【クリスマスジビエ】北欧伝統のイノシシ料理「ユール・シンカ」を食べよう!

今年の12月25日を、皆さんはどのようにお過ごしでしたでしょうか。
「キリスト教徒でもないのに、なぜ日本人はクリスマスで盛り上がるのか?」と首をかしげる方もいるかもしれません。ですが、この時期に「どんちゃん騒ぎ」をすることは、クリスマスよりも長い歴史を持つ「伝統」だったりします。そこで今回は、クリスマスの意外なルーツと共に、この季節にふさわしいイノシシ料理についてご紹介します。

目次

12月25日は「太陽復活」の祝祭

現在、12月25日は一般的に「キリストの誕生日」だと思われています。 しかし、その祝宴のルーツはキリスト教が誕生するもっと前、古代ローマの「サトゥルナリア祭」や北欧の「ユール」にあります。 これらは本来、一年で最も日が短い「冬至」を乗り越え、太陽の復活を祝うための信仰に基づくものでした。

冬至=「太陽の復活」

12月22日前後の「冬至」。
それは一年で最も日が短くなる日であり、同時に、再び日が長くなり始める境界線でもあります。
古代の人々にとって、冬至は「死にかけていた太陽が復活する日」でした。

日々弱っていく太陽を見て
「もし、このまま太陽が死んでしまったらどうしよう……」と本気で怯えていた彼らにとって、冬至を過ぎて日が伸び始めることは、奇跡にも似た喜びだったのです。

「よかった! これでまた温かい春がやってくる!」
その爆発的な安心感が、
「うまい飯を食え! 酒を飲め!! 子作りしろ!!!」 という、「どんちゃん騒ぎ」をするルーツになっています。

クリスマスに上書きされた冬至の祭り

時代は下り、古代ローマ時代。
当時のキリスト教会は、異教徒を改宗させようと躍起になっていました。
しかし、民衆はこの「冬至のどんちゃん騒ぎ」を一向にやめる気配がありません。
そこで教会側は、「こうなったら、この土着信仰を『キリストの誕生祝い』ということにしよう」 と、上書きする形で容認したのです。

このような土着信仰が上書きされた痕跡は、「サンタクロース」や「クリスマスツリー」(共に北欧のユール起源)、「プレゼント交換」(ローマのサトゥルナリア祭起源)などに、今も色濃く残っています。

北欧に伝わる「不滅のイノシシ」を食べる儀式

さて、今回のテーマは、北欧の冬至祭「ユール」で主役を飾るイノシシ料理、「ユール・シンカ」です。
この料理の背景には、北欧神話の不死身のイノシシ「セーフリームニル」にあります。

不死身のイノシシから生命力をいただく

このイノシシは、勇敢に戦った戦士の魂が集う「ヴァルハラの館」に棲んでいます。
なんと彼は、毎晩神々と戦士たちに食べ尽くされてしまうのですが、翌朝になると「完全によみがえる」という存在です。

古代の人々は、この祭りでイノシシを食べることで、その「生命力」を自らの体内に取り込もうとしました。
そうして厳しい冬を乗り越え、新しい一年を生き抜く力を得る。
これは単なる食事ではなく、非常に神聖な「儀式」だったのです。
ちなみに、現在でもクリスマスには「ハム(クリスマスハム)」を食べる習慣がありますが、その原型はこの「ユール・シンカ」だと言われています。

意外と簡単に作れるユール・シンカ

「北欧料理」と聞くとなんだか難しそうですが、作り方はとても単純です。
漬け込みに時間がかかりますので、クリスマスの1週間前ぐらいから用意しておきましょう。

材料

  • イノシシ肉(モモなどのブロック1000グラム)
  • パン粉

ソミュール

  • 水: 1000ml(肉の分量に応じて調整)
  • 塩: 150g(岩塩がベスト)
  • 砂糖: 75g(塩の半量が目安)
  • スパイス:
    • ローリエ:2〜3枚
    • 黒胡椒:10粒くらい
    • クローブ:3〜4粒
    • その他、ローリエやジュニパーベリーなど(無くてもOK)
    • ニンニク:1片(潰して使用)

ハニーマスタード

  • 卵黄:大2つ
  • 蜂蜜:大さじ2
  • 粒マスタード:大さじ2
  • 醤油:小さじ2(ナンプラーなどの魚醤でもOK)

調理手順

① 漬け込み

沸騰させたソミュール液を一旦冷やします。
フォークで肉全体を刺して穴をあけ、ソミュール液を入れたジップロックに入れて、冷蔵庫で「1週間程度」じっくり漬け込みます。
ここで忘れてはならないのが「クローブ」。
ユール・シンカにはクローブの持つ独特の甘い芳香が合うので、忘れずに使用しましょう。

② 塩抜き

海水より少し薄いくらいの塩水(濃度2%ぐらい)を作ります。
ジップロックから肉を取り出し、塩水に2時間ぐらい漬けておき、塩抜きをしましょう。

③ ボイル

沸騰しない程度のお湯(75〜80℃)で、1.5時間〜2時間じっくり茹でます。
竹串を刺して透明な肉汁が出ればOK。
茹で上がったら取り出し、キッチンペーパーで水分をしっかり拭き取り、冷ましておきます。
普通に茹でるのではなく、「低温調理器」を使うと、よりハムっぽい食感に仕上がります。

④ コーティング

肉の表面にクローブを刺し、ハニーマスタードをたっぷり塗って、パン粉をまんべんなくまぶします。

⑤ 焼き上げ(仕上げ)

200℃〜220℃に予熱したオーブンで、10分〜15分焼きます。
パン粉がこんがりきつね色になれば完成です。

薄くそいでパンにはさんで食べる

ユール・シンカは「ハム」の料理です。
そのため、厚切りにして食べるのではなく、薄く削いでパンや野菜に挟んでいただきましょう。
このとき、表面についたパン粉と一緒に食べるのがミソ。
ハニーマスタードの甘みと辛みがイノシシの旨味を何倍にも増やしてくれます!

太陽の復活を祝うこの季節。
ぜひ皆さんも、命の力をいただくジビエ料理を試してみてください。
「Skål!!(スコール!!)」

  • URLをコピーしました!
目次