コツは“詐欺師”になること『箱わな猟の実践ポイント』

 「箱わなの仕掛け方」と聞いた人の中には、「そんなの餌を入れて、ほったらかしにしておけばいいんじゃないの?」と思われた方も多いと思いますが、いえいえ!それは大間違い!箱わな猟は、餌を撒くのにもコツが必要で、さらに運用に“駆け引き”も必要になる、とても難しい「わな」なのです。そこで今回は、箱わなを仕掛けるポイントについて、お話しをしたいと思います。

この記事の3つのポイント

  1.  カモ撃は、散弾銃とエアライフルで猟法が異なる

  2.  ただやみくもに行うのではなく、猟場の地勢を利用して作戦を立てることが重要

  3.  「カモを撃つ」だけでなく、撃ったカモの回収と下処理の方法も併せて学ぼう


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箱わな猟のコンセプト

 箱わな猟の解説に入る前に、まずは前回お話しした「くくりわな猟」と「箱わな猟」のコンセプトの違いについて理解しておきましょう。この2つの違いを一言で表すと、「見えない罠」か「見えている罠」かです。

くくりわな猟と箱わな猟の違い

 まず、くくりわなは、無意識な獲物をおとしいれる「わな」です。罠だと気づいてそれにかかる動物はいないため、くくりわな猟ではトリガーを埋めて隠したり、通路を舗装して誘導するなどの工夫が必要になります。
 対して、箱わなは、警戒心を解いた獲物を騙してしとめる「わな」です。箱わなは初めから獲物から見えているので、警戒心は最高潮の状態からスタートします。そこで、餌を使って徐々に獲物の警戒心を緩めていき、完全に油断しきったところで扉を落として閉じ込めます。

箱わなの作戦は「詐欺」の手口

 くくりわな猟と箱わな猟の違いをあえて“犯罪”に例えるとしたら、くくりわな猟は「ひったくり強盗」、箱わな猟は「詐欺」です。まず、くくりわなは、獲物の油断しているスキを狙って強奪する「ひったくり強盗」のように、獲物に警戒心を持たないうちに実行するのが最大のコツです。対して箱わな猟は、巧みな話術で徐々に相手の警戒心を解いていき、十分に相手が油断したところで騙し取る「詐欺」のように、獲物を安心させきることが最大のコツになります。
 ろくでもない例え話ですが、ここで言いたいのは結局、『人間がかかる罠』も『動物がかかる罠』も、どちらも全く同じ心理操作からできているということです。つまり、くくりわな猟では「強盗犯」の心境で、箱わな猟では「詐欺師」の心境で獲物に接していくことが、大切だということなのです。

箱わなの設置

 箱わな猟は、まず、箱わなを設置する場所を探すところから始めます。特定のターゲットを捕獲したい場合は、前回のくくりわな猟でお話しした見切り(フィールドワーク)を駆使して、設置する場所を決めましょう。

箱わなを置く場所を決める

 箱わなを置く場所は、獲物が行き来する獣道から少し外れたところにある、開けた土地がよいでしょう。餌で獲物を誘引するので細かな場所を気にする必要はありませんが、直射日光が当たる場所は餌が傷みやすいので、木陰に設置した方がよいでしょう。

地面を平らにならす

 大型箱わなは傾いていると、扉が上手く落ちないことがあります。そこで設置する場所を決めたら、箱わなを置く場所を浅く掘って石や小枝を取り除き、なるべく平らに地面をならしていきましょう。

箱わなの底に土をかぶせるか、板を引く

 動物のヒヅメや肉球はとても敏感なので、箱わなのフレームの感触をとても嫌がります。そこで箱わなの底は、土や枯葉をかぶせて地面と一体感を出すようにしましょう

 できれば箱わなの底には、板を敷いておきましょう。板を敷いておけば、餌の入れ替えのときに板を引いて取り出すことができるので、中の土を入れ替える手間がはぶけます。また、止め刺しで血が地面に付いたときも、板を取り出して丸洗いができるため、後始末がとても楽になります。さらに、閉じ込められた獲物が暴れたとき、板で足を滑らせて突進ができなくなるため、箱わなの安全性も向上します。

箱わなの上に板やゴム板を敷く

 箱わなを設置したら、中に入れた餌が雨に濡れて腐らないように、上に板を敷きましょう。箱わなの上部にトリガーが張り出して板が置けない場合は、薄いゴム板やビニールシートなどでも構いません。

