捕獲した獲物は、骨付きのまま熟成させたほうが、肉の柔らかさが増して美味しく仕上がります。
これは、動物の死後、筋肉が硬縮を起こした際、骨があることで肉が骨に引っ張られ、元の弛緩した状態へ戻りやすくなる「ストレッチ効果」があるためと考えられています。
逆に早期に骨を外してしまうと、収縮した筋肉が縮んだまま固まってしまい、食味が硬い肉になってしまいます。
また、骨から肉を外す段階で刃を入れると断面から雑菌が付着、肉が傷みやすくなるというデメリットもあります。
さて、当会で捕獲して枝肉にした獲物は、弊社事務所……という名の、思いっきり個人宅リビングの隅っこにある専用冷蔵庫で熟成を行っています。
使用しているのは、アイリスオーヤマの1ドア冷蔵庫「IRSN-8A-W」。
これに少し手を加え、内部に枝肉を吊るすアタッチメント棒を取り付けて改造しています。
横幅356mmというスリムな設計ながら、高さ996mmをぶち抜きで使えるため、小型〜中型の獲物であればすっぽりと丸ごと吊るすことができます。
大型の個体であっても、胸と腰で3分割ほどに解体すれば、1頭はギリギリ収納可能です。
熟成用として最初は横置きタイプの業務用チェストフリーザー(ストッカー)を使っていたのですが、あのタイプは庫内の湿度が上がりやすく、肉がすぐに傷んだりカビが生えたりして痛い目を見ました。
肉の熟成においては、庫内の湿度を適切にコントロールする「自動霜取り機能」と、ファンで冷気を循環させて肉の表面を適度に乾燥させる機能が絶対に欠かせません。
骨付きで肉を熟成させる期間は、長ければ長いほど酵素の働きで旨味成分が増していきます。
ただし、旨味の増加は徐々に緩やかになるため、「腐敗リスク」とのバランスを見て期間を見極める必要があります。
過去には15日間の長期骨付き熟成まで試した実績もありますが、現在は冷蔵庫の回転率を上げるため、以下のハイブリッドな工程を採用しています。
- 丸2日間の骨付き吊るし熟成(ドライ)
- 骨から外して精肉し、真空パックへ移送
- パックのまま再度冷蔵庫(チルド設定)で2〜5日間熟成(ウェット)

骨付き熟成期間が短すぎると、真空パックにした後に肉からドリップが溢れ出てしまいますし、逆にパック後の熟成時間が短すぎると肉の旨味が引き出しきれません。
ちなみに、このように骨を抜いたブロック肉を真空パックでドリップが出ないよう密閉し、チルド帯で熟成させる手法を「ウェットエージング」と呼びます。



