『クレー射撃の魅力』は、性別、年齢、体格によらず誰でも楽しめる〝ユニバーサルスポーツ〟

 クレー射撃は、銃を扱う射撃競技の中でも特に知名度の高いスポーツです。しかし、クレー射撃の魅力がどこにあるのか、一般の方にはあまり知られていないかもしれません。そこで今回は、クレー射撃の魅力について詳しく解説します。

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クレー射撃とは?

 銃を使用するスポーツには、世界中にさまざまな種類があり、銃規制の緩い海外では、裏庭や空き地で野菜や空き缶を撃つ「プリンキング」と呼ばれるスポーツが親しまれていたりもします。
 一方、銃の規制が厳しい日本では、スポーツ目的での発砲は「指定射撃場」と呼ばれる場所でしか行うことができません。この指定射撃場の中で「散弾銃射撃場」と呼ばれる場所で行われる射撃スポーツの一種が、クレー射撃です。

手のひらサイズのクレーピジョン

 クレー射撃の起源は、19世紀にヨーロッパで狩猟の訓練として始まったと言われています。最初は実際の鳥(ハト)をターゲットとして競技が行われていましたが、1875年ごろから素焼きの皿が使われるようになりました。現在でもこの素焼きの皿はクレーピジョンと呼ばれており、その名残を感じることができます。

散弾銃で素早くクレーを撃破する

 クレーピジョンは、直径110mm、厚さ25mmと手のひらほどのサイズしかありません。競技ではこの小さなクレーピジョンが時速80~120kmという高速で放出されるため、射手はこのクレーを素早く撃ち落とす必要があります。
 一見すると非常に難しそうなスポーツに思えますが、クレーを撃ち落とすために使用する散弾銃は、引鉄を引くだけで時速1400mもの速さで弾を射出することができます。銃の基本的な構え方(据銃姿勢)と正確な照準、そして少しばかりの〝コツ〟を知っておくことで、誰でもクレーに命中させることができます。

クレー射撃の魅力とは!?

 クレー射撃は、世界中で多くの人々に愛されているスポーツであり、その魅力は多岐にわたります。ここでは、クレー射撃の魅力をいくつか紹介します。

特別な道具『散弾銃』を扱える

 クレー射撃の最大の魅力のひとつは、散弾銃という特殊な道具を扱えることです。普段の生活では決して扱えない銃を手に持ち、狙いを定めてクレーを撃ち抜く瞬間は、他のスポーツにはない独特のスリルと興奮を味わえます。
 もちろん、このような特殊な道具である散弾銃を簡単に手にすることはできません。散弾銃を所持するためには、公安委員会から猟銃の『所持許可』を受ける必要があります。具体的な手続きや必要な条件については、別のページで詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。

ストレスをぶっ飛ばす爽快感

 クレー射撃のもう一つの魅力は、散弾銃から鳴る轟音と共にクレーが「パーンッ!」と砕け散る瞬間です。その爽快感は「ゴルフのナァイスショットォ!」や「ボウリングのストライク!!」、「ダーツでブルズアイに支える瞬間」に相当する感覚です。この瞬間は、普段の生活で抱えるあらゆるストレスを吹き飛ばし、心身ともにリフレッシュさせてくれるでしょう。

競技の目的は多種多様

 クレー射撃には代表的な競技として、スキート競技とトラップ競技があります。これらの競技を突き詰めて練習し、ゆくゆくは国体やオリンピックといった華々しい舞台を目指すのも、クレー射撃の面白さの一つと言えます。
 また、これらの競技を極める以外にも、クレー射撃にはラビット競技やトリプルトラップ、ランニングターゲットといった様々な競技種目があります。こういった競技には「国体やオリンピック出場」といったゴールはありませんが、射撃仲間や狩猟仲間とワイワイ楽しむのにはとても良いスポーツです。
 競技性を突き詰めるのも良し、気の合う仲間たちと楽しむのも良し、クレー射撃の楽しみ方には幅がある点も魅力の一つです。それぞれのスタイルに合わせて、自分だけのクレー射撃の楽しみ方を見つけることができるでしょう。

クレー射撃の真髄は身体能力よりも〝精神力〟

 
 一般的なイメージとして、クレー射撃には『卓越した反射神経』が必要そうに思えます。しかし実際のところ、クレー射撃には〝身体能力〟や〝反射神経〟といった身体的な能力にあまり依存しないスポーツです。その実例を表す良い例が『パラクレー』の存在です。

健常者とルールはほとんど変わらない『パラクレー競技』

 パラクレー競技は、身体の欠損や四肢の不自由な人たちが行うクレー射撃競技です。一般的に「身体障碍者向けのスポーツ」というと、健常者向けのスポーツを身体障碍者向けにルールが改変されることが多いですが、パラクレーの本質的なルールは健常者向けのルールと変わりません。違いがある点は、障碍の部位に応じた補助具の規定だけであり、クレーが放出されるスピードや採点方法といった基本的なルールは変わりません。

