このプレス機械です。プレスには台座が付いており、そこに薬莢をセットします。そして、スロットマシーンの棒みたいなのを下げると台座が上がっていき、上部に取り付けられたダイスに「グイ」っと押し込まれます。
 プレス機械は、多くの人がアメリカのRCBSというメーカーの製品を使っています。値段はだいたい4万円ぐらいだったと思います。

ダイス

 ハンドロードで利用するダイスは、使用する薬莢の種類(口径)に合わせた物が必要で、さらにいくつかの種類があります。私の場合は243ウィンチェスター薬莢を使っているので、243ウィンチェスター用のダイスを使用しています。

フルレングスダイとシーターダイ

 上の写真は私が実際に使っているダイスですが、左の頭が尖っている方が『薬莢の整形と使用済み雷管抜きを同時に行う』ためのもので、フルレングス・ダイといいます。右のやつは『弾頭の挿入』するためのもので、シーター・ダイといいます。
 ライフルのハンドロードでは、多くの人がこのフルレングス・ダイとシーター・ダイのセットを使っていますが、その他にも色々あります。

ダイスの種類と役割は色々ある

 例えばネックサイザー・ダイというダイスは、フルレングス・ダイのように薬莢全体を整形するのではなく、薬莢のネック部分だけを整形します。
 一度使用した薬莢をネックサイザー・ダイで整形すると、ショルダー以下の部分は膨れたままなので、薬室にピッタリサイズで収まります。そのため、ボルトアクションライフルでは「精度が出る!!」・・・・と、信じられています(信憑性は謎です)。
 なお、セミオートライフルでは回転不良が出るらしいので、ネックサイザー・ダイは使用しないようにしましょう。

シェルホルダー

 シェルホルダーは、プレスで薬莢を固定するために使用します。ダイスと同じように、薬莢の種類に合った物を用意しましょう。
 シェルホルダーはハンドプライミングツールでも必要になります。そのため、プレス用とプライミングツール用の2つを持っておいた方が楽です。

パウダースケール

 火薬の量を計測する「はかり」です。入れたい火薬の量に目盛りを併せて、天秤の上に火薬を載せていくと、丁度の分量のところで左の針が「0」を指します。
 見た目は古臭いですが、かなり精密に作られており、誤差はほとんど出ません・・・というか、精密すぎて、少し風が吹いただけでユラユラ揺れます
 冷房の無い我が家では窓も開けれず、扇風機もつけれず・・・夏は本当に辛いッ!!

ワックス

 薬莢全体を整形するフルレングス・ダイは、凄い力で金属を押し縮める必要があります。よって、押し縮めた瞬間に熱を持ってしまい、ダイスに張り付いて抜けなくなってしまう場合があります。そこで、このワックスを使い、金属同士が熱で癒着しないようにします。
 余談ですが、私の猟友さんの中に、このワックスの存在を知らない人がいました。その人のリローディングの光景を見せてもらったんですが、ダイスから「ギギギ・・・」とヤバそうな音がしてました。張り付きはしていませんでしたが、ダイスの寿命は明らかに減りそうです。

ここまでが必要最低限な道具です。次からは、あれば便利な物たち。

ハンドプライミングツール

 右の丸い部分に雷管を入れて、左のハンドル部分に薬莢をセットします。この状態でハンドルを握ると、自動的に薬莢底部のくぼみ(プライマーホルダー)に雷管が挿入されます。
 RCBSのプレス機には雷管を装着する仕組みもあるのですが、これを使うのは操作がメンドクサイです。このプライミングツールがあれば、薬莢をセットして「ガッチャン!」、セットして「ガッチャン!」とテンポよく作業ができるので、とても便利です。ちなみに頂き物。
 ただ、中途半端にハンドルを握ってしまうと雷管が中で詰まってしまい、分解して取り出さないといけなくなるので注意が必要です。

パウダーファンネル

 薬莢の口にあてがって、火薬を流し入れる漏斗(ファンネル)です。これが無いと、紙などを折って火薬を入れることになります。それはそれで雰囲気はバツグンなんですが、こぼすと再度計測する羽目になります。不器用な人はファンネルを使いましょう。

スプーン

 火薬を取り分けるのに使用する匙です。一番下の黒いやつがお気に入り。確か、ケンタッキー・フライドチキンのコーヒーについてたマドラー。これでも我が家では由緒ある火薬計量スプーンです。

パウダーメジャー

 使用する火薬量をセットしておき、ハンドルを下げると定量が出てくる装置です。特に必要性を感じてはいなかったのですが、人から頂ける機会があり、ありがたく頂戴しました。
 使ってみた感想ですが・・・なかなか便利ですねぇ。多少バラつきがあるので再計量し微調整が必要ですが、かなり時間短縮には役立っています。

まとめ

  1. ハンドロードとは、薬莢・弾頭・火薬・雷管を自分で組み合わせて実包をつくること
  2. ハンドロードは、正直言うと面倒くさい。しかし、自分好みの装弾を作れるという大きなメリットがある
  3. ハンドロードにはいくつか工具が必要。全部そろえると10万円ぐらいかかる

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この記事を書いた人

りょう@東 良成のアバター りょう@東 良成 専業猟師・ライフルマン

三重県紀和町に住む専業猟師。年間200頭以上の獲物を捕獲しています。主に銃に関する知識や野生鳥獣被害について、Twitterで発信中 。

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