動物は意外と“臭い”を気にしていない!?『くくりわな猟の実践ポイント』

 くくりわなはスネアのサイズが12㎝ほどしかないので、適当に仕掛けていても猟果はサッパリあがりません。そこでくくりわなを仕掛けるときは、獲物を捕獲するためのロジックを、ひとつひとつ積み重ねていくことが何よりも重要になります。今回は、このくくりわな猟で押さえておくポイントについて、お話しをしたいと思います。

この記事の3つのポイント

  1.  罠猟で何よりも重要なのは、「獲物が居る場所にしかけること」。獲物の存在は、足跡や糞などのフィールドサインの調査でわかる。

  2.  くくりわなは、仕掛ける土壌の質などによって、最適なバネの種類やトリガーのかけ方が変わってくる。

  3.  初めは失敗がつきもの。しかし、失敗からひとつひとつロジックを重ねていき、次第に精度を高めていくことが重要。


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くくりわな猟に必要な道具

 くくりわなは、バネやトリガーの種類によって仕掛けるために使う道具は変わりますが、ここでは最低限必要な道具についてご紹介します。

用意しておく工具など
シャベル

 トリガーを埋めたり、地面をならしたりするのに必要。園芸用の小型シャベルで十分だが、硬い地面や太い根が多い場所では、大型剣シャベルがあると便利。持ち運びがしやすいように、折り畳み式シャベルを持つ人も多い。

ハンマー(玄翁)

 通路の調整などで枝や杭を地面に打ち込むために必要。手の力で刺し込むこともできるが、叩いた方が深く刺し込めるので安定する。両側が平たい「玄翁(げんのう)」が最適。プラスチックハンマーでもOK。

剪定ばさみ

 通路の邪魔になる小枝や、地面の根を切るのに使う、園芸用のハサミ。小枝はナイフでも切れるが、ハサミの方が楽。「かまのこ」と呼ばれるノコギリ刃の鎌を使う人も多い。

ラジオペンチ

 針金を曲げたり、スネアやバネに挟まった細かいゴミを取り除くなど、細かい作業に必要。「山でなくしやすい工具No.1」なので、100均の安物で十分。

ヒモ

 引きバネを木の上に固定したり、表札を結び付けておくなどに使用する。長期間自然の中で使うものなので、強度と耐腐食性の高いビニールハウス用のバンド(マイカ線)がオススメ。

表札

 「わな」を設置するときに必ず掲げておかないといけないネームプレート。アルミでできた既製品がよく使われているが、紙をラミネート加工した手作りの物も、よく使われている。

ヘッドライト
ヘッドライト

 くくりわな猟では、薄暗い場所にわなをしかける場所も多いので、ヘッドライトがあると良い。アウトドアで山に入るときは、必ず光源を持っておくこと。

工具はピンクテープを巻いて腰袋に

 工具を落としたり、置きっぱなしにしてなくさないように、腰袋を用意しておきましょう。腰袋はホームセンターで1,000円ぐらいのもので十分です。ピンや釘などの小物類は、ピルケースに入れてまとめておきましょう。

 また工具類は、ピンク色や水色のテープを巻いておくとよいでしょう。山の中で物をなくすと想像以上に見つかりません。そこで、自然界には少ないピンク色や水色のテープを巻いておくと、なくしたときに見つけやすくなります。

見切りのポイント

 罠猟の超原則は、獲物がいる場所に仕掛けることです。当たり前の話ですが、プールで魚釣りをしても絶対釣れないように、獲物がいない山に罠をしかけても猟果は上がりません。そこで罠猟では、まず、獲物の痕跡フィールドサイン)を見つけて分析する、見切り(フィールドワーク)を行います。

足跡

 足跡(フットプリント)は、見切りにおける最も基本となるフィールドサインです。足跡を調べることにより、どのような野生動物が周辺に住んでいるのかがわかるだけでなく、いつごろこの場所を通ったか、また上級者になると、獲物の大きさや群れの数、足跡を付けていたときの“精神状態”まで読み解くことができます。

 足跡を見るときは、その足跡が、ヒヅメで歩く蹄行性(ていこうせい)の動物か?、五本指と「かかと」を付けて歩く踵行性(しょこうせい)の動物か?、4本指で歩く指行性(しこうせい)の動物か?、を見極めましょう。足跡の形状は動物の種類によって細かく違いますが、ひとまずこの3種類に分別するだけで、獲物の存在を大雑把に見極めることができます。

 足跡を調べて、それがターゲットとする動物の物だと判断したら、次にこの足跡は新しいか・古いかを確認しましょう。一般的に新しい足跡は、表面の土の粒が滑らかでツルツルしており、逆に足跡が古くなると、土の粒が固まって輪郭が崩れています。

