童話の世界でタヌキはどことなく愛らしい姿で描かれますが、キツネはどこか卑屈で残忍な印象で描かれることの多い動物です。もしかするとその理由は、キツネの肉が持つ強烈な”獣臭”から来ているのかもしれません。
キツネってどんな動物?
イヌ科キツネ属の動物は、真っ白でもふもふとした姿のホッキョクギツネや、大きな耳が特徴のフェネックギツネ、シュールな顔が大人気のチベットスナギツネなど、世界におよそ12属生息しています。そのなかで日本に生息している「キツネ」は、北半球に広く分布している『アカギツネ』と呼ばれる種類になりますです。
昔話では嫌われ者を演じることが多いキツネですが、古来ではネズミなどの害獣を食べるため益獣とされてきた動物で、さらに、尻尾の先が”たわわに実った稲穂”に見えるため、日本では豊穣神(おいなりさま)の化身とされています。
ホンドギツネとキタキツネ
日本に生息するアカギツネは、九州・四国・本州に分布するホンドギツネと、北海道に分布するキタキツネの2亜種に分けられます。両者は見た目はほとんど同じですが、キタキツネの方が体格が少し大きく、黒いハイソックスのような柄が特徴です。
キツネとタヌキは足跡はほぼ同じだが、歩き方が違う
イヌ科のキツネは、同じイヌ科のタヌキと同じく指向性の動物なので、足跡から両者を見分けるのは至難の業です。しかしキツネは、前足と後足の足跡がほぼ同じ位置に着くため、足跡全体を見ると一直線に続いていくという特徴をもっています。キツネのこのような歩き方はハンターウォークと呼ばれ、足音を最小限に抑え、追跡する獲物に気付かれないようにする習性だと言われています。
キツネ肉ってどんな味?
キツネは毛皮を取るために捕獲されていた動物(毛皮獣)なので、世界的に見てもキツネ肉を食べる文化はほとんど見られません。キツネ食の数少ない資料として、1844年のアメリカで、ドナー隊と呼ばれた開拓民のキャラバンが、冬山で遭難したさいに、キツネの肉を食べて生き永らえた、という記録が残されています。
肉食嗜好のキツネは、肉がアンモニア臭い
一般的にキツネが食用にされていない理由は、肉の臭いがキツイからです。キツネはタヌキやアナグマに比べて、強い肉食嗜好を持っています。肉食嗜好の強い動物の肉は、総じて肉に強い獣臭があり、特にキツネにはアンモニアのような刺激臭・・・ 表現すると『死んだザリガニを2,3日放置した水槽臭』があります。
とにかく時間をかけて臭いを飛ばす
肉が持つ獣臭を除去する方法で、もっとも効果的なのが沸騰させて臭い成分を飛ばすことです。獣臭の原因物質はアンモニアなどの”窒素酸化物”なので、強い熱を加えれば揮発します。そこで、肉を水から茹でて沸騰させることによって、肉の臭みを抑えることができます。
灰汁が強い場合は茹でこぼす
沸騰させると、肉から染み出るタンパク質が凝固し、灰汁となって浮いてきます。この灰汁にも強い臭い成分が含まれるので、丁寧に取り除きましょう。
灰汁が強いのであれば、いったん火を止めて煮汁を捨て、肉をよく洗って、再び火にかけましょう。この”茹でこぼし”を2,3回繰り返すと、臭いをすばやく取り除くことができます。
キツネ肉の出汁は”焦がし醤油”の香り
しっかりと熱を通して臭いを揮発させたキツネ肉は、飴色の出汁になります。その臭いは・・・なんというか・・・醤油を焦がしたような香ばしさです。
キツネ肉は、正直言って旨味がほとんどありません。よって調理するときは、下処理したキツネ肉を醤油と砂糖などで強めに味付けるようにしましょう。
まとめ
- 肉食傾向が強い動物の肉は総じて臭いがキツイ
- キツネは『ザリガニの死んだ水槽』のような臭いがすることもある
- 臭いを飛ばしたキツネ肉は、焦がした醤油のような色と香りになる