世界一「自由に狩猟ができる」日本は、世界一「複雑な狩猟のしくみ」を持つ国。そんな日本の『狩猟制度』を、わかりやすく解説!

 世間的にはまったく知られていないことですが、日本という国は歴史的・世界的にみても珍しい『狩猟自由国』だったりします。しかし、その自由性を保つために『狩猟のしくみ』は他の国に比べてかなり複雑になっています。今回はそんな、日本の“自由”で“複雑”な狩猟制度について、詳しく解説をしていきます。

目次

「狩猟のきまり」はどのように作られたのか?

 現在の狩猟制度をお話する前に、まずは日本の狩猟の歴史についてお話をしたいと思います。なお、歴史の話は狩猟免許試験に出てくるような内容ではないので、興味が無い人は読み飛ばしてもらっても構いません。ただ“1つだけ”覚えておいてもらいたいことがあります。それは、

狩猟のきまり』は常に“変化している

ということです。
 今回お話することは、あくまでも2022年(令和4年度)時点での「きまり」であり、今後その内容は“必ず”変化していきます。日本で狩猟を行う人は、必ずこの『変化する情報』を追いかけ続け、違反を起こさないように心がけてください。

歴史的に見ても『狩猟自由国』だった日本

 狩猟の歴史の話になると、しばしば「日本人は農耕民族なので狩猟をしていなかった」と思われる方がいますが、ハッキリいってそれは“嘘”です。日本では、はるか昔の縄文時代から現代にいたるまで、狩猟が禁止になったことは一度もありませんし、野生鳥獣の肉を食べなかった時代もありません。

肉食禁止の時代でも狩猟された肉は食べられていた

 事実「肉食禁止令」のときでさえ、日本人は野生鳥獣を狩猟して肉を食べていました。そもそも675年に公布された肉食禁止令は、耕作用のウシとウマ、泥棒除けのイヌ、時刻を告げるニワトリ、馬舎の守り神とされていたサルを“耕作期間中に限り食べてはいけないという法律であり、肉食自体を禁止する目的はありませんでした。
 また、仏教の影響力が強い奈良時代でさえ、日本人は普通に狩猟をして肉を食べています。その例として万葉集の『乞食者詠二首』には「シカ肉うまい」みたいな詩があったり、貴族たちがシカ肉を膾(なます:刺身)にして食べていたという文献も残っていたりします。

世界的に見ても『狩猟自由国』の日本

 昔から狩猟に対して“自由”な風潮を持つ日本は、世界的に見てもかなり珍しい国といえます。例えば中世ヨーロッパでは「狩猟」といえば上流階級だけが特権として許されていた行為でした。いちおう日本にも階級に関する狩猟の規制はありましたが、それらは『鷹狩り(鳥猟)』のような一部の規制であり、イノシシやシカ、クマなどの狩猟を規制する法はありませんでした。

世界各国は未だに厳しい規制を狩猟に設けている

 また現代においても東南アジアなどでは「原住民族以外の狩猟は禁止」とされている諸国も多く、韓国のように「許可はされているがムチャクチャ厳しい」といった国もあります。
 アメリカは「狩猟大国」と呼ばれますが、州によっては狩猟のライセンスの難易度が物凄く高く、試験で「動物の骨格」や「サバイバルの知識」なんかが問われたりすることもあったりします。
 こういった歴史的に見ても日本は狩猟大国であり、実は私たち日本人は『狩猟農耕民族』だったといっても過言ではありません。

明治8年『鳥獣猟規制』がはじまり

 では、現在の日本にはどのような「狩猟のきまり」があるのでしょうか?その話を紐解いていくと、明治8年に制定された鳥獣猟規制という法律まで戻ります。この法律では、それまで地方でバラバラだった狩猟のルールが体系化され、主に次のようなきまりが生まれました。

  • 狩猟をする人を、遊猟(遊びの狩猟)と職猟(生業としての狩猟)に分けられた
  • 狩猟で銃を撃ってはいけない場所(民家密集地など)が決められた
  • 毒餌などの危険物を使った猟法が禁止された

