【体験レポート】「忍び猟ガイドツアー」のプログラム開発!

忍び猟1

狩猟者向けのガイドツアーで特に多くのリクエストをいただくのが、一人で山に入り、気配を消して獲物に肉薄する「忍び猟」です。しかし、忍び猟は極めて難易度が高い猟法であり、限られたガイド時間内に実際に捕獲まで至るケースは、正直なところほとんどありません。そこで今回は、その高い壁を突破するために、従来とは異なる新しい方式での「忍び猟ガイド」を実施しました。

目次

忍び猟の講習はなぜ難しい?

「忍び猟」は、猟犬や勢子の力を借りる巻き狩りとは対極に位置する「己の技術と経験がすべての猟」です。
気配を消して獲物に肉薄するこの猟法を、「ガイドツアー」として成立させるには、実は避けて通れない大きな壁が存在します。

「二人で行動」という問題点

忍び猟の鉄則は、何よりもまず獲物に気づかれないことです。
しかし、ガイドとお客様の二人で行動すれば、音や匂いといった「人の気配」は単純計算で二倍になります。
一人なら獲物から発見されない状況でも、二人になると発見のリスクが跳ね上がるため、「狩猟ガイド」としての難易度を上げてしまうという矛盾を抱えることになります。

ガイドが先行するとお客様が撃てない

さらに問題として、山中を進む際の「並び順」が挙げられます。
まず、ガイドが先行して忍び猟のガイドを行う場合。
ルート取りこそスムーズですが、どうしてもガイドが先に獲物と出会ってしまいます。
その結果、お客様が自分の力で獲物を発見し射撃するチャンスを奪ってしまうことになりかねません。

お客様が先行すると指示が出せない

逆に、お客様を先行させる形をとると、今度は「どのように歩けばよいか」、「どのルートをとればよいか」などの判断を伝えることができません。
過去のガイドではインカム付き無線機で指示を出していましたが、忍び猟において片耳をインカムで塞いでしまうと、周囲の音を正確にとらえることができません。
このように、構造的な矛盾を抱えているのが忍び猟ガイドの難しさなのです。

初日は「忍び猟の基礎技術」のレクチャー

忍び猟のガイドツアーはこれまで幾度となく実施してきました。
しかし、先述した構造的な難しさゆえ、ガイド中にお客様が捕獲に至る実績は、正直なところ多くはありません。
そこで今回は、これら問題点に対応した新しいガイド方式として、初日は徹底的に「忍び猟の基礎技術」を教習し、二日目の実践形式で猟場に入るという、二日間に分けたガイドツアーを行いました。

まずは基本の「忍び足」

忍び猟において、何よりも重要なのは「獲物に気づかれないこと」です。
そのため講習の初日は、ガイドが先行する形で山に入り、足音を殺して歩く技術、いわゆる「抜き足・差し足」の足運びと、滑らかに重心移動を行う「忍び足」の習得に時間を割きました。

瞬時に射撃を行うための「銃の保持」

獲物と不意に遭遇した際、いかにスムーズかつ静かに射撃姿勢へ移行できるかが勝負を分けます。
そのため、銃床を肩に密着させた状態で移動し、瞬時に「肩付け」ができる保持方法を指導しました。
もちろん、忍び猟の移動中に装填したまま歩くことは厳禁。
そのため、獲物を発見した時をイメージし、銃を保持した状態から銃の振り出し、装填、照準までの一連の流れを訓練しました。

獲物の気配を追う「トラッキング」

次に、山に残された微かな痕跡(フィールドサイン)から獲物の居場所をプロファイリングする実習です。
ここで重要なのは、わな猟と忍び猟では痕跡の捉え方が全く異なるという点。
「獲物が習慣的に通る道」を読むわな猟に対し、忍び猟では痕跡の「鮮度」が重要です。
そこで、足跡の角の立ち方、糞の湿り具合、ヌタ場の泥の状態などから「今朝、そこにいた」痕跡を探す練習を行いました。

戦略的な「ルート設計」

忍び猟は、単に痕跡を追うだけの追いかけっこではありません。
風上から近づけば匂いで察知され、稜線やカーブから不用意に姿を現せば視覚的に捉えられてしまいます。
そこで、風向きを意識しながら獲物からの死角を縫うようにルートを考えて行動することをレクチャーしました。

精神状態をリセットする「休憩」の重要性

忍び猟においては、「休息」がとても大切です。
全神経を研ぎ澄ませ、数歩進むのに一分以上を費やす忍び猟は、自覚している以上に心身を激しく消耗させます。
疲労がピークに達すれば、足運びは雑になり、いざという時の射撃も腕が震えて定まりません。
そのため、忍び猟では疲労を自覚する前に、腰を下ろして休憩をとることが大切です。

二日目は実戦形式

初日に忍び猟に関する基本的なレクチャーを終え、二日目はいよいよ、お客様が先行して山へ入っていただく実践式のガイドを行いました。
ガイドである私はお客様から数十メートルほど離れ、お客様自身でルートの設計や探索を行ってもらいます。

獲物は発見できたが射撃までには至らず

忍び猟で山に入ったのは、早朝6時半から10時の間。
結果から言えば、銃で獲物を仕留めることは叶いませんでした。
しかし、お客様自身の力で「獲物の発見」というチャンスを掴み取ることができました。
下山後聞いた話によると、山の稜線を探索中、ホッピングしながら視界を横切るシカを視認。
すぐさま追跡を開始しましたが、一歩及ばず、惜しくもタイムアップになったとのことでした。

しかし、忍び猟において獲物を自力で見つけ、肉薄できたのであれば、もう一息です。
あとは焦らず装填し、狙いを定めて引き金を引くだけ。
「来期は獲物の捕獲ができるような気がします!」
というお客様からの力強い言葉に、今回の講習スタイルの手応えを感じることができました。

銃では届かずとも「二頭の獲物」

忍び猟での捕獲はありませんでしたが、あらかじめ設置していた「くくりわな」には、初日、二日目連続でシカがかかっていました。
もちろん、自身が銃で仕留めた個体を解体するのが理想ではありますが、獲物と全く出会えない「ボウズ」で終わるのとは、学びの深さが違います。
解体に関するレクチャーを終えて、二日間におよぶガイドツアーは終了となりました。

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