【手軽+効率的】餌を使ったくくり罠猟『小林式誘引捕獲』を解説!

「くくり罠をしかけるときに、餌を撒いたら獲れやすくなるのでは!?」・・・くくり罠ハンターであれば、一度は思いつくであろうアイデアですが、これは意外と上手くいきません。実際に試した人の多くは『餌は食べられるのに、罠はまったく踏まれない』といった不思議な現象に、頭をかかえたはずです。
 そこで今回は、近年注目を集めている小林式誘引捕獲についてお話をします。 小林式誘引捕獲の仕掛け方だけでなく、『くくり罠猟で餌を使うこと』に対する原理的な部分についても、詳しく見ていきましょう。


今回のお話は、2021年10月発売の『狩猟生活Vol.9』(山と渓谷社)にて、さらに詳しくご紹介しています。よろしければこちらも併せてご覧ください。



この記事の3つのポイント

  1.  くくり罠で餌を使うことは、原理的には矛盾する“良くない”猟法である

  2.  小林式誘引捕獲は、獲物が餌を食べて油断しているときの足運びを狙うように考案されている

  3.  小林式誘引捕獲では、罠の周りに石を敷き詰め、さらにその周りに餌を撒いて、ドーナツ状にするのがコツ



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誘引捕獲とは?

 野生動物を何らかの方法でおびき寄せて罠にかける方法を誘引捕獲と言います。おびき寄せる方法には、デコイ(動物を模した人形)や、臭い(発情フェロモンを持つ尿や、イノシシに対するクレオソート)、鳴き声(コール)、明かり(シカに対するかがり火)など色々ありますが、今回は最も一般的であるを使った誘引捕獲についてお話をします。

誘引捕獲のメリット

 誘引捕獲の最大のメリットは、捕獲場所を比較的自由に決められることです。例えば、足くくり罠やイタチの筒罠といった罠は、獲物が通るルートを予測して仕掛ける必要があります。こういった猟法は、わずか数十センチのトリガーを踏ませないといけないため、仕掛ける場所の選定にはかなりの経験が必要となります。

 また、獲物が通る場所が特定できたとしても、そこに罠をかけるのは難しい場合もあります。特に、険しい山が猟場の場合、仕掛けるポイントの多くは斜面になるため、罠の設置や見回りがかなり大変です。

 その点、誘引捕獲は、罠を仕掛ける場所選びが楽です。なにせ獲物の方から来てもらうわけですから、仕掛ける位置は私たちの都合の良い場所で問題ありません。
 そのため、誘引捕獲の代表例である箱罠は、車のアクセスが良く設置がしやすい場所に仕掛けられています。

くくり罠+誘引捕獲のメリット

 一般的なくくり罠猟では、獣道を見て獲物が通っている頻度を見切り、さらに、足を着く位置を数十センチの精度で予測して罠を仕掛ける必要があります。こういったフィールドワークの知識や、罠を仕掛ける技術は初心者では難しく、「初めてくくり罠で大物をしとめるに3年かかった」といった話もあったりします。
 このように難易度の高いくくり罠猟は、趣味のレジャーハンターであれば「やりがい」として楽しむこともできます。しかし、出猟する機会の少ない週末ハンターや、イノシシ・シカの捕獲を業務として行う駆除従事者などは、やはり「やりがい」よりも「効率性」を重視したくなるはずです。
 このような需要から、近年ではくくり罠を使った誘引捕獲が注目されています。

くくり罠における誘引捕獲の問題点

 くくり罠+誘引捕獲は様々なメリットがある猟法です。しかし冒頭でもお話したように、単純に餌を撒いただけでは、くくり罠で獲物を捕獲することはなかなかうまくいきません。その理由をお話する前に、まずは罠の原理について理解しておきましょう。

『見えていない罠』と『見えている罠』

 罠には、『見えていない罠』『見えている罠』の2種類があります。まず『見えていない罠』とは、仕掛けられていることに気付かずに、獲物がうっかりとハマってしまうタイプの罠です。獲物が普段通っている獣道に隠すようにして仕掛けるくくり罠は、このタイプに属します。
 対して『見えている罠』は、初めから獲物から存在を知られているタイプの罠です。例えば箱罠は、いきなり箱の中に餌を入れても、獲物は警戒して中に入ろうとしません。そこで、箱罠の入り口から餌を撒いていき、少しずつ箱罠の存在に慣れさせるようにします。そして、十分に油断したところでトリガーを仕掛けて、扉を落とすようにします。