明治28年『狩猟法』で規制強化

 明治8年の鳥獣猟規制はまだまだ法律として弱い存在でしたが、明治28年には次のような決まりがつけ加えられ『狩猟法』という新しい名前になりました。

  • 地雷や落とし穴など、人間がかかると死傷する危険性のある猟法を禁止した
  • 狩猟をしてはいけない『保護鳥獣』が定められた
  • 『猟期』が定められ、猟期外では捕獲してはいけない鳥獣が定められた

 

大正7年『改正・狩猟法』で方針が変化した

 狩猟法も、さらに時間をかけて細々と内容が変わっていき、大正7年の改正でようやく現代の「狩猟のきまり」の基礎となる形が生まれました。

  1. 野生鳥獣を一般的に『狩猟してはいけない』とし、例外として『狩猟してもよい鳥獣(狩猟鳥獣)』が定められた
  2. 狩猟免許制度が作られ、甲種(銃以外の狩猟)と乙種(銃による狩猟)の2種類に分けられた
  3. 有害鳥獣駆除の権限が、主務大臣(今でいう環境大臣)と地方長官(今でいう都道府県知事に移譲された

昭和38年『鳥獣保護法』で現在の基盤となる

 激動の戦争時代が終わり昭和の中期、日本は高度経済成長による自然破壊や遊猟者の増加で野生鳥獣が大幅に減少する事態となりました。そこで、戦前から続いていた古いきまりを新しい形に直した法律が「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(鳥獣保護法)」です。

  • 狩猟ができる場所を制限するために、鳥獣保護区休猟区が設けられた
  • 都道府県知事が鳥獣保護事業計画を策定できるようにした
  • ②の財源として、狩猟免許税・入猟税(後の狩猟税)が制定された

平成26年『鳥獣保護管理法』が現行の法律

 平成も末期になると状況が一転!減少していた野生鳥獣が反転して加速度的に増加を始め、さらには狩猟者の高齢化などで猟圧が激減。『保護』を強化した昭和38年の法律では対応ができなくなってきました。
 この事態に対処するべく、鳥獣保護法には「増えすぎた野生鳥獣の数を“管理”する」という改正が加えられ、現在の鳥獣保護管理法が誕生しました。

ドンドン複雑化する『狩猟のきまり』

 現在の狩猟に関する「きまり」は鳥獣保護管理法だけではありません。例えば平成19年には、酷くなる一方の農林業被害に対して対策を打つべく『鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(鳥獣被害特別措置法)』が生まれたり、アライグマなどの外来生物が増殖する問題に対抗する『特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)』が生まれたりと、その様相はめまぐるしく変化しています。

要点は1つ「狩猟のきまりは時代で大きく変化する」ということ

 ここまで長々と説明をしてきましたが、大事なことは「狩猟のきまり」は時代に応じて大きく変化しているということです。狩猟をはじめる人は「今のきまり」だけを覚えるのではなく、常にアンテナを張って新しい情報を仕入れるようにしましょう。

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狩猟のきまりごとはドンドン変わる。情報を追いかけ続けることが大事!

狩猟鳥獣

 さて、現在の日本の「狩猟のきまり」でまず覚えておかなければならないのが、『日本国内の野生鳥獣は、ほぼすべて“保護”されている』という事実です。

ハト1羽捕まえると前科持ちになる


 これがどういうことかというと、例えば公園に大量に群れているハト(ドバト)は、大量にいるから捕まえてもよさそうに思えますが、日本の法律ではたとえ1羽であっても捕まえると違反になります。
 しかも、この違反(鳥獣保護管理法違反)は『1年以下の懲役又は100万円以下の罰金』というかなり重い罪になっています。ハト1羽捕まえただけで“前科持ち”になっちゃうんですよ!

もちろん、保護だけだと問題が生じる

農作物被害にあった果物

 これだけ聞くと「野生鳥獣のパラダイス」ですが、もちろん野生鳥獣『保護』ばかりしていると、困ったことも起こります。

『保護』だけだと人間は野生動物の横暴を眺めているしかない

 例えば、野生鳥獣が『保護』だけされていると、人間は自分たちが作った作物を野生鳥獣に食い荒らされていても、その姿を眺めているしかありません。家の中に野生動物がズカズカと入り込んでも我慢をするしかない・・・こんなことって嫌ですよね?

