『散弾実包』の中って、どうなっているの?

 
 散弾実包は、狩猟やクレー射撃をする散弾銃所持者はもとより、ゲームや映画で見たことがある人も多い、おなじみの”弾”です。しかし多くの人は、その中身がどういった仕組みになっているのか、知らないのではないでしょうか?そこで今回は散弾実包について、今の形にいたるまでの歴史を踏まえ、その仕組みについて見ていきましょう。

3つのポイント
  1. ”実包”の形は、前装式マスケットの時代のペーパーカートリッジから続いている
  2. 散弾実包は、薬莢、火薬、雷管、ワッズ、弾の5つで構成されている
  3. 構成要素の組み合わせは多数あり、それによって性能がまったく変わる


散弾実包はどうやって生まれたのか?

 具体的な散弾実包の話に入る前に、そもそも”実包”とはいったいどういったものなのか、その歴史について見ていきましょう。

原始的な銃は、弾と火薬を別々に入れていた
ブランダーバス


 13世紀ごろに誕生した”銃”は、弾と火薬を銃口から流し込んで装填する前装填式(マズルローダー)と呼ばれる方式でした。その中でも、後の散弾銃のご先祖様と言えるのがブランダーバスと呼ばれる銃で、この銃は足場が不安定な船上や馬上で銃口から弾と火薬を流し込みやすいように、ラッパのような形状をしていました。

火薬と”栓”がセットになったペーパーカートリッジ
ペーパーカートリッジを使った射撃(前装式マスケット銃 P53エンフィールド)

 16世紀ごろに現在の銃の前身ともいえるマスケット銃が誕生すると、より素早く弾を装填するために、ペーパーカートリッジ(パトローネ)が誕生しました。
このペーパーカートリッジは、火薬と弾がソーセージのように紙に巻かれており、射手は紙の先を破って銃口から火薬を注ぎ、残った紙と一緒に弾を込めることで、装填時間を大きく短縮しました。

後装式の誕生とガス漏れ問題

発射前にハンドルを回して、ガスが漏れないようにする後装式ファーガソンライフル。

 17世紀に入ると、銃身の後部から弾と火薬を詰めて発射する後装填式(ブリーチローダー)の銃が登場しました。このブリーチローダー式の銃は、従来のマズルローダー式に比べて装填が早いという長所がありましたが、ペーパーカートリッジではガスが閉鎖部から漏れやすく、射手が火傷をしてしまうという大きな問題がありました。

  そこで1830年代に登場したのが金属薬莢(ブラスケース)です。この薬莢には、火薬が燃焼しても外部にガスが漏れ出ないため、安全で威力の高い弾を発射できるようになりました。
 さらにこの金属ケースは、同時期にドイツ・プロイセンで生まれた雷管(パーカッションロック)と組み合わさり、薬莢内に弾、火薬、雷管がセットになった実包(カートリッジ)の原型が誕生しました。

金属薬莢から分化した散弾銃のロンデル付き紙薬莢

 さて、マスケット銃の正当な進化型と言えるライフル銃の弾は、上述のように金属製薬莢が主流になりました。しかしマスケット銃から”狩猟用途”へと進化した散弾銃(鳥撃ち銃)は、雷管を収める部分だけを金属にした、ロンデル付き紙巻薬莢(ペーパーケース)が主流になっていきました。
 この進化の違いは、ライフル弾は戦場に大量輸送するため、ケースに耐久性と防水性が必要だったのに対し、狩猟用途の散弾銃には、ケースの耐久性よりも自作のしやすさ値段の安さが求められたためだと考えられます。

プラスチック薬莢の登場
プラスチックケース


 散弾銃のロンデル付き紙巻薬莢は、登場の1880年代から近年まで長く使われていました。しかし1960年代にアメリカの大手銃器メーカー、レミントン社から防水性の高くて安価なロンデル付きプラスチック薬莢が発売されると、たちどころに散弾薬莢の主流となり、現在私たちがよく目にする散弾実包が誕生しました。


 ここで一旦、散弾実包がどのような歴史の中生まれたか、まとめてみましょう。

① 前装式(マズルローダー)の時代に、実包の原型となるペーパーカートリッジが生まれた。
②後装式(ブリーチローダー)が登場すると、燃焼ガスの漏れを防止するため、金属薬莢が生まれた。
③金属薬莢と雷管が一体となり、現在の実包の形が誕生した。
④散弾実包は、雷管部分だけが金属になった
ロンデル付き 紙巻薬莢が主流になった。
⑤レミントン社からプラスチック製ケースが登場し、現在に至る。