 また、足跡周りの状況からも推測ができます。例えば、足跡の中に草が踏みつけられていたとして、その草がまだみずみずしい状態だったら、この足跡は新しいと推測できます。逆に、踏まれた草が枯れていたり、足跡の上に小枝が落ちていたりする場合は、その足跡は比較的古いものだと推測できます。
 もちろん、足跡の新しい・古いは、土地の性質によっても大きく変わってきます。また足跡は様々な見方があるので、詳しくはまた別の機会にお話をします。

 動物のは、足跡以上に様々な情報が読み取れるフィールドサインです。糞は足跡よりも劣化のスピードが遅いので、より正確に新旧が判別できるだけでなく、落ちている糞の多さで、その場所に繰り返し訪れるリピート性を読み取ることができます。特にタヌキやアナグマといった動物は、同じ場所に糞をする習性(ため糞)を持っているため、生息状況を簡単に読み取ることができます。
 また、糞の内容物からは「何を食べているのか」を調査できるため、生息している場所をより正確に推測することができます。

食跡

 動物は、餌を見つけた場所に何度も繰り返しやってくる習性があります。そこで、動物の食べ残し(食跡)を見つけることで、どのような動物がそのエリアを頻繁に出入りしているか推測することができます。
 逆に、ターゲットにしたい動物の食性を理解しておくことで、出現するポイントを絞り込むことができます。例えばイノシシであれば、秋にはドングリなどの木の実、冬場は自然薯、春先にはタケノコなどを食べます。そこで、事前にこれらが生えている場所を探しておき、出現ポイントへ先回りするのも良い作戦です。

寝屋

 動物が寝る場所は寝屋(ねや)と呼ばれており、動物の種類ごとに特徴があります。例えばイノシシの寝屋は、枯草やツルなどが敷き詰められたベッドのような状態になっており、「臥猪の床(ふすいのとこ)」と呼ばれています。冬場は朝日がよく当たる山の東斜面に作られることが多く、やぶの中をよく利用しています。

 シカの寝屋は、地面をサークル状にならした跡になっており、竹やぶや日の当たりが少ない森の中などで多く見られます。一般的にシカの群れは、十数キロ圏内をゆっくりと移動してまわってくるので、寝屋周辺は今後も重要な罠設置ポイントになります。

トレイルカメラを活用する

 獲物の存在を知るためには「フィールドサインの調査が必要」と述べましたが、正直な話、一番確実な調査はトレイルカメラです。トレイルカメラはセンサーを使って自動的に写真や動画を撮る機器で、近年、罠猟でよく使われているアイテムです。このトレイルカメラを仕掛けておけば、そこに「どのような動物が生息しているか?」や、「どのようなルートを通っているか?」などが一目瞭然になります。

 トレイルカメラは一番手っ取り早くて確実な調査方法ですが、できるだけ自分の目でもフィールドサインを調査してみましょう。くくりわなにおける見切りは、ターゲットの生息確認だけでなく、くくりわなをしかける場所をピンポイントに選ぶときにも必要になります。そこで、トレイルカメラの映像を見る前に一度自分の目で見切りを行い、そのあとでカメラの映像を確認しましょう。こうすることで「答え合わせ」ができるため、見切りの目を養うことができます。

くくりわなを仕掛けるポイントを決める

バネの種類と地質
森林土
やぶ
泥砂
狭小道
凍土
押しバネ式
ねじりバネ式
引きバネ式

◎:オススメ 〇:対応できる △:工夫が必要

 見切りで獲物の存在を把握できたら、次に、くくりわなを仕掛ける場所をピンポイントで探していきましょう。くくりわなは、トリガーの位置がわずか数センチずれただけでも取り逃してしまいます。そこで周辺の地質や地勢を観察して、より捕獲率が高くなるように、くくりわなの種類や仕掛け方を吟味していきましょう。

柔らかく掘りやすい『森林土』

 くくりわなを仕掛ける地質で最も多いのが森林土です。森林土は枯葉が堆積してできるため穴が掘りやすく、バネやトリガーを深く埋めることができます。注意点としては、森林土は木の根が多いので、必ず「根切り」の道具を用意しておきましょう。

仕掛けにくいが捕獲率が高い『やぶ』

 やぶは、笹などの灌木(かんぼく)が生い茂る場所なので、引きバネ式のように吊るして使用するバネは、設置しにくい場所だと言えます。また、森林土よりも地面が痩せているため、穴を掘って埋めるわなも仕掛けにくくなります。
 しかしやぶは、獣の通り道になっている場合が多いので、比較的捕獲率は高いポイントです。そこで、埋めなくても使用できる「オリモ式」のようなわなや、蹴糸を使ったトリガーなどを使用してみましょう。