『保護』だけだと日本の狩猟文化が禁止になってしまう

 また、日本には縄文時代からずっと続いている『狩猟文化』があります。代表的な例でいうと、東北地方の「マタギ文化」や北海道の「アイヌ文化」、また文明化はされていないものの、その土地その土地で古くからの狩猟文化や慣習は今なお生き続けています。
 野生鳥獣を保護だけしていると、これらの狩猟文化は実質すべて『断絶』になります。それはあまりにも横暴すぎる!

狩猟鳥獣に指定されると保護が一時的に『解除』される

罠にかかったイノシシ

 そこで日本の法律には、保護を一時的に“解除”する野生鳥獣の種類が決められるようになっており、これに指定された野生鳥獣を狩猟鳥獣といいます。日本の法律にはこの狩猟鳥獣という例外があるため、私たちは日本で「狩猟」ができるというわけです。

狩猟鳥獣は色々な要素を加味して、5年ごとに更新される

 狩猟鳥獣がどのように決められるかは、農林業被害の問題や狩猟文化的な見方、定期的な生息数調査などで、おおむね5年ごとに見直しがされています。
 例えば、アライグマやミンク、ハクビシンといった野生鳥獣は、近年になって生息数が増え、農林業被害や家宅への侵入といった問題が深刻化し始めました。そのためこれらの種は平成6年(1994)に、狩猟鳥獣に指定されました。
 対して、太古の昔から狩猟されていたムササビやニホンリスといった獣、ビロウドキンクロやコオリガモといったカモ類は、「個体数が著しく減少している」として、同じく平成6年に狩猟鳥獣の指定が外されました。

家ネズミ3種は保護の対象外

 “保護”されていない例外として、「家ネズミ」と呼ばれる3種のネズミ(ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ)がいます。このネズミ3種は『公衆衛生』の問題があるため、捕獲するのに許可や免許は必要ありません。なのでホームセンターには「ネズミ捕り器」が市販されているわけです。
 ただし気を付けないといけないのは、同じ「ネズミ」でも、山の中に生息するアカネズミやカヤネズミ、ハタネズミといった種類は狩猟鳥獣に指定されていないため、保護が解除されません。そのため、これらの野ネズミを捕獲すると鳥獣保護法違反となります。

令和4年時点で狩猟鳥獣は46種類

 狩猟鳥獣の種類は、令和4年の時点で獣類20種、鳥類26種(ヒナ・卵を除く)の計46種が指定されています。狩猟鳥獣の中には、1人の人間が1日あたりに捕獲できる上限数が定められている種類もいます。
 下記に令和4年度時点での狩猟鳥獣を一覧にしているので、ご参考ください。

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すべての野生鳥獣は“保護”されている
その保護が一時的に外れる例外が『狩猟鳥獣』

猟期

場所 / 猟期
開始日~【期間】~終了日
北海道
10月1日 ~【4ヵ月間】~ 翌年1月31日
北海道の猟区
9月15日 ~【7ヵ月間】~ 翌年4月15日
北海道以外
11月15日 ~【3ヵ月間】~ 翌年2月15日
北海道以外の猟区
10月15日 ~【5ヵ月間】~ 翌年3月15日

 保護が解除される狩猟鳥獣は「捕獲」をしても罪には問われませんが、いつでも・どこでも捕獲して良いわけではありません。日本の狩猟制度には狩猟鳥獣に加え、猟期という決まりがあります。
 令和4年度時点での猟期は、上表のように決まっています。北海道以外に住む人以外は「11月15日から翌年の2月15日までの3カ月間」と覚えておきましょう。

日本の猟期は「冬」に指定されている

 猟期が冬場に指定されている理由にはいくつかありますが、一番の理由は農閑期であるためです。稲の収穫が終わった11月ごろから野山には人影が少なくなるので、「銃を撃ったり罠をしかけても人にケガをさせる危険性が少ない」といった考え方です。まぁ、近年は稲作以外の農家さんも多いので、ひとえに「農閑期」とは言えないのですが、慣習というやつですね。

