クレー射撃に必要な〝アイテム〟何が必要? ~散弾銃や実包の価格差(グレード)についても併せて解説~

 クレー射撃を始めるためには、様々な装備が必要です。そこで今回は、散弾銃や散弾実包に加えて、クレー射撃に適した服装や装備について紹介します。

目次

上下二連式散弾銃

 散弾銃にはさまざまな種類がありますが、クレー射撃専用の銃を選ぶなら上下二連式が最適です。ただし、上下二連式の銃であっても、銃砲店には幅広い選択肢が揃っています。どの銃を選ぶかは、「自分がどれだけ真剣にクレー射撃に取り組みたいのか」という熱意と、予算の状況に応じて決めることになるでしょう。

ピン(最高)はフルオーダーの上下二連式散弾銃

 上下二連式の散弾銃にはピンからキリまで値段に差がありますが、「ピン(最高)」とは何かと問われた場合、それは「フルオーダーメイドで作られた銃」と言えるでしょう。散弾銃は人それぞれ、最適な銃床の長さやグリップの長さ、ピッチ角が異なります。そのため、プロの銃職人が採寸し、その人に合わせて制作されたものが最も優れた銃とされています。
 例えば、ベレッタ社の高級グレード『DT-11』をフルオーダーで作る場合、総額で300万から400万円ほどかかると言われています。さらに、現地イタリアまで採寸に行かなければならないため、その費用も追加されます
 もちろん、単に「クレー射撃を楽しみたい」という人にとって、フルオーダーの上下二連式を所持する必要は少ないかもしれません。しかし、オリンピックを目指して本気で取り組むのであれば、道具による失中の可能性を極限まで減らすために、初期投資としてフルオーダーの銃を選ぶことは十分に価値のある選択だと思います。

ミドルクラスは〝擦り合わせ〟が良い

 フルオーダーではない「吊るし」の上下二連式の場合、価格はおおよそ30万から40万円が相場です。この価格帯の新銃であれば性能に大きな差はないため、「彫金の美しさ」や「持っていてテンションが上がる」などの感覚で選んでしまっても良いでしょう。
 一方で、30万円以下のグレードになると、散弾銃の製造精度に差が出てきます。特に「ヒンジ(銃身と機関部の取り付け部)」の精度や、銃身薬室部と銃尾栓(撃針が飛び出す部分)の擦り合わせの精度に差が見られます。
 もちろん、これらの精度が多少悪くても弾が曲がって飛んでいくようなことはありません。しかし、射撃競技において「当たらない理由」がわからないと、それが悩みとなりスランプに陥ってしまうことがよくあります。そのため、少しでも不安定要素を取り除くために、ある程度真剣に競技を行いたい人には、40万円クラスの散弾銃をおすすめします。

中古上下は3万円ぐらいからあるが…

 中古の上下二連散弾銃は約3万円で購入できますが、狩猟をしていると引退するベテラン狩猟者から「これを使っていいよ」と言って無料で手に入れることもよくあります。こういった銃はメインの散弾銃の予備として所持し、趣味としてクレー射撃を楽しむ程度であれば十分です。しかし、競技を目的としている場合は使用しない方が良いでしょう。

 堅牢な金属製なので実感がわきにくいかもしれませんが、銃は射撃回数が多くなるほど部品が劣化していきます。例えば、上写真を例において、同じ種類の銃から取り出した撃鉄だとしても、上のものは下のものよりも打痕が多いことがわかります。このような部品の劣化が致命的な精度の差を生むことは稀ですが、競技においては致命的な1点の差を生む可能性はあります。少なくとも競技用に銃を選ぶのであれば、その銃がどの程度使い込まれているのかを把握しておくことは重要です。

クレー射撃に必要な実包

 クレー射撃で使用する散弾実包は、銃砲火薬店で「クレー射撃用の弾をください」と言えば適当なものを出してくれます。しかし、クレー射撃用の実包にも価格に差があり、その価格差が〝どのような影響をもたらすのか〟については、理解しておくことが大切です。

