高精度 ? 高威力?エアライフルのカタログスペックの読み方を詳しく解説!

 狩猟を始めたいと思っている人の中には、エアライフルの購入を検討している方も多いはず。しかしエアライフルのことを色々調べていると、そこには見たことの無い数値や単位が並んでおり「一体これらの何を参考にして選べばよいのだろうか・・・」と困ってしまうのではないかと思います。
 そこで今回は、狩猟用エアライフルを評価する指標とその意味、また、はじめてのエアライフル選びのポイントについて詳しく解説をします。

この記事の3つのポイント

  1.  精密性の評価は『集弾率』。ただし集弾率だけでは弾道特性やパワーを評価することができない点に注意。

  2.  パワーの評価は初速・マズルパワー。ただし初速・マズルパワーだけでは精密性や安定性、またスペックの値だけではノックアウトパワーを評価できない点に注意。

  3.  初めてのエアライフル選びで困ったときは、どんな獲物を狙いたいか?どんなスタイルの狩猟をしたいか?を考えていこう!


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精密性を評価する集弾率

 エアライフルの性能評価には色々な指標がありますが、その中でも銃の精密性を示す重要な指標となるのが集弾率(グルーピング)です。

集弾率の評価

 集弾率の評価方法は、まず銃をバイスでガッチリ固めた状態から数発発射し、中心から最も遠い2つの弾痕の距離を測定します。この値を銃と標的までの距離で割った値が、集弾率(単位は平面角「ラジアン」)となります。
 この集弾率は数値が小さければ小さいほど精密性が高いと言えるため、他の銃と数値で比較ができます。しかし一般的には数値で評価するよりも、例えば「30mの距離で1円玉の集弾率」や「50mの距離で500円玉の集弾率」と言った弾痕が広がる大きさで表現されることの方が多かったりします。

『高集弾率』=『良い狩猟用エアライフル』か?

 近年の狩猟業界では、この集弾率が高いほど「良いエアライフル」と評価される傾向があります。確かに発射した弾が“めくらめっぽう”に飛んで行くような銃は猟具として使い物にはなりません。しかし「集弾率絶対主義」と言えるほど集弾率の評価にこだわるのは、実は狩猟用エアライフルを選ぶうえで大きな問題だったりします。

風防された射撃場

 例えばエアライフルの射撃競技では、完全風防された施設内で10mという決められた距離から射撃を行います。この競技では弾道を決定するのは“射手の腕”と“銃の性能”だけなので、銃の持つ精密性の高さが「銃の良し悪し」そのものと言っても過言ではありません。

 対して狩猟においては、飛んで行くペレットが風の影響で流されるだけでなく、常に獲物との距離が一定ではありません。さらに標的の位置が目線から低く『撃ち下ろす』場合もあれば、高い木にとまっている標的を『撃ち上げる』こともあるので、獲物との距離・角度を正確に測定しなければ射撃競技のような正確な射撃は難しいといえます。
 つまり狩猟では、競技に比べて精密性を乱す要素が限りなく多いため、銃本体の精密性を示す集弾率の評価は相対的に小さくなると言えます。

集弾率の差は、よほど大きくなければ誤差レベルでしかない

 そもそもな話「集弾率が1円玉から500円玉の大きさに広がったとして、狩猟にそこまで影響があるのか?」という疑問があります。もちろん競技では、着弾点が2mmズレるだけで1ポイントの差を生むため、勝敗を分ける死活問題となります。しかし狩猟では、『獲物の心臓に命中』することと『心臓から2mmズレたところに命中』することには、“捕殺する”という狩猟の目的において、大きな差を生むことではありません。いうなれば、狩猟用エアライフルにおける集弾率の評価は、よほど酷い数値でなければ誤差レベルと考えられるのです。