小型箱わなの場合は

 小型箱わなは、獲物の通り道に直接仕掛けても良いです。やぶの中や倒木の下のような影になっている場所は、獲物の警戒心も緩みやすくなります。

餌のタイプ
特徴
餌の例
ターゲット
植物系
自然界にある木の実や農作物。
地域性が強く、周囲に住んでいる動物の嗜好性に適合していないと効果は薄くなる。
アケビや柿などの果物類。サツマイモなどのイモ類。廃棄された野菜類。米ぬかやくず米など。イノシシ、シカ、タヌキ、アライグマ、ハクビシン、ヌートリア、アナグマ、ノウサギ、テン、タイワンリス、シマリス
肉系
動物の肉や内臓。
肉食傾向が強い雑食動物に効果が高い。ただし腐敗しやすいため、何度も取り換える必要がある。
狩猟で捕獲した肉、または内臓などの残滓。魚の干物など。イノシシ、タヌキ、アライグマ、イタチ、キツネ、ノイヌ、ノネコ
人工系
人工的に加工された食品など。
通常の食物よりも高栄養価で誘因性が強い。購入しないと手に入らないので、ランニングコストの高さが難点。
アルファルファ、ヘイキューブ、ペットフード、砂糖菓子などほぼすべての狩猟獣

 獲物を誘引するために使うは、捕獲したい動物の種類や、その地域の嗜好性、また、手に入りやすさなどを考慮して、最適な物を選びましょう。

米ぬか

 米ぬかは、箱わな猟でよく用いられる餌です。特にイノシシに対して高い誘引効果(遠くの獲物を引き寄せる効果)があり、酒粕などを混ぜると、さらに効果が増します。ただし米ぬかは腐敗しやすいため、1週間に1、2回は古い米ぬかを掃除して、新しいものに取り換えなければなりません。

 米ぬかは、精米所に行けば10㎏100円ぐらいで手に入ります。また、コイン精米所なら無料で手に入るところもあります。コイン精米機で米ぬかをもらう場合は、小屋の裏に米ぬかを取り出す入口があるので、「無料でお持ち帰りください」という表示があることを確認してから、袋に詰めて持ち帰りましょう。季節によっては米ぬかが少ない場合があるので、何カ所か回収できる精米所を見つけておきましょう。

廃野菜

 野菜や果物は米ぬかに比べて誘引効果は落ちますが、その作物を荒らしている動物に対して強い嗜好性を発揮するため、有害駆除の目的でよく用いられます。鳥獣被害に困っている農家さんから廃野菜を分けてもらえれば、餌を買うコストを抑えられます。

加工食品

 魚の干物や魚肉ソーセージなどの加工食品は、特に肉食傾向の強い雑食動物に強い嗜好性を発揮します。このような餌は丈夫で日持ちするので、釣り餌式トリガーでよく用いられます。

アルファルファ

 ノウサギやシカなどの草食傾向の強い動物の餌には、ヘイキューブアルファルファキューブなどがオススメです。これらは、アルファルファと呼ばれる植物に添加物を加えて圧縮加工したもので、主にウシやウマの飼料として用いられています。一般的には、ホームセンターやペットショップで「ウサギの餌」として販売されています。

 シカ専用の餌には、鉄分などのミネラルを固形化した特殊なものもあります。これは、シカが列車と衝突する事故を調査する中で発明された誘引剤で、シカにのみ嗜好性を示すと言われています。

お菓子

 「かりんとう」や「キャラメルコーン」といったお菓子は、特にタヌキやアナグマ、アライグマ、テンなどの動物に強い嗜好性を発揮します。購入するのに若干コストが高くなりますが、コンビニで売っている「100円お菓子シリーズ」でも十分効果があります。

エサの撒き方

 餌の撒き方は、箱わな猟における、とても重要な要素です。例えば、もしあなたが見ず知らずの人から「これを買えば儲かりますよ!」といきなり話を持ち掛けられたとしても、絶対に信用しないと思います。同じように箱わな猟でも、獲物を始めから箱わなに誘い込もうとしても、絶対にうまくはいきません。