実包の号数と装弾量

 散弾実包は、トラップ競技では7.5号、スキート競技では9号が用いられます。また、実包に「何グラムの弾が入っているか」を示す装弾量には24グラム、28グラム、32グラムの3種類があり、公式ルールでは24グラムが用いられます。
 28グラムや32グラムの実包を使用すれば、24グラムよりも散弾の数が多くなるため、クレーに命中させやすくなります。しかし、これらは24グラムに比べて1箱あたり1,000~2,000円ほど高くなるため、遊び目的であっても24グラムを使う方が経済的でしょう。

グレードによる価格差

 クレー射撃用の散弾実包は、一般的なグレードであれば1箱25発入りで約2,000円、つまり1発あたり80円ほどです(2024年時点)。一方、オリンピック選手が使用するイタリア製の最高級グレード品では、1発あたり0.8から1ドル(約120から150円)かかります。
 一般グレードと最高級グレードの違いは、使用されている火薬や雷管の質、製造精度、装弾のコーティングなどに反映されています。これらの違いが点数に決定的な影響を与えるわけではありませんが、高級グレードの方が弾速の個体差や不発の可能性が小さくなります。

弾はあれこれ使わないこと

 どのようなグレードの散弾実包を使用するにせよ、頻繁に変更しないようにしましょう。わずかな差ではありますが、各弾の弾速や反動は異なるため、使用する弾を変えると「当たらなかった理由」を考える際に不確定要素が増えてしまいます。そのため、記録を目指してクレー射撃を行う場合は、初めから高級グレードの弾を使用することをおすすめします。

クレー射撃の服装

 クレー射撃の服装は、最低限のマナーさえ守っていれば特に厳格な決まりはありません。ここでは、クレー射撃において装備しておくと良いアイテムをいくつか紹介します。

シャツとズボン

 クレー射撃の正式なルールでは、服装の規定として「ズボンの丈は膝上15cmまで」、「上着の袖は10cm以上あること」と定められています。これ以外に特別な決まりはありませんが、クレー射撃では銃を構えたまま体を大きくスイングさせることもあるため、動きやすい服装を心がけましょう。また、クレー射撃場はたいてい山の中にあるため、冬場には防寒対策も必要です。

靴は滑ったり転んだりしにくいものを選ぶ

 靴に関しては、銃を持ったまま転倒すると暴発の危険性があるため、足元が安定するスニーカーなどを着用しましょう。マナーとして、サンダルやヒールのような靴はNGです。

競技中に弾を入れておくシューティングベスト

 クレー射撃では上着としてシューティングベストを着用します。このベストには前方に大きなポケットが付いており、競技中に実包を収納するのに便利です。競技開始前に、左右のポケットに25発ずつ実包を入れておきましょう。

 シューティングベストはメーカーによってさまざまなデザインのものが販売されています。肩当て部分にパッドが付いているタイプもあり、銃の反動が苦手な人はパッド入りのベストを選ぶと良いでしょう。また、狩猟をする人であれば、猟友会から配布されている猟友会ベストを代用することも多くあります。

耳を保護するイヤーマフ

 プレー中は耳を保護するためのイヤーマフを装着します。散弾銃の発射音は非常に大きく、耳を守ることが重要です。イヤーマフがない場合は、使い捨ての耳栓が射撃場内の売店で売っています。
 クレー射撃用のイヤーマフには電子式タイプがあり、爆音を遮断しながらも人の声などの小さな音を聞くことができるため、プーラー(クレー射撃の審判)からの指示や注意を聞き取りやすくなります。

ギラつきを抑えるシューティンググラス

 必須ではありませんが、プレー中にシューティンググラスをかけることをおすすめします。シューティンググラスは太陽光を偏光して反射光を抑える効果を持つものもあり、夏場の強い日差しの下で飛んでいくクレーを見やすくしてくれます。
 また、スキート競技では撃ち落としたクレーの破片が飛んでくることもあるため、目を保護する目的でも役立ちます。

シューズプロテクタはクレー射撃のオシャレアイテム

 シューズプロテクタは、靴に取り付けるアクセサリーで、上下二連式の銃口を靴の上に置いて待機するときに、銃口についたススで靴が汚れるのを防ぎます。また、競技中に銃口が熱くなるため、靴が傷むのを防止する役割もあります。最近では多くの射撃場で銃口を置くゴム製の板が設置されていますが、シューズプロテクタは伝統的な用具としてアクセサリーにもなります。

