『ここが変だよ日本の銃描写』~アニメ・ゲームで「ん?」って思うことをまとめてみた~

 日本のアニメやゲームには、「ん?今の銃、なんか変じゃね」と思ってしまう描写がしばしばあります。・・・いえね、別に私は銃マニアではないのですが、狩猟で実銃を触るようになると、どうしてもちょっとした間違いが気になっちゃうんです。そこで今回は日本のアニメやゲームなどに出てくる銃(主に散弾銃・ライフル銃)の中で、「これはヘンだよ」と思えた描写をいくつかご紹介します。

この記事の3つのポイント

  1.  ライフル銃や散弾銃の弾にヘンな描写がよくあります。

  2.  スコープ越しに狙撃するシーンで『ゼロイン』が考慮されていないヘンな描写がよくあります。

  3.  銃の構え方がヘンな描写がよくあります。


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『薬莢ごと発射される弾頭』

ルパン三世のロゴは薬莢が飛んでいる

 銃の間違いでおなじみの描写に『薬莢ごと弾頭が飛んで行く』があります。なんちゃってなガンアクションだけでなく、例えば映画『アウトレイジ』のOPとか、ルパン三世のタイトルとか、本格的に銃を扱う作品でも間違えられていたりします。

ライフル弾の仕組み
ライフル実包の仕組み

 一般的な銃の弾は、薬莢という入れ物の中に、射出体となる弾頭、弾頭を推進させる火薬、火薬に着火する雷管がセットになった実包(カートリッジ)と呼ばれる状態になっています。この実包を、銃の薬室(チャンバー)と呼ばれる部分に入れて密閉し、撃針(ファイアリングピン)で雷管を叩くことによって火薬の燃焼が始まります。

 薬莢内部で火薬の燃焼が進むと、弾頭に圧力がかかっていきます。そして一定の圧力になると弾頭は薬莢から押し出され、銃身に沿って進んでいきます。すなわち、銃口から飛び出していくのは弾頭だけで、薬莢が飛んで行くようなことはありません。
 このような描写ミスが起こるのは、おそらくアニメーションの現場で「銃弾」として保管されている参考資料が、薬莢に弾頭が付いた模擬弾(ダミーカートリッジ)だからなのではないかと思われます。

『弾頭付き空薬莢』というミスもよくある

 撃った後に残された薬莢と雷管の残骸(空薬莢)は、薬室に残されたままです。なので、再び薬室を開いて空薬莢を輩出する排莢(エジェクション)という操作を行います。このときアニメや漫画などでは、弾頭が付いたままの薬莢が排莢されるシーンがときどきあります。あれも間違いですね。

弾の飛び方が変だったりする

 重箱の隅をつつくような話ですが、アニメで飛んで行く弾頭がスローモーションになる描写は、実際の飛び方とは違っていたりします。銃身を進む弾頭はライフリングと呼ばれる溝に沿って進んで回転が加えられ、そのまま回転しながら射出されます。しかし射出された弾は『ドリル』のように綺麗に回転をしながら飛んで行くわけではありません。

 回転している弾丸が安定して飛んで行くのは、回り続ける『コマ』がなかなか倒れないジャイロ効果と呼ばれる現象と同じです。よって、飛んで行く弾頭は綺麗な回転を描いて飛んで行くのではなく、『倒れそうなコマ』のようにお尻をグルグルと回転させながら回る『歳差運動』をしながら飛んで行きます。

「まぁ、さすがにそこまで詳しく描いたアニメは無いよなぁ」と思っていましたが・・・Fate/Zeroというアニメに、弾丸が歳差運動をしながら飛んで行くシーンがありました。上の動画の5分53秒から1秒にも満たないシーンですが、このアニメーションはかなりコダワリを持って描かれていますね。
 調べてみたところ、このシーンを担当されたのは碇谷 敦さんという超有名な作画監督。この方はアクションシーンに定評のある『交響詩篇エウレカセブン』や『天元突破グレンラガン』などの原画を務め、2021年には『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も担当されているそうです。す、すげーぜ!

『銃口から広がる散弾銃』

 散弾銃を扱うアニメやゲームで多いヘンな描写に『銃口から広がる散弾』があります。目の前に迫ってきたゾンビに”大ダメージ”を与えるシーンでよく見る描写ですが、実際の散弾銃はこんなふうに弾が飛んで行くことはありません。

散弾の仕組み

 散弾実包の構造は火薬と雷管についてはライフル弾と同じですが、発射体は弾頭ではなく散弾(ショット)と呼ばれる小粒の弾を使います。そしてこの小粒の弾を撃ち出すためにワッズという容器が使われます。