まずは遠くから色々な動物を呼び寄せる

 餌の撒き方は、獲物を箱わなに引き寄せる「よせ」、獲物を箱わなの中に誘引する「さそい」、トリガーにかけるための「しとめ」の3段階に分けて考えましょう。常套的な詐欺のテクニックも、まずは「無料説明会」といった言葉で人を呼び寄せ、次に「限定講習会」といった言葉でターゲットを絞り、最後に「あなたにだけ特別の話ですよ♪」という3段構えで人を騙すのだそうです。

 まず1段階目の「よせ」では、箱わなから放射状に広がるようなイメージで、餌を広く撒いていきましょう。ここで寄ってくる動物は目的としているターゲットとは限りませんが、まずは無節操でOKです。沢山の動物が出入りを繰り返すと、「ここは良い餌場だ」という雰囲気ができて、メインターゲットの警戒心も下がります。

 トレイルカメラや足跡を見て、目的としているターゲットが餌に付いていることを確認したら、徐々に遠くの餌を減らしていきましょう。ターゲットが箱わな手間の餌に付くようになったら、次は箱わなの中に誘導する「さそい」の段階に移ります。

「さそい」は箱わなの入り口からジックリ時間をかける

 「さそい」の段階では、まずは入口に頭を突っ込ませるところから始めましょう。箱わなの扉を開いてロックを掛け、入口付近に餌を多く撒きます。この餌を食べるようになったら、少しずつ扉の内側に餌を増やしていき、最終的には「しとめ」となる餌をトリガーよりも奥に置くようにします。

 一般的に野生動物は、いきなり箱わなの中に入って来ることはありません。特に老獪なイノシシともなれば、その動きは“一進一退”となり、1カ月以上駆け引きを続けることも珍しくありません。とにかく「詐欺師」の心情で、ゆっくりじっくりとターゲットの警戒心を解きほぐしていきましょう。

トリガーを仕掛ける

 ターゲットが「しとめ」の餌をたべるようになったら、いよいよトリガーを仕掛けて捕獲を行いましょう。箱わなのトリガーをしかけるうえで必ず意識しておかなければならないのは、『扉を落とすのは一発勝負』ということです。

一度、扉を落としたら“罠”だとバレる

 詐欺のテクニックでも「詰めは周囲と隔離する(洗脳する)」と言われているように、箱わなでもターゲットに他の動物が罠にかかっている姿を見せてはいけません。もし一度でも扉が落ちている姿を見せると、「これは危険な罠だ」と勘付かれてしまうため、ターゲットは二度と近寄ってきません。この錯誤捕獲を防ぐために、箱わなのトリガーは常時かけっぱなしにするのではなく、必ずターゲットが箱わなに入って来ることを確認してから設置するようにしましょう。

蹴糸の場合は高めにかける

 また、蹴糸を使ったトリガーの場合は、地面から少し高めにかけて、タヌキなどの中小型獣がかからないようにしましょう
 蹴糸自体は、ターゲットが箱わなに入って来るようになってから張ると警戒心を与えてしまうので、あらかじめ扉と連結させていないダミーの蹴糸を張っておき、糸の存在に慣れさせるようにしましょう。箱わなに入ってきたターゲットが蹴糸に触れても扉が落ちなければ、糸を「安全だ」と思い込んでくれるため、本番(扉と連結させた)の蹴糸を張ったときに、引っ掛かりやすくなります。

トリガーは緩めに設定しておいた方がいい

 箱わなのトリガーは、くくりわなのトリガーよりも、“あそび”が大きくなるように設定しましょう。箱わなは扉が落ちない限り、獲物に警戒心を与えることはありません。よって、タヌキのような中小型獣が先にトリガーに触れても、扉が落ちさえしなければ、まだ捕獲のチャンスはあります。そこで、チンチロ式や吊り餌式の場合は扉との噛み合いを深くセットし、踏板式の場合はシーソーの下に小枝を挟んでおくなど、トリガーが“鈍感”になるように調整しましょう。

おわりに

 今回は、箱わな猟のポイントについてお話をしました。一見、簡単に見える箱わな猟ですが、意外と駆け引きが必要で難しい狩猟だということがわかっていただけたと思います。あまり人聞きの良い表現ではありませんが、是非みなさんも「詐欺師」になった気持ちで、ターゲットを騙して捕獲しましょう!

それでは次回、止め刺し編でお会いしましょう。


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