カモ撃ちのスタイルは“ゆる猟”で ~装備編~

カモ撃ちの装備編

 河川や野池など、水辺での行動が主になるカモ撃ちでは、山の中を歩き回る大物猟とは違った服装や装備が必要になります。そこで今回は、カモ撃ちにおける最適な服装と、最低限持っておくべき装備について見ていきましょう。

目次

カモ撃ちの服装

 カモ撃ちに行くときの服装ですが、“狩猟者の義務”ともいえるオレンジベストの着用は特に必要ありません。

オレンジベストのメリットはほとんどない

オレンジベスト

 もともとオレンジベストは『視認性の悪い森の中での誤射防止』を目的としているため、 野池や河原といった見通しの良い場所では、着る必要性はあまりありません。
 またオレンジという色も、色覚の弱いイノシシやシカに対しては目立たない色ですが、人間よりもはるかに優れた色覚を持つ鳥類に対しては、逆に識別されやすい色になります。

奇襲or狙撃では服装はあまり関係ない

カモ猟の風景

 もちろん「カモ撃ちでオレンジベストを着るな」と言っているわけではありません。ただ、カモ猟では「見えない所からの『奇襲』」か「見えている場所からの『狙撃』」の2パターンが主な戦術となるため、実を言うとどんな格好をしていようが猟果に影響はありません
 自分にとって「オレンジベストが一番機能的な服装だ」と思えばそれも良いですが、「あえてオレンジベストで無いといけない」というわけでは無いことを覚えておきましょう。

迷彩柄の服は鳥屋撃ちでは効果がある

 Youtubeなどで海外 (主にアメリカ) のカモ撃ち動画を見ると、外国人はみんな迷彩柄の服を着ています。なので「カモ撃ち=迷彩服」というイメージが強いのですが、実を言うと海外と日本のカモ撃ち事情は大きく異なるため、迷彩柄の効果はほとんどありません

カモの鳥屋撃ち

 海外で行われているカモ撃ちは、日本では「鳥屋(とや)撃ち」と呼ばれます。この猟法では、夜中から薄明にかけて水場にデコイと呼ばれるカモ人形を浮かべておき、ハンターは鳥屋と呼ばれる小屋に隠れてカモの鳴き声を出すコールを吹きます。 このとき、上空を通り過ぎようとするカモが水面近くまでおびき寄せられるため、近寄ってきたところを撃ち落とします。
 鳥屋撃ちでは、狩猟者の姿が飛んでいるカモから発見されると警戒して降りてきません。そのため迷彩柄の服を着こむわけですが、日本のカモ猟では『奇襲』か『狙撃』がメインの狩猟スタイルなので、迷彩服を着る理由はあまり無いと言えます。

『ハンターとわからない格好』のほうが望ましい

カモ猟の風景

 実をいうとカモ猟は、なるべくハンターと思われない格好をしていた方が良かったりします。というのも、日本でカモ猟ができる場所は溜池や河川なのですが、こういった場所は非常に人目に付きやすいのです。そして一般の人たちの中には狩猟に対してネガティブな印象を持っている人もおり、「ハンター」とわかると手元の携帯電話で警察に通報する人もいます。
 こういった“嫌な思い”をしないためにも、人目に付く可能性の高いカモ猟では『人間にハンターと思われない格好』をしていた方が良かったりします。もちろん“不本意”な話ではありますが、日本の狩猟事情は「そういうものだ」と理解しておきましょう。

オススメは普通のアウトドアウェア

カモ猟の服装

 カモ猟では 普通のアウトドアウェアが一番オススメの服装です。なぜなら、獲物の警戒心よりも通行人の警戒心を上げないようにするのが、日本のカモ撃ちにおいてとても大切だからです。
 もちろんウェアは、防寒性・防水性を意識したものを着用しましょう。猟場には『ひっつき虫』が大量に生えているので、布地よりも化繊がオススメです。

