冬の味覚の新定番『ジビエ』ってなに?

鹿肉ソテー
3つのポイント
  • ジビエは猟期(11月~2月)に楽しむ”冬の味覚”の新定番。
  • ジビエを得るには、自分で狩猟を始めるか、許可を受けた獣肉処理場のものを購入する。
  • ジビエは強いクセと香りが楽しい!

ジビエ は冬の味覚

鹿のスキレット料理

 『ジビエ』とは、イノシシやシカなどの野生獣の肉、また、カモやキジなどの野鳥の肉を指すフランス語です。最近では、テレビや雑誌などで取り上げられる機会も多くなり、また都心部を中心に専門のレストランも増えてきているため、「ジビエ」という言葉を耳にしたことがある人も多いはずです。

 「野生動物の肉を食べる」と聞いた人の中には、長く肉食が嫌がられてきた日本人にとっては、馴染みのない食文化だと思われるかもしれません。しかし、実は日本には、古くから『百獣(ももんじ)』という野生動物の肉を食べる文化があり、有名な落語『池田の猪買い』では「薬食い」と称してイノシシ肉を買い求める姿が描かれています。

 さて、野菜や魚に”旬”があるように、野生の肉であるジビエにも、もっとも美味しく食べることができる旬が決まっています。その旬とは、ドングリなどの木の実をたくさん食べて肉に旨味が増し、さらに寒さに耐えるために身に脂が乗り、カモなどの渡り鳥たちが北方の地からやってくる、冬の季節です。
日本においても、狩猟ができる季節は11月から2月までとされているように、ジビエという食材は、近年注目を集める”冬の味覚”なのです。

ジビエは自分で狩るか、信頼できるお店から購入

罠にかかったイノシシ


ジビエを手に入れる方法には大きく2つあります。まず一つ目が、自分の手で獲物を”狩る”ことです。
 日本で狩猟を始めるためには、狩猟免許を取得し、さらに猟銃を使って狩猟がしたい人は、警察署で『銃砲所持許可』を受けます。簡単そうに書きましたが、狩猟免許と銃砲の所持許可には、それぞれ筆記テストと実技テストがあるので、しっかりと試験対策をしなければなりません。また費用も総額10万円前後必要となり、さらにすべての手続きが終わるまで3か月以上もかかります。

散弾銃でカモを撃つ


 このように、お金も時間もかかるため、狩猟はとても気楽に始められるような趣味ではありません。しかしジビエを手に入れるもっとも最適な方法は、やはり自分の手で獲物をしとめることです。『自分の手で得た食材を食べる』というキャッチ&イートの面白さを感じていただくためにも、少しでも興味がある方には、ハンターへの道を目指してもらうのが一番だと思います。
 


 ジビエを手に入れるもう一つの方法が、お店で購入することです。ジビエは日本全国にある獣肉加工処理施設で精肉にされ、地元の朝市や道の駅、またインターネットなどで通販されています。
 値段は、肉の部位やブランドによって様々ですが、イノシシ肉の場合は『和牛のカルビ』、シカ肉は『国産牛の赤身切り落とし』ぐらいだと思ってもらえればよいです。


 ジビエを手に入れる方法には『猟師のおいちゃんと仲良くなって分けてもらう』という手段もありますが、これはオススメできません。
 ジビエは、飼育環境や精肉方法がしっかりと決められた畜産と異なり、まったく人に管理されていない”自然の肉”です。そのためジビエには、E型肝炎や野兎病などの人畜共通感染症、また、病原性大腸菌やサルモネラ菌、ボツリヌス菌などの食中毒のリスクがあります。
 もちろんハンターの多くは、衛生や品質のことを考えて処理をしますが、中には肉の品質や衛生のことなど考えず、むちゃくちゃな処理をするハンターもいるのが現状です。よって、安全・安心で品質の良い美味しいジビエを手に入れる方法は、
①ハンターになって、ジビエを自分自身の手で生み出す。
②食肉処理業の許可を受けた獣肉処理施設のジビエを買う。

という、2つに限られてきます。

ジビエの野性味は、料理に∞の可能性を与える

アナグマ肉


 ジビエの魅力を簡単に説明すると、味のクセが強く臭いがキツく品質にムラがあることです。こう書くと、とても”マズそう”に思えますが、ジビエはこの野性的なクセや香りこそが、最大のポイントなのです。
 たとえば、スーパーに並ぶ豚肉を想像してください。人間の手によって完全にコントロールされたこれら食肉は、言ってみれば『食肉のスーパーエリート』であり、人間が「美味しい」と感じる最高の品質で提供されています。
しかし裏を返せば、これらの肉には『個性』と呼べるものはありません。スーパーに行けば、いつも同じ味で、同じ品質の肉が手に入ります。その肉で作られる料理も、ありきたりな「美味しさ」であり、予想を超える味わいは生まれません。

 しかしジビエは違います。 ”野性味(gamey)”と表現される味わいは、一噛みごとに染み出る濃い旨味と香りがあり、人間の手によって完全に管理された畜産肉では絶対に得られない特徴です。しかもその野性味は、獲れた時期や場所、性別や年齢などによって、様々な個性があります。
 もちろんジビエの個性によっては臭いがキツかったり、雑味が多い場合もあります。しかしそのような場合でも、肉の熟成期間や調理方法を変えてみたり、ワインや香辛料を合わせてやることで、素晴らしい”マリアージュ”となり、想像しえなかった味わいが生まれることもあります。

アナグマすき焼き


 もしここまでの話を読んで、あなたが「クセや臭みが無いジビエが食べたい!」と思われたとしたら、はっきり言ってあなたはジビエは食べない方がよいです。
以前、テレビのグルメ番組で、キジ肉を食べた女性キャスターが「ニワトリみたいで美味しい!」とコメントをしているのを見たことがありますが、ニワトリのような肉が食べたいのなら、ニワトリを食べた方がいいです。
 ジビエは、肉の旨味や歩留まり、安全性、価格の面で、家畜に勝るものではありません。なぜなら野生動物は家畜と違い、『人間に食べられるために生まれてきたわけではない』からです。
もしあなたが「ジビエって美味しいお肉のこと」だと勘違いしてジビエを食べた場合、おそらくその幻想は粉々に打ち砕かれて、「ジビエって固くて臭くて美味しくない」と間違った感想を持ってしまうことになるはずです。


 「ジビエは、その動物が持つ独特のクセや香りを楽しむ冬の味覚だ」とご理解いただけたのであれば、ジビエほど料理が楽しくなる食材はありません! ジビエは『どのようなジビエと出会うか』という始まりから、調理方法、味付け、スパイスの選択、お酒の選び方などで、出来上がる料理はまったく変わります。その出会いは常に一期一会の出会いであり、その味わいは無限の可能性を秘めている、まさにジビエ料理は”味の宇宙”と呼べる世界なのです!

おわりに


 今回は「ジビエってなに?」という方に対して、ジビエの魅力についてご紹介をしました。チカト商会では、実際に狩猟を始めるためのHow toも解説しているほか、ジビエを購入するオススメのお店などの情報も発信しています。よろしければ合わせてご覧ください。

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