寒さ対策にシューティンググローブ

 シューティンググローブは引鉄を引くときの邪魔になるので装着しないこともありますが、夏場は手に付いた汗で銃が滑るのを防止するために着用されることがあります。また、クレー射撃場は山の中にあることが多く、冬場には手がかじかんで動きが悪くなることがあります。そのため、防寒用に指先が取り外しできる厚手のタイプもあります。

銃の持ち運び用品

 クレー射撃を行うためには、銃を持ち運ぶためのバッグ類も用意しておかなければなりません。海外などに遠征する予定がある場合は、鍵をかけられるハードタイプのガンケースも用意しておきましょう。

ガンケース・ガンカバー

 ガンバックはナイロンなどの柔らかい素材で作られており、軽くて持ち運びやすいのが特徴です。肩に担げるストラップが付いているため、移動中も楽に持ち運ぶことができます。
 ガンバックは約1万円で購入できますが、特にこだわりがないのであればホビーガン用のものでも代用可能です。周囲に銃を持ち運んでいることを知られたくない人は、釣り用のロッドケースを使っていることもあります。

ハードケース

 銃を新品で購入した場合、多くの場合ハードケースが付いてくることがあります。このハードケースは頑丈で耐久性があり、銃を長距離移動させる際に適しています。飛行機や船に乗るときは「鍵付きのケースに入れておくこと」を要求される場合もある(会社による)ので、飛行機や船で遠征する予定がある人は事前に準備しておきましょう。

実包の持ち運び

 クレー射撃用の実包は、できれば射撃場で購入することをおすすめしますが、射撃場によっては火薬店を併設していないところもあります。その場合は、事前に購入して持ち込む必要があります。
 実包は〝他の荷物(特に銃)と梱包しないこと〟を守ればどのような容器でも構いませんが、数百発の弾は意外と重たいため、ジェラルミン製のカバンやアンモボックスに入れて持ち運びましょう。

銃のメンテナンス用品

 射撃競技を安全に楽しむためには、銃のメンテナンスが欠かせません。散弾銃においては、ライフル銃のような鉛取り作業が必要ありませんが、銃身の清掃は必要になります。

銃身を掃除する洗い矢

 クレー射撃から帰ってきたら、まずは銃身内部を掃除しましょう。散弾実包はワッズカップに入っているため、ライフル銃のように銃身に鉛がこびり付くことはありませんが、銃身に砂や泥などの異物が入っていると射撃時に銃身が破裂する危険性があります。
 散弾銃の銃身は、適当な長い棒とウエス(布切れ)があれば十分清掃できます。一応、銃身の清掃の専門道具として「洗い矢」や「ボアスネーク」と呼ばれるタイプもあるので、必要に応じて選択してください。
 

ガンオイル

 銃の金属部分の清掃にはガンオイルを使用します。このガンオイルを少量ウエスにとって、伸ばすように全体を拭き上げましょう。
 ガンオイルは専用品もありますが、一般的には「WD—40」と呼ばれる防錆潤滑剤がよく使われています。この潤滑剤は他のオイルよりも粘性が低く、低温や高温でも変質が少ないといった特徴があります。

ウエス

 拭き上げを行うウエスはなんでも構いませんが、「キムワイプ」や「キムタオル」といった名称で売られているワイパーがよく使われます。このワイパーは、布切れやティッシュなどに比べて毛羽立ちが少なく、紙粉が出にくいため銃身内部にゴミを残すリスクが小さくなります。

まとめ

  1. 上下二連式散弾銃、使用する散弾実包は、競技への熱意に合わせてグレードを決める
  2. 必須アイテムはシューティングベストとイヤーマフ。あとは必要に応じて選ぶ
  3. 運搬するためのガンバッグ、メンテナンス用のロッドとオイルも忘れずに

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この記事を書いた人

学生時代に空気銃競技をはじめ、20代でクレー射撃を始めました。狩猟はやっていません。火薬代が高騰しすぎていつも金欠。

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