「農閑期」以外の理由

 農閑期以外にも、猟期が冬になっている理由はいくつもあります。

  • 野生鳥獣は寒い冬に備えて脂をたっぷりと蓄えるので、食味が良くなるため
  • タヌキやキツネなどの獣は、美しい冬毛に生え変わるため
  • 北方からカモなどの渡り鳥がやってくるため
  • 気温が低いため、肉や毛皮の痛みが少ないため
  • 草木が枯れるので獲物を発見しやすいため

冬以外にやっている人もいるが、それは『狩猟』ではない

狩猟制度の種類

 田舎に住んでいる人の中には「あれ?でも近所の猟師さんは夏に罠をかけたりしていたけど?」と思われた方もいると思います。確かに猟期以外に活動をする猟師はいるのですが、これは正確に言うと『狩猟』ではありません。
 野生鳥獣を捕獲する方法には狩猟制度以外にも許可捕獲制度指定鳥獣保護管理計画制度といった“別のきまり”があります。この話をすると物凄く長くなるので、今回は上の図の一番左側「レジャーハンター」の部分だけを説明しています。
 もし「プロハンター(猟師)になってお金を稼ぎたい!」という人がいれば、別のページで詳しく解説をしているので、よかったら読んでみてください。

猟期は都道府県ごとに延長・短縮できる

 北海道を除く猟期は「11月15日から翌年の2月15日まで」なのですが、都道府県ごとに猟期を延長したり、短縮したりできることを覚えておきましょう。
 というのも、日本は北南に長い土地を持っているため、都道府県によって渡り鳥がやってくる時期や、獣が肥え太る時期がまったく違います。
 また、地域によっては野生鳥獣が『多い場所』と『少ない場所』があるため、猟期を全国で一律にしてしまうと獲物がまったくとれなかったり、獲れすぎて絶滅させてしまったりと問題が生じます。

鳥獣被害が酷いところでは延長、絶滅の危険性がある場所では短縮

 そこで日本では、各都道府県ごとに猟期の設定を細かく調整できるようになっています。例えば、イノシシやシカの被害が多い地域では、猟期を「イノシシ・シカの猟期を11月1日からスタート」にしているところもあります。
 また、四国のツキノワグマは絶滅の危険性があることから、四国4県ではツキノワグマの猟期が「0日」(実質、狩猟鳥獣から除外)になっていたりします。

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猟期は原則として11月15日から2月15日の3カ月間
ただし、都道府県によって延長・短縮される

禁猟区

特定猟具使用禁止区域

 狩猟制度には猟期に加えてもうひとつ『狩猟ができない区域』という決まりもあります。こういった狩猟ができないエリアを一般的には禁猟区といいます。
 逆にいうと、これら狩猟ができない“一部の区域”以外では狩猟ができます。これら禁猟区でないエリアのことは可猟区または乱場といった呼ばれかたもされます。

狩猟が禁止されている『鳥獣保護区』

 鳥獣保護区は野生鳥獣の生息数を維持するために、環境大臣や都道府県知事が指定する地域です。令和3年の時点では全国に約3,700カ所あり、その多くが国定公園内だったり、渡り鳥が多数やってくる水辺、または狩猟なんかして欲しくない『都心部』だったりします。いちおう鳥獣保護区の期限は「20年」とされていますが、ほぼ間違いなく更新されています。

狩猟ができる区域も『休猟区』に指定されることがある

 鳥獣保護区以外の区域でも、都道府県知事が「野生鳥獣が減りすぎている!」と判断したところは休猟区という名前で禁猟区になります。鳥獣保護区とはちがい、ある年に突然休猟区に指定されたりするので、毎年の猟場情報は必ずチェックしましょう。
 なお、休猟区は「3年以内」には解除されることになっています。また休猟区内で「鳥類はダメだけどイノシシとシカは獲っていい」みたいな例外が設けられることもあります。

鳥獣保護区・休猟区から追い出すのも禁止!