足跡が見やすいが仕掛けるのにコツがいる『泥場』

 川の周辺や、山地のくぼみなどに点在する泥場は、野生動物が体に付いた寄生虫を落とすために泥浴び(ヌタうち)を行うポイントなので、わなを仕掛ける絶好のポイントになります。
 ただし泥場は、徐々に泥が沈下して、埋めたわながむき出しになってしまいます。また、バネやトリガーに付いた泥が乾燥すると、固まって動かなくなり、不発の原因になります。よって泥場にくくりわなをしかけるときは、トリガーの“あそび”を大きく設定し、バネは森林土で使用するものよりも、少し強力なものを使用しましょう。

仕掛けにくいがポイントを絞りやすい『狭小道』

 尾根に登る狭い急斜面や両側が崖になるような狭小道は、動物が歩くルートが正確に読めるので、捕獲率が高いポイントになります。ただし、ねじりバネや、押しバネは、道が狭くて仕掛けにくいため、それなりの工夫が必要になります。狭小道のように、わなを地面に埋めるのが難しいところでは、引きバネ式やはねあげ式が向いています。

特別な対策が必要になる『凍土』

 くくりわなを埋めた地面に雪が積もると、雪の重みでトリガーが落ちて暴発を起こす可能性があります。また、溶けた雪が再び凍ると、トリガーやバネが凍結して動かなくなる不具合が生じます。そこで雪が深く積もる場所や、凍結するような季節では、“あそび”の大きいトリガーや、強力なバネを使うようにしましょう。

仕掛けるときの注意点

 獲物が通りそうな場所をピンポイントで決めたら、いよいよくくりわなを仕掛けていきましょう。くくりわなを仕掛ける手順は、バネやトリガーの種類によって大きく異なるため、また別の機会に詳しく解説をします。今回は、くくりわなを仕掛けるときに共通するポイントについて、お話しをします。

掘る量は最小限に抑える

 動物のヒヅメや肉球は人間の指先と同じように、とても敏感な触覚を持っています。よって、掘り返した地面と周囲の地面に固さの差があると、動物は警戒して、避けて通ってしまいます。特にイノシシの場合は、違和感がある地面を掘る習性があるため、埋めたわなを掘り返すことがよくあります。

 無駄に土を掘らないようにするためには、例えば、埋める罠と同じサイズの塩ビ管を用意し、その中だけを掘り返すようにします。こうすることで、トリガーの中だけしか土の固さは変わらないので、違和感を最小限に抑えることができます。また、押しバネのような筒状のバネを埋めるときは、杭を打ち込んで穴を空けるといった工夫をしましょう。

高い所をくくることを意識する

 くくりわなにおいて最も避けたいのは、スネアが獲物の爪先に浅がかりすることです。この浅ががりは、くくりわなにかかった獲物が突進してきたとき、スネアがすっぽ抜けて、そのまま体当たりされる危険性がある、とても危険な状態です。実際に獲物から逆襲を受けて死傷する事故が多く起こっているので、くりわなを仕掛けるときは、浅がかりを可能な限り防がなければなりません

 浅がかりを防ぐためには、スネアをなるべく高い位置に掛けるようにします。例えば、押しバネやねじりバネには、バネの駆動する方向を上にして埋める縦引きと、地面に寝かせて仕掛ける横引きという、2種類の仕掛け方があります。どちらの仕掛け方でも問題はありませんが、もしトリガーを浅くかける場合は、バネは縦引きに仕掛けてバネの跳ね上がりで足の高い所にかけるようにしましょう。対して、バネを横引きに使用する場合は、なるべくトリガーを深く埋めて、踏み込ませて足の高い所をくくるようにしましょう。
 市販のくくりわなの中には、「踏まれた瞬間にスネアが絞まる」ことを売り文句にしている商品がありますが、浅がかりが多発するためおすすめできません。くくりわなを選ぶときは、「捕獲しやすい」よりも「安全性」を優先しましょう。

リードは木の“弾力”を利用する

 くくりわなのリードは、根がしっかりと張り、よくしなる木に結び付けましょう。「リードは太くて固い木に結び付けた方が良い」と言う人もいますが、イノシシやシカがスネアを引っ張ると、瞬間的な衝撃でワイヤロープが切れたり、スネアを圧着していたスリーブが外れるなどのトラブルが起こります。そこでリードを結ぶ木は、「固くて太い木」よりも「よくしなり、衝撃を逃がしやすい木」に取り付けるようにしましょう。

