空気銃ってどんな銃?エアライフルの種類・仕組みを解説!

エアライフルの仕組みを解説

 ベテランハンターさんの中には、「空気銃?ありゃ子供の玩具だよ」という人がいます。確かに空気銃は1955年の銃刀法改正まで、所持に許可がいらない玩具のような扱いでした。しかし空気銃の一種である現在のエアライフルは、とても侮れない猟具として十分な性能を持っています。そこで今回はこの『空気銃』について、その種類や性能について詳しく見ていきましょう。

目次

そもそも「空気銃」ってなに?

 空気銃とは、銃本体に蓄えられた空気圧(またはガス圧)をエネルギーとして、発射体を射出する銃器です。この空気銃は、射出する威力(マズルエネルギー)が20j/㎠以上のタイプと、それ以下のタイプに分類され、20j/㎠未満のタイプはさらに、エアソフトガン準空気銃に分かれます。

マズルエネルギー20J/㎠以上の空気銃の分類

 マズルエネルギー20j/㎠以上の空気銃は、散弾を発射できる空気散弾銃、拳銃型のエアピストル、エアピストルにライフルストックが付いたハンドライフル、通常のライフルストックが付いたエアライフルの4種類に大別されます。

エアピストルとハンドライフルの違い

 拳銃の一種であるエアピストルは、散弾銃やライフル銃、エアライフルを所持する際に利用する 猟銃・空気銃所持許可制度では所持できず、銃砲所持許可制度という制度を利用しなければなりません。
 この銃砲所持許可制度は猟銃空気銃所持許可制度に比べて審査がムチャクチャ厳しく、ハッキリ言って一般人が持つことは不可能です。そこで射撃競技の入門用として開発されたのがハンドライフルです。このハンドライフルであれば猟銃・空気銃所持許可制度で所持できます。

狩猟用と競技用エアライフルの違い

 20J/㎠以上の威力で金属製弾丸を発射し、かつ、ライフルストックが取り付けられている空気銃は、エアライフルと呼ばれています。このエアライフルはさらに、狩猟用に特化したタイプと、競技射撃用に特化したタイプがあります。
 競技用エアライフルで狩猟をすることは可能ですが、狩猟用と標的射撃用では弾を発射するパワーが弱すぎるため、役に立ちません。また、競技用エアライフルは射撃時の振動を抑えるためにムチャクチャ重たくなっています。

空気銃の仕組みを知ろう

 空気銃が弾を発射する仕組みは、大きく、スプリングピストン式、ガスカートリッジ式、マルチストローク式、プレチャージ式の4種類に分けられます。ここでは、それぞれの仕組みと特徴について、詳しく見ていきましょう。

スプリングピストン式

 スプリングピストン式は、空気銃の仕組みとしては最も一般的なタイプで、エアソフトガンの世界では「エアコッキング式」とも呼ばれています。

スプリングピストン式の仕組み

エアライフルスプリングピストン式の仕組み

 スプリングピストン式の仕組みは、銃本体に取り付けられたレバーを操作して連結されたスプリングを圧縮し、レバーを元の位置に戻すとチャンバーにロックがかかります。引き金を引くと、スプリングの噛み合いが外れてピストンが押し出され、ペレットが発射されます。

レバー型とブレイクバレル型

 スプリングピストン式のコッキング方式には、銃の下部にレバーが取り付けられたアンダーレバー型と、側面に取り付けられたサイドレバー型があります。また、銃身自体がレバーの代わりになったブレイクバレル型というのもあります。
 それぞれについては長所・短所がありますが、現行のスプリング式でアンダーレバーはあまり見られなくなっています。

1回のコッキングで常に一定のパワーを発揮する

 スプリングピストン式は、バネに蓄えられた力がペレットの射出圧力になるため、常に同じパワーを発揮するというメリットがあります。
 たいしたことのない長所に思えますが、後にお話するガスカートリッジ式やプレチャージ式は、射出回数によって内部の気圧が低下するため、射出圧がだんだん弱くなります。すると弾道が変化してしまい、上手く当たらなくなるのです。

バネを使うという構造上、強力な銃は作りにくい

 スプリング式は手軽なエアライフルとして人気がありますが、バネが伸びる反動でブレが起こり、照準が狂ってしまうというデメリットもあります。
 このバイブレーションの問題は、近年開発されたスプリングピストン式では対策が施されていますが、それでも発射の反動を体で上手にいなす『慣れ』が必要になります。。

ガスカートリッジ式

 ガスカートリッジ式は、携帯用の炭酸ガスカートリッジを銃のチャンバーに入れ、気化した炭酸ガスを小出しにして発射するタイプです。

ガスカートリッジ式の仕組み

ガスカートリッジ式エアライフルの仕組み

 このタイプのエアライフルは、液化炭酸が封入されたカートリッジをタンクに入れ、針付きの蓋を閉めるとカートリッジに穴が開き、タンク内に気化した炭酸ガスが充満させます。
 引き金が引くとストライカーが勢いよくチャンバーの弁を叩き、吹き出した炭酸ガスがペレットを射出します。
 ガスが排出されるとチャンバー内はいったん空になりますが、即座に液化炭酸が気化し、再びチャンバー内に炭酸ガスが充満します。

ガスカートリッジは1本200円

 ガスカートリッジ式は炭酸ガスカートリッジが空になるまで、弾を連射することができます。射撃回数は気温によっても大きく変わりますが、カートリッジ2本で約15回発射できます。
 手軽に連射できることから日本でもよく使われていた方式ですが、射撃回数によってチャンバー内の圧力が変化して弾道が大きくブレてしまうことや、カートリッジ1本200円というコストパフォーマンスの悪さから、徐々に姿を消していきました

