ヌートリア肉は”ネズミ風味”。強いクセにはスパイスを使おう

  およそ50年以上、日本人と共存してきたヌートリアですが、近年、ヌートリアが引き起こす問題が目に余るほど大きくなってきています。長らく共存できていたヌートリアが”害獣化”した原因の一つには、人間による野生動物への過干渉『動物愛誤』があると言われています。

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ヌートリアってどんな動物?

 ヌートリアは、日本の中部地方、関西地方、中国地方の、池や河川に生息しています。もともとは南米に生息していた動物ですが、日本には1936年に軍隊用の防寒着を作る毛皮獣として輸入されました。
 日本各地で養殖されていたヌートリアですが、太平洋戦争終結後の混乱期に放逐したことで、野生化したと考えられています。

タヌキと同じぐらいの大型ネズミ

 ヌートリアは、尻尾をのぞいた体長(頭胴長)が約50 ㎝ もある、大型の半水生げっ歯類です。これの大きさはタヌキとほぼ同じであり、一般的なネズミ(ドブネズミ)の約20倍の大きさがあります。
 日本では英語読みで”Nutria”と呼びますが、原産国である南米ではスペイン語で“Coypu”(コイピュー)と呼ばれています。また日本と同様に、防寒着用として移入された国々では「ウォーターラット」や「リトルビーバー」とも呼ばれており、かつて日本では「沼タヌキ」や「洋ドブネズミ」などと呼んでいたようです。

ヌートリアが害獣化した原因とは?

 ヌートリアは、始めて野生化が確認されてからおよそ50年以上、日本の自然界でひっそりと生息してきた動物です。しかし近年、ヌートリアが生息している水系の近くでは、イネや野菜の食害を始め、土手を破壊するといった被害が増加しており、総額1億円以上の被害を出す”害獣化”が目に余るようになりました。

害獣化の原因は人間のエサやり?

 ヌートリアが害獣化してきた原因については諸説ありますが、 その一つに人間の手による餌付けがあるとされています。
ヌートリアはもともと警戒心が強い動物なので、本来は人間が活動する昼間には姿を見せません。しかし近年、人間がヌートリアにエサをあげるようになってからは、人間を恐れなくなり、活動時間が伸びたため繁殖力が爆発的に増加しました。
 また、人間がドッグフードを餌付けに使ったことで”味”を覚えるようになり、本来は食べることのなかった貝などの栄養価が高い食物を食べるようになったことも、原因の一つと考えられています。 

餌付け行為は動物愛護ではなく「動物愛誤」

 野生動物がエサを求めてチョコチョコと近づいてくる姿を見て、ついつい餌をあげたくなる気持ちもわかります。しかし、自然界に生きる野生動物と人間界に生きるペットを混同してはいけません。
 ヌートリアはおよそ50年以上、微妙なバランスのもと人間と平和的に共存してきました。しかしそのバランスが崩れた今、ヌートリアは”害獣”として駆除されるようになり、年間数万頭が駆除されています。
 つまり、この現状を招いた野生動物への餌付けという行為は、『感情論により人間と野生動物の両方を不幸にしたエゴイズム』なのです。このような行為は、動物愛護を文字って動物愛誤とも呼ばれています。

ヌートリア肉を食べよう!

 もともとヌートリアは、毛皮獣として輸入されてきた動物なので、食用としての認知はまったくありません。しかし原産地の南米では『ヌートリア肉のカンヅメ』が市販されているなど、食用として知られているようです。

肉には野生的な香りがある

 「ヌートリアは草食動物なので、クセも無く美味しい!」という噂を聞きますが、実は結構、強いクセがあります。その臭いは、ツキノワグマのような乳臭さや、タヌキやアライグマの持つ”犬臭さ”や、キツネなどが持つ強いアンモニア臭のいずれにも似ておらず、独特の風味・・・いうなればネズミ風味があります。

ヌートリア肉のミンチ

 ヌートリアの風味は、強いクセがありますが、嫌な臭いではありません(好き嫌いはあると思いますが)。よって、長時間煮て臭いを飛ばすよりも、香辛料をしっかり効かせて、風味をセーブする料理方法が向いています。

 オススメのスパイスは、消臭効果の強いウコンやコリアンダーなどで、その他、クミンシード、オールスパイスやシナモンもよく合います。これらのスパイスを使うときは、いったん油でじっくり炒めて香りを引き立てるようにしましょう

クセの強い肉だからこそ、強いスパイスがよく合う!

 スパイスを炒めたら、ヌートリアの肉と、タマネギ、トマト、ビーンズミックスを入れ、トマトケチャップ、ウスターソース、塩コショウ、唐辛子を加えて煮込みます。
 普通の牛肉や豚肉では、あまりスパイスを効かせると、何の肉かわからなくなってしまいますが、ヌートリア肉はもともと強い野性味を持っているため、スパイスをガッツリと効かせても負けません!

まとめ

  1. ヌートリアは南米生まれの外来生物。大きさはタヌキとおぼ同じ
  2. 50年共存してきたヌートリアが、近年急速に害獣化。原因の一つは人間の手による”餌付け”
  3. ヌートリアの肉には、独特の『ネズミ臭』がある。悪い臭いではないので、スパイスで打ち消す料理が◎
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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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