『進撃の野獣』第二話 ~専業猟師・装備編~

進撃の野獣第二話

 三重県の最西部、周囲を深い山並みに囲まれた町に住む『りょう』さんは、野生鳥獣を捕獲するベテランの職業猟師です。年間200頭もの獲物を銃で捕獲するりょうさんは、果たしてどのような猟具や道具を使用しているのでしょうか?


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狩猟を仕事にするために必要な知識を詰め込んだ一冊。今の仕事に不安があり、新しい生き方を探している方、田舎に移住して生活をしたい方、「へ~、世の中には、こんな生計の立て方もあるんだねぇ」と思ってみたい方!・・・必見です。


Q1 :使っている銃は何ですか?

A1:ボルトアクションのライフルです。

 私は今、ブローニング社のXボルト ステンレスストーカーというライフル銃を使っています。忍び猟で鹿をストーキング(追跡)するためには、なるべく装備を軽量化したいので、重量2.9kg という軽量なマウンテンライフルを愛用しています。

 この銃の最大の特徴はマウントレールが無いことです。スコープを乗っけるマウントリングが、銃本体(レシーバー)に直付けになっているため、移動中に銃をぶつけたとしてもスコープがズレにくい構造になっています。
 もちろん”絶対にズレない”というわけではありません。しかし、不安があると射撃時のメンタルに影響がでるため、出来るだけ不安要素を無くすために直付けのタイプを使っています。

 このXボルト ステンレスストーカーは軽量で扱いやすい銃なのですが、銃身が細くて軽いため、射撃時に銃身が微振動するバイブレーションが起きてしまいます。よって、実はそれほど精密な射撃ができる銃では無かったりします。・・・もちろんそれでも、私が以前使っていた20番散弾銃(スラグ弾)よりも精度は良いですが。
 ただ、私的には長距離狙撃を行う射撃技術よりも、『いかに獲物に気付かれずに近づくか』という狩猟技術を重視しているので、精密性と引き換えに携帯性を優先しています。このような狩猟哲学については猟師さんによって本当にいろんな考えがあり、面白いところだと思います。

Q2 :どのような弾を使っていますか?

A2:243ウィンチェスターという弾を使ってます。

 口径は243ウィンチェスターという6mmの弾を使っています。日本の狩猟で使える弾としては最小径ですね。この弾を選んで使っている理由は色々ありますが、一番の理由が弾道特性に優れているからです。
 銃弾は発射直後から重力によって落下するため、“山なり”になって落ちていきます。しかし軽量な243ウィンチェスターであれば、撃ちだされた直後の初速が速いため、同じ火薬量で重い弾を発射したときよりも、標的に命中する時間が短くて済みます。つまりそのぶん分だけ、着弾点の高低の誤差が小さくて済むというわけです。

 猟師さんの中には、「243ウィンチェスターなんて、威力が弱くて獲物を倒せねぇだぁ~」という人がいますが。しかし、エゾジカやヒグマならわかりませんが、本州のシカを獲るぐらいならパワーは十分です。実際に、100kg級の猪を2度撃ったことがありますが、共に1発で倒れました。

 スコープの調整ですが、ゼロインは第一ゼロインを50mで合わせています。第二ゼロインは150m先になるので、射撃をするときは50mまで近づくか、150m離れた地点から狙撃します。
 ただ、先ほど述べたように243ウィンチェスターは軽量でドロップ(落下量)が小さいので、100mでも2,3cm程度しか誤差がありません。そのため、50m~150m圏内であれば、ほぼ、スコープのレティクルの中心に着弾するようになっています。
 本当であれば、都度、レンジファインダーで獲物との距離を測定して、落下量を計算してから射撃をしなければならないのですが・・・猟場で色々考えるのって面倒くさいんですよね。なので、猟場で頭を使わないように頭を使って考えた結果が、今の装備構成です(笑)

Q3 :どんな装備で山に入りますか

A3:こんな服装です ↓

 服装は、わりと軽装が多いです。汗かきですし。じっと待つ必要があるときや車などで移動するときは上着を羽織って、「歩くぞ」ていうときは薄着です。冬にTシャツで驚かれることもあります(笑)
 あと、忍び猟では衣類の音を気にしています。化学繊維系の服装は軽くて良いんですが、動くとき「シャカシャカ」と音がします。なので、寒い時期だとフリースをよく着ています。ゴミがいっぱい付いてしまうといったデメリットがありますが、音は出ないし温かいので重宝しています。

 上には猟友会ベストを羽織っています。ただ、新型猟友会ベストは「シャカシャカ」うるさいです。おそらく巻き狩りを目的に作られているベストなので、忍び猟とはコンセプトが違う設計なのだと思います。
 もうひとつ愚痴っておくと、有害だと腕章をつけなきゃいけないのですが、多いときは3つほど付けます。これも素材によってはガサガサ音がします。ちなみに腕章類は、銃を構えたときに邪魔にならないよう、すべて左胸元に付けています。

 足音にも気を使ってます。いまだに「コレだッ!」っていう靴は見つかっていませんが、底が薄く、柔らかく、地面の感触を伝えてくれるものをセレクトしています。ネコやクマのような肉球がついた靴が良いと思えるんですが、そんな靴はどこにも売っていません。誰か忍び猟専用シューズを作ってくれないかな?
 過去に履いてきた靴で良かったのは、海遊びなんかで履くマリンシューズです。マリンシューズで山歩き・・・っていうのも不思議な図ですが、柔らかい素材でできているので、足音を消せるといったメリットがあります。最近では建さん2を履いてます。安くて、入手しやすいのが気に入ってます。

 なお、私が考える『静かに歩くのに向いている靴』は総じて滑りやすく、山歩きには本来不向きです。猟犬を使役した猟のように、山の中を走ったりするのには向かないので、注意してください。

Q4 :どのような道具を持って行ってますか?

