「狩猟なんてやめておけ」。きつい・汚い・危険・金がかかる・クレームが来る、狩猟は驚きの「5K」の世界

「狩猟なんてやめときなさい」 そう口にする人がいます。そんなことを言うのはどこの誰なのでしょうか?
……それは「私」です。
狩猟歴12年、副業猟師であり、狩猟関連の書籍を10冊以上執筆している私が、「狩猟に興味がある」という方にいつもかけている言葉がこれです。
狩猟はどこか神秘的でかっこいい活動のように思われがちです。しかし現実は、「きつい」、「汚い」、「危険」、「金がかかる」、「クレームが来る」という、驚きの「5K」の世界です。
今回はあえて、現場の人間だからこそ語れる狩猟の過酷な現実についてお話しします。

目次

【きつい】極寒と汗冷え

真冬のアウトドアである狩猟は、とにかくいつも「寒い」です。
特に、山中でじっと獲物を待つ「巻き狩り」は、常に寒さとの闘い。
巻き狩りでは、少しでも動けば獲物に勘づかれたり、誤射を招いたりするリスクがあります。
そのため、寒空の下で石のように静止し続けなければなりません。

骨の髄まで冷える「汗冷え」

一方で、狩猟の現場では山中を全力で走り回ることもあります。
猟犬が獲物を抑えている現場に駆け付けたり、半矢のカモが陸にあがって逃げようとする場面などでは、真冬でもインナーがびしょ濡れになるほどの大汗をかきながら走り回る必要があります。
しかし、動きが止まればその汗が一気に冷やされ、猛烈な寒気が襲ってきます。
「極寒」の上に「汗冷え」。この激しい繰り返しで、狩猟では体力がごっそり削られます。

【汚い】マダニの恐怖と血なまぐさい現実

狩猟では、泥だらけになるし、返り血をあびることもあり、服は常にドロドロです。
中でも厄介なのが、獲物の解体作業。
体液や糞尿を浴びることもあり、服や靴に付着するとなかなか取れません。
特に、海ガモなど鳥類の内臓は異様に臭いことがあり、解体中も思わず顔をそむけたくなるほどです。

家族にも影響する「マダニと感染症」

獲物の体表は「汚い」だけでなく、イノシシやシカには、マダニなどの寄生虫が多く付着しています。
これらを猟場から自宅へ持ち帰ってしまうと、自分だけでなく家族にまで健康被害が及ぶ可能性があります。
狩猟から戻った服は、泥と乾いた血でどす黒く変色していることもしばしば。
当然、家族が使う洗濯機で一緒に洗うことなど許されるはずもなく、疲れた体で凍えるような寒空の下、独り手洗いに励むのがハンターの現実です。

【危険】獲物からの反撃や滑落リスク

狩猟は他のアウトドアと異なり、特別危険性が高いといえます。
何せ相手は「言葉が通じない野生動物」。
ひとたびこちらの弱いところを見せたら、問答無用で襲い掛かってきます。

滑落、落石のリスクもある

狩猟は、整備された山道を歩く登山とは異なり、未舗装の獣道を歩き回らなければなりません。
当然、登山よりも崖からの滑落や、落石による事故のリスクが高まります。
万が一事故が起こっても、街中とは違い、すぐには救助されることはありません。
最悪は携帯電波が届く所まで、自力でどうにかして這出る必要もあったりします。

手は常に傷だらけ

ハンターの手は、常に傷だらけです。
ジビエの解体作業では、どれだけナイフの扱いに慣れたベテランでも、脂で滑って指をザックリ切ってしまうことは珍しくありません。
また、罠猟でも怪我は絶えません。
ワイヤロープのささくれが指に刺さったり、強力なバネに指を挟まれたりするのは日常茶飯事です。

【金がかかる】狩猟は浪費の世界

狩猟は自然の中で活動するアクティビティなので、「お金があまりかからない」と思われるかもしれません。
しかし実際は、狩猟者登録(狩猟税)や免許の更新費用、猟具や道具の購入代、ガソリン代など、思いのほか金がかかります。

「一発でラーメン一杯」という費用の高さ

特に銃猟は金がかかります。
実弾は安くても1発70円、高いものでは1,000円以上することもあります。
「引き金を引くたびにラーメンが一杯飛んでいく」というのは、狩猟者の間で有名な冗談。
空気銃なら1発5~10円ぐらいですが、本体は20~40万円します。
また、コストがかからないと思われている罠猟も同様に、ワイヤーやバネなどの購入費や餌代などが積み重なって、結構な出費になります。

「家畜の肉」には勝てないコスパと味

それだけのお金をかけて手に入れる報酬が「ジビエ」ですが、果たして費用対効果はあるのでしょうか?
例えばカモ猟では、大人が丸一日かけても一羽しか獲れないこともザラです。
それなら、3時間アルバイトをして居酒屋へ行くほうが、確実に美味しい思いができます。
「うまいものをたべたい」というのが狩猟をする目的なら、狩猟をするお金で毎週居酒屋に行った方が幸せな選択です。

【クレーム】世間とのズレと通報のリスク

狩猟の世界に長く身を置いていると、時折「動物を殺して、何が楽しいんですか?」という言葉を投げかけられます。
私たち狩猟者は法律を守っていますが、世の中の「常識」からすれば、自らの手で動物を殺す人間は「変質者」のように映ることもあります。

気付かないうちに「一般常識」と乖離していく

怖いのは、狩猟を続けるほどこのズレに気づけなくなることです。
「動物の死」へ日常的に触れていると、初めのうちは感じていた獲物への情け心も次第に薄まっていきます。
そして、不意に他人から先ほどのような指摘を受けたとき、自身の感覚が一般常識からかけ離れていることに気付かされることになります。
もちろん、日本では「合法」である以上、どのような思想を持っていてもそれを他人から非難される筋合いはありません。
しかし、社会の中で生きていく以上、ときには価値観の異なる人たちと付き合っていくことも必要になります。

通報トラブルと濃密すぎる人間関係

合法的に猟をしていても、心ない人から通報されることがあります。
警察から事情聴取に時間を取られたり、罠を盗まれたりといったトラブルも珍しくありません。
また、「狩猟はきままに一人で楽しめる」というのも間違いです。
猟隊に入れば先輩の指示は絶対。どんなに社会的地位が高い人でも、狩猟の世界では三下扱いです。
さらに、地域住民との関係性を保つ「根回し」も、狩猟者には不可欠です。

家庭崩壊も招きかねない

狩猟はパートナーの理解がなければ、家庭不和の火種になります。
中でも、獲物を仕留めた後の「保管場所」は切実な問題。
鳥類ならまだしも、イノシシやシカになれば20kg近い肉塊になります。
血の滴る肉を家庭用冷蔵庫に入れようものなら、家族から怒声を浴びせられることは必須です。
また、「猟犬」を飼うようになると、家族仲が深刻になるケースがあります。
これはあくまでも私の観測ですが、猟犬を飼い始めると、だいたい家庭が崩壊します。
狩猟者にとっては、純情で健気に付き合ってくれる「猟犬」の方が、圧倒的に可愛く思えてしまうからです。

それでも私が狩猟を続ける理由

ここまで「5K」のリスクを並べ立てましたが、それでも私は狩猟を続けています。
理由はシンプル。
「狩猟が好きだから」です。
この過酷さの先にある非日常と本能的な興奮は、他では代えがたいものです。
「自分にできるだろうか?」と不安を感じるなら、いきなり免許を取るのではなく、見学ツアーなどで一度「現場」を体感してみてください。
自分が狩猟を好きになれるかどうか、そのヒントが見つかるはずです。

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