先日のライフル銃の射撃教習のお話で、「考査は楽勝でした♪」みたいな事を書きましたが……実を言うと、考査開始直後はまったく的に当たらず、ものすごく焦りました。
考査開始の1発目。
ライフル弾を発射して、備え付けのスポッティングスコープ(単眼鏡)を覗き込みます。
「……ん? 弾痕が下にズレている。」
続いて2発目。
次はもう少し上を意識して発射。
再度弾痕を確認しますが……またしても「下」にズレています。
3発目、4発目も、どうしても着弾が下へズレてしまうのです。
超精密に作られているライフル銃は同じ条件で撃てば、必ず同じところに弾が命中します。
しかし、それを扱う「人間」は、常に同じ条件を保つことができません。
例えば、腕や足の疲労による筋肉の震え、視界のぼやけによる照準誤差、呼吸による胸の動きや心拍の脈動が銃に伝わるなど、ありとあらゆる生体反応が「誤差」となって現れます。
そのため、精密射撃において予想から外れた結果が出た場合は、まずその原因を特定しなければなりません。
4発目の着弾を確認した後、すぐに5発目を装填するのをやめ、銃を置いて原因を考えました。
今の私と、上手く撃てていた練習時の私との決定的な違い‥‥。それは明確に「肩が痛い」ということ。
そして、4発の弾痕がすべて「下」に集中していること‥‥。
これは、射撃において典型的な「フリンチング」と呼ばれる現象で間違いありません。
フリンチングとは、銃の強烈な反動に対して、体が無意識に前のめりになってしまう防御反応のことです。
先の練習で体が「衝撃」を記憶してしまっているため、引き金を引く瞬間に「またあのすごい衝撃が来る!」と防御態勢を取り、体が前のめりになります。
体が前のめりになると、銃口は下を向きます。
結果として弾痕も下にズレるというわけです。
このフリンチングは、急に物が飛んできたときに目をつぶってしまうのと同じ、体の無意識的な「反射」です。
そのため、撃っている本人はフリンチングが出ていることに気が付きにくいという厄介な特徴があります。
それでは、この本能的な防御反応をどうやって抑え込むのか?
……これはもう、教官が言っていた通り「無心」で撃つしか方法はありません。
引き金を引く事を意識してしまうから、体が「反動が来る!!」と反応するのです。
つまり、引き金を引くことを意識しなければよいのです。
とはいえ、人間は急に「無心」になることはできません。
そこで私が編み出した解決策は、頭の中で「アンパンマンのマーチ」を熱唱することでした。
照準を合わせ、引き金に指をかけ、ゆっくりと絞り込むように引いていきます。
このとき、頭の中ではアンパンマンの曲を流します。
「あ、あ、アンパンマン、や〜さし〜『ドン!!!』……ぃ、き〜みは〜♪」
このように、発射の瞬間を「アンパンマンマーチ」で打ち消すことで、5発目以降は的を撃ち抜くことができました。

銃で的を狙うというのは簡単そうに思えますが、外れた際の問題の切り分けや、その対策を即席で考えるなど、意外と知識と技術が必要だったりします。