A4:こんな道具を持って歩いています ↓

 山に入るときは、32Lぐらいの登山用ザックに荷物を詰め込んでいます。普通のリュックだと、大きなオス鹿2頭分の肉を詰めるとどこかしら壊れてしまうので、登山用のザックに行き着きました。リュックいくつ壊したやら・・・。
 狩猟中に持ち歩く主なアイテムは、予備弾、許可書各種、ナイフ類、有害証明用道具各種、サイズ色々な袋、医療用品、ポンチョなどです。ひとつずつ説明していきますね。

予備弾

 予備弾の所持数は最大で20発ぐらいです。10発を切ったら新たに造って補充しています。あまり大量に持っていっても重いですし、猟場はそれほど自宅から離れていないため、少なめにしています。

許可書関係

銃の所持許可書や狩猟者登録証、捕獲許可証などですね。一枚一枚はたいした厚みではありませんが、忘れたら大変なので、いつもひとまとめにしています。意外とかさ張りますね・・・(整理下手なだけ)。

ナイフ

止め刺し用ナイフが1本、ノコギリが1本、解体用ナイフが2本、カッターナイフ1本を、持ち歩いています。ただ、解体は知り合いの解体場所で行うことが多いので、持ち歩くナイフは気分によって減らしています。

有害証明用道具

 撮影用の証明用紙・デジカメ・ペイントスプレー・証拠入れ用の袋などです。これらは有害鳥獣捕獲の報告で必要な道具です。持ち歩くのは面倒くさいですが、お仕事に直結するので手放せません。よくペイントスプレーが「カラカラ」音がして気になります。

 ゴミ袋・ビニール袋・土嚢袋・ジップロックなどです。主に、山で解体したときに肉を入れます、脚ごと持ち帰る場合はゴミ袋へ。ブロックにした時はビニール袋へ。暑い季節は肉をジップロックに入れて、それを土嚢袋に入れて沢で冷やします。

医療用品

 応急処置程度の絆創膏・消毒薬・ガーゼ・ワセリン・鎮痛剤などです。あとはビバーク(緊急野営)になったときに備えて、エマージェンシーシートやライターとかですね。ポンチョも撥水スプレーして干してあるので、雨風を避けたいとき用です。雨に濡れてもあまり気にしない性格なので、ほとんど使ったことありませんが。

Q5 :必ず山に持って入る物ってありますか?

A5:単独猟師なので、水分と食料は必ず携帯しています。

 私はよく熱中症になるので、経口補水液を必ず持ち歩いています。飲み物は重たかったり、「チャポチャポ」音がするので嫌なのですが、単独猟師の私が山の中で倒れたら、誰も助けにきてはくれません。なので、必ず最低1本はザックに入れてます。水分が足りないとき用に浄水器も一応持っています。あとは塩タブレットなんかを舐めながら歩いたり、低血糖に備えてちょっとしたオヤツを持っていったりもしてます。
 これは狩猟に限った話ではありませんが、一人で自然の中に入るときは、必ず最低限の水分や携帯食料を持っておきましょう。体調が悪くなくても、山の中で怪我をして動けなくなることもあります。また、携帯電話があったとしても、必ず電波が入るとは限りません。実際に私が以前、山の中で熱中症で気を失って倒れたとき、電波が入らなかったので自力で山を下りるしかありませんでした。
 ひとりで山に入るというのは、それ相応の覚悟がいるものだと思います。「何を持って行こうかな~」と思ったときは、楽しいことだけを考えるのではなく、少し“悲しい事”も考えて、十分用心したアイテムをそろえるのも大事だと思います。

編集後記

 

 『進撃の野獣』第二話、いかがだったでしょうか?猟師さんとお話をしていて特に違いが出るのが、銃や罠などの猟具についての考え方です。今回のリョウさんの場合は、射撃技術(長距離狙撃)よりも狩猟技術(獲物に近づくこと)を優先しているといった点で、特色のある考え方だと感じました。人によって色々な狩猟哲学があって面白いですね!

それでは次回、ご期待ください。


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Author情報

「自称職業猟師」 この胡散臭いのが警察で問い合わせてもらった自分の肩書きです。 専業猟師、プロハンター、プロ猟師。 色々な呼び方されますが、猟を生業としてメシ食ってます。 ライフル243win、上下二連12番、上下二連20番。 現在三丁でやっております。 罠もあるけどあまり好みじゃない。
Twitter:りょう@ハンター



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