集弾率では弾道特性を評価できない

 集弾率を評価するときには「弾道特性が考慮されていない」ということを理解しておく必要があります。例えば上図でAとBの集弾率がまったく同じだった場合、この2つの銃は猟具として同等の性能と評価できるでしょうか?
 競技射撃においては、的紙に穴を開ける程度のパワーがあれば十分なので、この2つの銃は同等の性能と評価できるかもしれません。しかし狩猟においては、Bの方が弾道が直進的で距離による落下が小さいため、標的を狙いやすくなるメリットが生まれます。また、直進性が高いということはペレットの弾速が早いということなので、標的に命中したさいの運動エネルギーを稼ぐこともできます。
 このように、集弾率はエアライフルの性能を評価するうえでとても重要な指標ではあることは間違いありませんが、そこだけを切り取って見てしまうと狩猟に必要な要素を見過ごしてしまう危険性があるのです。

エアライフルのパワー評価

 狩猟用エアライフルでは精密性だけでなくパワーの評価も重要です。パワーの評価は、銃口にクロノグラフ(弾速測定器)を取り付けてペレットを発射し、計測されたマズルスピード(初速)と使用したペレットの重さからマズルエネルギー(初活力)を算出します。しかし一般的には、これらのパラメーターはエアライフルメーカーが提供しているカタログスペックで調べるのが普通です。

マズルエネルギーの単位

 エアライフルのパワーを評価する数値の単位は、マズルスピードがfps(ft/s :フィート毎秒)、ペレットの重さがgr(グレイン)、マズルエネルギーがft.lb(フィート重量ポンド)と、イギリスの物理単位系「ヤード・ポンド法」が使われています。

 サバゲ―が趣味の人は「ホビーガンはメートル毎秒、グラム、ジュール表記なのに、なんで統一しないんだろう?」と思われるかもしれませんが、これは空気銃の黎明がイギリスで起こったため。その分野の黎明期を担った国の物理単位が世界共通単位になるのは、真珠の目方が世界で初めて真珠養殖がおこなわれた日本の単位系「もんめ(匁)」になったのと同じように、仕方がないことなので慣れましょう。

パワーの目安

 エアライフルのパワーは、大きくマッチパワード(競技用)ライトパワード(一般的)ハイパワード(強力)の3段階に分けられます。それぞれの初速とマズルエネルギーの目安は上の図の通りで、だいたい30[ft·lb]を超えると「うぉー!強えー!」と評価されます。
 また近年では、ハイパワードよりもさらに威力のあるマグナムパワードと呼ばれる分類もできつつあります。この区分は弾が音速に近くなるため、ペレットの選び方が他よりも少し変わってくる点に注意が必要です。

スペックのパワーは精密性を保証した値では無いことに注意

 エアライフルのパワーを評価するうえで重要になる初速とマズルエネルギーですが、メーカーの出すスペック表は精密性を保証している値では無いことを知っておく必要があります。

 一例として、上表のパワーに関するスペックを見てみると、初速v=375[m/s]、マズルエネルギーE=67[J]という、超強力なマグナムパワードエアライフルであることがわかります。しかし、エネルギーE=(1/2)mv^2の公式から、この実験で使用されたペレットの重さm[kg]を算出すると、m=0.00095[kg] = 0.95[g] = 14.7[gr]という数字になります。このペレットの重さは、初心者にとっては特に気にならない数字だと思いますが、実際に射撃をすると精密性を大きく損なうという問題が生じます。

高出力&軽いペレットは弾道が大きく狂う

 軽いペレットを高速で射出したときに発生する問題がペレットの縦回転(タンブル)です。これはペレットが、ライフリングの横回転(ローリング方向)に対して、縦向きに(ピッチ方向)に回転しながら飛んで行く現象で、この縦回転が起こると揚力が発生して弾道を大きく捻じ曲げるという現象を生じます。

 この現象は上図のように紙飛行機で考えてみるとわかりやすいでしょう。軽い紙でできた紙飛行機は、ふんわりと投げると風に乗って飛んで行きます。しかし力任せに思いっきり投げると、空気抵抗を受けて軽い機首が持ち上がってしまい、回転しながら墜落します。
 このような現象はペレットにおいても同じで、軽いペレットを高速で発射すると、あらぬ方向に飛んでしまいます。なおこれとは逆に、重たい鉄飛行機を飛ばすときは高速で投げないと安定して飛んで行かないように、重たいペレットを撃ち出すときは高い射出圧が必要になります。