 鳥獣保護区や休猟区に入り、獲物を追い出して捕獲するのは違法になります。特に東京近辺では鳥獣保護区や休猟区が“入り混じっている”ところが多いため、「獲物を追っていたら保護区に入っちゃった!」みたいなことがママあります。違反にならないように注意してください。

特定猟具使用禁止区域

 狩猟自体はできる区域ですが、「特定の道具(猟具)を使っての狩猟は禁止」とする区域もあります。これは特定猟具使用禁止区域と呼ばれ、特に『銃』の使用を禁止するエリアのことを、俗に「銃禁エリア」といいます。先の話と同じように「獲物を追ってたら銃禁エリアに入っちゃった!」みたいなことが起こるので、注意しましょう。

北海道以外ではほぼ見ることがなくなった『猟区』

 狩猟のきまりの中には猟区という区分けもあります。これは鳥獣保護区などの一角を『狩猟専用エリア』として開放しているエリアで、入猟者数や入猟日などを個別に設定することができます。
 ただ、この猟区は大正7年の狩猟法時代に設けられた制度なので、現在はほとんど見ることはありません。昭和7年には200カ所近くあったみたいですが、平成17年時点では全国に34猟区、現在は北海道の西興部(にしおこっぺ)村猟区、占冠(しむかっぷ)村猟区を除いて、ほとんど存在しないのが現状です。

ハンターマップを利用しよう!

  鳥獣保護区や銃禁エリアなどはその場所にいくと看板が立っていますが、これらの情報は都道府県ごとに鳥獣保護区等位置図、別名「ハンターマップ」に色分けされています。このハンターマップはWeb上に公開している都道府県も多いため、気になる方は「○○県 ハンターマップ」で検索してみましょう。
 だいたいの都道府県で、狩猟ができない鳥獣保護区などは赤銃禁エリアなどは青で色分けされています(※色分けされていないところが可猟区)。

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狩猟ができる場所は事前にハンターマップで確認しよう

法定猟法と禁止・危険猟法

法定猟法・禁止猟法・危険猟法

 日本では『狩猟鳥獣・猟期中・禁猟区以外』でなければ狩猟はできません。“逆にいうと”、この条件に当てはまっていれば誰でも狩猟ができます。0歳児でも狩猟はできるし、日本に国籍を持たない外国人であっても狩猟はできます。日本が「狩猟自由国」と呼ばれる理由もここにあります。
 とはいえ、誰も彼もが“自由”に狩猟をするって怖くないですか?「ヒャッハー!獲物だー!!」なんて危なすぎる!そこで日本の狩猟には「危険猟法」と「禁止猟法」、そして「法定猟法」という3つきまりがあります。

人に危害を与える危険性がある『危険猟法』

 危険猟法は、人間の身体や生命、財産を危険にさらす危険性の高い方法のことです。具体的には次のようなきまりがあります。

  • 爆発物、劇薬、毒薬
  • 据銃や陥穽
  • その他人の生命又は身体に重大な危害を及ぼすおそれがある『わな』

「カミツブシ」と「毒矢」

 「爆発物」というと手榴弾みたいなものを使うイメージがありますが、具体的には「カミツブシ」という罠のことを意味しています。これは餌の中に銃の雷管をしこんでおき、獲物が餌ごと雷管をかみつぶすと爆発して頭を“吹き飛ばす”というエグイ猟法です。
 「劇薬・毒薬」というのは餌に混ぜるタイプもそうですが、主にナイフなどの突起物に塗って使う「毒矢」のことを指します。ゴールデンカムイでアシリパさんが矢の先に毒を塗っていましたが、現在の狩猟ではそういった行為は禁止されています。
 

銃を使った罠は禁止!

 据銃は図のように、引き金にワイヤーを張って、ワイヤーに触れると弾が飛び出す仕組みの罠です。銃を構えることを据銃(きょじゅう)といいますが、こちらは「すえじゅう」と呼びます。
 ゴールデンカムイでは「アマッポ」という仕掛け弓が出てきましたが、あれと構造は同じです。戦場では扉にワイヤーをしかけておいて、敵が入って来たら自動で弾を発射する「ブービートラップ」にも使用されます。

『おとしあな』禁止!

