「その銃ください」って言える日が来たんですよ『所持したい銃の仮押さえ』

 教習射撃(空気銃の場合は猟銃等講習会)を修了したら、次に所持する銃(猟銃・空気銃)を決めましょう。散弾銃や空気銃は色々な種類があるので、自分の所持目的にピッタリとあった銃を探してください!

目次

所持できる猟銃・空気銃の基準

 日本で所持できる猟銃・空気銃には、「狩猟や標的射撃にふさわしくない」として、許可されないものもあります。それぞれ禁止されている理由を見ていきましょう。

  • 機関部、または銃身部に危害を発生するおそれのある欠陥がある銃。
  • 口径の大きさが 、散弾銃の場合は『12番』、ライフル銃の場合は『10.5mm』、空気銃の場合は『8.0mm』 を超えている銃。ただし、猟銃を熊やトドといった巨大な獣類を捕獲する用途で使用する場合、散弾銃は『8番』、ライフル銃は『12.0mm』が上限となる。
  • 全長が、猟銃は『94cm』、空気銃は『80cm』 より”短い”銃。 (※猟銃は93.9cm、空気銃は79.9cm以下のものはダメ)
  • 猟銃の銃身の長さが『48.9cm』 より短い銃。(※19インチ以下の銃身はダメ)

×連続自動撃発式の機構を持つ銃

 引き金に指をかけっぱなしで弾を連射する、いわゆるフルオート機能を持っている銃は、猟銃・空気銃として認められません。
 これは犯罪に利用された場合に被害が大きくなるためや、狩猟に使用すると乱獲の恐れがあるからです。狩猟では「スプレッド・アンド・プレイ」(弾をバラまいて当たるのを祈る)ではなく“一撃必中”でなければなりません。

×弾倉に6発・散弾銃は3発以上の弾を装填できる銃

 日本の法律では、ライフルやエアライフルは弾倉に6発、散弾銃の場合は3発以上装填できる銃は、猟銃・空気銃として認められていません。これは上記のフルオートと同じように、乱獲などの危険性があるためです。
 この決まりにより、日本ではバナナマガジンやドラムマガジン、ヘリカルマガジンといった、弾を大量に収納できる弾倉(マガジン)を所持することができません。
 また、弾倉が本体に組み込まれているライフル・エアライフルは弾倉に5発、散弾銃の場合は2発までしか入らないように改造されています。

×機構の一部に消音装置がついている銃

 消音装置、いわゆる「サプレッサー」や「サイレンサー」と呼ばれる、発射音を小さくする部品が取り付けられている銃は、猟銃・空気銃として認められていません。この理由は、犯罪に使われないようにするためです。
 なお、エアライフルにはシュラウドと呼ばれる銃身の覆いがありますが、これは消音を目的とした装置ではありません。シュラウドは銃身を保護する目的に加え、弾が発射されるときの空気の流れを整流し「キンッ!」という高音域を抑える効果があります。

×機関部、または銃身部に危害を発生するおそれのある欠陥がある銃

 要は、「壊れている銃」は猟銃・空気銃として所持することができません。壊れた銃をいつまでも所持し続けていると、所持許可が“取消し”されることがあります。

×杖などに偽装された銃

 杖や傘に銃を隠した「仕込み銃」や「ステッキガン」は、猟銃・空気銃として所持できません。理由は当然ながら防犯のためですが、実は明治時代には一般市民も武装する権利があったため、これらの銃が普通に売られていたらしいです。

×全長が93.9cm以下・空気銃の場合は79.9cm以下

 全長が短い銃はコートの下に隠して持ち運べてしまうためで、主に防犯上の理由で禁止されています。そのため、散弾実包が撃ち出せる拳銃(カンプピストル)なんかも、散弾銃としては所持できません。
 なお、全長は簡単に取り外せる肩付けパッドや、マズルチョークなどの長さを除いて計測されます。

×銃身長が48.8cm以下

 長さが48.8㎝、つまり19インチ以下の銃身は、猟銃として認められません。この理由も全長と同じく、体に隠して移動できてしまうためです。なお、空気銃に銃身長の制限はありません。
 散弾銃には「ソードオフ」と呼ばれる銃身を切り詰めた銃があるのですが、上記の理由から日本では所持できません。

×散弾銃の最大口径

 散弾銃の場合は、銃口の大きさが12番(クマやトド等の大型獣を駆除する場合は8番)を超える銃は、猟銃として所持できません。
 一般的に狩猟で利用される散弾銃は、12番、16番、20番、410番で、クレー射撃の場合は一番大きい12番が選ばれます。