マルチストローク式

 マルチストローク式は、特に国内で根強い人気を誇る方式で、日本ではポンプ式とも呼ばれます。この方式の元祖は1819年、日本の鉄砲鍛冶師、国友一貫斎が作った『気砲』と呼ばれる銃で、当時海外では知られていなかった”空気圧”の原理を応用した、驚くべき発明品でした。

マルチストローク式の仕組み

マルチストローク式エアライフルの仕組み

 マルチストローク式は、本体に装備されたレバーをポンピングすることでチャンバー内に空気を圧縮していきます。
 引き金を引くと、チャンバーの弁とつながっている”つっかえ棒”が外れ、貯めていた空気圧が一気に開放されます。

空気圧を”貯める”ことで強力な弾を発射できる

 マルチストローク式は、圧力を”貯める”ことができるため、スプリングピストン式よりも強力な弾を発射できます。しかし、ターゲットを外してしまった場合、次弾を発射するためにレバーを何度もポンピングしなおさなければならないため、ターゲットを獲り逃がす可能性が高くなるというデメリットもあります。

ポンピングは常に一定回数にすること

 マルチストローク式のメリットは『ポンピング回数を増減させることで大小様々な獲物に対応できる」と思っている方が多いですが、猟場でポンピング回数を増減してはいけません!
 なぜなら、排気圧を変えてしまうと、あらかじめ設定しておいた銃とスコープとのゼロインが狂ってしまい、正確な射撃ができないためです。ポンピング回数は必ず、ゼロイン調整をしたときと同じ回数に合わせるようにしましょう。

プレチャージ式

プレチャージ式のメーター

 PCP(Pre Charged Pneumatic :プレチャージド ニューマティック プレチャージ)とも呼ばれるプレチャージ式は、外部からタンク内に圧縮空気を充填し、その空気圧を小出しにして発射するスタイルです。
 プレチャージ式自体は17世紀ごろからありましたが、スプリングピストン式やガスシリンダー式に押されて一度は消えた技術です。
 しかし近年、プラスチック加工精度の向上や、ゴム材の品質向上などで性能が大幅に向上し、現在のエアライフル市場ではプレチャージ式が主流になっています。

プレチャージ式の仕組み

プレチャージ式エアライフルの仕組み

 プレチャージ式は、エアライフル本体に高圧シリンダーが付いており、ここにハンドポンプやスキューバーダイビングに使用するエアタンクから空気を充填します。
 引き金が引かれると、圧縮されたストライカーのバネが伸びて、シリンダーを閉じている弁を叩きます。この弁を叩く一瞬に、シリンダー内の高圧空気がチャンバーに流れ込み、ペレットを発射します。
 ストライカーが叩いた弁は、シリンダー内のスプリングによって再び押し戻されて閉じるようになっており、空気が”だだ漏れ”になる心配はありません。

超高気圧を充填できるプレチャージ式

プレチャージ式のストライカーとバルブの仕組み

 プレチャージ式はそのシリンダー内に、およそ200気圧の空気を貯めることができます。「200気圧」と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、これは自動車のタイヤの100倍以上の圧力!わずか数十センチのシリンダーに、恐ろしいほどの高圧空気が溜められています。

200気圧を手動で充填するのは大変な作業!

 200気圧もの空気をハンドポンプで充填するのは超・大変です!それはもう、大の大人でも「ハァハァ」と息を切らすほどの重労働。
 これが嫌ならエアタンクを使った方が良いのですが、 タンクとアダプタ類を合わせると10万円近くかかり、さらに鋼製は5年、FRPタンクは3年ごとに定期検査が必要になります。

空気銃はペレットとの相性が超重要!

 空気銃を扱う上でとても重要になるのが、ペレットと銃の相性です。この相性がしっかりと理解しておかなければ、例え高級なエアライフルを使用しても十分な精密性やパワーが発揮できません。

空気銃は発射エネルギーを”本体”に持っている

 装弾を発射するエネルギー源は、装薬銃の場合、実包にパッケージされています。よって、自分で火薬と装弾を手詰め(ハンドロード)しないのであれば、弾と銃の相性を考える必要はありません。
 しかし空気銃の場合はペレットを発射するエネルギーは銃本体に保有しているため、エアライフルのスペックや銃身の構造、また製造の誤差などによって、銃とペレットの間には相性が現れます。

どのペレットが相性が良いかは撃って確かめるしかない

エアライフルのペレット

 では、「どのエアライフルがどのペレットと相性がよいのか?」という話ですが、それは試射をしてみないとわかりません
 もちろん万能に精度が出るペレット(例えばJSBという有名メーカー品)もあるのですが、それでも銃の製造誤差などによって相性の問題が発生します。
 このような話を「面倒くさそうだな…」と思われ方は、正直言うとあまりエアライフルハンティングには向いていません。
「面白そうじゃねぇか!」とノッて来た方は…フフフ、あなたは『エアライフル射撃・狩猟』という、一生楽しめる趣味を見つけてしまいましたね♪

まとめ

  1. 「空気銃」は、エアソフトガン、準空気銃、空気散弾銃、エアピストル、ハンドライフル、エアライフルの6種類に分類できる
  2. 空気銃の構造には、主に、スプリングピストン式、ガスカートリッジ式、マルチストローク式、プレチャージ式の4種類がある
  3. 空気銃はペレットの相性がとても重要。「性能が良いエアライフル」もペレットの相性次第では精密性が悪くなる

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この記事を書いた人

東雲 輝之のアバター 東雲 輝之 株式会社チカト商会代表取締役・ライター・副業猟師

当サイトの主宰。「狩猟の教科書シリーズ」(秀和システム)、「初めての狩猟」(山と渓谷社)など、主に狩猟やキャッチ&イートに関する記事を書いています。子育てにも奮闘中。

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