鹿肉は”漬ける”で進化する。鹿肉のシャリアピンステーキ

シャリアピンステーキ

 前回は鹿肉の焼き方についてお話ししましたが、あの記事を読んだ方の中には「いやいや、家にオーブンなんてないよ!」とか、「もっと簡単に鹿肉を食べたい!」とか思った人も多かったのではないでしょうか?そこで今回は、もっと簡単に鹿肉を美味しく料理する、魔法の『漬けレシピ』をご紹介します!

3つのポイント
  1. タマネギのタンパク質分解酵素で肉を柔らかく・旨味もUP
  2. パイナップルやマイタケなど、肉を柔らかくする食材は色々ある
  3. タンパク質を分解する最強の素材は”化学物質”


タマネギ酵素で肉を柔らかくする

鹿肉


 鹿肉は熱を加えすぎるとレバー臭が発生し、肉が熱で縮んで硬くなってしまうため、『130℃ほどの低温でじっくりローストすること』がポイントだと、前回お話ししました。
しかし、もっと手軽にフライパンだけで美味しく鹿肉を焼く方法があります。その一つが肉をタマネギに漬けることです。

タマネギは酵素パワーで肉の旨味をUPさせる
タマネギに漬ける


 タマネギには、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)という物質が含まれており、これは筋肉中のタンパク質を、うま味成分である遊離アミノ酸に分解する効果を持っています。よって、普通に焼いてしまうと固くなってしまう鹿肉でも、タマネギに漬けることで焼き上がりが柔らかくなり、さらに旨味までUPします。
 タマネギは、なるべく肉に触れる面積を大きくしたいので、細かくみじん切りにする、もしくはフードプロセッサーでペースト状にしたものを使います。タマネギと鹿肉はジップロックなどの容器に入れ、しっかりと揉んですり込みましょう。

漬ける時間は温度によりまちまち

 タマネギの持つ酵素は40℃~60℃で活性化し、それ以上になると熱で酵素が壊れてしまいます。よって鹿肉は必ず生肉を用い、タマネギも熱を加えていないものを利用しましょう。
 漬けておく時間は温度によって変わりますが、室温(25℃)で3、4時間といったところが目安になります。すぐに料理したいわけでないのであれば、冷蔵庫か野菜室で寝かせておくのもよいでしょう。この場合の寝かせる時間は室温よりも長くなるので、丸1日ぐらいがベストです。

漬けたタマネギは一緒に料理する

 タマネギに漬けた鹿肉は、表面に付いたタマネギを拭き取り、たっぷりのバターと一緒にフライパンで焼きます。焼き終わったあとのフライパンは、肉汁とバターを付けたままの状態でタマネギの漬け汁を入れ、醤油と酒、砂糖を少し加えて和風テイストにしましょう。

日本生まれのシャリアピン・ステーキ

 この、タマネギに漬けた肉を焼く料理はシャリアピン・ステーキといいます。なんともヨーロピアンな名前ですが、実はレシピの誕生は日本。1936年に来日していたオペラ歌手フョードル・シャリアピンが、滞在していた帝国ホテルのシェフに「歯が痛くいけど肉が食べたいっ!だから、柔らかい肉料理を出してくれ!」と注文を出し、シェフのひらめきによって作り出されたのが、このタマネギ漬けのステーキだったそうです。

タマネギ以外の肉を柔らかくする食材

鹿肉のヨーグルト漬け


 タンパク質を分解する酵素は、タマネギにも色々な食材が持っています。

パイナップル・パパイアの持つ”パパイン”

 例えばパイナップルやパパイア。みなさんもよくご存じだと思いますが、中華の酢豚にはパイナップルが入っていますよね?あれはもともと付け合わせではなく、肉を柔らかくするための調味料なのです。・・・まぁ、最近の酢豚は熱処理した 缶詰のパイナップルを使っているので、肉を柔らかくする効果はないんですが。

マイタケの持つ”マイタケプロテアーゼ”

 面白い所ではマイタケも肉を柔らかくする効果があります。テレビで何度か紹介されているので、ご存知の方も多いと思いますが、あの酵素はかなり強力で、肉がすごく柔らかくなります。

その他、肉を柔らかくする食材

肉を柔らかくする食材にはタマネギやパイナップル、マイタケ以外にも、リンゴや梨、オレンジ、大根などがあります。
酵素ではないですがヨーグルトや牛乳の持つ乳酸も、肉を柔らかくする効果があります。


肉を柔らかくする最強の食材は『化学物質』!?

シカのあばらを焼いたもの

 ここまでで、肉を柔らかくする食材はたくさんあると述べましたが、その中でも抜群に肉を柔らかくする効果を持っているのが・・・・


・・・ぶっちゃけた話、焼肉のタレです。

肉を柔らかくする化学物質『加工助剤』

 焼肉のタレには、加工助剤と呼ばれる物質が含まれています(原材料表示ではアミノ酸”等”とかかれてます)。 この物質は、タンパク質を化学的に分解してアミノ酸を作る効果があるため、肉を漬けこんでおくと柔らかく・旨味の強い肉に仕上げることができます。

 ちなみに、世の中にある加工食肉のほとんどが、この加工助剤(主に塩酸)を使って化学的に処理されています。なのでファミチキのような肉は、製造期間が短縮されるので値段が安く、不自然なほど旨味が強く、そして柔らかくできています。

自然な『不味さ』を知る

 完全自然食が売りであるジビエに対して「化学薬品を使えば美味しくなるよ!」と言っちゃうのは問題があるように思えますが、私は別に自然食品推進派ではないので、料理を食べる人が満足してくれるのであれば、どのような調理方法でも良いと思っています。

 逆に私は、ジビエにあえて化学薬品を使い、自然な不味さが不自然な美味しさに変わる姿を、もっとよく知ってほしいと思っています。
 ジビエには、独特の臭いや、肉質の固さ・旨味が薄さといった、食味に欠点を持っています。しかしこれらはすべて『自然な味わい』です。ここに化学薬品を加え食味を改善した場合、その味わいは『不自然』なものになります。
つまりそこに生まれるギャップこそ、私たちが長年、食品業界に刷り込まれた”幻想の味”だといえるのです。

 そんなことを知ったうえであれば、料理を美味しく楽しむために化学薬品に頼るのも、私はよしだと思います。

おわりに

 今回は『鹿肉を漬ける』についてお話ししました。肉を柔らかくする酵素を持つ食材は色々あるので、知っていればレシピのバライティ―がグッと増えます。タンパク質を分解する化学物質を持つ『焼肉のタレ』は、肉を美味しくするリーサルウェポン(最終兵器)であることも覚えておいていただき、ジビエをどのように楽しみたいかによって使い分けてもらえればよいと思います。

それでは、今回はこのへんで。

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