×ライフル銃の最大・最小口径

 ライフル銃の場合は、銃口の大きさが10.5mm(41口径)(クマやトド等の大型獣を駆除する場合は12.0mm(47口径))を超える銃は、猟銃として所持できません。
 また鳥獣保護管理法において、『イノシシ・シカ・クマに使用できるライフルの”最小”口径は5.9mm(23口径)』と決められています。すなわち、スポーツ目的でライフルを所持する場合は5.59mm(22口径:スモールボア)を所持できますが、狩猟目的でライフルを所持する場合は6mm(24口径)~40mm(41口径)までしか所持できません。

×空気銃の口径

 空気銃の場合は、銃口の大きさが8mmを越える銃は、狩猟用・標的射撃用として所持できません。一般的な狩猟用エアライフルの口径は、5.0mm、5.5mm、6.35mm、7.62mmの4種で、スポーツ用のエアライフル・ハンドライフルの口径は、4.5mmが使用されます。

×日本で流通している銃は、すべて基準をクリアしている

 ここまで細かい猟銃・空気銃の基準について話をしてきましたが、ぶっちゃけ国内で流通している銃はどれも上記の基準をクリアしています。なので、ひとまず「猟銃・空気銃には、細かい基準がある」という話だけ理解しておいてください。
 ただし、海外から自分で銃を輸入しようと思ったときは、上記の基準をよく理解しておかなければなりません。基準を満たさない銃は、海外の銃砲店やメーカーに依頼して、追加工してもらう必要があります。

所持する銃を選ぼう

 所持したい銃にコダワリが無いのであれば、とりあえず近所の銃砲店に出向いてみましょう。店員さんに「教習射撃まで終わりました」といえば、親切に色々と教えてくれる・・・はずです。

ライフルは散弾銃を10年所持していないと持てない

 「イノシシやシカなどの大物猟がしたい!」という方には、射程距離と威力が高いライフル銃をオススメしたいのですが、日本の法律にはなぜか「散弾銃を10年以上所持していなければライフル銃は所持できない」という“ナゾな決まり”があります。ハッキリ言ってこれは悪法なのですが、法律は法律。初心者の人はまず散弾銃から選びましょう。

大物猟だけしたい初心者はハーフライフルという手もある

 それでもライフルを持ちたい方はハーフライフルというタイプの銃を選びましょう。ハーフライフルは別名サボット銃、法律上は「散弾銃及びライフル銃以外の猟銃」という不思議な扱いの銃なのですが、簡単に言えば「ライフルリングを持つショットガン」です。詳しくは下記ページも併せてご参考にしてください。

空気銃に関してはエアライフルジャパン(ARJ)がオススメ

 狩猟用空気銃(エアライフル)をご検討中の方は、エアライフルジャパン(ARJ)で探してみることをオススメします。これは露骨な自社宣伝・・・というわけではなく、ちまたには空気銃に詳しくない銃砲店が多かったりします
 エアライフル自体は古くからあるのですが、現在使用されるのはここ10数年で“再発展”した銃です。そのため古い銃砲店では情報のアップデートがされておらず「あんなのスズメしか獲れないよ」というところも多かったりします。エアライフルについて詳しくは、下記ページも併せてご覧ください。

 ARJは、初心者の方がエアライフル選びに困らないようにするために作られた組織です。ARJでは無料の公式LINEなどもやっていますので、ご興味がありましたらチェックしてみてください。

散弾銃の選び方

 初心者が散弾銃を選ぶときは、まず自分が「どんな銃が好きか?」で考えましょう。ベテランハンターや銃砲店の人に聞くと、必ず「初心者はセミオートにしときなさい!」と言われますが、狩猟はあくまでも趣味の世界なので、自分が気に入った銃を持つのが一番です。
 ただし、特別に銃にコダワリが無いのであれば、半自動銃(セミオートマチック式)を選んでおいた方が無難です。クレー射撃目的で所持する場合は、よほどの理由がない限り、上下二連式を選んでおきましょう。 

大物猟のみなら、ボルト式がオススメ

 もしあなたが、イノシシやシカ、ツキノワグマといった大型獣のみを専門に狩猟したいのであれば、ボルトアクション式の散弾銃をオススメします。
 ボルトアクション式は精密性に優れた構造で、射程距離の短い散弾銃であっても高い命中精度でスラッグ弾を発射できます。先にお話したハーフライフルも、大抵はこのボルトアクション式になっています。
 ボルトアクション式は連射速度が低いため、散弾を使った鴨猟などには向いていません。しかしその命中率の高さから、一発必中の大型獣猟には最適な銃種と言えます。

銃は“サポートの良さ”で選んだ方が良い

 銃の選択は人の好みによって様々ですが、できればメンテナンス体制が整っている銃を選びましょう。中古で出回っている銃の中には、生産が終了している銃や、メーカーが倒産した銃、特注で作られた銃など、色々なものがあります。これらの銃は、しばしば補修部品が流通しておらず、故障した際に「修理不能」となったり、「部品の入荷に半年以上かかる」といった状況におちいります。
 よって、特別にコダワリが無いのであれば、なるべくパーツが手に入りやすい”現行品”の銃を選ぶようにしましょう。また中古であれば、銃砲店に補修部品のストックがあるか聞いておきましょう。