危険猟法のおとしあな

 陥穽(かんせい)は、いわゆる「おとしあな」のことです。「おとしあな」と書くと、ただのイタズラのように思われますが、実は物凄く危険な罠だったりします。
 ベトナム戦争でも米軍を恐怖させた「おとしあな」は、底に杭を立てておき、落ちた兵士を串刺しにするという恐ろしい罠でした。
 さらには杭にウンコを塗っておき、怪我で済んでも『感染症におとしいれる』というオマケ付き・・・恐ろしすぎます。

その他、人間がかかるとヤバい「わな」

 上記のとおり、人間がかかるとヤバい罠はいくらでもあります。例えば、獲物がひっかかるとせき止めておいた水や岩が雪崩を起こすような罠とか、可燃物を撒いて火災を起こすような罠とかです。
 ここまで極端ではなくても、例えば『獲物の足をワイヤーでくくって、木にぶら下げるような罠』も、場合によっては危険と見なされる場合があります。このへんは判断が難しいところですが、基本的には「ヤバそうなことは禁止」と覚えておいてください。

乱獲の危険性がある『禁止猟法』

 禁止猟法は、「使用すると乱獲の危険性がある方法」です。具体的には次のようなきまりがあります。ちょっと長いので読み飛ばしてもらっても構いません。

  • ユキウサギ及びノウサギ以外の対象狩猟鳥獣の捕獲等をするため、はり網を使用する方法
  • 口径の長さが十番以上の銃器を使用する方法
  • 飛行中の飛行機若しくは運行中の自動車又は5ノット以上の速力で航行中のモーターボートの上から銃器を使用する方法
  • 3発以上の実包を充てんできる弾倉のある散弾銃を使用する方法
  • 装薬銃であるライフル銃を使用する方法(ヒグマ、ツキノワグマ、イノシシ及びニホンジカにあっては、口径の長さが5.9mm以下のライフル銃)
  • 空気散弾銃を使用する方法
  • 同時に31個以上のわなを使用する方法
  • 鳥類並びにヒグマ及びツキノワグマの捕獲のため、わなを使用する方法
  • イノシシ及びニホンジカの捕獲等をするため、くくりわな(輪の直径が12cmを超えるもの、締付け防止金具が装着されていないもの、よりもどしが装着されていないもの又はワイヤーの直径が4mm未満であるものに限る。)、おし又はとらばさみを使用する方法
  • ヒグマ、ツキノワグマ、イノシシ及びニホンジカ以外の獣類の捕獲等をするため、くくりわな(輪の直径が12cmを超えるもの又は締付け防止金具が装着されていないものに限る。)、おし又はとらばさみを使用する方法
  • つりばり又はとりもちを使用する方法
  • 矢を使用する方法
  • 犬に咬みつかせることのみにより捕獲等をする方法又は犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め若しくは鈍らせ、法定猟法以外で捕獲等をする方法
  • キジ笛を使用する方法
  • ヤマドリ及びキジの捕獲等をするため、テープレコーダー等電気音響機器を使用する方法

かかった獲物を死傷させる方法は禁止

 先述の内容を全部解説していると長くなりすぎるので要点だけお話しておくと、「間違えて狩猟鳥獣以外が捕まった場合、その鳥獣を“無傷”で解放しなければならない」ということです。それができない方法は、すべて禁止猟法とされています。
 例えば「トリモチ」のような粘着物質は、鳥獣がかかると毛や羽にまとわりついて剥がすことができません。こうなると無傷で逃がすことはできないため、狩猟では禁止されています。

半矢を作るような威力の無い道具は禁止

 もうひとつ禁止猟法には、「獲物をしとめ切れずに逃がしてしまうような方法」も禁止されています。具体的にはパワーの弱い銃や、細くて切れやすいワイヤーを使った罠などです。こういった方法は獲物を無駄に長く苦しめてしまうため禁止されています。
 余談ですが、同様の理由で日本では「弓」による狩猟も禁止されています。しかし海外では、そこいらの銃よりも強力なコンパウンドボウが狩猟に使われています。日本だって古くは弓矢を使って狩猟をしていたんだし、規制緩和されないかなぁ~・・・と思ったりしますが、まぁ難しいでしょうね。