スペックのパワーはあくまでも”目安”で

 このように、パワーに関するカタログスペックの値は軽量ペレットで測定した数値であることが多いがため、必ずしも実猟でスペック通りのパワーが出せるわけではありません。
 もちろん「カタログスペックは詐欺だ!信用ならん!」と言っているわけではなりません。メーカーにはそれぞれの販売戦略があるわけですし、メーカーの都合の良い情報を出すのは当たり前のこと。よって、カタログスペックのパワーはあくまでも“参考値”であり、英語でよく言われる“grain or salt”(話半分)と考えておきましょう。

(※参考)Straight Shooters Precision Airguns,”What is Power?”
(※参考)Wikipedia,”Pellet(air gun), Diabolo pellet”.

獲物へ与えるノックダウンパワー
ノックダウンパワー

 エアライフルのパワーを評価するうえで、初速・マズルエネルギーと同じく重要になるのがノックダウンパワーです。これは簡単に言えば獲物を死亡させるためのダメージのことで、命中時に残存しているペレットの運動エネルギーと、その運動エネルギーを衝撃力に変換する仕事という、2つの要素で評価されます。
 一つ目の残存する運動エネルギーについては、ペレットメーカーが提供しているバリスティックチャート(弾道特性表)を読めば、ある程度計算可能です。二つめの仕事については、下図のように使用するペレットの先端形状と口径面積が、大きな要素となります。
 

 ノックダウンパワーについては、ペレットの速度、重量、形状以外にも、命中した“当たり所”(バイタルヒットか否か)や、獲物の精神力(俗に言う「矢の強さ」)など、物理以外の要素も含まれるので、一概に数値で評価できるわけではありません。
 このノックダウンパワーについてはまた別の機会に詳しく解説するとして、今回はひとまず「エアライフルのパワーは、使用するペレットの口径や形状も重要な要素になる」ということだけ覚えておいてください。

エアシリンダー容量・最大蓄圧

PCPエアライフルでは、空気を貯めておくエアシリンダーの最大容量最大蓄圧がカタログスペックに表記されています。

シリンダー容量は大きいほど射出回数が増える

 PCPエアライフルの大まかな原理は上図のようなイメージで、ストライカーが桶の栓を叩くたびに水が噴き出し、桶内の水圧が下がっていきます。エアシリンダーの容量は、この例で言うと桶の大きさで、桶のサイズが大きいほど貯められる水の量も多くなるので、水圧の低下が緩やかになります。つまり、シリンダー容量が大きいほど、ペレットを射出できる回数(ショットカウント)が多くなります
 エアシリンダーの形式には、一般的なチューブ型エアシリンダー(150~250㏄)、ハイパワード型エアライフルによく利用されている大容量シリンダー(400~500㏄)、エアシリンダーを1つの銃に2つ搭載したデュアルシリンダー(1000cc以上)タイプがあります。

では、「シリンダー容量は大きければ大きいほど良いのか?」というと、そういうわけでもありません。シリンダー容量が大きくなるということは、それだけ容器の重量が増すため、銃全体が重くなってしまいます。総重量は銃身の長さなどで変わりますが、一般的なエアシリンダーでは約3㎏、大容量シリンダーでは約4㎏、デュアルシリンダーでは5㎏以上になります。

 なお、エアシリンダーには鋼鉄製カーボンFRP製の2種類があり、FRP製の方が約30%ほど軽くなります。ただしFRP製の方が値段が高くなるので、どちらを選ぶかはお財布と相談することになります。

最大蓄圧はパワーが高いほど高い

 エアライフルの最大蓄圧は、そのエアライフルの推奨発射圧によって違います。具体的には、ライトパワードエアライフルでは最大蓄圧が200気圧(bar)、ハイパワードエアライフルでは250気圧、マグナムパワードでは300気圧で設計されています。
 どのくらいまで空気圧を入れるかは、例えば「ライトパワード+ライトペレット」の組み合わせで180~140気圧、「ハイパワード+ヘビーペレット」の組み合わせで230~180気圧、「マグナムパワード+プリチェット弾頭」の組み合わせで280~250気圧、といった具合に、その銃と使用するペレットの重量によって適正圧力が変わります。ただし銃とペレットの相性は、ペレットの形状や銃の造り(ライフリングの深さ)などで変わるので、適正圧力は試射を繰り返して自分で見つけていかなければなりません

大容量・高圧力タイプは、空気充填に要注意!