散弾実包の仕組み

ショットシェルの仕組み

 散弾実包(ショットガンシェル)は、発射体となる弾(ショット)、弾を発射する推進力を作る火薬(パウダー)、火薬に着火するための雷管(プライマー)、弾と火薬の間でクッションの役割を持つワッズ、それらすべてを一つに収める薬莢(ケース)、の5つの要素で構成されています。

薬莢(ケース)

 散弾薬莢は、本体となるシェルに、真鍮製の金属冠(ロンデル)が取り付けられた構造になっています。ロンデルには、プライマーポケットと呼ばれる雷管を取り付ける部分があり、雷管が衝撃を受けると火花がフラッシュホールを通して、シェル内部へと噴出されます。

ケースの番径と全長

 散弾薬莢は、薬莢口の大きさ(番径:ゲージ)と、ケースの長さで、色々な種類があります。番径は、散弾銃の歴史では16種類存在していたと言われていますが、現在ではもっぱら、狩猟・クレー射撃用の12番、海外ではメジャーな16番、スラッグ射撃などによく使われる20番、ライフル銃身を改造した散弾銃に用いられる410番の4種類が代表的です。
 ケースの長さは、日本では2・3/4インチ(70mm)、ヨーロッパでは2・1/4インチ(65㎜)がよく使われています。また、薬莢内により多くの弾を込められるように3インチ(76mm)というサイズもあり、マグナムと呼ばれています。

使用できるケースの種類は、散弾銃の薬室の大きさによって決まる
左:410番 中:20番 右:12番

 ケースの番径は、散弾銃の機関部のサイズで決められています。すなわち、12番用の散弾銃では、20番、410番などは使えません。
 火薬店では、販売する実包が銃に適合するサイズなのか確認するため、弾を取り間違えることは絶対にありえませんが、万が一サイズが違う実包を入れて発射すると、銃が破損するなどの大事故になるので注意しましょう。他の実包と間違えやすい20番実包の薬莢は、黄色で統一されているので、一目で見分けることができます。

 ケースの長さは、薬室長70mmならケース長65㎜を、薬室76mmマグナム用なら ケース長 65mmと70mmが”一応”使えます。
ただし薬室長とケース長が違う場合は、射撃の精度が落ちるともいわれているので、原則として銃身の薬室の長さと合った物を使用しましょう。

ケースの末端処理はロールクリンプかスタークリンプ
左:ロールクリンプ、右:スタークリンプ

 ケースを閉じる方法は、紙巻ケースの時代は厚紙の丸いフタをかぶせて周囲を蝋で固めるパイクリンプと呼ばれる方法が一般的でした。
しかし現在のプラスチックケースでは、散弾の場合は、末端をじゃばらに折り込んで閉じたスタークリンプ、単発弾のスラッグでは、末端を巻き込んだロールクリンプが主流です。

ワッズ

 ペーパーカートリッジの時代にあった、火薬と弾の間に挟んでいた紙の代わりになるのがワッズです。紙巻薬莢時代のワッズは、その名の通り、羊毛や布を固めたもの(wad)で作られていましたが、プラスチックケースが主流になっている現在では、ワッズも薄いプラスチックで作られるようになりました。

「ワッズ」の呼び方には色々あるので注意!

 
 クレー射撃で散弾を撃ったときに、銃口から「ぽーん」と放り出されるワッズは、正式にはワッズカップといいます。
このワッズカップは、さらに別名としてサボットと呼ばれおり、日本ではワッズカップの「サボット」と、サボットスラッグ弾の「サボット」、またスラッグ弾の一種である「ワッズスラッグ」が、ごっちゃごちゃになっています。
 詳しい解説はまた別の機会にするので、ここでは「ワッズと言っても、色んな種類があるんだな~」ぐらいに覚えておいてください。

  • ワッズ
     火薬と弾の間に挟む栓。現在でもライフルドスラグ実包などに使われており、布や厚紙を固めたものでできている。
  • ワッズカップ
     散弾の集弾率を上げるための容器状のワッズ。現在は薄いプラスチック製のものがほとんど。
  • サボット
     弾を収納することができるワッズ。ワッズカップもサボットの一種。
  • サボットスラッグ
      ライフル弾を中に詰めた 硬質のプラスチック。ライフリングでサボットごと、中の弾頭に回転を加える。
  • ワッズスラッグ
     スラッグ弾頭にワッズが取り付けられた弾。発射後にワッズが矢の羽のような役割を持ち、弾道が安定する。メジャーなスラッグ弾『ブリネッキ』は、このワッズスラッグの一種。