 犯罪に例えると、くくり罠などの『見えていない罠』は、相手が警戒する前に金品をぶんどる強盗。箱罠などの『見えている罠』は、相手の警戒を徐々に解いて油断しているところを盗み取る詐欺のようなイメージです。

『見えていない罠』と誘引捕獲は相性が悪い

 さて、『見えていない罠』と『見えている罠』で罠を考えた場合、『見えていない罠』であるくくり罠に対して、『見えている罠』である撒き餌を使うことは、本来は矛盾したアプローチであることがわかります。
 犯罪に例えるならば、『泥棒注意』の看板が立っているところで強盗を行おうとするようなものです。よほどのん気な人でもなければ、その看板を見た人は手持ちのカバンをギュッと握りしめます。こういった相手から金品を奪い取ろうとしても、そう簡単にはいきません。

 実際にトレイルカメラで観察してみると、餌に誘引されたイノシシ・シカは、私たちが想像する以上に警戒しながら近づいて来ます
 よって、例え私たちがいかに上手く罠を隠したとしても、警戒している野生動物は罠の場所を“違和感”として発見し、容易に避けてしまうのです。

くくり罠の誘引捕獲法

 こういった問題点を踏まえて、くくり罠の誘引捕獲には様々な猟法が考案されています。例えば、バケツを使った首くくり罠では、獲物が餌を食べる動きとトリガーの作動が連動するように工夫されています。
 しかしこの猟法は、獲物がバケツに首を突っ込むようになるまで時間がかかり、また、特殊な猟具が必要となるのでコストもかかります。
 さらに、1頭捕獲できたとしても、それを見ていた周囲の獲物が罠を覚えてしまい、同じ場所での捕獲効率が下がってしまうといったデメリットもあるようです。

小林式誘引捕獲

 くくり罠の誘引捕獲は大きなメリットがあり、猟法もいくつか考案されています。しかしそのほとんどが、罠に慣れさせるのに時間がかかったり、設置に手間がかかったりと問題点が多くあります。
 そこで近年注目を集めているのが小林式誘引捕獲です。この猟法は、従来の問題を上手く解決し、初心者でも設置がしやすい仕組みになっています。

小林式誘引捕獲のメリット

 先述したように、餌に寄せられた獲物は強く警戒しているため、その状態で罠にかかることはまずありません。
 しかし、餌を食べることに夢中になっている獲物は、足が無意識的に動くことがあります。そこで小林式誘引捕獲では、油断した獲物の足運びを罠にはめるように、罠と餌の配置を工夫しています

 
 小林式誘引捕獲のメリットは、バケツや首くくり罠といった特殊な猟具を必要とせず、一般的なくくり罠で行うことができます。必要なのは餌と小石だけなので、初心者でも簡単に実践することができます。

餌付けを行う

 誘引捕獲においてもっとも重要なのは、獲物を餌に慣れさせることです。獲物の餌への反応は、周辺環境にある餌の種類や量によって変わってきます。よって、自分が罠をかけるエリアで複数の餌を試してみて、反応を確かめてみる必要があります。

餌の種類

 餌には色々な種類がありますが、イノシシ・シカの捕獲では米ぬかが最もよいでしょう。米ぬかは、精米所やコイン精米機に行けば、ほぼタダで手に入ります。

 シカだけを捕獲したい場合はヘイキューブがオススメです。ヘイキューブは乳牛や馬の飼料として開発された、アルファルファヘイという牧草を押し固めた餌です。イノシシやクマはヘイキューブを食べないため、シカのみを選択的に誘引することができます。
 ヘイキューブは畜産用として農協で売っていますが、ホームセンターにもウサギなどのペット用に売られています。

 その他の餌には、廃棄された野菜・果物や、おから、ふすま(小麦粉の副産物)などが餌として用いられます。入手のしやすさなどを考慮して、その地域で誘引性の高い餌を探してみましょう。

餌を撒く頻度

 撒いた餌が食べられていることを確認したら、同じ場所に追加しましょう。2,3回同じ場所で餌を食べるようになったら、同じ場所にくくり罠を仕掛けます。 

 米ぬかを使う場合は、撒きすぎには注意しましょう。米ぬかは臭いが強く誘引性が強いですが、長く放置すると腐って虫が湧きます。
 自然界に人間の食べ物を持ち込むのは、本来は生態系に良い影響を及ぼしません。よって、食べられなかった餌は地面の土ごと埋め戻し、なるべく跡が残らないように配慮しましょう。