 また、リードは上図のように結びましょう。普通にリードを木に巻いてシャックルで閉じただけでは、獲物が引っ張ったときの衝撃でシャックルのゲートが折れる危険性があります。しかし上図のように結ぶと、リードの結び目が締まって衝撃を緩和されるため、シャックルにかかる負担を抑えることができます。

“臭い”についてどう考えるか

 罠猟師の中には「動物は臭いに敏感だから、汗一滴でも地面に垂らすと警戒されてしまう」という人がいますが、この“人間の臭い”の問題については、ちまたで言われているほど、気にする必要はありません。

「人間の臭い = 危険な罠」は乖離している


 その理由として言えるのが、「人間の臭い」と「危険な罠の存在」がリンクした情報ではないからです。例えば、イノシシは非常に嗅覚が優れた動物なので、汗一滴で人間の存在を知ることはできるかもしれません。しかし、その人間が「自分たちにとって危険な物を仕掛けている」という情報は知りえないため、「人間の存在=危険な罠」という思考には結び付きません。
 現に、イノシシに限らず様々な野生動物は、人間の臭いが濃い里山や農地に頻繁に出没しています。もし多くの狩猟者が言うように「人間の臭い」が野生動物を警戒させる要因なのだとしたら、里山や農地には近づいてこないはずです。

埋めるタイプのトリガー以外は、見えてても問題ない

 またくくりわなのスネアやバネは、完全に埋める必要はありません。これは先の臭いの件と同じで、野生動物がスネアやバネといった人工物を見たとしても、それが「危険な罠」であると判別しえないためです。
 もちろん野生動物は、あえて異物を踏んで歩くようなことはしないため、踏板式などのトリガーは、しっかりと埋めて存在を隠しておかなければなりません。しかし、引きバネ式のスネアや、押しバネ・ねじりバネなどは、踏まれると不発や空ハジキの原因になるので、あえて見えるように設置した方が効果的だったりします。

「スレ」た獲物は、わなで捕獲しにくくなる

 「野生動物は『人間の臭い=危険な罠』とは考えない」と述べましたが、例えば、以前に人間の罠にかかったことがあったり、他の動物が罠にかかったところを見たことがあったりすると、人間の臭いと危険な罠の存在を学習する可能性があります。このような動物は「スレ」と呼ばれており、わなでの捕獲はかなり難しくなります。

ルートを誘導する

くくりわなを仕掛けたら、よりトリガーにひっかかりやすくするために、ルートを作っていきましょう。

踏み板を置く

 先にも少し触れましたが、動物はヒヅメや肉球の感触が敏感なので、異物があると避けて歩きます。この習性を逆手に取り、あえてくくりわなの前に異物を置くことで、トリガーを踏ませやすくします。この異物は「またぎ棒」などと呼ばれており、トリガーの進路に対して挟むように置きます。

道を狭くする

 またぎ棒を設置したら、次に、罠をしかけたルートへ誘導するように、脇道を塞ぎましょう。人間の目から見ると“明らかに怪しい”光景ですが、野生動物からして見れば、それが「人間が意図的に作ったもの」なのか「自然とそうなった」のかは、区別がつきません。脇道はあまりガッチリ封鎖する必要は無く、棒をクロスに立てかけておくだけでも効果があります。

表札を設置する

 わなの設置とルートの調整が終わったら、最後に表札を掲げましょう。表札には、狩猟者登録証の番号氏名住所電話番号狩猟をしている年度(例えば、令和2年度)、狩猟をしている都道府県の知事(名前じゃなくても「東京都知事」といった表記でOK)を、油性ペンなどの雨に濡れても消えにくい塗料で書きます。

表札は必ず目立つ位置に掲示する

 表札は、くくりわなを仕掛けた場所から少し離れた場所に、人間の目の高さにぶら下げて設置しましょう。しばしば「くくりわなのリードに結び付ける」と言う人がいますが、それは間違いです。表札は獲物が罠にかかったときに、持ち主へ連絡をするためにも使われるため、リードに結んでしまうと危険な獲物に近づかなければならなくなってしまいます。

おわりに

 今回は、くくりわな猟のポイントについてお話をしました。ざっくりとまとめると、くくりわな猟は、「猟場見切り」→「くくりわな設置ポイント決定」→「わな設置」→「リード結び」→「ルート調整」→「表札掲示」といった流れになります。それぞれについて細かくは、また別の機会にお話ししたいと思います。

それでは次回、箱わな猟のポイントでお会いしましょう。


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