 通常のクレー射撃とパラクレー射撃のルールがほとんど変わらないのは、クレー射撃の本質がフィジカル(肉体的要素)よりもメンタル(精神的要素)が重要になるためです。

フィジカルの優劣が差を生まない『ユニバーサルスポーツ』

 クレー射撃はフィジカルの優劣で点数差に影響が少ないため、例えば年齢や性別、体力といった要素に対しても大きな影響を与えません。このような肉体的な優劣によって競技性にほとんど差が生まれないスポーツはユニバーサルスポーツとも呼ばれ、クレー射撃はその代表的な一種と言われています。
 実際に、クレー射撃のオリンピック競技には男女混合種目があり、性別による結果の差がほとんど出ることはありません。

自分の短所を個性に変える面白さ

 クレー射撃がフィジカル的な要素によらないユニバーサルスポーツである理由の一つとして、「自分なりの撃ち方ができる」という点にあります。もちろん、クレー射撃における銃の構え方や撃ち方には〝基本〟が存在しますが、最終的には自分なりに最も撃ちやすいスタイルを研究して作り上げていく必要があります。自分の思っている短所を個性に変えていくことができるのも、クレー射撃の大きな魅力のひとつです。
 

重要なのは、自分自身に打ち勝つ〝メンタル〟

 クレー射撃では、引鉄に指をかけるだけで弾が飛び出すため、初心者でも簡単にクレーを撃破することが可能です。しかし、それをコンスタントに〝当てていく〟ことは、並々ならぬ練習量とセンスが求められます。
 クレー射撃はフィジカル的な要素がそれほど重要ではありませんが、逆にメンタル的な強さは他のスポーツよりも求められます。「なかなか当たらない…」と落ち込んだ精神状態や、「あと1点で自己ベスト更新だ」という高ぶった精神状態は、普段通りにしていれば当たるはずのクレーを外してしまう原因となります。
 このように、クレー射撃は「他者と競い合うスポーツ」というよりも、「自分自身に打ち勝つスポーツ」といえます。どのような状況においても集中力を高めながら、冷静さも維持していく精神力は、ある意味、メディテーション(瞑想)やヨガに近いスポーツなのかもしれません。

狩猟の練習にも最適

 クレー射撃はスポーツとして楽しむだけでなく、『狩猟の練習』にも最適です。猟期中に数回あるかないかの〝チャンス〟をものにするためには、クレー射撃で射撃技術と精神力を鍛錬しておくことが大切になります。

正しい据銃と速さを身に付ける

クレー射撃を練習することで最も鍛えられるのは、『据銃の正確性とスピード』です。特にスキート競技では、銃を降ろした状態からスタートするため、銃を素早く構えて正確に狙いを定める動作を繰り返し練習することになります。
 もちろん、トラップ競技でも正しい据銃の練習は欠かせません。トラップ競技では、クレーが予測できない方向に飛び出すため、射手は常に即座に銃を構え、的確にターゲットを狙う必要があります。

動的射法を身に付けることができる

 クレー射撃のように、動いている物体を銃で狙う射撃技術を「動的射法」と言います。この動的射法には大きく「スイング射法」と「リード射法」の2つがあり、どちらにおいても〝正しく据銃した状態で体を大きく動かす〟ことが大切になります。こういった動的射法を身に付けるためには、クレー射撃で何百、何千発と撃ち、体に覚えさせるしかありません。

自身の銃が持つ〝クセ〟を知ることができる

銃は、通常、照準の高さやグリップから引鉄までの高さ、銃床の長さなどが異なります。もちろん、銃をフルオーダーすることで、自分の身体に最もマッチした物を手に入れることができますが、一般的には既存の銃の〝クセ〟に合わせて構え方を変える必要があります。
 クレー射撃の練習を重ねることで、この銃が持つクセを知ることができます。「この銃は、ちょっと下目を撃った方がよく当たる」、「この銃は発射時に右に大きく反動が出る」といった、ちょっとした銃のクセを理解しておくことで、より正確な射撃が可能になります。

急な獲物の出現にも焦らなくなる

  狩猟の現場では、いつ何時、獲物が出現するかわかりません。獲物が突然飛び出してくると、弾が獲物に当たらないばかりか、狙いが反れて流れ弾が発生する危険性も高まります。
 クレー射撃では、クレーの出現がある程度予測できるため、完全に狩猟のシミュレーションができるわけではありません。しかし、「獲物に狙いを定めて引鉄を引く」という一連のプロセスを繰り返し練習することで、実際の狩猟における〝あがり〟を抑えることが可能です。

まとめ

  1. クレー射撃の魅力は、特殊な道具である散弾銃で、豪快にクレーを撃破する爽快感にある
  2. 性別や年齢、体力差によって結果に影響がでにくいメンタル重視のスポーツ
  3. スポーツだけでなく、狩猟の練習にも最適

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この記事を書いた人

学生時代に空気銃競技をはじめ、20代でクレー射撃を始めました。狩猟はやっていません。火薬代が高騰しすぎていつも金欠。

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