ジビエとは、イノシシやシカといった野生獣、またはカモやキジなどの野生鳥の肉を指すフランス語です。最近ではテレビや雑誌などで取り上げられる機会も多くなり、ジビエという言葉を耳にしたことがある人も多いはずです。
それではジビエにはいったい、どういった魅力があるのでしょうか?家畜の肉とは何が違うの?そんな疑問にお答えしましょう。
「ジビエ」ってどんな食材?
野生動物の肉を食べることは、日本人にとっては馴染みのない食文化だと思われるかもしれません。しかし実を言うと、日本には『百獣(ももんじ)』という古い言葉があり、古くから野生鳥獣を食べていた食文化があったりします。
栄養満点の“薬食い”
このような食文化は、落語の『池田の猪買い』という演目などでも見ることができます。『池田の猪買い』では「薬食い」と称してイノシシ肉を買い求める描写がありますが、実際に野生鳥獣の肉はビタミンB群や鉄分などが他の食材に比べて非常に高いということが知られています。
美味しいかどうかは『質』による
ではジビエが「美味しいのか?」と聞かれたら・・・ううむ。美味し、い、ですよ。ええ。なんでこんなに歯切れの悪い回答なのかというと、ジビエは『個体差』や『捕獲後の処理』で味わいが大きく変わるからです。
皆さんが普段から口にしている豚肉や牛肉ですが、これらの肉には物凄く人の手間がかかっています。家畜を育てるところから解体する所まで、人間が手間とお金を投資して生まれるのが畜産の肉というわけです。
たいしてジビエは、人が育てた動物の肉ではありません。そのためジビエは、食べていた餌や健康状態などで肉の味が変わります。
またジビエは、畜産物のように衛生的な『屠殺場』で処理されるわけでは無いので、捕獲したハンターの処理の仕方によっても味は大きく変わってしまうのです。
ジビエの旬は冬
またジビエには、野菜や魚のように”旬”があります。この点も、常に同じクオリティで生産される畜産物とは大きく違う点ですね。
ジビエの種類によっても違いがありますが、多くの場合は冬が旬になります。その理由には、
① ドングリなどの木の実をたくさん食べて肉に旨味が増すため
② 寒さに耐えるために身に脂が乗るため
③ 外気温が低いため捕獲した獲物の痛みが少ないため
などが上げられます。
つまりジビエは「春のタケノコ、夏のスイカ、秋のサンマ」のように「冬」が旬の味覚というわけです。
ジビエを手に入れる方法
さて、そんな『冬の味覚の新定番』とも言えるジビエですが、普通のスーパーに並んでいるほど一般的な食材ではありません。そのためジビエを手に入れるためには、まず『自分の手で獲物を“狩る”』、または『専門店で購入する』の2択になります。
自分で“狩る”
ジビエを自分の手で手に入れるためには、何はともあれ『狩猟免許』が必要になります。また、銃を使って狩猟をする場合は、警察署で『銃砲所持許可』という許可を得なければなりません。
サラっと書きましたが、狩猟の免許や銃の所持許可を受けるのは、そんなに簡単なことでありません。ただ、やはりジビエを本当に楽しむのであれば、自分の手で狩るのが一番だといえます。
「自分の手で命を奪い、その肉を喰らう」という体験は、とてもディープな世界です。しかし、もしあなたが少しでも興味を持ったなら、是非この世界に飛び込んでみてください。一生楽しめる趣味と新しい価値観の発見がそこにあるはずです!
信頼できるお店から購入
「自分で狩猟するのはちょっと・・・」という方は、ジビエ専門店で購入することをオススメします。ジビエは日本全国にある獣肉加工処理施設で精肉にされ、地元の朝市や道の駅、またはインターネットなどで通販されています。
値段は販売店によりまちまちですが、イノシシ肉の場合は『和牛のカルビ』、シカ肉は『国産牛の赤身切り落とし』ぐらいが相場だと思ってもらえればよいでしょう。
人から貰うのはリスクがある
ジビエを手に入れる方法には『猟師と仲良くなって分けてもらう』という手段もありますが、個人的にはオススメできません。
というのも、ジビエにはE型肝炎や野兎病などの人畜共通感染症や、病原性大腸菌やサルモネラ菌、ボツリヌス菌などの食中毒のリスクが付きまとうからです。
『自分で自分の食べるジビエを得る』または『食肉処理の許可を得た場所で解体されたジビエ』であればまだしも、他人が捌いた食肉というのは・・・ううむ。
ジビエの魅力って何?
ジビエの魅力は、味のクセが強く、臭いがキツく、品質にムラがあることです。こう書くと、とても”マズそう”に思えますが、ジビエはこの野性的なクセや香りこそが、最大のポイントなのです。
ジビエはクセだらけ。でもそれがいいじゃないか!
例えばスーパーに並ぶ豚肉は、人間の手によって完全にコントロールされた、いうなれば『食肉のスーパーエリート』であり、人間が「美味しい」と感じる最高の品質で提供されています。
しかし裏を返せば、これらの肉には『個性』と呼べるものはありません。その肉で作られる料理も、ありきたりな「美味しさ」であり、予想を超える味わいは生まれません。
しかしジビエは違います。 “野性味(gamey)”と表現されるその味わいは、人間の手によって完全に管理された畜産肉では絶対に生まれない風味があります。
もちろんジビエは個体によって臭いがキツかったり雑味が多かったりすることもありますが、そのような場合でも、肉の熟成期間や調理方法を変えてみたり、ワインや香辛料を合わせてやることで素晴らしい“マリアージュ”となり、想像しえなかった味わいが生まれることもあります。
嫌いな人は嫌い。好きな人はトコトン楽しめるのがジビエ
もしここまでの話を読んで、あなたが「クセや臭みが無いジビエが食べたい!」と思われたとしたら、はっきり言ってあなたはジビエは食べない方がよいです。
ジビエは、旨味や安全性、価格面で家畜に勝ることはありません。なぜなら野生動物は人間に食べられるために生まれてきたわけではないからです。
もしあなたがジビエのことを「美味しいお肉」と思っているのだとしたら、おそらくその幻想は粉々に打ち砕かれることでしょう。ジビエとは「美味しい」よりも、個性が「面白い」食材なのです。
食べるだけじゃなく、ジビエを料理するのも楽しい
しばしば「ジビエ料理はおいしいのか?まずいのか?」と聞かれることがありますが、これだけは覚えておいてください。マズイ料理ができるのは食材の問題ではなく、『料理人の腕』に問題があるのです。
例えばフレンチには『ヤブウサギ』というジビエがあるのですが、この肉はものすごくクセが強く、その・・・あの・・・率直に言って「ウンコの臭い」がします。なのでこのままでは食べられたものではないのですが、一流の料理人がワインと香料でジックリと時間をかけて料理をすることで、ジビエの女王(リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル)と呼ばれる一皿を作りだします。
このようにジビエをどのように料理をするのかは、あなたの腕前次第です。もしあなたが料理が大好きで挑戦心にあふれるひとであれば、この“味覚の宇宙”と呼べるジビエの世界に絶対ドはまりするはずですよ!
まとめ
- 「蟹・牡蠣・ジビエ」。ジビエは冬の味覚の新定番!
- ジビエを手に入れる方法は、自分で狩るか、専門店から買うか。
- 『美味しいジビエ料理』を作るのも『マズイジビエ料理』を作るのも、それはあなたの料理の腕次第。
カラスやタヌキの味が知りたい人は、こちらのページをご覧ください
イノシシやシカだけでなく、カラスやアライグマ、タヌキのジビエを知りたい方は、下のまとめ記事を合わせて