 散弾銃では、撃針が雷管を叩き火薬が燃焼を始めると、弾を詰めたワッズごと銃身を滑っていきます。そして、射出されたショットとワッズは10m程度までは一緒になって飛んで行きますが、次第に軽いワッズは空気抵抗を受けて分離し、散弾のみが散らばって飛んで行きます。
 つまり、アニメや漫画などで見られる『銃口から散弾が飛び出す』という描写は間違っており、正確にはワッズが飛び出さないとおかしいというわけですね。

散弾銃は遠距離で『1ダメージ』・・・てことは無いです。

 ちなみに、散弾の広がり具合はパターンと呼ばれています。パターンは使用する散弾銃の銃口形状(チョーク)によって変わりますが、だいたい20mで直径1m程度。40mで大人の男性が手を広げたぐらいに広がります。
 よくゲームでは、「散弾銃は距離を離れるとダメージが激減する」とされていますが、実際は距離を離れると全身に散弾を浴びることになるわけです。確かに、距離が離れた散弾の1発はライフル弾1発よりも威力は劣りますが、『傷の負い方』という面で見ると、ダメージとしては恐ろしいものがあります。
 

『「ガチャガチャ!」と装填する』

 散弾銃を扱うシーンでよく目にするのが「ガチャガチャッ!」っと弾を込めるシーンです。戦闘に突入する直前の一瞬!あの音は興奮しますよね~。・・・しかし、あの「ガチャガチャ」言わせる動作は、実は間違った装填方法だったりします。

散弾銃の正しい装填方法

 銃の正しい充填方法は上図の通りです。はじめに薬室を「ガチャッ!」とひらき、薬室に弾を込め、再び薬室を「ガチャッ!」と閉じて、弾倉に次弾を装填していく、という流れですね。なんというか・・・戦闘前にこんな装填をしていたら、あまり緊張感が無いですな。
 いちおう、弾倉に弾を込めた後に「ガッチャガチャ!」と遊底を動かして装填する方法も、できないわけではありません。ただし、弾倉に入った弾が一つ薬室に送られるため、装填した弾数が最大弾数よりも1つ少なくなります
 日本の法律では、散弾銃に込められる弾は最大で3つ。つまり弾倉は2発までしか入らないようになっています。つまり「ガチャガチャ!」で装填をすると、薬室1発と弾倉1発の計2発しか装填していないことになります。命を懸けた戦闘では、装填の”カッコよさ”よりも、弾1発分の方を大切にしましょう。

『銃口から火柱が飛び出す』

 「俺のマグナムが火を噴くぜ!」は、クリント・イーストウッド主演の「ダーティーハリー」の名言。この殺し文句にあるように、銃を撃つシーンでは銃口から盛大に火柱が噴き出る描写がよくされます。しかし、実際の銃がこんな感じに火を噴くことはありません。

火薬が燃焼して弾が発射される仕組み

 現在の銃に使われる火薬はニトロセルロースと呼ばれる物質です。銃弾はこのニトロセルロースが雷管から受けた熱で燃焼するのですが、このとき銃弾は炎で押されているわけではありません
 ニトロセルロースは燃焼すると、硝酸エステルを含む可燃性ガスとなり、それらがさらに燃焼して一酸化炭素や二酸化炭素、水、窒素分子などに分解されます。銃内部がこれらの気体で”パンパン”になると、気体の圧力に負けて弾頭が銃身を滑り始め、銃口から射出されます。
 このニトロセルロースは、わずか0.01秒ほどで瞬時に燃え尽きて気体に変わります。よって、弾が射出される前には燃焼反応は終わっているため、銃口から火が噴き出すことはありません。もし、銃口から盛大に火柱が上がっているとしたら、それは燃焼しきれなかった余分な火薬が銃口から噴き出ているだけであり、火薬が無駄になっているだけです。

映画の小道具で使われる『プロップガン』

「でも、映画の銃は盛大に火を噴いているよね?」と思われた方も多いと思いますが、あれはプロップガンと呼ばれる撮影用の小道具です。銃口から激しく火柱が噴き出すのは迫力があってカッコいいですからね。実際の銃であんな感じで火を噴かせるとライフリングにススがこびりついてしまい、次に弾を撃ったときに銃身がブッ壊れます。

輝く弾丸、それって曳光弾?