火薬(ガンパウダー)

 現在使用される銃用の火薬は、無煙火薬(スモークレスパウダー)と呼ばれるもので、ニトロセルロースを主原料に様々な添加剤を加えて安定化させたシングルベースと呼ばれています。

火薬にも、散弾銃用やライフル用など、たくさんの種類がある

 ひとことで「火薬」といっても、散弾実包に使用される火薬と、ライフル実包に使用される火薬には、性能に大きな違いがあります。
これもまた別の機会に詳しく説明しますが、火薬はサイズや形状によって燃焼するスピードが変わってきます。

雷管(プライマー)

 火薬を発火させるために使われる雷管は、薬莢の底面に空いているプライマーポケットに収納されます。
 雷管は銃の歴史の中で、最も偉大といえる発明です 。なぜなら雷管は、単純に”火種”の問題を解消しただけでなく、弾の発射スピードを向上させる効果もあったため、それまでの戦争の戦い方を変えてしまうほどのブレイクスルーでした。
 雷管の登場が『戦列歩兵』の時代から『狙撃戦』へと変えていった話も、また次の機会にご紹介しましょう。

弾(ペレット)


 散弾薬莢に充填するものは、鉛製の小粒弾(ショット)や、単発弾(スラッグ)といった弾(ペレット)です。しかし散弾銃はペレットに限らず、薬莢に収まる物であれば、基本的に何でも撃ち出すことができます。

散弾銃は「なんでも撃ち出せる銃」

ドラゴンブレス弾(4:40)

 散弾銃で撃ち出せるものは、例えば、花の種(フラワーシードショット)や、爆竹(バードボム)、鳥を追い払うための笛(ホイッスルショット)、弾頭や矢状のダーツショット、マグネシウムの塊を発射して火炎放射器のように使うドラゴンブレスといったものまで、実に様々です。
 ただし・・・当然ですが、日本では散弾銃を、狩猟か標的射撃、または有害鳥獣駆除の用途でないと所持できません。なので、ドラゴンブレス弾のようなものは国内に売っていないので、あしからず。

国内で流通しているショット

 日本国内で使用されている粒弾(ショット)は約13種類ほどあります。ショットは大きさによって、バックショット(00B、BB)と、バードショット(1号~10号)に分かれ、狩猟する対象によって使い分けます。
 ショットを使い分ける目安は、上表のようなことが一般的に言われていますが、ぶっちゃけあまり厳密に決まっておらず、2~3号で仕留めるとされているカモも、7号の弾で落とせたりします。よってショットを選ぶときは弾のサイズよりも、獲物との距離や、撃つタイミングなどの方が重要になると思います。

スラッグ弾にも色んな種類がある

 薬莢にペレットを一発だけ入れるスラッグ弾は、粒弾やライフル弾よりも、はるかに古い歴史を持っています。よって世界には何十種類以上ものスラッグ弾が存在し、その弾の起動や性能はまったく変わってきます。
スラッグ弾の話もとても面白いので、これもまた別の機会にしたいと思います。

おわりに

 今回は『散弾実包の仕組み』についてお話ししました。かなりガイダンス的な内容でしたが、今後はさらに細かく『ワッズの種類』、『火薬の仕組み』、『雷管の仕組み』、そして『ショットとスラッグ弾』について、お話しをしていきたいと思います。引き続きご期待いただけましたら幸いです。



それでは、今回はこのへんで。




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2 Comments

  1. とても勉強になりました。ありがとうございます。
    スラッグ弾があるのは知っていましたが、海外ではこんなものもあるのですね。
    当然日本ではお目にかかれないですが、めっちゃマッ○マックスに出てきそう…

    • ドラゴンブレスは完全にヒャッハー!な弾ですよねw
      実を言うと、鳥獣保護法の禁止猟具に『鉛玉以外の使用禁止』と書かれているわけじゃないので、
      岩塩や花の種を詰めて撃ち出すのは問題ないと思います。
      さすがにドラゴンブレスは違法猟具ですが・・・w

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