 エアライフルを選ぶときは、必ずエアの充填方法を考えておきましょう。多くの方はエアライフルの空気充填にハンドポンプを使うと思いますが、ハンドポンプはエアシリンダーの蓄圧が高くなるほど抵抗が強くなるので、ポンプする力が物凄く必要になります。またエアシリンダーの容量が多いと圧力を上げるための空気量が多くなるので、ポンプしないといけない回数が増えます
 ライトパワードからハイパワードに届くぐらいであれば、なんとか大人一人の力で空気を入れることができますが、それ以上になると“苦行”です。「空気を入れるのがあまりにも辛すぎて撃つことが無くなった・・・」といった悲しい結果を招かないためにも、ハイパワードを超えるエアライフルを購入するときはエアタンクの購入を検討するか、揺るぎない覚悟を決めましょう。

狩猟用エアライフルは狩猟スタイルで選ぼう!

 さて、ここまででエアライフルのカタログスペックを見方について解説をしてきました。では、これらの値を見てどのように購入するエアライフルを選べばいいのでしょうか?「高精度?ハイパワー?う~ん、何を基準にしていいかわからんッ!」という方は、ひとまず自分の狩猟スタイルを考えてみてはいかがでしょうか?

どんな獲物を狙いたいですか?

 例えばあなたがヒヨドリやキジバトといった獲物を主に狙いたいのであれば、狩猟スタイルは待ち猟になります。このスタイルでは獲物が留まる木と、待ち伏せする場所をあらかじめ決まっているので、パワーよりも精密性(集弾率)を重視したエアライフルがオススメです。またサイズが小さい獲物にはノックダウンパワーもそれほど必要ないので、口径は6.35mmよりも5.5mmのラウンドノーズ型が最適と言えます。

 もしカモやキジといった大型鳥を狙いたいのであれば、ある程度のノックダウンパワーが必要になるため、5.5mmよりも6.35mm口径を、ペレットの形状はホロ―ポイントを使うのがオススメです。通う予定の猟場が広くてカモが居る場所がいつも違うようであれば、直進性の高いハイパワードエアライフルが良いでしょう。

どんなスタイルで狩猟がしたいですか?

 もしあなたが都度距離をレンジファインダーなどで計測して、弾道をしっかり計算できるスナイパー気質の人であれば、精密性を重視したエアライフルを選んだ方が良いでしょう。カモの羽を貫くのには相応の運動エネルギーが必要になりますが、頭や首といったバイタルポイントを狙えれば、それほどパワーは必要としません。
 逆に「射撃の楽しみよりも、肉を確保することを重視したい」という人や、「カラスの駆除や罠の止め刺しに使いたい」という人は、当たり所に関係なく獲物を仕留めることができるパワー重視のエアライフルが良いでしょう。

おわりに

 今回は、『エアライフルのカタログスペックの見方』についてお話をしました。世の中には「パワーがあっても当たらないと意味ないよ( ´_ゝ`)」や「命中しても弾がはじかれるようじゃ意味ねーだろ m9(^Д^)」など、エアライフルに対して色々な考えを持つ人がいます。まぁ、これらの意見はそれぞれ的を射ているのですが、やはり狩猟用途に使うなら、自身の狩猟スタイルから使用するエアライフルを選ぶのが一番です。「銃があるから狩猟をする」のではなく「狩猟をするから銃を選ぶ」・・・というわけですね。

 エアライフルの性能については、今回の話以外にも色々な要素があります。エアレギュレータや銃床形状、アクセサリーレールなどについてはエアライフル用語集の方でも解説しているので、よろしければご参考ください。

それでは、今回はこのへんで。


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