トレイルカメラを活用しよう

 誘引捕獲では、誘引していた動物がイノシシやシカではなく、タヌキやアライグマだったりすることもあります。そこで、特に初心者の内はトレイルカメラを使って、餌を食べている様子を観察するとよいでしょう。
 またトレイルカメラでの観察は、罠を仕掛けるタイミングを計るのにも役に立ちます。初めは警戒しながら餌に近づいていた獲物も、2回目、3回目と餌を食べに来るころには無警戒になります。このタイミングを見計らうことで、うっかりトリガーを踏んでしまう可能性を上げることができます。

小林式誘引捕獲を実践

 獲物を十分誘引できていることを確認したら、くくり罠を設置しましょう。

使用する罠

 小林式誘引捕獲では、餌を食べている獲物が油断するスキを狙う必要があります。そのため、使用するくくり罠のトリガーは、強く踏み込んで発動するタイプよりも、なるべく感度の高いトリガーが向いています。
 感度の高いトリガーには、例えば、両側にワイヤーを引っかける羽が付いており、踏むことで噛み合いが外れてスネアがひき絞られる、笠松式などがあります。また、踏むとバネの付いた羽が跳ね上がるジャンプ式トリガーも向いています。

 このような高感度トリガーは、ウサギやテンなどの小動物でも起動するため、空ハジキや錯誤捕獲が問題となります。しかし誘引捕獲であれば、色んな動物が移動する獣道に仕掛けるわけでは無いので、錯誤捕獲の可能性は比較的低くなります。

リードを結ぶ

 設置場所を決めたら、まずはリードワイヤを結ぶ位置(根付け)を決めましょう。
 一般的なくくり罠猟では、トリガーを仕掛ける場所を決めた後に、根付けの位置を決めなければなりません。そのため場所によっては、トリガーを仕掛ける絶好のポイントがあるにも関わらず、周囲に根付けに適した木が無かったり、逆に根付けに適した木があっても、仕掛けるポイントまでワイヤーが届かなかったりすることがあります。
 誘引捕獲では罠を仕掛ける場所を自由に決めることができるので、まず初めに、しっかりとした根付けを確保しましょう。

罠を埋める

 根付けの確認ができたら、罠を埋める穴を掘っていきます。このとき、踏板よりも少し大きめに掘るようにします。
 ジャンプ式や踏み上げ式といったトリガーを使う場合は、より感度を高めるために、トリガーの下に硬い木やプラスチック板を敷いておくとよいでしょう。

石を設置する

 罠を埋めたら、その周りに石を敷き詰めていきます。このときの石は、罠に密着させて隙間を空けないようにしましょう。
 

 罠の周りに石を配置する理由は、獲物に罠の端を踏まれて暴発するのを防ぐためです。
 餌に夢中になっているときの足の動きは無頓着なので、足を着く位置を正確に予想することができません。そこで、イノシシやシカが踏むのを嫌がる石を配置することで、罠の中心に足を誘導するようにします。

 このような施策は一般的なくくり罠猟でも、罠の前に枝などを置いて跨がせたところを踏ませる『またぎ棒』といった形で行われます。

 石の配置が完了したら罠を隠していきましょう。このとき石は、地面から飛び出すようにします。

餌を撒く

 石の設置が完了したら、その周りに餌を撒くようにします。罠を中心にドーナツ状に餌を撒くことで、どの方向から獲物が寄ってきても、左右どちらかの前足が罠の射程圏内に入ります
 餌は広範囲に多く撒きすぎると、足が罠の位置から遠くなってしまいます。かといって、餌を少なく・狭く撒くと、獲物が食事に夢中になる前に餌が切れてしまいます。
 この辺はある程度の裁量が必要となりますが、全体として直径1m程度に収まるようにしましょう。

おわりに

 今回は、餌を使ったくくり罠の猟法の一種である『小林式誘引捕獲』についてお話をしました。小林式誘引捕獲については、考案者・小林正典さんの考案秘話なども含めて『狩猟生活Vol.9』(山と渓谷社)に詳しく掲載しています。ご興味のある方はこちらもチェックをお願いします。
 




Author情報
東雲輝之

株式会社チカト商会の代表取締役兼、副業猟師。狩猟の継続発展・産業化・国際展開などを目標に事業展開をしています。 本人著書として『狩猟の教科書シリーズ』(秀和システム)、『初めての狩猟』(山と渓谷社)など。子育てにも奮闘中。

Twitter:東雲輝之



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