狩猟に使用するなら免許が必要になる『法定猟法』

 さて、猟法には色々な猟法が考えられるわけですが、そのなかでも特に狩猟に適した方法として定めているのが法定猟法で、その法定猟法に使用される道具を猟具といいます。猟具は具体的に次の物が当てはまります。

装薬銃火薬の燃焼を利用して弾を発射する銃。なかでも狩猟用として認められた銃は猟銃と呼ばれる
空気銃圧縮空気や炭酸ガスの圧力を利用して弾を飛ばす銃。特に狩猟用に適したパワーのものはエアライフルと呼ばれる
わな(※)設置して獲物を捕縛する道具。くくりわなはこわなはこおとしかこいわなの4種類が指定されている
手動で操作して獲物を絡めとる道具。むそう網はり網つき網なげ網の4種類が指定されている。

(※ “猟具としての罠”は、法律上ひらがな表記の「わな」が使われています。このサイト上では慣用的表現には「罠」、法律的な意味を持つ場合は「わな」と表記しています)

法定猟法で狩猟をするなら『狩猟免許』が必要

狩猟免状

 これら猟具を使って狩猟をするためには、その区分に応じた狩猟免許が必要になります。装薬銃の場合は第一種狩猟免許、空気銃の場合は第二種狩猟免許、わなの場合はわな猟免許、網の場合は網猟免許に区分けされています。
 一般的に「狩猟免許」は「狩猟をするための免許」と思われますがそうではなく、この法定猟具を使うための免許というわけです。
 狩猟免許を取得するための狩猟免許試験については、下記ページで詳しく解説をしています。
 
 

狩猟免許制度と狩猟者登録制度

 法定猟法で狩猟をする場合、該当する区分の狩猟免許に加え狩猟登録が必要になります。この狩猟者登録では下記の書類を、各年度に狩猟をする都道府県に対して提出します。

ハンターバッヂを帽子に付ける

結構複雑ですね。この狩猟者登録についても別のページで詳しく解説をしています。

免許がなくても狩猟できる『自由猟法』

 「法定猟法でも危険・禁止猟法でもない猟法」にはいくつもの方法があります。例えばブーメランやパチンコ、手づかみ、投石、虫取り網やカゴなどは「網」のように思えますが、法定猟法の網(むそう網、はり網、つき網、なげ網)のいずれでもありません。こういった猟法は自由猟法(※)と呼ばれており、免許が無くても狩猟に使うことができます。(※ 法律的には正確な名称ではありません)

免許がいらないからといって「捕まえられる」わけではない

 ただし、「免許がいらない」というだけで「獲物がつかまえられる」といったわけではありません。当然、警戒心の強い野生鳥獣に虫取り網を振り回しても捕獲することはできませんし、獰猛なイノシシやクマにナイフで立ち向かっても返り討ちにされるはずです。
 よって、日本で狩猟をするためには「猟具を使う」=「狩猟免許が必要」と理解しておきましょう。もちろん日本は「狩猟自由国」なので、自由猟法という存在を理解しておくことも重要です。

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危険・禁止でなければ猟法は“自由”なのだが、免許が必要な『法定猟法』で行うのが妥当

まとめ

  1. 日本の「狩猟のきまりごと」は時代背景や環境によって変化し続けている
  2. 日本に生息する野生鳥獣は“保護”されているが、例外的に保護が“解除”される野生鳥獣を『狩猟鳥獣』という
  3. 狩猟鳥獣を狩猟してもよい期間を『猟期』という
  4. 鳥獣保護区など、狩猟をしてはいけない『禁猟区』がある
  5. 狩猟の方法には禁止猟法、危険猟法があり、法定猟法をするなら免許が必要
  6. 禁止・危険・法定猟法以外の猟法は『自由猟法』だが、法定猟法(猟具)を使って狩猟をするのが一般的

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