ケミカル臭のキツイ『カワウ肉』は、皮を剥いで濃いめのソースで。

 アユなどの養殖魚を食い漁り、さらにその糞は水辺周辺の森林を枯らしてしまう『カワウ』。漁業関係者にとって「最大の敵」ともいえるこの害鳥は、さらに肉にツンとした“ケミカル臭”があるため、肉目的のハンターも好んで捕獲しようとしません。しかしカワウの肉はしっかりと処理をすれば「食べれない」わけではありません。

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カワウってどんな鳥?

羽を広げるカワウ

 カワウは全長約80㎝と比較的大型の水鳥です。生息域は世界各地に広く分布しており、日本国内でも全国各地の沿岸部や湖沼河川で観察することができます。昼間は日の当たる場所で羽を広げて乾かす姿が印象的です。

カワウとウミウ

 狩猟者がカワウを狙ううえで最も注意が必要なのが、非狩猟鳥である「ウミウ」の存在です。ウミウはカワウと同じく「ウ科・ウ属」の鳥で見た目もそっくなのですが、交配できないほど遺伝的には離れており、生息域も東アジアに限られているという世界的に見て珍しい鳥です。
 さて、このウミウが厄介な点は、「カワウと同じ場所にいることが多い」という点です。しばしばその名前から「カワウは淡水にいるウ」、「カワウは海にいるウ」と思われていますが、実際は両者とも淡水域や汽水域に群れ(コロニー)を作ります。しかもウミウはカワウのコロニーに交じっていることもあり、間違ってウミウを撃ってしまうと鳥獣保護法違反になってしまいます。

口ばしの根本で見分けられる…というが。

 このウミウとカワウの問題については環境省からも注意喚起が出されており、「ウミウの羽上面には黒緑色の光沢がある」と書かれているのですが…正直言って、直射日光が当たる猟場ではほとんど見わけがつきません。
 一応、口ばしの根本が「丸み」を持っているのがカワウ、「剃りこみ」のように鋭角になっているのがウミウと判別できるので、カワウの捕獲をする際はなるべく高倍率の双眼鏡を装備しておきましょう。

なぜウミウは狩猟鳥にならないのか?

 余談ですが、なぜウミウは狩猟鳥になっていないのかというと、おそらく『鵜飼い』の文化があるためだと思います。アユなどの川魚を捕獲するのに使役されるウはカワウではなくウミウ。そのため使役されているウミウを誤射しないように、ウミウは狩猟鳥に指定されていないのだと思われます。競技用に使役されるカワラバト(ドバト)が狩猟鳥になっていないのと同じ理由ですね。

かつては「金を運ぶ益鳥」だった

 カワウはその被害のひどさから「害鳥」のレッテルが張られていますが、実をいうとかつては“金”を運ぶ益鳥として喜ばれていたこともありました。というのも、川魚を大量に食べるカワウの糞には大量のリン酸が含まれており、これが化学肥料のない時代において貴重な肥料だったのです。よってカワウのコロニーが作られる地域では、「金を運んでくれる益鳥」としてカワウが大事にされていました。
 現在のように化学肥料が発達した時代では、カワウは「農業の益鳥」ではなく「漁業の害鳥」という面が強くなりました。しかし“害”か“益”かは時代背景による時の価値観でしかありません。駆除としてカワウを捕獲する狩猟者は、是非このことを覚えておいてほしいです。

カワウはどうやって捕獲する?

 鳥を捕獲するためには必然的に“銃”を使う必要があるわけですが、カワウは非常に警戒心の強い鳥なので簡単に近づかせてくれません。そのため近年ではハイパワーエアライフルを使用した猟法が注目を集めています。
 使用するエアライフルのスペックは猟場によっても変わりますが、マズルエネルギーが30ft・lb以上、口径は6.35㎜がオススメです。距離は50~100mになるため、ペレットは軽量で直進性が優れたタイプを使用したほうがよいでしょう。

捕獲のポイント

 カワウの羽は非常に硬いため、ボディに命中しても潜って逃げられてしまうことが多いです。そこで、確実に首元から頭にかけた致命傷になるポイントを狙う必要があります。
 カワウに限った話ではありませんが、大型水鳥はある程度距離が離れていると、発砲音やペレットの着水音を聞いても飛び立たずに様子を見てくることが多いです。そのため、功を焦って体を狙うよりも、外れてもよいので頭部を狙ったほうが捕獲率は高くなると考えられます。

カワウのさばき方

  川魚を食べているため“良い香り”がしそうなカワウですが、実際は「ツン」とした刺激臭があります。表現するとしたら「機械油」のような臭い…。この臭いを嗅いだ人は、とてもカワウを“食べ物”なんて思うことはないはずです。

絶対に“皮”を剥ぐ

 しかしカワウの持つ刺激臭の大半は羽と皮にあります。水鳥は水の中で体が沈まないように尾の先にある尾脂腺から染み出る油で羽をコーティングするのですが、カワウの場合はこの油が非常にキツイ臭いを発します。そのため、カワウを解体する際は、油のついている羽や皮を除去することが大事になります。さばき方は、獣のように皮目に刃を入れて、羽ごと皮を除去する方法が楽です。

胸肉は強い赤身

 カワウは胸肉だけを使ったほうが良いです。というのも、尾脂腺から出る油は筋肉の膜から生成されているようなので、筋膜の多いモモ肉には嫌な臭いが残ります。よって、筋膜がほとんどない胸肉だけを料理に使ったほうがよいでしょう。
 胸肉を見ると「あれだけ大きかった体から、これしか肉が取れないの⁉」と驚かれるかもしれませんが…まぁ、野生鳥肉の歩留まりってこんなものです。つくづく家畜のニワトリの“食肉エリート”っぷりには驚かされます。

胸肉以外はスープに使える

 もちろん、ガラやモモ肉が「食べられない」というわけではありません。アルコールと共沸させて臭いをガンガン揮発させれば、スープとして調理することもできます。とはいえ、すべての臭いを取りつくすことはできないので、玉ねぎやセロリといった香味野菜と一緒に調理するのがオススメです。

カワウの味は?

 カワウ肉の食味は、一言でいえば「青魚の干物」みたいな味わいです。匂いもどことなく魚チック。皮と筋膜をしっかりと処理していれば、生体で感じたケミカルな臭いは一切ありません。
 カワウに限らず脂分がほとんどない赤身の肉は火にかけすぎるとパッサパサになるため、低温調理がオススメ。味付けは肉自体にジューシーさがないため、油分と香味を効かせたソースがオススメ(上写真は「パクチーソース」)。

中華風味が相性良い

 個人的に一番マッチすると感じたのが、オイスターソースや豆板醤などを混ぜて作った中華風のソース。クセのあるカワウの肉には濃いめのソースがよく合います。
 臭いの問題からあまり料理のレパートリーを広げられないカワウですが、ソースを工夫していろいろとチャレンジしてみましょう!

まとめ

  1. カワウとウミウの違いに注意する
  2. カワウの皮は必ず剥ぐ。歩留まりは落ちるが胸肉だけを使用したほうが良い
  3. カワウを駆除で捕獲する場合は、「かつては益鳥であった」という事実にも目を向けてほしい
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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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