譲渡等承諾書を受け取ろう

 所持したい銃が決まったら、銃砲店から譲渡等承諾書を書いてもらいます。この時点での銃は”仮押さえ”になるため、まだ銃を所持しているわけではありません。銃の代金をいつ払うかは銃砲店によって違いますが、一般的には数万円を頭金として支払います。

個人間で銃を譲り受ける場合

 銃砲店ではなく、個人間で銃を買い取ったり、譲ってもらったりする場合は、相手方に譲渡等承諾書を書いてもらいます。相手方の所持許可証の情報を転記して、印鑑を突いてもらいましょう。
 譲渡等承諾書を貰ったら、相手方にその銃の所持許可を”抹消”するように依頼します。所持許可が抹消した後も50日以内は合法的に所持できるため、その間に所持許可申請を通して、譲り受けるようにします。
 所持許可申請が下りる前に相手方の銃を譲り受けると違法所持になるので注意しましょう。所持許可が下りるのに50日以上かかりそうなのであれば、一旦銃を銃砲店に預けてください。

インターネット販売で銃を譲り受ける場合

 対面販売ではなく、インターネット上で銃を購入する場合は、郵送により譲渡等承諾書や所持許可証のやり取りをします。
 なお2021年以降は『捺印不要』の流れにより、譲渡等承諾書もPDF形式でやり取りができるようになりました。ARJではほぼすべての書類を電子化してやり取りを行っています。

ガンロッカー・装弾ロッカー

 所持したい銃を選んだら、併せてガンロッカー装弾ロッカー(※空気銃の場合は不要)も探しておきましょう。ガンロッカーと装弾ロッカーは、銃砲店かインターネットで探して購入しましょう。

ロッカーの価格

 ガンロッカーの値段はサイズによっても変わりますが、新品の2、3丁収納できるサイズであれば5~7万円ほど、装弾ロッカーは3万円ほどします。合計で8~10万円ほどかかるので、あらかじめ銃を購入する予算の中に入れておきましょう。
 なおガンロッカーと装弾ロッカーは、ヤフオクやメルカリなどで中古が出回っていることもあります。この場合、合計で3~5万円程度と格安で購入できるので、特にロッカーにこだわりがないのであれば調べてみてください。

ガンロッカーの基準

  1. 全ての部分が1ミリメートル以上の厚さの鋼板で作られていること。
  2. 施錠した際、かんぬき機構等によって、扉の上下を本体に固定する構造となっていること。
  3. 設備の内部に鎖等によって銃を固定する装置を有していること。
  4. 外部から見える蝶番が切断又は取り外されても、扉が外れない構造になっていること。
  5. 扉を閉鎖する錠は、鎌錠等外部からの力によって容易に開錠できないものであること。
  6. 扉を閉鎖する錠は、掛け忘れ防止装置付きのものであること。
  7. 扉を閉鎖する錠は、鍵違い120種類以上のものであること。
  8. ①~⑦までと同等に堅固な設備であること。

 ガンロッカーは市販のものでなくても、上記のような条件であれば代用できます。例えば銃砲店では、『部屋一つ』を上記条件を満たすようにしているため、銃を倉庫内で管理することができます。

装弾ロッカーの基準

 装弾ロッカーは、入口の扉が厚さ0.6mm以上の鉄板を使用した鉄製の防火扉であること。また、窓、通気孔、及び換気孔は設けないことが基準とされています。
 この基準は一般的な金庫でもクリアしているため、金庫を装弾ロッカーの代わりにすることもできます。(※必ず担当の生活安全課で確認してください)。なお、ガンロッカー内で銃と一緒に弾や火薬類を保管してはいけません。

自宅に銃を置けない場合は委託保管へ

 銃を自宅で保管することに不安がある人は、銃砲店や射撃場に、銃を委託保管するという方法もあります。これは銃砲店や射撃場に保管料を支払って、銃を代わりに管理してもらうサービスです。銃を標的射撃にのみに使用する人は、銃は射撃場に預けておき、弾は都度必要な分だけ購入するようにしましょう。
 委託保管と自宅保管のメリット・デメリットについては、下記のページで詳しく解説をしています。

まとめ

  1. 所持できる猟銃・空気銃には、構造や銃の全長、銃身長などの決まりがある
  2. 銃はまず“好み”で選ぶ
  3. 特に好みが無いなら、狩猟の場合は半自動式、クレー射撃であれば上下二連式を選ぶ
  4. 銃と一緒にガンロッカーと装弾ロッカー(空気銃の場合は必要なし)を買いそろえておく

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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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