 これは演出上仕方がないのでしょうが、銃撃戦のシーンではよく光り輝く弾丸が飛び交うシーンがあります。しかし、弾丸は光源となる火薬を含んでいるわけではないので、飛んでいる弾が光の線になって見えることは絶対にありません。
 いちおう現実にも、光って見える曳光弾(えいこうだん)と呼ばれる弾はあります。これは弾頭に発光物質が詰められており、それを燃焼させながら飛ぶことで弾道に光の軌跡を残すことができます。しかし曳光弾は蛍光物質を積んでいるという性質上、命中精度が極端に悪くなります。そのため、狩猟や銃撃戦で使われることはまずありません。

『狙撃手が動き回る』

『カウンターストライク』などの対戦型FPS(ファーストパーソンシューティング)において、上手い人が操ると手が付けられなくなる戦闘スタイルが「踊るスナイパー」です。近距離戦闘に弱いはずのスナイパーライフル持ちの敵が、飛んだり跳ねたりしながら近づいてきて、こちらを一発でノックアウト!「スナ持ちなら後方でイモってろや~!」と叫びたくなります。まぁ当然の話ですが、スコープ付きのライフル銃で、あちこちに動き回って狙撃するのは現実的ではありません。

狙撃のテクニック

 狙撃手が動き回ってはいけない理由は、狙撃にはゼロインという考え方が重要になるためです。ゼロインとは、照準器(例えばスコープ)の照準線と、発射された弾の軌跡(弾道)が交わる距離のことです。銃口から発射された弾は、射出直後から1秒間あたり9.5mという加速度で地面に向けて落ちていきます。そのため照準器は、あらかじめ弾道と照準線が交差するように照準器を調整しておかなければなりません。

 つまり狙撃では、対象との距離によって照準を付けるポイントが変わってきます。例えば上の図のように、対象がゼロイン調整した距離と同じ距離にいる場合は、レティクルの中心に合わせて引き金を引けば当たります。しかし、対象がゼロイン調整した距離よりも遠くに居る場合は、弾はレティクルの中心よりも下に命中するため、少し上を狙って撃たなければなりません。逆に対象がゼロイン調整した距離よりも近い距離にいる場合は、少し下を狙って撃たなければなりません。
 ゲームに多い描写で『拾ったスナイパーライフルを装備する』といったシーンがありますが、あれも照準器が何メートルでゼロインされているかわからないので、本来であればいきなり精密に狙撃ができるわけがありません。

「その銃を貸せ!」から狙撃を成功させる方法

 アニメでは『仲間から銃を奪い取って狙撃するシーン』もよく見られますが、同様にゼロインが何メートルに設定されているか聞いておかないと、精密な狙撃はできません。
 さらに、弾道の落下量は使用している弾頭の重さや火薬の量などでも変わるため、狙撃する前にその銃の所持者から弾道表(バリスティックチャート)と呼ばれるデータシートを見せてもらわなければなりません。
 さらにさらに、着弾までの距離がわからないと落下量が計算できないため、レンジファインダーやレーザー距離計などを使って敵との距離を測定しておく必要もあります。・・・実際の狙撃ってムチャクチャ面倒くさいんですよ。
 どうしても余裕がないのであれば、とりあえず敵に向かって撃ってみて、着弾地点が照準よりどのくらい落ちたかをチェックします。そして次弾は落下量を補正して撃ち、敵に命中するまでこれを繰り返します。つまり、敵との距離がわからないスナイパー同士の対決は、実際はただの”乱撃戦”だったりします。

銃の構え方が変

 アニメや漫画などでは「そんな構えで撃ったら、反動でケガするよ」と思える描写がよくあります。上の「ちょろいもんだぜ」は、もはや”レジェンダリー”なので突っ込むのはヤボですが、それ以外のシーンでも、結構間違っていたりしますね。

ちゃんと頬付けをしましょう

 特に多いのが『ほほ付け』が不十分であることです。ほほ付けとは、銃を構えるときに銃床にほほをしっかりと押し付けておくことで、このほほ付けができていないと照準器を斜めから見てしまうため、正確な射撃が付きません。
 さらに、ほほ付けができていない構え方は銃の反動を抑えるための『肩付け』もちゃんとできていないので、射撃の反動で銃が飛び上がり、肩に『青あざ』を作ることになります。

 なぜほほ付けがしっかりと出来ていない描写が多いのか?それは間違いなく不細工になるためでしょう。カッコいいキャラや美人キャラが銃を構えると、ほほの肉が「ぶにっ」っとなるわけです。しかも、銃床で口角が押されてしまうので、口がタコみたいになってしまいます。

 銃の構え方が本格的なマンガといえば『アイアムアヒーロー』ですね。しかし・・・まぁ、あのようにちゃんと銃を構えられるのは、主人公がブサ男だからでしょう。ほほの肉がプニっとして口がタコみたいになった美少女ガンナー・・・そんなアニメがあったら教えてください。

おわりに

 さて、今回は『日本の銃描写で変なところ』についてご紹介しました。結論としては・・・アニメやゲームは面倒くさいことを考えずに、楽しむのが一番だと思います。
 偉そうに語りましたが、実を言うと私も銃に関する執筆でトンデモナイ間違いを犯したことがあります。なので、その贖罪の意味を含める形で、少しでも銃に関する知識を皆様と共有できればと思っています。

ではでは。


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