回収道具

 カモ猟において必ず事前に考えておかなければならないのが、水面に落ちたカモを回収する方法です。ここでは代表的なカモキャッチャーを含め、いくつかご紹介します。

カモキャッチャー

カモキャッチャー

 カモキャッチャーの構造には色々な種類がありますが、基本的には『仕掛けを遠くに投げるためのオモリ』と『掛け針を浮かせるためのウキ』の2つの要素が必要になるため、上図のような仕組みになります。
 竿はなるべく遠投が効くように、腰の強い投げ釣り専用竿を使いましょう。竿がヘタレだと仕掛けが飛ばず無用の長物になってしまうので、安物買いはせずに、ちゃんとした竿を用意しておきましょう。

近距離にはこれが便利『ギャフ型カモキャッチャー』

ギャフ型カモキャッチャー

 釣り竿を使ったカモキャッチャーは 、木が生い茂るような場所では振り出せません。そこで竿と併せて用意しておきたいのが、ギャフ型のカモキャッチャーです。
 このカモキャッチャーは、魚釣りに使うたも網の柄(玉の柄)に、ギャフと呼ばれる鈎爪を取り付けます。ギャフには掛け針が沢山ついた「イカ釣り用」と、大きな爪が2、3本付いた「大物釣り用」とがありますが、これを使うときは水草が邪魔になる場面が多いため、根がかりが少ない大物用ギャフがオススメです。
 玉の柄だけでも回収できそうに思えますが、よく回収時に柄の先でカモを押してしまい、そのまま奥に流れて行ってしまうことが多いので、横着をせずに先端には必ずギャフを付けましょう。

操作は難しいが役に立つ『ラジコン型カモキャッチャー』

ラジコンレトリバー

 回収道具でしばしば用いられているのが、ラジコンボートを使ったカモキャッチャー(ラジコンレトリバー)です。このラジコンレトリバーであれば、電波が届く100m程度の範囲まで回収できるため、通常では回収が難しいような大きな水辺でもカモ撃ちができるようになります。
 ただし少し問題があり、ラジコンボートの操縦に慣れていないと、掛け針をカモにかけるのはなかなか難しいです。また、対岸に乗り上げてしまい回収不可になったり、引っ張る力が足りずにブクブクと沈没してしまうこともあります。

レスキューライン付きカモキャッチャー

 一応、座礁や沈没した場合でも回収できるように、掛け針の根本に釣り糸を結んだレスキューライン付きラジコンレトリバーという方法もあります。ラジコン操作をしながら道糸を送り出していくという二重の操作が必要になるので、空のペットボトルを浮かべて何度か練習しておきましょう。

一番いいのは「猟犬」

 カモの回収作業で最も効果的なのは、やはり定番の猟犬です。ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーといった犬種は、もともと水面に落ちた水鳥を回収(レトリーブ)する目的で品種改良された猟犬です。
 こういった猟犬が一番回収効率が良いというのもありますが、最大のメリットは「かわいい」ことです。必死にハンターが撃ち落としたカモを回収する猟犬の姿は、とっても健気でラブリー♪猟犬を知ると狩猟の世界はさらに面白くなります。

ナイフ

1本で複数の用途を持つバードナイフ

 カモ撃ちには小型のナイフを1本持っておきましょう。ナイフの種類は、ユーティリティと呼ばれる万能タイプがよく用いられますが、鳥猟専門のバードナイフというのもあります。このナイフには、腸抜き用のフック(ガットフック)や、銃のメンテナンスに使用するコインドライバー、カモの足を切断するハサミなどが付いています。これらの機能が必須というわけではありませんが、アクセサリーとして持っておくのも良いでしょう。

まとめ

  1. カモ撃ちには一般的なアウトドアファッションが最適
  2. 水面に落ちたカモを回収するカモキャッチャーを準備しておく
  3. ナイフは小型ユーティリティで十分だが、バードナイフという専用品もある

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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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